
日本人特有の症状であるといわれる肩こりですが、老若男女関係なくこの症状に悩まされている方も多いと思います。肩こりについては未だに不明なことも多く、解明されていることもあるそうですが、早く原因をみつけ根本的に肩こりを改善したいものです。
現場でクライアントさんの身体を見ていると、よく肩がこって気分が悪いと言われる方もいれば、首まで痛く頭痛があると言われる方もいます。
なぜこのような肩こりが起こるのでしょうか?それは日頃の姿勢や動作などの癖によるものが多く、さまざまな原因は考えられますが、日常生活の中に原因があり、改善のヒントが隠されています。
ただマッサージを受けて筋肉を緩めるだけでは一時的な改善に留まります。根本的に症状を改善するためには、筋肉を緩め、肩こりの原因である姿勢や動作によって筋肉の緊張が生まれるのを防ぐという、根本的なところを改善する必要があります。
今日はそんな肩こりについて現場での経験も合わせて書いていきたいと思います。
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肩こりの原因とは?
肩こりの原因にはさまざまな要因があると言われていますが、一番の問題は姿勢などによるものです。
姿勢などが原因で起こる肩こり
どういうことかというと、仕事中の姿勢や電車で座っている時の姿勢、家でくつろいでいる際の座っている姿勢は、楽に感じているかもしれませんが、身体にとっては負担になっていることが多くあります。
今で言えば、電車の中でスマホを触っている人はかなりの数ですが、この人たちの姿勢を見ると背中を丸め、真下を見るかのように頭が前にズレ、画面に映るカラフルなブロックやボールを追いかけ通勤時間をすごしています。
このとき身体の筋肉はどのような状態なのでしょうか?
まず上記の画像をご覧ください。(下顎骨が欠落していますが、ご了承ください。)この人体模型からもわかる通り、人間の身体は骨が積み木のように積み重なり、その一番上に頭部があります。
この頭部はボーリングの球ぐらいの重さがあると言われ、体重の約10%もの重さがあると言われています。
これらの骨がきちんと積み木のように重なれば、この頭部の重さは座骨といわれる骨盤で受け止められ、骨で受けることになります。
実際にこの人体模型は固定しているものではなく、バランスをとって椅子に座らせています。
ですが、下記のようにスマホを触り頭部の位置が前にズレてしまうと、この頭部の重さは肩や背中の筋肉で支えることになります。
日頃からこのような座り方をすれば、首や肩、背中の筋肉は緊張し筋肉が硬くなることで血流が悪くなり、老廃物などが溜まり、肩こり特有の鈍痛のようなものを感じてしまいます。
これが姿勢などによる影響を受けた肩こりの原因となります。
動きの癖が肩こりにつながる
続いては、現場でもよくあるケースですが、動きの癖が肩こりの原因となるということです。
どういうことかというと、まず何も考えずに肩を回してみてください。このとき多くの方はこのように肩を回しているはずです。
肩を後ろに回し、ゴリゴリと音が鳴っているかもしれませんし、気持ちよさも感じているかもしれませんが、この動作自体が筋肉を緊張させてしまいます。
肩こりの改善のために行う体操のつもりであっても、実はこのような動作は肩こりの原因になっている可能性があります。
また、棚の上にあるものを取ろうと思ったとき、前から腕をバンザイの位置までもっていこうとすると肩周りが緊張しますが、真横よりも少し前の位置で腕を上げるとスムーズにバンザイができることがわかると思います。
このように動かし方の違いによって、筋肉が緊張し肩こりとなってしまうこともあります。
精神的なことが肩こりの原因
日頃の姿勢や動作の問題だけはなく、近年問題視されているストレスが肩こりの原因になることがあります。
例えば、お偉いさんが集まる緊迫した会議や初め行く美容室からの帰りに肩がこった経験はありませんか?人通りの多い街を歩けば帰宅するとどっと疲れたりもします。
これらは精神的なストレスを受けることで、筋肉が緊張してしまい肩こりの原因となることがあります。
このように肩こりの原因はさまざまであり、上記に挙げた例だけではなくその他にも肩こりの原因となることはあります。
現場で経験した肩こりの原因と改善について
ここまでは、一般的な肩こりの原因の例として挙げていきましたが、ここから実際に現場で経験した肩こりの原因と改善例について書いていきたいと思います。
40代女性のケース
読者の方の中にもいるかもしれませんが、姿勢の認識がそもそも筋肉の緊張を作ってしまうということがあります。
