クリニックを通して|ニュースレターNO.076

8月に札幌、旭川、函館で、T&Fクリニックをしてきました。実に2週間に及ぶ旅でしたが、多くの選手や指導者と接し、とても楽しい時間を過ごすことができました。そこでは教えるだけでなく、指導する中で新たなポイントの発見もありました。

午前はスプリント、昼は長距離、午後はハードルの指導、夜は指導者との懇談と1日があっという間に過ぎ去ってしまいました。途中、函館で北海道選手権があり、のんびり観戦させてもらいました。これまで指導した多くの選手も参加しており、私を見つけては結果の報告やアドバイスをもらいにきてくれました。

毎日、指導と指導者との懇談で過ごしたことから、こんな生活の仕方もあるのかなと思う反面、素質のある選手が適切な指導を受けられずに伸び悩みつづけていることに悲しい思いもありました。そんな中でUHPCを発足させたわけですが、メンバーの一人である朝比奈選手は、とてもハードな仕事をこなしながら練習を続けています。

ただ、練習を続けているといっても1週間に1回できるかどうかの状態でした。それも何時間もできません。1週間に、また2週間に2~3時間という程度で、普通ならとても練習しているとはいえない状況です。彼の走りたいという強い意志・意欲がそのようなわずかな時間の練習の継続となっているようです。

シーズンが始まって4ヶ月以上たちますが、今回の北海道選手権が2度目のレースだといえば、彼の練習環境がどれほどのものか想像がつくはずです。今回の大会には100mと200mにエントリーしていましたが、当然2種目をフルに走ることはできません。

1日目の100mは予選だけを走り、2日目の200mに集中させました。日ごろのトレーニングはほとんどできないので、家に帰ってのホームエクササイズをやる程度で、筋力の維持を図っているところですので、午前中に走るなんてことは試合でしかないわけです。1日目はまさにリハーサルということになりました。

その200mは予選を軽く流し、準決勝も楽に走って、21”94でした。それも出だしだけの加速で走りきったので、決勝では自己記録の更新を予想できるほどの走りでした。

決勝には、私が指導していた3名の選手が残りましたが、いずれの選手も1日に3本も走る練習ができない環境にいる選手たちでした。結果は、3名とも疲れが出たレースでしたが、現状からはとても満足できる結果であったと思います。

朝比奈君は、やはりレースを重ねるに従って体調が悪くなりましたが、そのような体調でもうまく力を出し切れるようになりました。

彼の体調やコンディションがよければ、また普通に練習ができればどれほど走れるようになるのか期待をしてしまうのですが、現状を見つめれば仕方がありません。

彼もそうですが、UHPCの選手には、そうした環境の中で、如何に練習時間を見つけるか、たとえ30分でもよいのです。そんなわずかな時間であっても、地道に積み重ねていくことによって必ず大きな成果が現れるはずです。

練習時間がないと嘆いてあきらめている多くの選手に朝比奈君や井内君の練習環境を考えればどれほど恵まれているかわかるはずです。1日30分、問題のない時間なのですが、毎日続けることは難しいものです。1週間に2~3時間、この程度なら時間は確保できるはずです。すべての環境が整っていることにこしたことはありません。しかし、そのことが逆に練習の工夫や効率のよいトレーニングができなくなり、何か違ったことのために練習やトレーニングに打ち込んでしまっている場合が多いようにも思います。

「自分の努力にうそはない」 これほど適切に選手の結果を表した言葉はありません。いろんなことに悩んでいる選手諸君に現状を打破するキーポイントとして「自分の努力にうそはない」という言葉を伝えたいと思います。

選手に限らず指導者に対しても言える言葉です。その努力の仕方に間違いがあれば、当然結果も臨んだものと異なることは当然です。その結果も正しいものです。

現状の環境で何ができるのか、また何をしなければならないのか、どの程度時間が確保できるのか、1週間にどれほどの時間が確保できるのか、そのことを整理していけば誰にでも適当なプログラムが作れるはずです。

その際に十分な時間があればと考えないことです。とにかく1つずつ少しずつ積み重ねていくしかありません。薄い皮でも、一定の厚さになるために重ね合わせていけば、厚い皮を重ねるよりも強度は増すはずです。

現在いろいろなトレーニングの考え方が出てきているようです。特に走り方についてはそのことがいえます。いろんな走り方があり、その中で現在最高に速い選手の走り方がベストと考えられるようですが、そのような考え方は納得できるものではありません。

その前に最高に速かった選手と明らかに走法が異なっていることの説明がどのようにできるのでしょうか。その選手にあった走法があるはずですが、基本はリラックスしていることにあると思います。そのことによって、フォームに違いが見られるのではないでしょうか。

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