アテネオリンピック観戦記|ニュースレターNO.101

アテネオリンピックも終板を迎えました。24日までに、予想外の出来というか、東京オリンピックで獲得した最高の金メダル16個に迫る15個を獲得しました。メダル総数もロサンゼルスオリンピックに並んで、32個獲得し、いずれも史上最高のメダル獲得数になりそうです。

東京オリンピックの金メダルは、主に柔道、レスリング、体操で獲得したものですが、今回のアテネでは、柔道と水泳が複数個獲得しました。

ここまでの日本選手の活躍は本当にすばらしいものがあります。男子体操は、28年ぶりに団体優勝しました。6人のメンバーがそれぞれ最高のパフォーマンスを発揮し、完全な勝利であったように思います。

団体戦での演技は、正に完璧で、見ているものを感動させるものでした。それほど美しい演技であったということです。数年前までに見られたアクロバット的な演技がなくなり、体操本来の動きの美しさを追求するようになった体操の判定基準の変更も大きかったと思います。彼らの能力の高さと潜在能力がどこまであるのか、計り知れない思いがしました。

個人総合や種目別では、残念ながら完璧な演技はできず、金メダルは取れなかったのですが、それにも優る団体の演技と金メダルの価値のほうが大きかったと思います。これからの体操界が楽しみです。

団体というかチームゲームでは、男子サッカーは予選で敗退しました。度重なるミスが致命症になりましたが、まだまだ世界のトップレベルと比べると個人のスキルの差が大きいことがわかりました。ワールドカップをめざすチームもオリンピック代表チームも共通して見られる事があります。

それは、ディフェンスの動きです。いつも半身に構えて防御姿勢をとっていることから、簡単に背後に回られて、回転して相手を後ろから追いかけているケースが多々見られます。このように感じているのは私だけでしょうか。

どうもディフェンスのときの構え方が気になります。両代表とも同じパターンで相手に振り切られるので、共通した指導がなされているのかもしれません。

また、もっと足の速い選手を育てる必要があります。いや、もっと速く走れるのかもしれません。残念な結果でしたが、点数はそれなりに取れたので、後は個人のスキルをもっと高めることと、すべてにおいてスピードを身に付けることが仮題かもしれません。

女子のソフトボールは、優勝を目指していたようですが、決勝進出ならずでした。ソフトボールを見ていて思ったことは、日本の選手のバッティングは、通常の野球と同じスイングの仕方をしているのですが、外国の選手のバッティングは、腕でバットコントロールをしているように感じます。

そのほうが早いタイミングで速いボールに対応できるからかもしれません。ボールが速いので、いわゆるミートだけすればボールは飛んでいきます。基本的に得点が入らないゲームなので、いかにミートできるかというバッティングスタイルを考える必要があるかもしれません。

女子ホッケーもがんばりました。初勝利を挙げ、順位決定戦まで進出し、最終的に7・8位決定戦を戦うことになりました。実際にはもう少し勝てたのではないかと思います。それは後半選手が走れなくなってきていたからです。ここに、指導者の考え方の違いがありました。

この時期のゲームでは当然体力を消耗します。ほとんどの外国チームは、選手を自由に交代させ、常に選手が動ける状態を作っていましたが、日本の選手はほとんどが最初から最後まで出ずっぱりでした。情報によれば、日本選手はしっかり走り込んできたから、選手の交替の必要はないということのようです。

まったくナンセンスです。いまだにこのような考え方をしているとは恥ずべきことだと思います。ゲームを見ていても選手の動きが鈍くなっていることがわかります。相手は、常に元気ですから、最後はついていけなくなり、集中力も続かず、パスカットされつづけるといった状態になっていました。選手の起用法を考えていれば、もっと違った結果が得られたのではないかと思っています。

メダル獲得に沸いた柔道は、男女ともに大活躍でした。初戦で野村選手と谷選手がそれこそ簡単に金メダルを獲得したものですから、次に出てくる選手にもなぜか勝つのが当たり前のように見えてしまいました。メダル獲得選手に共通していたことは、すべて攻めつづけたことではないかと思います。

存念ながら、井上選手は切り返されてしまった感がありますが、すべて上手くいくことがないのが、オリンピックです。女子レスリングで活躍した女子選手も、攻めつづけた選手が勝利を収めています。

言うのは簡単ですが、それを待たれることを考えると攻めきれないもので、このあたりの大胆さ、勇気があるかどうかも勝利の分かれ目であったかもしれません。柔道もレスリングも女子選手の強さが際立っています。これからどのような変化が見られるのか、興味があります。

