フィットネスクラブに通う人の中で最も知っているテクニックが“ストレッチ”ではないでしょうか?読者の中でストレッチを知らないという方はどれほどいるでしょうか?おそらくほとんどの人が知っていると思います。それほどポピュラーなストレッチですが、ストレッチの効果といえば筋肉を緩めるということが一般的に知られています。
筋肉を緩める目的で行うテクニックはさまざまなありますが、ストレッチもその中のひとつです。実は、ストレッチによって筋肉を緩め、柔軟性を高めることはメリット、デメリットがあることはご存知でしょうか。
ストレッチによって柔軟性を高めることで、余分なエネルギー消費が高まることがわかっており、見方によればダイエットをされている方はうれしい情報ですが、マラソン選手についてはエネルギーが消費が高まってしまうため、タイムに悪影響が出てしまう可能性あり、この情報を頭に入れておく必要があります。
今日は、このストレッチの効果とマラソン選手との関係についてまとめていきたいと思います。
こちらの記事も参考にしていただければと思います。
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Contents
ストレッチの意味とは?
そもそもストレッチとは、どんな意味をもっているのでしょうか?
- ストレッチ【Stretch】・・・~を伸ばす、~を引っ張る
- ストレッチング【stretching】・・・~を伸ばし続ける、~を引っ張り続ける
このような意味がありますが、~を、というのは、対象物がどのようなものになるのかで方法が変わってきます。
ストレッチの種類
ストレッチというものをイメージしたとき、一般的にはスタティックストレッチングという静的なストレッチングのことを指していることが多いと思います。
スタティックストレッチングとは、あるポージングをとり筋肉を気持ちのいいところで伸ばし続け、ポージングをキープするようなストレッチングのことです。よく言われるのは、筋肉に意識を向けて○○秒伸ばしましょう、というものです。
ストレッチというとこれだけではなく、さまざまな種類があります。
- ストレッチ
- ストレッチング
- スタティックストレッチング(静的)
- ダイナミックストレッチ(動的)
- バリスティックストレッチ
- アクティブストレッチング
- パッシブストレッチング
- ペアストレッチング
- パートナーストレッチング
これらはそれぞれに意味を持ち、方法が異なりますが同じ意味で使われているものもあります。トレーナーとすれば、これらのストレッチをどのように定義するのかを自分なりに理解しておくことは重要です。
今回はこのスタティックストレッチングで得た柔軟性が、マラソン選手にとって非常にタイムに関係のある事実がわかっており、見方を変えればダイエットに臨んでいる方にとってはプラスになる話だと思います。
では早速、ストレッチの効果とマラソン選手との関係について書いていきたいと思います。
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ストレッチとエネルギー消費の関係
近年の研究により、柔軟性が高い人ほどエネルギー消費が高くなることがわかったそうです。この事実を基に考えるとマラソン選手や長距離を専門とする選手は、ストレッチの効果で身体を柔らかくしすぎることはリスクを伴うということになります。
エネルギー消費が高くなるということは、余分なエネルギーを消費するため、スタミナを無駄に消耗してしまう可能性があります。すると燃費の悪い車と同じで、すぐにガス欠を起こしてしまう。ということは、タイムが悪くなる可能性があります。
こう見るとストレッチが悪いように思いますが、ダイエットをしているからするとプラスになる話。余分にエネルギーを消費するため、その分だけ脂肪が燃焼されることにもつながり、体重が落ちることが期待できる。
ただここで理解しておきたいことは、ストレッチの効果で結果的にエネルギー消費が高くなると言っても1ヶ月で2・3kgも変化が出るわけではない。
微々たるものですが、ちりも積もれば山となるということわざがあるように、身体が硬いよりも柔らかい方が痩せやすいということになります。
でもこの問題は、マラソン選手にとっては死活問題になりかねません。柔軟性とエネルギー消費の関係を知っておいた方がよさそうです。
マラソンの世界は奥が深い
この記事を熱心に見られている方は、ランナーの方が多いと思いますが、実はマラソンの世界は奥が深い。バイオメカニクスの観点からみるとそれがよくわかります。こんな数字を見ていただきたい。
ストライドを1.7mとしたとき・・・
- 5000m=約2942歩
- 10000m=約5883歩
- マラソン=24820歩
という数字が導き出されます。
ストライドが1歩につき1cm伸びれば・・・
- 5000m=17歩 約30m
- 10000m=34歩 約60m
- マラソン=145歩 約250m
の短縮がされできるというデータが出ています。
接地時間がわずか0.01秒速くなることで・・・
- 5000m=約30秒
- 10000m=約1分
- マラソン=約4分
タイムが短縮できるというデータが導き出されています。
いかがでしょうか。1cm、0.01秒の差が積もればこれだけ大きな差を生むことが理解いただけたでしょうか。では、今日の本題を考えてみると、柔軟性が高まりすぎることで、エネルギー消費が増えることでタイムにどこまで影響するでしょうか。
