
トレーナーが多くの機会に活用し、現場でも行われているテクニックのひとつにパートナーストレッチングがありますが、このテクニックはブログでも書いていましたが、最も難しいテクニックだと感じます。
一般の方でもストレッチという言葉を聞いたことがある方がほとんどだと思いますが、きちんとできている方は少ないと思います。感覚的な話をすれば、痛みを感じるほど、強く伸ばせば伸ばすほど効いているような感覚になってしまいがちですが、本来のストレッチの目的である“筋肉を緩める”という反応は引き出せていない可能性が高いと思います。
今日はトレーナーを目指す学生に向けて書いていきたいと思いますが、一般の方もストレッチという考え方については参考になるところがあると思います。
現場で聞きます。『この辺りまで伸ばすとどうですか?まだいけますか?ではまだいきますね。』パートナーストレッチングを行っている際に、よく聞こえてきます。
筋肉を伸ばす強さや時間など重要なことは数多くありますが、クライアントの感覚ではなく、トレーナーの手の感覚によってどこまで伸ばすのか、どこに手を置くのかといった筋肉を緩めるための刺激は、トレーナー側が手のひらからクライアントの情報を感じ取り、そこで調節する必要があります。
非常に難しいテクニックではありますが、今日はこのパートナーストレッチングについてまとめていきたいと思います。
こちらの記事も参考にしていただければと思います。
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Contents
ストレッチとは?
そもそもストレッチという言葉にはどのような意味があるのでしょうか?
スポーツや医療の分野においてストレッチ(英: stretching)とは、 体のある筋肉を良好な状態にする目的でその筋肉を引っ張って伸ばすことをいう。筋肉の柔軟性を高め関節可動域を広げるほか、いろいろなメリットをもたらす。
ストレッチ:Wikipediaより引用
簡単にまとめればこのような意味を持ちます。
- ~を伸ばす
- ~を引っ張る
この2つの言葉にストレッチングだと・・・
- ~を伸ばし続ける
- ~を引っ張り続ける
このような意味となります。
ストレッチの目的とは?
さまざまなストレッチ方法が世の中にはありますが、ストレッチの目的とはどのようなものでしょうか。
- 筋肉を緩めること
この目的を達成するために、さまざまなストレッチ方法が活用されています。
パートナーストレッチングを行う際も、この筋肉を緩める刺激を相手の身体へ入れることで筋肉は緩んでいきます。その刺激を加えることは表面上は、非常に簡単なように感じますが、本当に難しく現在も口が裂けても“できる”と言えるレベルではありません。
奥が深く、これからお伝えすることを意識して行い、それがすべて適切な刺激であれば“できる”レベルであると思いますし、素晴らしいことだと思います。
パートナーストレッチングとは?
今日のテーマでもあります、パートナーストレッチングということについて少し整理をしておきたいと思います。
パートナーストレッチングとは、2人組で行うストレッチングのことであり、現場でもよく行われるテクニックです。
ストレッチについては、マラソン選手が知っておきたいストレッチ効果についてを参考にしていただき、対象物や考え方について整理をしてみてください。
パートナーストレッチングをするときに意識している10のこと
ストレッチについて整理ができたところで、早速パートナーストレッチングを行う上で知っておきたいことをまとめていきたいと思います。あくまでも日頃僕自身が意識していることですので、参考になればと思います。
- 筋肉を伸ばす強さ
- 〃 方向(押す、引く、保持、捻じるなど)
- 〃 時間
- 〃 タイミング
- どのくらい伸びているのか
- 手の当てる場所
- 手の当て方
- どのように伸ばすのか(ゆっくり、素早く、一定など)
- 呼吸(息を吐く、止める)
- 力の加減
これら以外にも考えると出てくると思いますが、これらはストレッチングをする上では重要なことになります。
