マトヴェーエフ氏が帰国されてから3週間がすぎました。早いものです。「スポーツ競技学」の方は、いろんな方から読んでみたいとの要望が届き、嬉しい限りです。完全に理解するには、時間と経験が必要ですが、知れば知るほど価値ある本であることがわかると思います。
10月に入って授業も始まり、入試も始まり、正にばたばたした日々を送っております。そのような中で興味深いホームページを2つ見つけました。1つは、岐阜の飛騨高山で土産品店を経営されている清水さんが作られているホームページです。
内容は、「ボディバランスと重心」、「身体の動き」、「サッカーの動きと練習」の3つに分けられており、具体的な内容としては「井桁の考え方、姿勢と反力、うきとぬき反力の応用、腕の振り、回転運動について、胴体の動き、胴体の使い方とスタート、腸腰筋と仙腸筋、反転、小田伸午先生の掲示板投稿より、カールルイス、脚を重りとして使う、脚の重りとしての使い方と反力利用、姿勢のふしぎ、動作法による考察、桐朋高校風ナンバ、ターンオーバーと高野進による解説、常足とは、体の方向を変える、初動負荷理論‐モンゴロイド体型について」等を取り上げられております。
いずれもかなりの文献からまとめられたものです。動作などについてもソフトを使って動きが見れるようになっています。スポーツには素人ということでしたが、非常に素晴らしいできで感動してしまいました。よほどのマニアでなければできないことです。
それで早速連絡をとり、高山まで押しかけてきました。動きに関して、またその原理に関していろいろお話しを聞くことができ、非常に参考になりました。ぜひ、一度ごらんください。
後1つは、ここ数日前に見つけたものです。というより、以前に「ナンバ」について探していたときに見た事があったのですが、今回はじめてじっくり拝見しました。その一部をご紹介しますが、こちらの方も素人ということですが、かなりの通であるようです。特に、掲示板は見ものです。
これまでに100のやり取りがありますが、私もプリントアウトして尐しずつ読んでおりますが、現場で非常に役立つ情報が書かれております。こちらの方にもぜひ御会いして話をお聞きしたいと思っております。
特に、スポーツには素人というものの、その追求姿勢には頭が下がりますし、研究者といわれる方と違った視点から動作を見ておられるところが非常に参考になると思います。我々は専門家のような気でいるものですが、その筋の専門家でないその筋に精通した専門家もおられるという事です。
そんな方々とこれからおつき合いさせてもらえれば、私自身のレベルアップもさることながら、日本のスポーツレベルも、また指導者レベルも上がっていくことが期待できると思います。
『中国の女子長距離選手孫英傑(迎傑とも)が手をだらりと下げて走り好成績を出している。然し手はナンバではない。マイク・ナンバ-ズにすればもっと良くなるのだが、一軸か二軸かどちらが優れているかがナンバの世界で賑うが、バスケや武道では手を使う為や方向転換の機敏さが優先されるので左右に重心移動する二軸にも役目がある。
ランでの二軸は、左右にも蟹股で踏ん張ることになりロスとなります。余計な力を使わないで一軸になるなら一軸で走りましょう。また大事そうに胴や手のパワーを使わないで走ることはないでしょう。使えるものは使い、全身で走ることの美しさは体が教えてくれる効率的フォームなのです。
人体の運動は地面との衝突による作用・反作用の法則で成り立つ。また地面への衝突には運動量保存の法則(運動量の変化は力積に等しい)が成り立っている。
しかし衝突は殆ど非弾性衝突で、力学エネルギーは減尐する(見掛けの筋肉反発弾性と言うのもあるが)。手足の捌きや胴の捻りのような直接地面との係わりのない動きもエネルギーをるかに見える。
しかし左右で作る慣性エネルギーや回転モーメントは結合体である体の支点を通して反対側に無駄なく伝達する事もあり、重力で生まれたエネルギーだけで力まずとも殆ど捌けるのである。素直な人体は、絶妙な結合体のメカニズムの全てを知っているような気がします。