まず、人間の身体はこのような骨組みをしており、この上に筋肉などがくっつくようにつくわけですが、まず腕のついている位置をご覧ください。
腕の位置は、身体の真横というよりも少し前側についているのがわかると思います。これは肩甲骨の位置が関係しており、本来肩甲骨は前方30度を向いているといわれています。
身体に対して真横の位置ではなく少し前向きに位置しているのが自然であり、身体の前後の筋バランスがとれる位置が肩甲骨に対して前方30度の位置となります。
ですが、この女性の場合正しい立ち方と認識していたのは、肩甲骨を寄せ胸を張るような姿勢でした。
このような立ち方をすることで、僧帽筋と言われる肩や背中にある筋肉が緊張し、肩こりへとつながってしまうわけです。
この姿勢を四六時中意識することで、筋肉はオーバーワークとなり硬くなってしまいます。この方の場合、肩周りの筋肉を緩め、この姿勢の認識を変えることで肩こりの改善ができました。
この方の肩こりの主な原因は姿勢の認識によるものであり、認識が筋肉を緊張させてしまう位置であったことから肩こりが起こってしまっていました。
30代女性のケース
この方の場合、上記のような姿勢のことは理解され、セッションの中で身体調整によって姿勢がよくなり、筋肉も緩みました。肩こりもこのときは改善し、喜んでいただきましたが、後日肩こりが再発します。
その原因を探っていくと、セッション中にお伝えした日頃してほしい体操のやり方の問題でした。
セッション中にお伝えしたのは下記のような腕回しでした。
これらの違いは、腕の回す位置にありますが、背中側に大きく回してしまいそこで緊張が生まれ、それを繰り返すことで肩こりとなってしまいました。
先ほどの腕の位置と関係しますが、腕を緊張なく回そうと思うと身体の前面で回すように動かせば肩関節がスムーズに動き、筋肉は緩んでいきますが、後方に回してしまうと関節構造上引っかかってしまいそこで筋肉の緊張が生まれてしまいます。
これが肩こりの原因となってしまったわけですが、この方の場合は腕回しを改善することで筋肉の緩みがある程度継続でき、セッションを継続されていますが、以前よりも肩こりは改善し、あまり気にならないまでになったそうです。
30代女性のケース
この女性の場合、頭痛やめまいなどひどい肩こりに悩まされており、数年間改善ができなかったときに相談に来られました。
整骨院やマッサージにも通っていたそうですが、どうしても改善はその日限りでまたすぐに肩こりになって、整骨院の先生に「筋力が弱いから鍛えたほうがいい」ということでセッションを受けに来られました。
話を聞いていくと、施術を受けたその日は寝るまでは調子がよく、朝起きると肩こりを感じ、2~3日経つとまた元の状態に戻っており、頭痛や吐き気を感じるそうです。
この方の場合、寝ているときの枕に問題がありました。
以前テレビで高めの枕で寝ると健康に良いということを見たそうで、それをきっかけに高めの枕を使って寝ているそうですが、それが肩こりの原因となっていました。
人間の身体は仰向けで寝たとき、地面に対して頭部が15~20度ぐらいの傾斜になることが自然だと言われています。
寝るときに首の筋肉を緊張させないようにするためには、首の下にタオルを丸めたものを入れることで、首にできる隙間を埋め、筋肉をリラックスさせることができます。
これは、感覚的にもわかりやすく、自分が一番リラックスできる高さにタオルを丸めて設定し、首の下に入れて寝ることでいつもよりも楽な感覚を得ることができます。
この方の場合は、枕の高さが原因で肩こりとなっていましたが、これを改善することで肩こりも非常に楽になり、頭痛や吐き気を感じることもなくなりました。
その他の原因について
これまで3つほど例を挙げてきましたが、他にも以下のようなことが肩こりの原因となっていました。
- 棚の上にあるものを取るときの腕の上げ方
- 長時間スマホを触っているときの姿勢
- 車を運転するときの姿勢
- 健康体操と言われる体操のやり方
- 歩いているときの腕の使い方
- 脚を組みながらのパソコン作業
- パソコン作業中の資料の置き場所
これらのようなこともすべて肩こりの原因となっており、これらの原因を取り除き、身体の筋肉を緩めることで肩こりは改善へと向かっています。
ここまでのまとめ
ここまでいかがでしたでしょうか。肩こりの原因と言ってもこれだけの原因があり、『肩こりの原因は姿勢や日頃の動作である』と言っても、よりリアルに日常を見ていけばこのような原因が考えられます。