手の当てどころが悪いと、クライアントに不快な感覚を与え、筋肉が緊張してしまう可能性があります。また手の当て方が悪いと皮膚を引っ張ってしまい痛みが出て、これも緊張につながる可能性があります。
上記のことが適切に行えることで筋肉を緩めるという反応を引き出すことができ、これらのことをすべて手のひらから感じ取り、緊張しているのであれば何かを変える必要があり、これらをチェックすることが必要となります。
パートナーストレッチングで適切な反応を引き出すためには、数年では難しいように思います。僕自身もこれからまだまだ鍛錬していくことが必要だと感じていますし、本物のテクニックに触れるとパートナーストレッチング後の身体は、本当に軽く驚くぐらい筋肉が緩んでいます。
もう少し具体的にこれら10のことをみていきたいと思います。
筋肉を伸ばす強さ
まずこちらをご覧ください。
これはメディカルストレッチングというテクニックになりますが、この場合股関節を最大屈曲位にすることが必要になりますが、あてがっている左手でどのくらい相手の股関節を屈曲それば緊張しているのか、それとも適切な刺激が加えられているのか。
この程度は人それぞれ違います。
身体の柔らかい人であればさらに屈曲位にする必要がありますし、硬い人であればもう少し浅い屈曲位になります。この適切な位置を知るための指標は、手の感覚になります。
股関節を屈曲位にしたときの抵抗感で判断をしていきます。この抵抗感でどのくらいの強さで筋肉を伸ばすのかを判断する必要があります。
筋肉を伸ばす方向(押す、引く、保持、捻じるなど)
これは股関節外転筋群のストレッチングですが、このストレッチングを行うとき、大腿部を少し内転位にもってきてから垂直方向への圧力を加えます。
このときの押す方向がずれてしまうと股関節の外転筋群にうまく刺激が入らずに緩めることができません。
このように筋肉を伸ばす方向ひとつとっても筋肉の緩みには大きく影響してきます。
筋肉を伸ばす時間
筋肉を伸ばす時間は、10秒でしょうか?30秒でしょうか?対象物によって大きく異なりますが、基本的には約30秒を目安に伸ばしていきます。
これは筋紡錘と言われる感覚受容器を対象にした場合ですが、筋膜を対象とすれば約2~3分伸ばし続ける必要があります。そうすることで筋肉が緩みます。
- 筋紡錘・・・約30秒
- 筋膜・・・約2~3分
このように対象物が変わることで伸ばす時間も異なっていきます。
筋肉を伸ばすタイミング
このメディカルストレッチングをする際、手順としてはこのようになります。
- 股関節の最大屈曲
- 膝関節の最大屈曲
- 左右の手の真ん中に体重をかけるようにストレッチングしていく
このようになりますが、1・2・3というリズムをとって行うとやりやすく、左右均等の圧力を加えることができますが、1・・・2、3と圧力を加えるタイミングがずれてしまうと左右に偏りが出てしまい、相手の違和感を与えてしまいます。
このように筋肉を伸ばすタイミングを適切にすることも重要になります。
どのくらい伸びているのか
パートナーストレッチングで重要なことは、手のひらで相手のことを知るということです。これは、こちらが強く伸ばしすぎていると相手は緊張し、何かしら抵抗感が強くなります。
逆にほとんど伸びていない状態であればまったく抵抗感を感じません。
相手の筋肉がどのくらい伸びているのか、手のひらから感じる情報によってストレッチングによって適切な刺激を加えられているのかどうかを判断することが必要になります。
手の当てる場所
手の当てどころが悪いと相手は痛く感じたり、不快感を感じてしまいます。こうなると相手は緊張してしまい筋肉はうまく緩みません。
また手の当てどころが悪いと、相手が安心して力を抜いたり、こちらに身体を委ねてくれず、どうしても筋肉の緊張が残ります。相手が安心できるように手の当てる場所を考える必要があります。
手の当て方
基本的には上記と似ていますが、相手の身体に触れるときに強く持ってしまったり、押し付けるように手をあてがってしまえば相手はリラックスすることができません。
筋肉を緩めるということは快の刺激を与えることですので、手の当て方もソフトに優しく当てる必要があります。
