冬季オリンピックを振り返って|ニュースレターNO.041

ソルトレーク冬季オリンピックも終わりました。日本選手団は、当初10個のメダルを期待していましたが、結局はモーグルの里谷とスピードスケートの清水選手の金と銅の2つのメダルに終わりました。その2人は、いずれも本番まで不調と怪我にあえいでいた選手だというのも何かを考えさせてくれる出来事のように思います。

オリンピックが始まって3日目の感想を前回のニュースレターに書きましたが、その後注目していろいろ選手の動きを見られたでしょうか。

特に、スピードスケートと距離スキー、そしてジャンプ競技を見ているといろんな考え方ができるものだと感じました。前回に大腿四頭筋依存症と書きましたが、スピードスケートやジャンプ競技では、日本選手の大腿四頭筋に頼った滑走やジャンプ動作が目に付きました。

またフィギュアスケートでもジャンプ動作の違いが目に付きました。大腿四頭筋に頼った動きをしていると、どうしても太ももが横に張り出して脚が太く見えます。ジャンプ競技や自転車競技では、太ももの太さが勝負を決定するようにさえ言われているようです。

しかし、スピードスケートを見ているとどうしても大腿四頭筋を使って滑走しているようには見えません。シューズに体重をかけてやや後方に股関節の伸展動作を使って押し出しているように見えるのです。またカーブのすべりも日本選手は膨らまないように速いピッチで足を入れ替えていますが、外人選手は外側にしっかり押し出しているように見えました。

直線ではすべりのストライドの長さが歴然としていたようです。この動作の違いが、外国選手と日本選手のお尻から脚の形の違いに顕著に見られます。

まだスケート選手に会って話を聞いたことがないのでわかりませんが、選手の滑走中の意識ポイントを知りたいと思いました。日本選手もワールドカップで活躍していたのですから、もっと上位に入る選手もいたはずです。何故実力が出し切れなかったのでしょうか。高地であったということはあまり考えられない気がします。

それは、ほとんどの日本選手はスタートから飛ばしてエネルギー切れを起こしていたように思われます。以前に乳酸の話を書きましたが、一度飛び出したらグリコーゲンは持っている量に限りがあるので、使えばなくなってしまいます。そしてガス欠を起こすわけです。

期待にこたえられなかった選手はほとんどこのガス欠状態でした。滑った後の苦痛の姿は、高地での酸素不足によるものではなく、ガス欠で乳酸がたまって筋肉が動かない状態です。筋肉を太くしてグリコーゲンの量を増やしたまでは良かったのですが、問題は如何に効率よく使うかということです。

そのために必要なことは、イーブンペースです。オリンピックの舞台で勝負が決まるタイムと自分の力を比べてみれば自ずとラップタイムは出てきます。

そのラップタイムを守らせ、それで目標タイムを出すことが大事であったように思うのですが、ほとんどの選手はそれができずに、オーバーペースでガス欠を起こしました。陸上競技と異なり、タイムを競う競技ですから、レースの駆け引きはほとんど考える必要がないはずです。

これはコーチの考え方に問題があるのでしょうか、それとも選手が理解できていないのでしょうか。なんとも理解しがたいことです。500mの堀井選手を見ても解るように、35秒前後持たないわけです。やはり500mにもペースがあるということでしょう。

これからどんなトレーニングをすればよいかという問題ではなく、もう一度スケーティング動作における股関節の使い方、いわゆる氷への力の伝達方法を考え直すことと、エネルギーの使い方、ペース配分の理解が必要だということではないでしょうか。

力はあるのに、それを発揮できないことは残念です。今回の結果について、何をどう分析するか、単純に高地対策が足りなかったというような幼稚な反省は聞きたくないものです。

力の伝達方法ということについては、ジャンプ競技もまさしくその違いが結果になったと考えられます。選手は現状の力を十分発揮したと思われます。ただし、ジャンプの仕方が根本的に異なるように、私の目には映りました。

上半身から前方に起き上がるような感覚で、股関節が伸ばされ、次に膝関節が伸ばされてスキーに力を伝える動きです。日本選手のジャンプは、正に大腿四等筋をフルに使って飛び上がろうとする踏切です。これでは飛び上がる意識のほうが優先され、肝心のスキーに力をフルに伝えることができません。

このあたりが微妙なところですが、金メダリストのスイスの選手は本当にすばらしいジャンプでした。その動作は、飛び上がるの動作ではなく、立ち上がり動作をしていて、そのことによって下方のスキーにうまく力を伝えており、膝から下が完全に固定されていたように見えました。

考えてみれば、時速60キロは超えている状態で、ジャンプという感覚は難しく、立ち上がるぐらいの感覚にならないといけないかもしれませんね。第一、足に重いスキーを履いているのですから、上に飛び上がろうとすれば逆にスキーの重さで下に引っ張られて抵抗を受けるように思われます。

素人の私の考えですが、考えられることはたくさんあるはずです。大腿四等筋を使った「上方へのジャンプ」意識と股関節を意識した「立ち上がって下方に押す」感覚のジャンプの違いを知りたいものですね。

今回のジャンプ陣の反省も注目したいですね。そして分析の中に、飛び出し動作の違いが出てくれば日本のジャンプ陣も世界で戦えるはずです。楽しみにしましょう。その反省でコーチのレベルがわかるはずです。

もう一つ大きな問題は、ピーキングの問題です。オリンピックの前に調子が良かった選手も結構いたようですが、結局はダメでした。単に精神的なプレッシャーということであれば、それは経験をつめばよいということになりますが、ピークがずれた選手も多く見られたように思えます。本当にオリンピックに合わせた計画と調整がなされたのでしょうか。トレーニング計画がどのようなものであったのか、知りたいものですね。

オリンピックサイクルの4年周期、オリンピックまでの1年間、いずれの期間にもトレーニング波があったのでしょうか。簡単に言えば鍛えるところ、実践するところ、休むところということです。毎年頑張っていたのでは当然焼き切れてしまいます。

そういう意味では、スピードスケートの清水選手や岡崎選手のオリンピック前までもうひとつという状態は、逆に現状のピークに持ってこれた一つの要因になってのかもしれません。

1年、2年、また4年に一度、目指す大会で100%力を発揮するためには、本当にたくさんの要因があり、一つずつチェックする必要があります。トップアスリートほどその分析が必要であり、より細かな分析が要求されます。何をどのように分析するか、今回の冬季オリンピックはいろんな見方を提供してくれました。

皆さんもぜひオリンピックの感想をお寄せください。

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