「ジャイアンツ塾」を読んで|ニュースレターNO.063

プリン

以前に話しました「ジャイアンツ塾」について、何人かの方から感想をいただきました。今回はその感想を元に書きたいと思います。

私は最後に「これほどためになる(?)本はありません。次の投手編が楽しみです。」と書いておきました。問題はためになるの後に「?」マークがついたことです。まず3人の方の感想をまとめてみました。

『「ジャイアンツ塾:打撃編」を見ました。感想として真っ先に頭を過ぎったのは「凄い!細かい!」でした。しかし、ふと冷静に考えると、なんと「キッズ」のための「野球 How to 本」ではありませんか。私の考えるキッズの年齢層は「小学生」です。

本当にこの本が小学生を対象として書かれたものであるなら、この内容を全て理解し実行できる小学生を見てみたいものです。

質問の内容は、到底、小学生では考えつかない質問です。また、その答えは、口語調で語りかけるように構成されていますが、非常に微に及び細に渡りで、かなりプロ向きの答えです。

あの内容であればプロ野球選手でさえ「ヘェ~…」と言わせるほどのものであると思います。特に深く印象に残っているのは「頭の周辺に来たボールへの対処は?」というものでした。頭の周辺に来たボールの対処法など教わらなくても自然に避けるのが人間ではないかと思います。

襲いかかる危険に対して身体が自然に反応しない子供であれば野球以外のスポーツへの参加も危険です。このようなことは論理的に説明することでしょうか?

この本は、全く、読み手、言い換えると指導される立場から作成されたものではありません。これは、読売巨人軍のもち得る全てのノウハウを凝縮したマニュアルです。

先日、あるプロ野球選手の指導をする機会がありました。2年目のピッチャーですが、全くコーチングを受けていないらしくピッチングに悩みを持っていました。「ジャイアンツ塾:投手編」というものがあったら推薦しようかと思います。』

『ジャイアンツ野球塾を買ったのですが、なかなか読み進みません。読んでいる途中ですが、読み終わるのがいつになるのか分かりませんので途中までの感想を・・・

先生がいつもおっしゃっているところの「木を見て森を見ず」ではないかと思います。子供向けの本なのでもう尐し基本的なところをと思いますし、何が大切なのか伝わってきません。初動作と動作の結果の終動作の大切さ、一番力を入れるところの記載が無く、動作の途中のところの話が多かった気がします。

あれだけ動作の途中を意識していたら、スムースでスピードのあるスイングが出来ないのではと思います。

最近、思うのですが、先生が言われるように「理論は行き着くところは簡単になる」ということをしみじみ感じるのですが、どうも大人になると「簡単なことには価値が無い」と思う人が多いように感じます。

私が働いているスポーツ倶楽部でも、雑誌に載っているものや、スポーツ選手がやっているエクササイズにとびつく人が多く、簡単で単調なエクササイズは人気がありません。しかし、結果を出しているのは簡単で単調なエクササイズをやってくれている人です。

ですから、私が価値のある指導者になって簡単なことの大切さを指導しなくてはと思う今日この頃です。』

『感想ですが、先日、掛布さんの「打つ 掛布雅之の野球花伝書」を読んだ際に頻繁に出てくる「バットのヘッドを遅らす」という表現がよく分からないままでした。

例えば掛布さんが甲子園の浜風を利用してバッティングを習得したという下りでは、「あの浜風を利用するためにヘッドを遅らせてボールを上げることを覚えたのかもしれないですね。

どちらかというとバッティングというのはバットのヘッドで打つんだというイメージありますけど、甲子園という独特の風のある球場で練習していますと、ヘッドが先行していくと、なかなかライトスタンドに入らない。

バットのヘッドが遅れてレフト方向へいくとすごく綺麗な打球が飛ぶ。そうするとどうしたらいいかっていうと、グリップのエンドでボールをつかみにいけばヘッドって遅れるんですよ。

打つのはバットの先なんですけど、先で打ちにいくとボールは上がってくれないってことがわかってくるわけです。ですから、リードする右手で、しっかりとグリップにボールをぶつけていってあげようと。そうすると、自然にヘッドは遅れてくるんですよ。」とありました。

素人目に考えると「ヘッドを遅らせれば、速球に振り遅れたり、スライスのような球しか飛ばないのでは?」という疑問しか浮かびませんでした。今回の本でヘッドに関する部分を読んでいくとおぼろげながらその意味がわかって来たように思います。

