先日社会人の方から相談を受けて走り方の指導を行っていきましたが、全身の筋肉が緊張し鉄板のように硬くなっている筋肉と硬い動きの様態でマラソンをされているそうです。
現在は、4時間を切るぐらいのタイムだそうですが、1年間ぐらい記録が伸び悩んでいるそうです。その原因のひとつに走り方の問題があり、それ以上に現在の身体の状態にありました。脚は前に出すのではなく自然に出てくるもの。
今日は走り方やフォームのことや、走るということについてまとめていきたいと思います。
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Contents
走るということ=重心を運ぶこと
マラソンや短距離、さまざまな陸上競技がありますが、決められたスタートからゴールまで走るということは一生懸命脚を前に出せば、もしくは膝を高く上げるように走ればより速いタイムを出すことができるのでしょうか。
走るということは、重心を運ぶことであり、脚を前に出すことでも膝を高く上げることでもありません。いかに重心をゴールまで最短距離で運べるか、これがタイムに大きく影響を与えます。
身体が左右へブレてしまったり、地面を蹴った足が左右へ流れてしまうとその分、重心の位置は左右へ蛇行しながら前へ進みます。そのため、それだけ長い距離を走ることになります。
長い距離を走ればそれだけスタミナが消耗してしまい、タイムもおちてしまいます。
走るということは、いかにゴールまで最短距離で重心を運べるのかということが重要になります。
短距離よりも長距離の方が走り方やフォームが重要視される理由
走ることは重心を運ぶこととお伝えしていきましたが、続いては数字から見る走り方についてです。
走り方やフォームがタイムに大きく影響を与えることは想像できると思いますが、イメージ的に長距離よりも短距離の方がフォームが重要視されるイメージがあるかもしれません。
ですが、実際は短距離よりも長距離の方が、より走り方やフォームが重要視されることになります。その根拠はこちらの数字を見ていただければわかります。
■ストライド(1歩の歩幅)が1.7mの選手がいたとします・・・。
- 5000m=約2942歩
- 10000m=約5883歩
- マラソン=24820歩
という歩数になります。
もし、左右へ身体が捻じられたり、重心が左右に大きく動くとそれだけロスになります。
1歩につき1cmのロスが出れば、
- 5000m=約30m
- 10000m=約60m
- マラソン=250m
程の差が生まれることになります。逆に走り方を変え、ストライドが1cm伸びればこの反対のことが起こり、これだけタイムを短縮することができます。これだけ長距離選手は走り方やフォームが重要であるということが言われます。
たった1cmかもしれませんが、されど1cm。重ねれば重ねるほどその差は大きく広がっていきます。このような数字が根拠に、走り方やフォームがいかに重要になるかということがご理解いただけたと思います。
全身の筋肉が硬く、左右に蛇行するように走ることで生まれるロス
こういった数字を頭に入れた状態で再度この重心が蛇行することについて見てみると、いかに重心位置をゴールに対して最短距離で運ぶのかが重要ということがわかります。
実際に、相談を受けた方の場合右肘を引く癖があり、右足の小指側で地面を蹴る癖がありました。
また全身の筋肉が硬く、股関節の可動域が特に狭く、O脚であり、脚の外側の張りがものすごく強くありました。
このような状態では気持ちのいい走りというのはできませんし、ご本人も話してしましたが、リラックスして走る感覚であったり、気持ちよく走るという感覚が一切ないということで、常に一生懸命走ってしまっているとのことでした。
これだけ全身が歪んでいるため、まずすることは自然体に直し、筋肉を弾力のある状態に戻すことです。この方の場合は、身体調整から行っていきました。
まず自然体に直し、きちんと立てること
この方の身体の背部は、右に捻じって走っていることもあり、右側が特に緊張し、下半身は外側が強く緊張し、筋バランスが崩れ、O脚になっている状態でした。
また右足の小指側で地面を蹴る意識があるため、右脚の膝から下の外側部分は特に緊張が強くありました。
立った状態では、親指側は浮いており、小指側で立っているような状態で、足裏の感覚も外側部分でしか体重を支持できていないことは理解されていました。
このように自然体からの崩れがあり、筋肉を揺らしたり、呼吸をしたりして弾力を取り戻していきました。
調整が終わると、全身に血が廻ったような感覚があったそうで、筋肉の弾力性も出てきてはじめは揺らぎを与えても、パンを焼く前の生地のような大きな物体がドスドスと揺れるような状態でしたが、調整が終わった後では筋肉に揺らぎの振動が伝わるように筋肉全体が波打つように揺れていました。