どのように伸ばすのか(ゆっくり、素早く、一定など)
筋肉を伸ばすとき、ゆっくりジワーっと伸ばすのと、素早くパッっと伸ばそうとするのでは筋肉の状態も変わってきます。
また伸ばしたところで一定の力で伸ばし続けるのか、それともゆっくりさらに伸ばしていくのかでも変わってきます。
どのように伸ばすのかをイメージすることも重要になります。
呼吸(息を吐く、止める)
基本的には息を吐くと力が抜けやすく、息を止めると緊張しやすくなります。これもどちらがいいということではなく、ストレッチのやり方次第で変わってきます。
筋肉を伸ばして緩める場合、この場合は息を吐かせることでより筋肉を緩めることができます。
呼吸をどのように行ってもらうのも考える必要があります。
力の加減
筋肉は収縮させることでも筋肉を緩めることができます。このときに目一杯100%の力で収縮させると緊張しますが、30%程度で気持ちよく力を入れることでその後筋肉は緩んでいきます。
そういう意味での力加減でもありますし、感性を豊かにし、どのくらいの抵抗を与えられれば筋肉が緩むのか、自分が相手に与える刺激の強弱という意味も含まれます。
パートナーストレッチングの具体的な方法
ここからはパートナーストレッチングの具体的な方法について触れていきたいと思います。
基本的には、パートナーストレッチングは上から下へと進めていきます。これは、筋肉などは脳が支配しているため、首など脳に近い部分が緩んでいない状態で下肢のストレッチングを行っても、時間が経つと筋肉がまた硬くなることが考えられ、まずは脳に近いところから順に下へと移行していきます。
大きくはこのような手順で行います。
- 首、脊柱、肩甲骨(上肢)、股関節、膝、足関節、全身
これはひとつの例ですが、このように行うことで全身が緩みやすくなると考えています。下からということも言われていますが、考え方次第だと思いますので、さまざまな手順もあると思います。
実際のパートナーストレッチング
実際に現場では以下のようなことを行っています。
首の牽引
脊柱の回旋
肩甲骨の牽引
股関節伸筋群のストレッチング
内転筋群のストレッチング
股関節外転筋群のストレッチング
下腿のメディカルストレッチング
これだけの画像を見ると、ポージングをマネすることは簡単だと思いますが、実際にこのような文面で伝えるリスクとしては、どんな感覚で行っているのか、何秒伸ばしているのか、呼吸はどうしているかなど細かい部分が伝わりません。
ですので、教科書で勉強した程度では本当の意味でストレッチを理解することは難しいと思います。大事なことは、この“感覚”の部分であり、この感覚は誰かに教わるしかありません。
僕も先生から学び、ストレッチの本質や感覚について学びを受けてからは本当の難しさを知ることができ、どこを修正すればいいのか、何が原因で緩めることができていないのか、そういった自分の課題を知ることができました。
日頃どのようにパートナーストレッチングを行っているのか、その話を聞けば本質を理解しているのかどうかすぐわかるといわれています。これらを含めて、多くの方が知っているストレッチですが、最も難しいテクニックのひとつだといわれる理由がそこにあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。トレーナーの仕事をする上では欠かせないテクニックではありますが、シンプルが故に奥が深く、それを探求する楽しさがあります。
どのようなテクニックもそうですが、実際に教科書から学んだことと本物から学ぶことは違いがあり、本質を理解することはただ教科書を読むだけでは足りず、そこから学びを進めていかなければいけません。
そうやって得られたテクニックや知識は自分の財産であり、クライアントに喜んでいただき、満足していただける大切なものへとなっていきます。
そこに至るまでには地道な努力を重ねていくしか道はなさそうですね。
今日お伝えしたことが少しでもトレーナーを目指す学生さんや日頃からストレッチを行っている方の参考になればうれしく思います。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。