
変形性股関節症に悩まれている方から相談もありますが、みなさん1回は手術が頭をよぎり、手術を回避しようと希望を持って鍼灸院に通ったり、整体に通ったりされています。
しかし思ったような結果が得られずに悩んでいるいる方も多いと思います。変形性股関節症は必ず手術をしないと痛みから解放される、もしくは痛みが改善することはないのでしょうか。
今日はそんな変形性股関節症を手術をせずに改善に向かっている実際の例を含めて、改善の考え方とそのヒントについてお伝えしていきたいと思います。
Contents
変形性股関節症とはどのような病気か?
まずこの病気を語る前に変形性股関節症というのは、どのようなものかと整理していきたいと思います。
■変形性股関節症とは?
変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう、osteoarthritis of hip)は、関節軟骨の変性・磨耗によって、近傍の骨の変形・破壊や関節滑膜の炎症が起き、疼痛や運動障害からADL障害をきたす股関節疾患である。
Wikipediaより引用:変形性股関節症
変形性股関節症には、先天的なものと後天的なものがあるといわれており、どちらも関節の変形や噛み合わせの不一致などにより、関節軟骨がすり減ったり傷がついたりし、痛みを伴う症状です。
具体的には、歩いているとき立っているときにズキズキ刺すような痛みがあったり、臀部に鈍痛のようなだるさを感じたり、生活にも支障が出るほどの痛みが伴うケースもあります。
また変形性股関節症には、一次性と二次性があります。
- 一次性股関節症・・・原因が不明
- 二次性股関節症・・・先天性股関節脱臼症や臼蓋形成不全などの症状に続発される形で起こる股関節症
日本では主に二次性股関節症がほとんどだといわれ、またそのほとんどが女性です。
一般的に行われる変形性股関節症への対応について
変形性股関節症になってしまった場合、どのような対応が行われるのが一般的なのでしょうか。クライアントさんから聞いた話も含めてまとめていきたいと思います。
筋トレをする
一番聞いた答えは、股関節周囲の筋肉を強化するために筋トレをするということでした。
股関節周りの筋肉が弱くなっており、支えられないから股関節の痛みが出ている。だから鍛える必要があるということでした。後述しますが、あるクライアントさんのケースでは、勧められた通りジムで股関節周辺の筋肉を鍛えることをはじめました。
レッグエクステンション、レッグカール、ヒップアダクション、ヒップアブダクションなど股関節に関係する筋肉を強化しましたが、エクササイズ中も股関節は痛み、このときの痛みは弱いから痛んでいる。きっと強化すれば痛みは軽減されると信じてトレーニングに励みました。
しかし、1ヶ月経っても、2ヶ月経っても痛みは改善するどころか、逆に痛みが増してしまったこともあるそうです。
筋力が弱いから痛むという要因もありますが、このようなケースからもわかる通り、筋トレをしても思ったように改善しないことがあります。
安静にする
痛みを改善するには時間が薬になるといわんばかりに、負担をかけないように日頃から安静にしなさいといわれる方も多いと思います。
仕事や育児、生活をする上でしなければたくさんあると思いますが、それを控えるように言われた方もいました。安静にするだけでは痛みが改善しないのは目に見えています。
手術をし、人工関節にする
変形性股関節症は、股関節の形成に問題があるためその股関節を人工関節にすることで痛みを取り除こうと病院で勧められる方もいると思います。
実際に人工関節にして痛みが軽減された方もいました。イメージとしては御幣を恐れずに言葉を使えば、一番手っ取り早いというイメージになるのかもしれません。決してそんなことはありませんが。
ただ、クライアントさんの言葉を聞くと、やはり自分の関節ではなくあくまでも人工のものが体内に入るとなると非常に悩まれると思いますし、実際に悩まれている方からお話を伺ったこともあります。
変形性股関節症の改善に手術を勧められることも多くあります。
インソールを使う
これは少数の意見ですが、変形性股関節症を改善するためにはインソールが必要だといわれて数千、数万円するインソールを購入し、使われていた方もいます。
片側だけに入れていたこともあり、これが原因で身体が歪みさらに痛みが増してしまったということもあります。
左右の脚の長さが違うとインソールを使うこともありますが、片側だけに使用すると歪みにつながり、痛みを助長してしまうこともあります。
本当に必要なのかは見極めが必要になります。
温熱療法
腰痛や肩こりなどにも行われることですが、痛みのある部分を温めるということをします。一時的に痛みが和らいだり、気持ちよさを感じると思いますが、根本的な改善とはいかじ、時間の経過とともにまた痛みが再発することがほとんどです。
ただ温熱療法は意味がないということではなく、調整前などに温めてから調整に入るとより筋肉を緩めやすいということもあります。
これだけで痛みを取り除こうとするのは非常に難しいことだと思います。
変形性股関節症でなぜ痛みが出てしまうのか?