マイク・ナンバーズはそれを体感で見つけようとしています。さて歩きや走りでは制動抵抗があって、運動継続の為には補充しなければならない。失われるパワーとしては空気抵抗がある。速度の自乗に比例して発生し、走りの速さでは尐ないが常に発生している。
また着地では衝突の反作用で、その運動量(質量X速度)は足の受ける力積(力X時間)相当分減尐し、速度も慣性エネルギーも減って制動抵抗となる。これらを地面を蹴り送って運動量として補充するには同量の力積(力X時間)が要る。つまり、その式から蹴り送る力は蹴り送り時間が長いと小さくてよいのが分かる。
跳躍やスプリントは跳ぶ為に短時間に大きな力を懸け速度を上げるのだが、竹馬やドミノは蹴るのでなくピッチの間接地したまま成り行きでスーッと振り送る或いは振り伸ばすだけの走りだ。着地の非弾性衝突で起こる減速でも実際には運動量保存則は成り立っている。然し運動エネルギー(1/2X質量X速度の自乗)は熱エネルギーになったりしてかなり減る。
運動量(質量X速度)の変化=力積(力X時間)に減速量を当てはめてみる。時速10km 0、35secピッチの走りでは、5cmくらいの相対的前後運動をする。つまりピッチの半分で時速0.5km(5cm/0.35sec=0.143m/sec)の減速または加速する。従って、体重60kgでは平均49N(5kg重)の力にしかならない事が分かる。
然し、0.1secの瞬間に減速するとしたら85.7N(8.7kg重)の制動力となる(体重の1/3くらいと言われているので、前後運動がもっと大きいのかもしれない)。歩きでも5cmくらいあるので同様な制動が懸かっている。
運動エネルギーの減尐は、時速10km(2.78m/sec)が9.5km(2.64)に減速するので22.6Jがピッチ毎失われ、つまり時間当り232KJ(55kcal)を消費する事も分かる。歩きでも5cm以上の後退減速がある(5cm/0.5sec=0.1m/sec)。時速5km(1.39m/sec)、ピッチ0.5secの歩きでは、8.0Jがピッチ毎、時間当りでは57.6KJ(13.7Kcal)を失う。
歩きの減速エネルギーは次に述べる位置エネルギー29.4Jから伝達されるので、フォームによっては制動パワーはもっと尐さい。それとはまた別に、着地までに落ち込んだ重心を着地後蹴り上げるにはエネルギーが要る。
上下動の高さから位置エネルギー(質量X重力加速度X高さ)が決まる。剛体着地する歩きでは、慣性で乗り切りまた慣性に吸収する為、歩幅が小さい時余り問題にしない。屈曲着地するジョッグでは、体重60kgで上下動5cmであれば60X9.8X0.05=29.4Jの殆どが非弾性衝突で失われる。
時間当りではピッチ0.35secの走りならば302KJ(72Kcal)の消費である。歩きならピッチ0.5secで5cmあれば、時間当り212KJ(50Kcal)となる。
ピッチはスピードであまり変わらないので、高低差が同じで走れるなら早く走る方が距離当りではエネルギー消費が尐ないことになり楽に感ずるが、これは制動でも言える(速さに比例して高さや前後動が変わるなら、普通に言われる距離あたりで一定になる)。
衝撃はピッチ0.35secの半分の間で吸収・蹴り上げなら340N(34.6kg重)が自重にプラスされる。瞬間0.1secの着地吸収なら594N(61kg重)が懸かっている(普通体重の2~3倍と言われているのは自重に加え上下動が大きいかもっと瞬間の負荷)。歩きの0.5secなら238N(24.2kg重)と尐ない。
つまり時速5kmまたは10kmで歩き・走るとき、運動エネルギー58Jまたは231Jをキープするのに時間当り14Kcalまたは55Kcalのエネルギーを補充しながら前進速度を維持する。上下動はピッチ毎に5cmでも29.4Jも消費し、時間当り50Kcalまたは72Kcalも浪費する。必要ロスとは言え出来る限り上下動は抑えねばならない。』