調整を行って、立ってみると踵に重心がくることを理解され、これまでもイズログを読まれていて、体重支持ポイントのことを知ってはいたけど、それが体感することではじめて理解できたそうです。
立ち姿勢もよくなり、全体のバランスも整ってきましたので、そこから足首にテーピングを巻いて、より体重支持ポイントを理解しやすいようにし、外へ出て次の段階に入っていきました。
体重支持ポイントを理解し、それをランニングにつなげる
足首のテーピングでは、ヒールロックといって足首を固定するのではありませんが、体重支持ポイントがより理解しやすいように活用していきます。
ここからは、いきなり走ってしまうとうまく踵で体重を支持できず、走りながらは難しいですので、まずその場で両足のジャンプストップを行ったり、片足で行ったり、交互に行ったりを走りにつなげるように行っていきました。
その場でのエクササイズができれば、次は前方に動きながら行っていきます。
片足の場合は、このように行います。
このように体重支持ポイントが理解できたことを確認して、続いては重心の話をしながら、歩く、走る動作へとつなげていきました。
自分の重心位置を変えることで身体の軽さが変化する
人間の重心位置はどこにあるのかと言われれば、丹田と言われるへそあたりにあると言われることがあります。そのようなイメージを持っている方も多いと思いますが、この重心位置を変えることで走っているときの身体の軽さが変化します。
記事を読んでいる方は、スマホからの方が多いと思いますので、一度スマホを見てください。
このスマホを真横に置いたときと、立てて置いたとき。スマホをその場から動かそうとすると、どちらの方が動かしやすいと思いますか?
おわかりだと思いますが、後者の方が小さな力で動かすことができます。後者のような状態で、どこを押せばこのスマホは一番動かしやすいでしょうか。答えは一番上の部分で、ここを軽く指で振れた程度で倒れていきます。
ここで何が言いたいのかと言えば、重心の位置が高くなればなるほど物体を動かすエネルギーは小さくて済むということです。引っ越しのときに、重たい段ボール箱の下に軽い段ボール箱を置いて運べば感覚として軽く感じます。
人間の身体も一緒で、重心の位置を高くすることで身体を動かすために必要なエネルギーが小さくて済み、より楽に身体を運ぶこと、つまりより楽に走ることができるということになります。
ただ、重心の位置を高くすればいいからと言って、一番高い位置にある頭に必ず重心位置を持っていく必要があるかと言えば、そうではなく、それは個人の感覚に任せます。
ある人は、胸あたりかもしれませんし、ある人は鼻がイメージしやすいかもしれません。あえて指定をせずに、重心移動をさせたときに感じる一番運びやすい重心位置を指標にし、そこを前に運ぶ意識で走るようにしていきます。
そうすると楽に走れますし、身体の軽さを感じれるようになります。この方も、今までドスドス走っていた感覚があったそうですが、それもなく軽い感覚が出てきて、踵に体重支持ポイントを置くことで弾む感覚が得られるようになったそうです。
足で地面を蹴ったり、後方に押し出したりしない
走っているときに足で地面を後方に押す感覚や蹴る感覚を持っているそうで、右足についてはその影響で蹴った後は内側に足が跳ね上がってきます。
今は身体に痛みを訴えてはいませんでしたが、局部にストレスがかかってしまうためいずれ痛みが出る可能性もあります。
また速く走るためにはスムーズな動き、動作が必要になります。このように動きの中で1点を強調するような動きをしてしまうと、その瞬間に緊張が生まれ動きが硬くなります。
スムーズな動きをするためには過度に意識を向けたり、意識することが多すぎると動きは硬くなってします。
この方にお伝えしたのは、踵で地面を踏み込むこと。踵で地面を踏み込み、弾む感覚を出していきます。そしてその感覚が出始め、理解し慣れてくると意識をヒップに向け、ヒップの付け根に刺激を受けていることを理解させていきました。
今まで太ももが張って疲れていたそうですが、走るとヒップに刺激がくることが初めて理解でき、弾む感覚が出てきました。こういったことを続けていると、弾んでいる感覚なのに気づいたらかなりの距離を走っていることにも気がついてそうです。これは弾むことでストライドが伸びたことによって得られたことだと思います。
地面を蹴ることで前に進むのではなく、弾むことでストライドが伸び、楽に走っても速く走れることが徐々に理解していただけました。
以前ストライドを伸ばすという記事で考え方をまとめていますので、こちらを参考にしていただければと思います。
腕の使い方を理解する
腕の使い方のイメージは、引く意識があったそうで、その意識があったため右腕を後方へ引くように動き、それが身体を捻るような動きにつながっていました。
