テレビや雑誌、現代だとスマホやタブレットなど紙面から画面へと媒体が変わり、多くの情報が提供されています。その情報の本質を掴むとなれば、時間のかかることでありますし、商売というものがそこに加えられれば情報の信ぴょう性が薄くなることさえあります。
トレーナーが”指導”ということをする際に最も大切にしなければいけないことのひとつが、『相手に理解させる』ことだと思います。
今の自分がどれだけできているのか、そういうことを考えるときひとつの尺度にできるのが本物と言われる存在の方の指導を間近で見たときです。
先日、僕のクライアントさんと一緒に魚住廣信先生のところへ伺い、股関節の痛みについてご指導をお願いし、実際にクライアントさんに指導していただきました。今日はそのときの様子や気づき、自分の課題などをまとめていきたいと思います。
指導とは何か、それを改めて考える内容になると思いますので、参考になればと思います。
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股関節痛で悩まれる方への指導
僕のクライアントさんで40代の女性が股関節の痛みで悩まれており、僕のところへ相談に来られました。10年ほど前から股関節の痛みで悩まれており、直近で約6年ほど前に病院で変形性股関節症と診断をされているそうです。
それ以降はさまざまな治療院や整骨院などを周って改善に努めてきていたそうですが、思ったような成果を感じることがなく、11月の終わりから僕のスタジオへ来られるようになりました。
数回セッションを繰り返す中で、さまざまな話をし、魚住先生にご相談しに行く方がこの方の先のことを考えるとベストだと判断し、魚住先生のところへ伺うことにしました。
そして、先日直接ご指導いただきました。当日の流れはこのような流れで指導が行われていました。
- クライアントに質問(痛みが発生した経緯、経過、どのようなときに痛むのかなどの確認)
- 身体の歪み・動きのチェック、筋肉の緊張や歪みなど現状をクライアントに伝える
- 操体法などで歪みを直す
- ベットの上で身体調整
- 日常動作、姿勢を指導
- 家で行うエクササイズなどを伝える
- 再度日常動作を行い、はじめとの変化を確認
- 終了
流れを分けるとこのような流れで指導をされていましたが、これらのことを順にというよりも一つの流れの中にこれらが混在するような形で指導をされ、ひとつひとつシンプルな言葉で、一般の方が理解できるような内容で指導されていました。
トレーナーとして日々クライアントさんに指導をしている立場ですが、情報の一方通行になっていないか、今回の指導の中でのポイントはここにあります。
伝えている”つもり”ではなく、”理解させる”ということが重要であり、いかに脳のデータを書き換えることができるか、それが今回の痛みの改善のポイントになります。理解させるということはやっているつもりになっていることが多いと痛感します。
情報から得られることから現状を把握する
まず席につくと間も空けることなく、質問をされていきます。
どういう悩みを持っているのか、また相談なのか。いつから痛むのか、どこがどのように痛み、どんなことをすれば痛むのか。さまざまな質問の中からその方の身体の経緯を探られていきます。
僕も現場でクライアントさんに質問をしているとき、その質問をしながら頭の中で情景をイメージし、その方の質問の返答から数年、数十年前のことをイメージしようとしていきます。その中に痛みの原因がある可能性が高く、痛みが発生した前後までさかのぼっていきます。
以前お願いしたときもそうでしたが、魚住先生の質問の内容を間近で聞いていると、数十年前でも最近ことでも景色がイメージしやすく、それも順序だっているため、聞いているだけでその方の問題点が浮かび上がってくるような感覚になります。
ここが大切なところですが、質問の内容が細部に及ぶということです。
職業の話をされていたときに、クライアントさんは職業柄子供を抱きかかえることがあるそうですが、そのときの姿勢、またどのように抱きかかえようとしているのか、手の当て方や身体の位置など細部にわたり質問をされ、後にその姿勢を実際にしていただき、その動作を改善されました。
トレーナーとして把握することは、表面的な情報だけではないということです。年齢、職業、病歴、食生活、それは確認するべき当然のことであり、問題解決のために必要になる情報は、これだけでは足りません。
どのような座り方をしているのか、机の高さ、キーボードの位置、周囲に何があるのか、パソコンの画面の位置はどの角度を向いているのか、これらの情報こそがクライアントさんをいい方向に導くために必要な情報となります。
その質問から得られる情報の質が、なぜこのような痛みにつながっているのか、なぜこのような体型になるのか、なぜこのような悩みを持たれているのか、そういうことの解決に必要な情報となります。
これは教科書や何かを見ることだけでは学ぶことはできません。これこそが本質的なことであり、トレーナーとしては必要になる技術であり、これができないと適切な指導はできないと感じました。
技術の高さとシンプルさ
パーソナルトレーナーをたった5年しかしていない程度では技術レベルはしれています。当然だと理解していますが、何が違うのかというのは言葉で表現できるものではないと思います。
凍っている氷が手のひらの中で水に変わっていくような、溶けていくような、そんなイメージで先生の手の中でクライアントさんの筋肉は緩み、ただただ気持ちのいい時間が流れているという感じが見ている側にも伝わってきました。
言葉を恐れず言えば、ただ揺らしている、簡単に動かしている、適当にサポートしていると素人目には映るかもしれませんが、それほどシンプルなことをされていますが、ものの見事に身体の歪みは改善されていきます。
立った状態で歪みを改善しようと思うとどのようなことをイメージされるでしょうか。