具体的には質問のQ「6、31、3246」といった所ですが、グリップのトップの位置からボールに向かってグリップを突き出すように加速する事がスイングの始動からバットの加速の領域での話だと思います。結果としてバットのヘッドが後ろに残り、「ヘッドが遅れる」ということになるのだと思います。つまり、遅れればそれだけバットの加速時間が長く、速度が大きいということになります。

問題はここからで、遅れたヘッドをインパクトの時に手首を返して、インパクト面に持っていく動作です。

ここがあの本を読んでも良くわからないのですが、Q「27、39、45」などにありますが右打者であれば「引き手=左手」の手のひらを地を向くように、「押し手=右手」の手のひらを天を向くようにしたままでスイングして両手ともしっかりとバットを握らず、特に押し手の右手はほとんど握らなくとも良いという具合に書いてありました。

確かにギュッと握るとバットの回転が阻害されそうですが、この時の左と右の上肢はどんなふうな力の入れ方であればいいんでしょうか?他の本では「引き手に力を入れるよりも伸ばすという動作だけで自然とバットは回転してまた手首も遠心力で自然に返る」とありました。

となると「ヘッドを遅らせている」間のバットの加速期に引き手に力を入れて、そのあとは手首に力を入れず、肘を(あまり力入れずに)伸ばすようにして、(魚住先生のご著書にあるように)インパクトの直前は手首に力を入れてボールの衝撃を堪えるという具合なんでしょうか?

これである程度の引き手の説明が付く気もしますが、押し手の方はどの地点で力を入れるのか、はたまた力を入れる必要はずっとないのか…? 疑問が膨らんで来てしまいます。』

3人の方の感想はそれなりに的を得たものと思います。私自身が感じ取ったことは、これは解説であって指導書ではないということです。その場その場の理屈を作り出しているということで、統一性がありません。当然すべてがおかしいということではなく、あまりにもある一瞬の動作を解説したに過ぎないということです。

きちっとした理窟ではないということです。この場面では・・・・・、また違う場面では・・・・・。

私もプロ野球の現場にいたのでよくわかりますが、内容は打撃コーチの指導そのもので、本当の指導ではなく解説です。ほぼこのような考え方になっているといってもよいと思います。けっして理論などではありません。理屈です。

実際には理解できないことが多く、その通りにはできそうもありませんし、そんなにむつかしい考え方をして打席に立っていて打てるのだろうかと思います。140㌔あたりのボールを打つのに、どれだけのことが考えられるのでしょうか。そうなると集中力というのはどこに行ってしまうのでしょうか。

特に打撃については、ボールとバットが当たる瞬間の話が多くでます。その場面はバットが最大スピードで動いているところですから、まず意識することはできません。仮に意識すればスピードが遅くなるはずです。私が本の中でバットがボールを捕らえる瞬間にギュッと両手を握ると書いたのですが、表現としてまずかったようです。

当たる瞬間に力が抜けているとバットが跳ね返されてしまいます。そうならないようにということと、両手、両腕にバランスよく力が入るように、またミートポイントを認識するということから、そのような意識づけをする練習も必要であるということなのですが、やはり文章で書くと細かなところまで説明できません。

バットのヘッドの話が出ましたが、バットを振るためには下の手の小指側から先に出るのがあたりまえで、バットのヘッドから出ることはありえない話です。バットは『引き出してくる』『引きおろす』という表現が一番適当なように思います。

当然リードは下の手が引き手となってリードしていきます、これだけでは片手打ちになり、バットも強く振ることができないので、上の手も押し手として使う必要があるはずです。『引き』と『押し』の相互関係によって成り立つはずです。これが自然と思われますし、最短時間でバットを振るためにはそうなると思っています。

私は、この本を読んで参考にしてほしいのは、なぜこのような理屈になるのか、それが本当に正しいことなのか、他の場面でも同じではないのかなど、いろんな疑問をもってほしいということです。

おかしくはないかという読みかたをすれば、次々に疑問が浮かんでくるはずです。そこで本来はどうあるべきなのかということを考えることです。そのための教科書としては最高に面白いということであり、ためになる(?)ということなのです。野球の指導に携わる方はぜひそのような思いで読んで下さい。きっと何かが見えてくるはずです。次の投手編が本当に楽しみです。

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