2002年ワールドカップもいよいよ後1試合を残すのみとなりました。これを書いているのが25日の韓国とドイツの試合を見た後です。残念ながら韓国も負けてしまいましたが、前の2試合の疲れが出たようで、少し動きが鈍かったようです。終了直前、韓国に得点のチャンスがありましたが、オフサイドでした。
しかし、そのときのドイツのゴールキーパー、カーンの飛び出しの速さにびっくりしました。この3週間は本当に良い目の保養になりましたし、いろいろ勉強させてもらいました。
皆さんも、それぞれいろんなことを感じになられたことと思います。私にとっては、勝ち負けよりも、どれほど素晴らしいプレイが見られるかというほうに興味がありました。
日本は惜しくもと言うより、よく頑張ったといえる敗戦でした。ただ、前回に話したことが現実となって、それが失点のきっかけになったことは間違いないでしょう。それは、チョロパスです。
日本側のエンドライン近くのチョロパスがインターセプトされ、危機を脱するためにコーナーキックに逃れたのですが、そこで初のコーナーキックとなり、相手の高さのヘディングで1点を失いました。そのチョロパスを出した選手は、その後も4回ほどチョロパスを出し、インターセプトされたりされかかったりしていました。きつい話ですが、反省が見られなかったのは悲しいことです。
実は、ゲームの開始早々から気になっていた選手がいました。ボールをもっているのですが、どうも覇気のない選手がいたのです。これは危ないぞと見ていたら、やはりその選手がチョロパスを出してしまいました。ゲーム後のインタビューにその選手も登場しましたが、もちろんチョロパスの失敗の話は出るはずもありません。
ここまで日本選手も大健闘しましたが、やはりトルコ戦を見る限り、明らかに実力の違いは明白でした。ベスト16以上のレベルの違いが明確に見られた試合でした。点数ではなく、ボールコントロール、パス、シュートなど、技術レベルにおいて格段の違いが感じられました。韓国も同様に感じます。
韓国国民のすごいパワーと、高い体力レベルが支えとなり、快進撃を続けてきましたが、ボールコントロール、パスの正確さ、シュート力、スピードなどは、やはり差が確実に見られました。日本と韓国の結果の差は、サポーターがサッカー好きの人たちだけか、国民全体がサポーターなのかの違いで、サポートパワーの違いにあったように感じます。
500万人が路上に出て応援する姿は、日本では当然想像すらできませんし、ありえません。またロシアのように国会を止めてサッカー観戦しようということが国会で取り上げられることもありません。
残念なことですが、これが日本の国民性なのでしょうか。サッカーファンは多いが、日本のファンは少ないということです。一例として、各国のゲームを各国のユニフォームを着てサポーターになれるということです。
外国のサポーターのように、敗戦で深く落ち込むというようなことも見られません。勝っても負けても同じように騒げるということからも分かります。
日本の話はさておき、素晴らしいプレイを振り返ってみたいと思います。その中から日本の今後の対策も見えてくるのではないでしょうか。先日、面白い話を聞きました。
日本では「ボール扱いの上手い子どもが誉められるが、外国ではボールを強く蹴れる子どもが誉められる」という話です。
なるほどそのとおりです。サッカーに限らず、技術優先の国かもしれません。上手いということは、そのままそのときの結果、すなわち勝つことにつながるということでしょう。
そこには将来を見据えた考え方は当然出てきません。現状がよければ、また指導者が満足すれば・・・というような風潮が見られます。
トップチームの技術は当然素晴らしいのですが、もうひとつ感じるところがあります。それは運動能力が素晴らしいと感じることです。ドリブルする姿、ボールコントロールする姿、シュートに入る姿、そこには上手いという表現より、すごいと感じさせてくれます。
そのすごさは細かなテクニックではなく、躍動感やダイナミックさです。一番すごいと感じたプレイは、左のサイドライン付近からのロベルトカルロスの弾丸シュートに近いセンターリングをロナウドがゴール前で、なんと右足の外側に当てて、シュートしたことです。
ゴールを外れましたが、シュートのような早いボールを待ち構えてそれも足の外側で合わせるなんてことは、とてもできることではありません。触れられることも不思議なくらいで、まさに開いた口がふさがらなかった状態です。
このことは、日本選手のチョロパスに例えて考えれば、常日頃から早いボールの対応が習慣化されていなければいけないということでしょう。Jリーグのレベルでは、特に問題はないのでしょう。それは、チョロパスを出す側に問題もあれば、受ける側もそのような状況に慣れていることが考えられます。
外国のリーグで活躍する選手の数を考えれば仕方がないかもしれません。日本選手は3~4人しか、そのような速いボールでのプレイを経験していないのですから、一方トルコの選手はほとんどがそのような環境・レベルでプレイしているわけです。
速いボールに慣れることが最大の課題といえるのではないでしょうか。もう1つは、ボディコンタクトに強くなるということでしょう。体格で劣るわけですから、常日頃から当たり合いを意識したトレーニングも必要になるのではないでしょうか。後ひとつは、やはりキック力です。
短く速いパスを出せるキック力、ミドルパスを正確に速いボールで出せるキック力、弾丸シュートが打てるキック力が課題のように思いますが、これは先に書きましたように、子どもの頃から『強いボールを蹴る』という動機づけが必要になるでしょうし、指導者の意識の中にどれほどその大切さが認識されているかが問題になるでしょう。
スピードについてももちろん大切なのですが、これは当然ボールを蹴る力との関係もあり、先天的なものであるということは分かりきったことですが、特に、最初の2~3歩でいかにスピードに乗るかというランニングテクニックを身に付ける必要があります。
このあたりのことは、見逃されやすいものですが、ジュニアのときにしっかり指導してほしいものです。 決勝は、一瞬たりとも目の離せないゲームになることは必至ですが、後1試合素晴らしいプレイ・動きが観られることに感謝したいと思います。