「腕をこうして、ここに力を入れて、〇〇のような意識でこうしてみてください・・・」難しいことを並べてもやっていることが伴わなければ難しいことをさせただけになります。
先生の場合、「少しお辞儀して、横に捻って、呼吸して・・・はい、元に戻ります。」たったこれだけの言葉でクライアントさんの身体からは緊張がとれ、歪みも改善されていきます。
どの立場で言葉を選択するのかということが重要になります。先生が常々言われることは、「シンプルに」ということですが、「回旋してください」という言葉を一般の方に言ってもわからない方が多いと思います。
「身体を回旋してください」→「身体を捻ってください」という表現に変えると伝わりやすくなると思います。先生のような立場の方であってもこれだけシンプルな言葉を使い、難しいような言葉を一切使われません。
それこそが指導では必要となり、トレーナーにとっては当たり前の用語でも一般の方にとっては、わからない専門用語になります。
簡単に見せる技術の高さと、シンプルに伝える言葉の選択というのは随所に学びがあり、クライアントさんがすべて理解してい姿が印象的でした。自分を振り返れば日頃からそれだけシンプルな言葉を選択しているかどうか、再度振り返る必要があると感じます。
脳の中の情報をいかに書き換えることができるか
人間は今自分が行っている姿勢、動作を”普通”と感じています。
この”普通”と感じる情報は、正しい、間違い、という正誤を明確に区分しているのではなく、これまで長時間、または何十、何百、何千回も行った結果その姿勢や動作の情報が脳にインプットされ、それを正しいと思いこんでいます。
痛みも同じで、何十年、何年も前から痛みを感じていればその痛みを脳がインプットしてしまいます。
紙の端で指を切っても、気づいてしなければ痛みは感じないことがあります。ですが、指が切れていることに気づくとやたらと痛みを感じるようになります。これと同じです。痛みは脳が感じています。
このインプットされた情報をゴミ箱に捨てる必要があります。ただ、クライアントさんへの説明のとき魚住先生が表現されていましたが、パソコンのデータと同じと言えるとのことです。
どういうことかというと、パソコンのデータはゴミ箱に捨ててもパソコン内には残っている。ゴミ箱内でさらに消去しても、この情報は何かしらの方法で復元が可能となります。
身体で言えば、身体調整などで筋肉を緩めデータを消せたとします。でもそのデータは脳内には残っていて、何かのきっかけで復元されまた痛みを感じるということになります。
この書き換え作業をきちんとする必要があります。
クライアントさんは、歩いたり、しゃがんだりするときに股関節に痛みが出ていました。身体調整などを行いデータを消します。そして、筋肉を緩め、立ち方、しゃがみ方、椅子からの立ち上がり方、歩き方などを指導され書き換えをした後は、痛みなくすべての動作を繰り返せていました。
この指導の際、常々「どうですか?痛くないでしょ?大丈夫ですね。」「痛くない、気持ちいいというのを感じてください。」と声かけをしながら指導をされています。この言葉こそ、脳の中のデータを書き換えるものです。
ここで重要なのがクライアントさん自身の心構えであり、治してくれ!という姿勢であればどうしてもこの理解がしてもらえません。脳のデータをうまく書き換えることができず、結果も見えています。
痛みだけではなく、歪みもそうですが、情報がインプットされているものをいかに書き換えるか。そのためには、クライアントさんに”理解”をさせることが必要であり、それをやったつもりになっていないか、再度確認する必要があると感じます。
身体だけではなく、脳へどのような刺激を加えるのかを考えることも重要なことになります。
指導する姿を見て感じたこと
今回の指導を見させていただいて、最後に先生にも伝えましたが、自分の今の課題のひとつに【理解をさせる】ということが挙げられます。
先生には、「それには年数がいるし、時間がかかる」と言われましたが、今の自分の立場はどのようなところかを冷静に見ることも大切だと感じました。40、50代の方からすればまだまだ若造ですし、それに何かを言われても・・・ということがあるかもしれません。
そのようなときにどのように伝えればうまく伝えたいことを伝えられるか。そして、それをどうすれば理解していただけるのかを考える必要があります。そこは今後も課題となりますし、学び続けなければいけないところでもあります。
今回の指導で感じたことは以下のことになります。
- 質問の質とクライアントさんから引き出す情報量の多さ
- 言葉の選択と相手が理解できる伝え方
- シンプルな動作で歪みを直す
- クライアントになぜ痛みが出るのか、身体の状態の把握のさせ方
- スムーズな歩き方をイメージさせるために、どのように伝えるのか
- 脳にあるデータをいかに書き換えるか
- 痛みの改善をどのように考え、どのように指導するのか
まだまだ自分のノートには感じたことはまとめていますが、このようなことを感じ学べました。
自分が指導している姿を重ねてみたとき、何が足りないのか、どのようなことを変える必要があるのか、クライアントさんとのセッションの中で改善する点は多くみつかり、それを現場でも活かしていきたいと思います。
個人教授でも学ぶことはたくさんありますが、実際の指導を見ることで指導からしか学べないこともあります。
毎回感じることは、常に自分を疑い、確認すること。
最後になりましたが、お越しいただきましたクライアントさん、そしてご指導いただきました魚住先生、貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。今後ともよろしくお願い致します。
今日の記事が少しでも指導される立場の方のお役に立てればうれしく思います。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。