腕はさまざまな使い方がありますが、前方ヘの推進力を得るために使います。そのため、腕は前方に出すように使いますが、後方に引いてしまうと、ブレーキをかけるようになってしまい、前へ進みづらくなります。
まず行ったのが、胸の前に両手を出し、前へならえのような状態にします。そこから脱力しポッケを手のひらで擦るように後方へスイングしていきます。このとき、どこに腕をスイングしようかなどは考えず、リラックスして腕を落とすような感覚で後方へスイングします。
すると自然な動きができ、そこから徐々に走るときのイメージに変えていき、実際に走っていきました。
これだけの変化ですが、元々腕の使い方のイメージが引くような感覚でしたので、これだけでも前に進むような感覚が得られて、改めて腕を引くように走ってもらうとブレーキがかかることを理解できたそうで、肩周りもすごく楽になり、これも新たな発見だったそうです。
全体の動きとしてどのようにまとめるのか
これまでお伝えしてきたように、身体調整、体重支持ポイント、重心位置、脚の使い方、腕の使い方をお伝えし、最後にまとめとしてある程度の距離を一緒に走っていきました。
野球にしても、ラクロスにしても現場で動きの指導をすることがありますが、そういったときに気をつけていることは、目的とする動作をどのようにして行わせるのかということです。
気をつけなければいけないことは、人間はひとつのことしか意識できないということです。一度にいくつもの動きの指示をしてしまうと選手はこんがらがってしまうので、ひとつひとつポイントを伝えるように組み立てていきます。
今回の場合、ここに書ききれないこともしていますが、脚の使い方をお伝えし、次に腕の使い方をお伝えし、次に脚と腕の動きを合わせて行います。それぞれの動きを個別に指導し、脳にインプットしていきます。
個別にできたものを合わせて行うと、それぞれの動きはインプットされていますので、スムーズな動きができます。
このような指導法を分習法と全習法と言い、個別の動きを指導してからそれらを合わせるように全体の動きとして作り上げるという方法です。まだまだ現場でも課題は残っていますが、このような考えを持って動作の指導を行っています。
一度に全部のアドバイスをするのではなく、部分的に指導し、最後にそれらをまとめるように全体の動きとして行う。そういったイメージで行ったことで今回も走るということについて体感し、理解していただいたのではないかなと感じています。
指導を終えて感じた変化
指導を終えて振り返った結果、走り方、フォームについてはイメージが変わり、これからより良くなっていくんじゃないかなと思いますが、個人的には指導面で修正や改善が必要な部分が見つかっています。
走るということは、脚を前に出すと緊張が生まれたり、膝を高く上げても緊張が生まれスムーズな動作ができなくなります。
いかに楽に気持ちよく走るか。これを求めることでよりスムーズな動作にもつながっていきます。
サポートの仕方や言葉だけはまだまだレベルアップが必要なところもありますので、今後また学ぶ中で修正していきたいと思います。やはり結果に嘘はなく、こちらのアドバイスが不適切な場合は、それがもろに結果として見えてしまいます。
そういった良くも悪くも動きの変化に気づくこと、見ることをこれからの課題としてまた指導に当たりたいと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。走るということは、非常に奥が深く、一般的に言われていることを実践することの方が緊張が強くなり、かえって遅くなってしまう可能性があります。
すべてとはいいませんが、いかに楽に走るか、スムーズな動きができるかは、過度に意識をしたり、いろんなことを意識することではなく、シンプルに考えることから始まるかもしれません。
脳が緊張してしまっても身体は硬くなります。考えすぎず、意識するポイントを絞って楽に走っていただきたいと思います。
気持ちよく走る=スムーズな動き。
そんなことも言えると思います。日頃走っているときにそんな感覚を得ることができているでしょうか。
では最後に今日のまとめを書いていきたいと思います。
- 走ること=重心を運ぶこと
- 脚を前に出す、膝を高くあげると緊張が生まれスムーズな動作ができない
- 足で地面を蹴っても速く走れるようにはならない
- 前に進もう進もうとせず、弾むイメージを持つこと
- 腕の自然な動きは、胸の前で手を合わせたところから脇が少し開くように後方に動く
- 部分的な動きを繰りかえし、それらを最後にまとめることで全体の動きが変わる
このような内容でお送りしていきました。
今日の内容が少しでもお役に立てばうれしく思います。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。