詳細はわかりませんが、おそらくこのようにバイオメカニクスの観点から見えた数字のように、タイムに対する影響は小さくないということは容易に想像ができそうです。
■50m5.8秒の現役トレーナーが伝えるストライドを伸ばす”弾む”練習方法
足首の柔軟性とマラソンとの関係について
そもそもマラソンや長距離など、走っているときに足首はどのような使われ方をしているのでしょうか。一般的理解はこのようになっているのではないでしょうか。
- 地面を蹴る、押す
- つま先で地面をかく
この他にもあると思いますが、地面を蹴るなどの表現は現場でもよく聞く言葉ですが、このような言葉からつま先は地面の方へ動き、このような動きを底屈といいます。
このような動きをすると、足首を使っているという表現になりますが、マラソンの強豪国であるケニアなど選手はこのような足首の使い方をしておらず、足首は固定的に使うような選手もいます。
実際に、詳しい年月は忘れてしまいましたが、1990年代前後にある世界陸上で企業が分析装置を使って足首の使い方のデータをとったことがあります。そのデータを解析したところ、日本人は地面を蹴るような足首の使い方をしていましたが、世界のトップ選手の多くは足首を固定的に使っていたそうです。
このことからもわかる通り、速く走るためには足首を使うのではなく、固定的に使うという考え方もできることになります。速く走るためには、そもそも足首の使い方だけが重要ではなく、もっと引いてみる必要があるということも見えてきます。
こういったことから足首の柔軟性が高ければ速く走れるということにはならないということです。ではどうすれば速く走ることができるのでしょうか。
重心を運び、いかに無駄のないスムーズな動作ができるか
速く走るためには躍起になって、頑張れ、頑張れ的なことでは到底好タイムは期待できない。ではどうすれば速く走ることができるのか。まず理解しておかなければいけないことは、短距離と長距離では走り方のイメージは異なるということ。
今回は長距離に限定してお話を進めていきたいと思います。
マラソンで自己ベストを記録するためには、まずスムーズな動作ができているのかということが重要になります。短距離以上にフォームが重要なことは、上記の数値からも理解していただけると思います。そのスムーズな動作をするためにはどうすればいいのでしょうか?
重心を前に運ぶ
スムーズな動作をするためには、身体に過度な意識を向けないということが重要です。一見不思議な意見なように感じますが、筋肉に意識を向けるということは、そこを探ることになってしまうため筋肉は緊張し、動きが硬くなります。
42.195kmという長い距離をそれだけの意識を持ってしまうこともタイムをロスする原因になります。
筋肉からは意識を外します。そうすれば緊張せずリラックスして走ることができますが、そこで意識をするのは重心です。自分の重心を高く持ち、その重心を前に前に運ぼうとします。人間はひとつのことしか意識できませんので、重心に意識を向けると自然に動きはスムーズになっていきます。
脚の使い方について
先ほどもお伝えしたように、脚の使い方としては足首をどうこう使うという意識は持たないようにし、リラックスできているとフラットに着地することができますので、走っているときに力が入っているところがあればそれを抜いていきます。
そうすればフラットに着地することができ、ふくらはぎが過度に疲れたりパンパンに張るということもなくなっていきます。
膝を高く上げるということもよく言われますが、これも先ほどもお伝えした世界大会のときのデータがありますが、膝は高く上げるのではなく、トップ選手の場合、前に出すようなイメージの動き方をしていました。
一般の方であれば脚をどういう風に動かそうと考えてしまうよりも、まずはシンプルに重心を前に運ぼうと意識するだけでおそらく楽に走れ、どんどん前に進む感覚が得られると思います。
前に進むのではなく、勝手に進んでしまうような感覚になりますので、重心を前に前に運んで走っていただきたいと思います。
腕の使い方
短距離の場合は、腕は前方への推進力を得るのに活用しますが、長距離でそのような使い方をしてしまうと肩周りが緊張し、動きが悪くなってしまいます。
長距離の場合、腕はリズム取りの役割をしてくれますので、これも足首同様どのように使うのかというよりも、リラックスして走り、振りやすいところで振ればいいと思います。
手のひらについては、握り込んでしまうと肩の動きが悪くなってしまうため、握り込まずに半開きにして自分が一番リラックスできるような手の開きをします。
このように重心を前に運ぼうとし、筋肉への過度な意識を外すことができれば今以上に楽に走れ、どんどん前に進む感覚が得られるようになります。
ストレッチの本質
このまま締めてしまうとストレッチが悪者扱いされそうですが、そもそもスタティックストレッチングの本質は一体どのようなものでしょうか。
冒頭で伝えましたが、対象物を何にするかで方法が異なるということですが、対象物になるものは筋紡錘、腱紡錘(ゴルジ腱器官)、筋膜など、大きく言えば3つです。まだほかにもありますが、今日はここは深入りしません。
一般的に知られているのは、ある特定の筋肉を伸ばし、意識を向けながら数秒、または数十秒伸ばし続けるといったものです。
本当にこれで適切な身体の反応を導きだせるでしょうか。みんながやっているから、先輩に教えられたから、先生に教わったからという理由だけでストレッチをやるのは、時間の無駄かもしれません。
筋肉を緩めるという反応を導き出すために、今日は本質を伝えていきたいと思います。
筋紡錘を対象としたストレッチングの考え方
筋紡錘とは?