ここでひとつ理解していただきいたいのは、どこにも“筋力を強化する”ということを言っていないと思います。
肩こりについては、筋力が弱いからなるというケースは少なく、姿勢が崩れることで筋肉が過度に使われ、それが長時間続くことで筋肉は硬くなり、委縮し、肩こりのような不快感となります。
このように考えると鍛えるではなく、筋肉を緩め、筋肉を使いすぎないで済むような姿勢、動作をすることで改善されると考えることができます。
- 肩こりの原因は、日頃の姿勢、動作、精神的なストレス、などがあげられる
- 現場で多い肩こりの原因は、長時間のパソコン作業
- この場合の改善は、筋肉を緩め、座り方や作業時の机の環境を指導する
このように行うことで現場でも改善がみられています。筋力が弱くて肩こりになっていれば鍛えればいいと思いますが、まずはこのように考えることで改善するイメージを持ちやすいのではないでしょうか。
肩こりで悩むパソコン作業が長時間続く方へのアドバイス
ここからは日頃簡単にできる体操などをお伝えしていきたいと思います。
頭痛が出てくる方へ
パソコン作業が長時間続くと、頭痛がすることがあると思います。これは姿勢が崩れ、腹部が圧迫され、呼吸が浅くなることで脳への酸素量が低下することで起こると言われています。
そのためパソコン作業中30分~1時間に1回はあくびをしながら、けのびをすることで身体が伸ばされ気持ちよさを感じると思います。
またあくびをすることで息を吐き、そのあとは自然と酸素を取り入れようとするので酸素も多く取り込めます。深呼吸を繰り返すことも身体に酸素を取り込めますので、必要なことだと思います。
首の付け根が痛くなる方へ
パソコン画面を見すぎると、目が疲れてきます。眼球の筋肉は後頭下筋と言われる首の筋肉とつながっているため、眼球疲労を起こすと首のコリを感じることがあります。
これは眼球と首の筋肉につながりがあるためであり、この場合は目を温めたり、首の筋肉を緩めることをしていきます。
- 手の指で首の付け根の筋肉に気持ちいいと感じる位の軽い圧を加える
- この状態を保持し、首を上下5cmずつ軽く動かす(1分間)
- 次は、左右を向くように5cmずつ軽く動かす(1分間)
- 最後に頭のてっぺんで直径5cmほどの小さな円を描くように動かす(左右各1分)
手を離して首を動かすと軽くなっていることがわかると思います。仕事の休み時間にでもぜひお試しください。
姿勢と体型の大きな関係
肩こりに悩む方も多いと思いますが、それ以上に自分の体型を気にしている方も多いのではないでしょうか。もしそうであればこの先もぜひ参考にしていただきたいと思います。
姿勢の崩れというのは、体型も悪くしてしまい逆に姿勢が正されることで体型も変化していきます。
またみなさんがよくされる丸くなった猫背のような姿勢というのは、腹部を圧迫し、呼吸が浅くなることで体内に取り込まれる酸素量が低下します。
ものを燃やす時に必要になるのが酸素ですが、脂肪を減らしたい方も姿勢が崩れ、酸素が取り込みづらくなるとその分だけ脂肪が燃えづらく減らなくなってきてしまいます。
このようにダイエットをしている方や、シェイプアップを目的にジムなどで運動に励んでいる方も、こういった姿勢を改めることで身体も変わっていきます。
肩こりだけではなく、こういった見方をすれば肩こりだけではなく、身体を変えるうえでも日頃から姿勢に対しての意識は変わっていくのでないかなと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。文章が長くなると整理が難しく感じる方もいるかもしれませんので、最後のまとめで整理をしていきましょう。
このように肩こりを改善することができると考えられるのではないでしょうか。
- まず、なぜ肩こりになるのかを考える(姿勢・動作・ストレス・・・等)
- 首・肩周りの筋肉を緩める(上記に記載)
- 次に姿勢を直し、座骨で座っていることを確認する
- 動作に問題がある方は、腕の上げ方、使い方を理解する
- パソコン作業が多い方は、30分に1回けのびをする
- そして、資料などは手元や左右に広げすぎず、目の前におけるような環境を作る
ご自身で改善することは難しいと感じるかもしれませんが、上記の内容を理解していただき、実践していただくと明らかに以前とは肩こりの程度の違いを感じることができると思います。
百聞は一見にしかず。
ぜひ一度お試しいただければと思います。
今日も長文となりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。