魚住先生との出会い|ニュースレターNO.024

日常の診療を通して感じることはスポーツ選手のケガの治療をしていても、いざスポーツの現場に復帰すれば、また障害を作って帰って来る不安と、障害自体をスポーツ活動を続けながら治療していくことの困難さです。

病院にいればケガの治療法を教えてくれる先輩はいますし、整形外科の学会に行けば知識は増えていきます。

しかし、体の使い方を教えてくれる場はほとんどありません。むしろ選手や指導者、トレーナーから教えられることが多いのが現状です。それで私も積極的にスポーツの本を買い求めたり、運動学に詳しい先生にお話しを聞く機会を多く持つようにしています。

ある日、滅多に行かない町の滅多に行かない本屋さんに行き(この辺が運命でしょうか?)、スポーツ関連の本のコーナーで魚住先生の「読んでわかる見てわかる ベースボールトレーニング」を手に取りました。

もともとバレーボールの障害に興味があり、肩の障害と関連する投球術関連の本を読むようにしていますが何の気なしにひらいたページはきれいなイラストとともに整然とした文章が並んでいました。私は常々、スポーツ関連の本は写真やイラストを充実しなければならないと思っています。

選手や指導者は本文もさることながら、その絵や写真を食い入るように見るはずですから。素晴らしい本と思い、その場で購入しました。

魚住先生の文章は一口でいうと「簡潔、明瞭」です。しかし、これは非常に大事なことで書く人間にとっては最も難しいことです。私も時にケガについての文章を書く時がありますが、いつの間にやら専門用語が並んだり、回りくどい文章となっていてお叱りを受けることも多くあります。

先生は難しい言葉や「新造語」を振り回すことなく、誰でもわかる表現で書いています。

今思うと大変失礼なんですが、この時に「この人はただ者じゃない」と思いました。 しかし、既刊の技術書と食い違うような表現があり、是非これは先生に直接、聞いてみようとHSSRのホームページを捜し当て、先生宛にメールを書きました。(半分、ファンレターでしたが)

そして、驚いたことに先生は間髪を入れずにお返事のメールを下さいました。これは非常に感激したとともに是非お会いして色々と直に教えていただきたいという思いが募りました。

そんな私の気持ちを汲んでくださり、東京に来た折りにミニ勉強会に誘っていただきました。実際にお会いした魚住先生はご著書と同様に分かりやすいお話しをされる方でした。

野球やバレーボールなどの様様なスポーツの話となりましたが、かつてのプロ野球を代表するエースが実力を発揮出来ず二軍で調整している話をすると「今の肘の使い方ではだめだ。こうすればすぐよくなる」とご自分で手本を示しながら話して下さいました。

先生のお話しは選手の欠点を見つけて「あれはだめだ」という否定的なお話しをするのではなく必ず「こうすればよい」と肯定的なお話しをします。

スポーツの指導者や我々医者は選手(患者)の悪い点を上げて、叱ったり、批評する場合が多いですが、これは簡単なことですが、技術を身につけようとする選手には何のメリットもありません。

魚住先生は物事をポジティブにとらえて、「こうすればよくなる」という話し方をされる方でした。先生を慕って多くの選手や指導者が教えを請うために集まって来るのもこの先生の教授法にあるのだなと思いました。

これは先生のご経験と知識の裏付けからくることだと思いますし、私ももっと勉強しなければならないと思いました。

先生はメールでも実際お会いした時にも「自然な動き」ということを強調されます。最初はよくわからなかったのですがお話しを進めている内に少しずつわかってきました。結局、今までのスポーツの教授法や理論が経験(少数の誰かの)に基づく物ばかりでヒトの自然な動きに反したことも多いのです。それを無批判に繰り返して、前轍を踏んでいるばかりのような気がします。

バレーボールに関してもおかしな動きの部分をいくつも指摘され、「ナルホドな~」と新たに思い知らされました。先生が提案されていた「スポーツ体力測定(コントロールテスト)は競技の特殊性に準じて、自ら工夫して作り、実施すべきだ」ということも非常に納得させられました。

現在どの競技団体も‘科学的な’体力測定を行い、研究者がデータを取ったり、他の国や他のチーム(時には他の競技と!)と比較していますが、選手のためになるのは競技に則した体力のデータであり、その時々の自分と比較して競技力向上に結びつけなければ意味がありません。

バレーボールで50メートル走がどんなに速くてもレシーブが上手い根拠にはならないのですから。とにかく選手のための体力チェックを「手作り」で行うことは指導者がなにを狙って指導しているかの試金石にもなりますし、現場で本当に役立つ調査になると思います。

これはまた競技団体の方とお話しをする機会に伝えようと思っています。この点も先生が常に「前向き」に指導やトレーニングに取り組んでいることをあらわしていて、「後ろ向き」に調査をすることに対しての痛烈な批判だと受け取りました。「後ろ向きに生きても何も生まれない」といことが先生に実際にお会いして最も学ばせていただいたところです。

今後も楽しくもっともっとスポーツ科学を教えていただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。意味のないだらだらとした文章となってしまいました。今後は魚住先生のような「簡潔、明瞭」な文章を目指します。

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