男女ともに大活躍した水泳陣も素晴らしかったと思います。平泳ぎの北島選手は、重圧にも負けず100mで勝ち、200mは余裕の勝利でした。新聞でも話題になりましたが、私もレースを見ていて途中、気になりました。それは、飛び込んだ後ではなく、50mをターンした後、一回ドルフィンキックをしてからワンキックをしたからです。

それを見て、ターンのときはよかったのかな、と思っていました。ビデオを取っていたので確認しましたが、やはりターンの後、1回ドルフィンキックをしていました。それからは、平泳ぎのレースでターンをした後注意してみていると、何人かドルフィンになっている選手がいましたが、それほど明確なキックではありませんでした。

北島選手もおそらく自然に出たのだと思いますが、ドルフィンキックがあったことは事実だと思います。それ以後の彼のレースでは全く見られませんでした。

それから予想外というか番狂わせで金メダルを獲得したのが、女子800m自由型の柴田選手でした。今季世界ランキング1位の山田選手は、またまたオリンピックの本番で不調に陥り、残念なが予選落ちしてしまいましたが、山田選手に全く歯が立たなかった柴田選手が優勝してしまいました。

当然ですが、自己ベストを大幅に上回りました。本番で自己記録を大きく更新して優勝したバルセロナオリンピック女子200m平泳ぎの岩崎選手を思い出しました。本番で立場が逆転した柴田選手と山田選手の今後が気になります。特に、シドニーについで同じ結果に終わってしまった山田選手が心配です。何とか、できなかったものか、残念でなりません。

感想がたくさんありすぎて、何について書こうか迷いますが、すべて書くことができないので、最後に注目していた陸上の末続選手の感想を書いておきたいと思います。残念ながら、2次予選10秒19で5位でした。レース後の彼の感想のとおり、現状の力だと思います。

世間が過度に騒ぎすぎたように思います。朝原選手も2次予選で敗退しましたが、彼の感想にもあったように、100mのレベルを甘く見ていたようです。

それは昨年の世界選手権を基準にしていたからです。昨年の世界選手権は、100mも200mもトップランナーがすべてそろっていたわけではなかったのです。それで、10秒1台か10秒2位で準決勝にいけると考えていたようなところがあります。オリンピックの舞台には、どこから誰が出てくるかわからない、4年に一度の祭典なのです。限りなく予想がむつかしい大会であるといえます。

しかし、二人とも現状の力は発揮できたと思います。

末続選手のレースは、これまで練習してきたスタートが上手くいかなかったようで、いつもの飛び出しができず、それで上手く加速してトップスピードに乗れなかったように思います。スタートのところを横から撮った映像がありました。それを見てよく解りました。何故勢いよく飛び出せなかったのか。それは、お尻を高くして構えますが、その後からだが前に倒れずに、身体が上方に移動していました。

そのために、映像ではスタートした瞬間、手が離れた瞬間、一度腰が引けたように見えました。これは明らかに腰を支点として状態が前方上方に伸び上がろうとしていた証拠であると思います。これでは前方へのスピード・勢いにつながりません。

スタートでは、キックをしないで前方につんのめるように、「オットットットッ・・」と走り出すことをめざしていたようですが、結果的にこのようになってしまったことから、スタートの飛び出しで加速しきれなかったのだと思います。

理想通りのスタートが切れていれば、2・3番にはなっていた思われますが、スタートがまだ完成していなかったのでしょう。走りそのものは悪くなかったので、スタートの勢い不足だけ悔やまれます。

以上、いくつかの競技をピックアップして感想を書きましたが、毎日オリンピックが見れて楽しい反面、トップアスリートを育て、オリンピックの大舞台で最高のパフォーマンスを発揮させる難しさを感じるばかりです。どれほどの準備をしなければいけないのか、改めてピリオダイゼーションの大切さがわかりました。

今後、平成スポーツトレーナー専門学校でも陸上競技選手を育成していくことになっていますので、何年かかるかわかりませんが、将来私の学校からオリンピック選手が出ることを夢見て、これからの指導に携わっていきたいと思います。

それから、前回のニュースレターで私のところで一緒にやりませんかとお知らせしたところ、多数お問い合わせいただきました。ありがとうございます。学校のリニューアルもほぼ完了しておりますので、9月以降ぜひ学校にお越しください。お待ちしております。

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