骨格筋中にある紡錘形の微小な感覚器。筋肉の収縮を感知して手足の位置・運動・重量・抵抗の感覚を起こす。動物の姿勢保持や細かい運動に重要。
引用:http://www.weblio.jp/content/%E7%AD%8B%E7%B4%A1%E9%8C%98(Weblio辞書より)
まず、筋肉をイメージしてみてください。すると大方の人は、筋腹をイメージすると思います。この筋腹の中には、筋肉の伸ばされた長さや速さなどを感知する受容器が備わっています。これが筋紡錘です。
筋肉は腱に移行し、骨に付着しますが、筋肉を引っ張り続けると最終的には筋肉は引きちぎれてしまいます。もしそうなると大変です。でもそうならないために、防衛反応が働くわけです。引きちぎれないために、筋紡錘が刺激を受けると収縮するのは、このためでもあります。
ストレッチングの目的は、筋肉を緩めることですので、この筋紡錘は刺激を受けると筋肉を収縮させるため、筋肉を緩めるには、筋紡錘に刺激を加えないようにすることが必要となります。
そのため、筋紡錘に刺激を与えないようにはこの2つを注意しなければいけません。
- ゆっくりと伸ばす
- やさしく伸ばす
要は、筋紡錘に刺激を加えないようにするためにはゆっくり、やさしく筋肉を伸ばすことで目的の筋肉を緩めるという反応を獲得することができます。
ストレッチの具体的な実践方法について
では、具体的な例を挙げていきましょう。
ここからは、みなさんが日頃しているストレッチングをイメージしていただき、ポイントをお伝えしていきます。上の図の説明をしているのではないので注意していただきたい。
目的&方法:ハムストリングス(モモ裏の筋肉)を緩める
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痛みの感じないところで30秒前後伸ばすことで、筋紡錘がその長さに適応し、「ああ、もうこの長さは安全だ。」と安心するかのように筋肉を緩めてくれる。これがストレッチングの本質である。
ここには書いていませんが、腱紡錘、筋膜が対象物になった時にはまた方法は異なります。それはまた後日伝えたいと思います。
ストレッチの効果について
いかがでしたでしょうか。ストレッチについて理解を深めていただけると嬉しく思いますが、ストレッチとは本来筋肉を緩める目的で行い、その目的を達成するためにさまざまな方法があるということです。
ただ、筋肉を緩めすぎることはパフォーマンスに影響を与えたり、エネルギー消費を増やすということを考えればマラソン選手にとってはマイナスになるということも考えられます。どのような目的をもって行うかによってストレッチというものも、メリット、デメリットはあるということだと思います。
マラソンを終えたあとはなどは、筋肉が緊張し縮まっている状態ですので、そういう後にストレッチングを行うことで筋肉を緩めることができリラックスすることができます。
ダウンとしてストレッチングを活用することは適切だと思いますので、目的によって方法は変えていきたいものですね。
■筋肉を緩める方法=ストレッチは意外と難しい!筋肉を緩める方法のご紹介
まとめ
では最後に今日のまとめを書いていきたいと思います。
- ストレッチは、~を伸ばす、~を引っ張るという意味がある。
- 対象物を何にするかで方法が変わる
- 筋紡錘は刺激を受けると筋肉を収縮させる
- ストレッチングで重要なことは、ゆっくり、やさしく筋肉を伸ばすこと
- 筋肉に意識を向けると緊張するため意識は向けない
- 30秒たつと筋紡錘は伸ばされた長さに適応し、筋肉を緩める
このような内容でお送りしました。今日の内容が少しでもお役に立つ内容になっていればうれしく思います。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。