
野球選手や神戸女子大のラクロス部に帯同するようになってから現場ではさまざまな痛みを相談されるようになり、解決できる問題、できない問題、自分自身の技量を試される場面に遭遇します。
スポーツをしている選手は、痛みとうまく付き合うことが必要になったり、痛みが出ないように自己管理を徹底することの重要性は言わずとも理解されていると思いますが、それでも現場では数多くの痛みへの対応に追われます。
痛みに対していわれることの代表格は、痛み=筋力不足。この方程式のような考え方はすべてに当てはまるでしょうか?答えはNOだと思います。筋力不足が原因で痛みが発生することもあると思いますが、実際に現場で指導していると、身体の使い方が原因で特定の部位に負担がかかり痛みへとつながるということがあります。
今日はそんなスポーツ選手が悩む痛みについて書いていきたいと思います。
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現場で受ける相談
痛みを感じ、整骨院、鍼灸院、整形外科、さまざまなところで診断を受けたと選手から言われますが、基本的に診断を下せるのは病院にいる医者であり、レントゲンやMRIなどを受け、そこから診断が下り判断ができるのは医者のみとなります。
選手のみなさんはここも重要なことであり、診断を仰ぐところは整形外科などの病院だということです。
そこで下った診断をもとに、運動やストレッチの許可が下りたことでトレーナーが初めて何かできる立場になります。まずは医師の診断を受けることが大切です。これを踏まえたうえでこれから話を進めていきます。
現場で受ける相談の多くは、下半身の痛みや腰痛などが多く見られます。骨や靭帯には問題がなく、疲労と言われた、炎症が起きているので冷やしておきなさい、そんなことを医師から言われ指示通りしているけど、あまり状態は良くならない。
そんなことがよくありますが、骨や靭帯などの組織に問題がないのに痛みが出るのでしょうか?
痛み場所をマッサージしてもなんとなく改善したように感じるけど、痛みは一向に改善されない。これらの痛みをどのように考え、どのように改善していけばいいのでしょうか?
今日は実際に経験したことなどを踏まえてお伝えしていきたいと思います。
捻挫をしていないけど、足首が腫れて痛む
足首の痛みの問題として、捻挫を疑うことが多くありますが、ある選手が足首の痛みを訴えてきました。この選手の場合、外側の踝周辺が腫れており、痛みがあるそうですが、捻挫をした記憶がありませんでした。
立っていても、歩いていても痛みはなく、走ると痛むという状態で、特に地面に着地をする瞬間に痛むということでした。この選手の場合、走る動作を見ると、足の小趾側で着地をするような形になっており、この瞬間に痛むとのことでした。
この選手の場合、腓骨筋というすねの外側辺りにある筋肉が緊張し、この筋肉の腱は外踝の後方を通り、足底に付着しますが、この腱に炎症が起こり足部が腫れていました。
炎症がありますので、足部をアイシングしたり、腓骨筋を緩め、家でも継続的に緩ませることを伝えると腫れも引き、痛みも改善されました。この問題については走り方についても指導し、着地や走り方を改善し、根本原因の改善を図っていきました。
足首周りには、後脛骨筋や前脛骨筋などの腱が通るためこのようなことが多く起こりやすくなると言われています。捻挫の記憶がないけど足首が腫れているなどの症状はこのようなことが原因なども考えられます。
■足首を捻挫した選手ヘの対応|クライオセラピーを実践して感じた身体の変化
足の裏が痛むが、普段は全く痛くない
ある選手からの相談で、日常で痛みを感じることもなく、練習の際にウォーミングアップが終わった後ぐらいから足の裏が痛むとの相談を受けました。
この選手はこれ以前に臀部の痛みなどを訴えていましたので、何か関係があるのかなと考えていたり、身体を触れて筋肉の緊張を見ていましたが、特に目立って問題がありそうなところが見当たりませんでした。
よくよく話を聞いていると、最近スパイクを新しくしたそうで、その時期と痛みの発生が近く、スパイクの中を見せてもらうと、スパイクの中に原因がありました。
実は、スパイクは海外のメーカーで、つま先が当たって違和感があったそうで、中敷きを外した状態でスパイクをはいていました。中には、足裏のポイントの接地面というか、硬くなっている部分が当たっており、それが痛みの原因となっていました。
この選手のスパイクの硬くなっているところにパットを敷き、当たらないようにすると痛みが出なくなり、この問題を解決することができました。
スパイクは海外のメーカーのものだと日本人の足に合わないことがあり、女子選手のスパイクをチェックしてみると、大きさも小さめであったり、横幅もあっていない選手が多くいました。この道具も痛みの原因のひとつになりますので、痛みがある際は道具をチャックする必要があります。
