マトヴェーエフ氏の論文集|ニュースレターNO.033

マトヴェーエフ氏は、これまで350以上の著書・論文を書かれています。その著書は、30カ国以上で翻訳され、その理論の実践が行われています。

私が今年中国に行った時、マトヴェーエフ氏の1997年の著書(スポーツ原論)が完璧な形で翻訳出版されていました。残念ながら、日本ではマトヴェーエフ氏の著書は、マトヴェーエフ氏が1977年に書いた『スポーツトレーニングの基礎』が白帝社から、1985年に『ソビエト・スポーツトレーニングの原理』として翻訳出版されただけです。

しかし、後1つ、著書ではありませんが、1964年に書かれた『スポーツトレーニングの周期化の諸問題』の再版のドイツ語訳が、陸上競技マガジン1976年5月から1977年6月まで田島直人氏の翻訳で連載されました。

著書については、この2冊しかありません。『スポーツトレーニングの周期化の諸問題』は、マトヴェーエフ理論の原点になっている著書で、その原著に日本語で触れるには、それしかありません。

その他、マトヴェーエフ氏の論文は、ソビエトの体育とスポーツ関係の書物の中に分担執筆されているものを幾つか見つけることができます。

それらの論文は、主に旧ソビエト時代1925年に創刊された『ТЕОРИЯ И ПРАКТИКА ФИЗИЧЕСКОЙ КУЛЬТУРЫ-体育の理論と実践』に掲載されたものです。この雑誌、現在も専門誌としての地位が高く保たれています。これは、日本でも購入することができます。

私は、マトヴェーエフ氏にお会いし、マトヴェーエフ氏のこれまでの350以上に及ぶ著作リストを作成していただき、『ТЕОРИЯ И ПРАКТИКА ФИЗИЧЕСКОЙ КУЛЬТУРЫ-体育の理論と実践』に掲載されたマトヴェーエフ氏の論文も集めました。

そうした中で、マトヴェーエフ理論の原点に関わるものから、21世紀最初で最新の論文に至るまで、主なものを論文集としてまとめました。

ほとんどは、ロシア語を翻訳していただいたものを私が校正し、一部の論文は、長いもので、一部を割愛したものもあります。1958年から2001年まで、全部で11の論文が収めてあります。

特に、1958年の論文には、マトヴェーエフ理論と呼ばれる『ピリオダイゼーション』について書かれています。この論文が、1964年の著書の中心になっているものです。論文集の半分以上は、『ピリオダイゼーション』と『スポーツ・フォーム』を中心にしたもので、スポーツトレーニング理論をどのように構築すればよいのか、そのことがトレーニング計画を立てる上での基礎になるということです。

中に体育理論に関わるものも含まれています。最後の方では、選手を育成するためのモデルづくりの理論について書かれています。

論文ですので、当然難しいものもありますが、できるだけ理解できるように校正したつもりです。ロシア語の意味は深く、単純な翻訳ではその真意を汲み取ることが難しいようです。

ですから、1977年に日本で出版された本も、そうした意味も含めて多くの方に読まれなかったようです。私自身も持っていますが、半分も読み進めることができませんでした。

専門書であることから、またロシアでは教科書の扱いをしていることから、文章的にも難しくなり、ましてトレーニングの専門分野のところにくると、言葉の表現がなおさら難しくなります。

私自身も翻訳をすることがありますが、その際に気をつけていることは、読む側にとって理解できるかどうかということを気にかけています。翻訳が日本語に代わるだけでは、訳のわからないものになってしまいます。

以前お知らせしたと思いますが、マトヴェーエフ氏の一番新しい著書の翻訳を翻訳の専門家にお願いしているのですが、なかなか進みません。

翻訳していただいたものを自分で読みながら、一字一句、読んで理解できるかどうかというスタイルで校正しています。何とか、マトヴェーエフ氏の考えることを十分表現できればと思っています。

体育とスポーツの指導者、また選手を育成する立場にあるものは、当然マトヴェーエフ理論が理解できていなければなりません。日本には、スポーツトレーニング理論を扱う学会がないことからもわかるように、周辺領域の学会や研究は盛んなのですが、まとめ役としてのトレーニング計画やトレーニング理論が

ほとんどない状況です。マトヴェーエフ氏は、選手を育成するというシステム、スポーツトレーニング理論の構築に携わっているだけでなく、人間にとって体育が如何に必須のものであるか、ということにも心血を注がれています。体育をこよなく愛し、同時にチャンピオンをつくる・チャンピオンになれる道を示されています。

私も、マトヴェーエフ氏とお付き合いさせていただけるようになってから、マトヴェーエフ理論というより、マトヴェーエフという人間そのものに興味を持つようになりました。

考え方、分析の仕方、基本は同じなのですが、何よりその深さが違います。この点は、お会いするたびに実感させられます。広く、深く、関係領域について知る必要があり、それを統合することが目的を達成するということです。

マトヴェーエフ氏のこれまでの研究は、弁証法哲学に基づいたものです。それも弁証法的唯物論です。氏は、哲学においても造詣が深い方です。

ものの考え方、説明の仕方、話の手順にも、そのあたりのことが感じられます。一度、機会がありましたら、マトヴェーエフ理論に触れていただき、どこまで理解できるかということも、今の自分の状況を把握する1つの手立てとなるかもしれません。

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