膝のお皿の真上あたりが痛む
膝のお皿と脛骨と言われるすねの骨には、大腿直筋と言われる太ももの前側の筋肉の腱が付着していますが、選手の一人がこのお皿の真上辺りが痛むと相談に来ました。
この選手の脚は、パンパンに張っており、階段を上るときは痛みは感じないが、降りるときに後ろ足に痛みを感じるとのことでした。またプレー中は常に痛いような状態でした。
走り方の特徴として、ヒールを履いたまま走っているような、常に膝が曲がって走るような走り方をしており、着地の際は、膝が曲がっている状態でした。
この選手の場合、階段を降りるときも、走るときも太ももの前の筋肉である大腿直筋にエキセントリックな刺激が加わり、太ももの前側がパンパンな状態でした。
この選手は、脚をブランブランに揺らぎを与えたり、身体調整でからだの歪みを直し、大腿四頭筋を緩めることで痛みが徐々に改善され、現在は痛みなくプレーすることができています。
もしお皿の内側や外側が痛む場合、同じように着地などの衝撃が大腿四頭筋を構成している外側広筋や内側広筋の緊張が見られることが多く、この筋肉を緩めることで痛みを改善することができます。
これらも現場で経験したことです。
足趾が痛んだり、小趾の付け根が痛む
選手の足趾が曲がっており、関節部分に豆のような硬くなっているところがありました。スパイクを履くとこの部分が痛み、プレーがしづらいということを相談されました。また、小趾の付け根の外側部分に大きなタコのようなものができて痛むということも相談されました。
これらの原因は靴です。靴のサイズが自分の足に合っていません。
人間は靴を履いて動くとき、着地と同時に足は靴の中で1cmほど前方に動くそうです。ですので、靴のサイズを決めるとき、靴のかかと部分に足の踵を合わせた状態で、つま先に指1本分ぐらいのスペースを空けたサイズが適切だと言われています。
この相談来た選手の靴のサイズを見てみると、このつま先にスペースがなく靴の中で足が動くことができず、つま先がつっかえるため足趾が曲がり、関節部分が靴の上部に触れ、そこで痛みが出ていました。
また小趾の付け根の外側部分に痛みがある選手は、海外のメーカーの靴を使用していたため横幅が狭く、小趾の付け根が靴に当たっていました。これがきっかけで痛みが出ていました。
足趾が曲がってしまっている状態を、ハンマー足趾といい、このような状態の足や外反母趾と言われる状態の足は、その形状を脳が記憶しているため、テーピングなどで正常な位置で固定することで改善がみられると言われています。
実際に現場でもテーピングを張り実践し、靴を買い替えてもらうと痛みも改善されていきました。
痛みの原因はさまざま
上記の例は、下半身の痛みがメインでしたが、痛みの原因はさまざまです。筋力の問題もありますが、姿勢や動作に問題があったり、靴などの道具の問題、また環境の問題も痛みの原因となります。
またアクシデントなど、衝突など突発的なことが痛みの原因となることもあります。
ゆっくりとした動作よりもプロ選手のような速い動きも身体に加わる負担も大きくなりますし、柔軟性の低下が痛みへとつながることもあります。
このように痛みの原因はさまざまですが、この問題を解決するためには、何かしら選手の身体にヒントがあったり、選手から聞き出す痛みの経緯などが大きなヒントがあり、トレーナーとしては、この話を聞き出すことも重要なことになります。
筋力不足だけが痛みの原因ではなく、このように多角的に考えることで本来の痛みの改善になるヒントをみつけられるのだと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今日は脚の痛みを中心に、スポーツにおける痛みの原因について書いていきましたが現場でも改善や指導の難しさを感じます。動きを見る目、それを改善する指導テクニック、それらがきちんと改善できれば痛みの改善ができることも増えていくと思います。
今回書いた内容が痛みで悩んでいる選手の改善のきっかけとなればうれしく思います。
最後に今日のまとめを書いていきたいと思います。
- 痛みについては、まず医師の診断を受け現状を把握すること
- 捻挫をしていないけど、足首周囲が腫れる場合は、周囲の筋肉の腱が炎症している可能性がある
- スパイクの問題で足に痛みが出る場合がある
- 膝のお皿周囲の痛みは大腿四頭筋などの筋肉の緊張が考えられる
- 靴のサイズが合っていないと足部の痛みへとつながる可能性がある
このような内容でお送りしていきました。痛みの原因はさまざまですが、それらひとつひとつ考えてみると痛くなるように動いているから痛くなるということに気づきます。
痛みを気にせず、プレーに集中できる環境づくりができるように自分の力を注いでいきたいと思います。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。