まず変形性股関節症で痛みが出てしまう理由をお伝えする前に、少し股関節というところを知っていただきたいと思います。
股関節とはこのような形状をしており、簡単言えば受け皿とそこにはまるボールのようなものがあり、両者で股関節を形成しています。
先ほど出てきた臼蓋不全というのは、受け皿の幅が狭くなってしまってる状態のことです。
変形性股関節症にもさまざまあり、簡単に言うと受け皿に変形があるのか、またボールに変形があるのか、またそれらの変形によってかみ合わせが悪くなり関節面にある軟骨がぶつかり、すり減り痛みが出てしまいます。
変形性膝関節症も同じですが、骨と骨とで形成される関節面がぶつかり合い、軟骨がすり減り痛みが出てしまいます。
この原因は関節の噛み合わせが悪くなり、周りの筋肉が緊張しているがために骨がぶつかり、痛みが出てしまいます。このような原因から考えられることは、周りに変形があっても関節のかみ合わせが良くなれば痛みは改善されるのではないでしょうか。
このような考えをもとに実際にクライアントさんに身体調整をし、痛みの改善が見られたケースをご紹介したいと思います。
全身の歪みを直し、立つ、座る、歩くの基本の動作や姿勢を見直す
変形性股関節症だからと言って、股関節だけを見ればいいのではなく、部分の歪みは全体へ影響しますし、もちろん全身の歪みは部分に影響を与えます。
まず全身の歪みや姿勢の崩れを直していきました。
身体調整で全身を整える
さまざまな事柄に共通して言えることではないでしょうか。お腹を引き締めたいから腹筋をする、腰痛を改善したいから腰をマッサージする。
部分をあまりに見すぎると、思ったような結果が得られません。全体を直せば、部分の問題も改善されるのではないでしょうか。また部分に出る痛みは、全身の歪みなどの結果ストレスを受け、部分に痛みが出る。
痛みのある箇所が原因ではなく、その他のことが影響し部分に痛みが出ることが多くあります。
このような考えから、股関節周りの痛みに対しても全身の歪みを改善するために身体調整を行い、全身の筋肉を緩めていきます。筋肉を緩めることで歪みを改善されますので、まずは筋肉の緊張のない状態へと直していきます。
全体を直す中でも、部分である股関節周辺の筋肉も硬くなっているためそこにも時間をかけ筋肉を緩めていきました。
全身を整えると痛みは軽減される
全身の筋肉を緩め、整えることで痛みが軽減し、身体が軽くなっていることを感じていただけました。また身体調整の後、立っていただくと踵で立ち、骨を感じていただけます。
調整前には立つだけでも鈍痛のようなものが出ていたけど、それも改善され痛みを感じずに立つことができました。
このように全身の歪みを直し、筋肉を緩めることで痛みの改善は見られますが、ここから座る、歩くの指導へと移っていきます。
椅子の高さや車での座席について
身体の使い方によって、筋肉が緊張してしまうことを日常的に行ってしまうと関節のかみ合わせが悪くなり痛みが出てきてしまいます。
椅子の高さについては、膝の位置が股関節の高さよりも高くなると太ももの前側や股関節周辺の筋肉は緊張し、そのような姿勢や動作を続けることで痛みが出てきます。
必ず椅子に座るときは、膝の高さよりも股関節の位置は高くします。これは椅子だけに限ったことではなく、自転車に乗るとき、車に乗っているときの座席も同じです。座席自体が動かしづらい場合、クッションなどを敷いてお尻の高さを上げれば膝の位置は下がることになります。
このように椅子の高さをどこで設定するのか、それを気をつけることで日常で過度に筋肉が緊張するのを防げます。
歩き方について
変形性膝関節症で痛みを抱えている方ほど、その痛みを脳が記憶しています。後でお伝えしますが、どうしても痛みがある分その動きを脳が覚えています。
また痛みの出方はさまざまですが、着地をするときに痛む方は、着地をするのが怖くなり、どうしてもそうっと足を地面につけるような歩き方になっていたり、びっこを引いたり、脚をどう前に出そうかということを考えられると思います。
このような意識を持ってしまうと筋肉が緊張し、そのような動きだから痛みが出てしまうということになります。
歩く=痛みが出る、という脳の中にあるデータを消す必要があります。そして歩いても痛くないんだよというデータを再度書き入れることが必要です。
そのためには、脚から意識を外し、重心の位置を高くし、その重心を前に運ぶように歩くことでスムーズに歩け、歩いても痛くなりません。歩き方をスムーズに変え、そして脳の中にある痛いという情報をいかに自分の中で痛くないということに気づけるか、それを理解できるかということも重要になります。
個人によって歩き方は変わり、アドバイスも変わると思いますが、この記事を参考にしていただければと思います。
[clink url=”http://izuru-style.co.jp/walking”]
日常動作で股関節周囲を鍛えていく
変形性膝関節症の場合、股関節が不安定です。噛み合わせも悪くなりやすく骨どおしがぶつかることで痛みが出てしまいます。このような状態を改善するため、股関節周囲の筋肉を鍛え、その筋肉で関節を安定させます。
その鍛え方が問題となりますが、ジムのマシンなどで鍛えていれば逆に痛みが増してしまうということもあります。人間は日常の中で階段を上る、下りる、などの動作を行いますが、このとき片脚で身体を支えることになります。
このとき片脚にかかる負荷は、体重の約3~4倍に相当し、50kgの人であれば150~200kgものストレスが股関節にかかることになります。このように考えるとジムでマシンで鍛えてもこれまでの刺激は加えづらいと思います。
日常の中でも鍛えることができ、椅子からの立ち上がり、座り、階段の上り下り、という基本的な動作を使って強化することも股関節を安定させるためには重要になります。
このような流れで実際に変形性股関節症の方とセッションを行い、少しずつ身体にも変化を感じることができるようになりました。
変形性膝関節症という病気と痛みを脳がどのように感じているのかを知る
紙で指を切っているのに気づかなければ痛みは感じませんが、いざ指が切れているのを気づくと急に痛みだすということを経験したことはないでしょうか。
人間が感じる痛みは脳が感じているということです。切れたから痛むのではなく、切れたという情報が脳へ伝わることで痛みを感じます。これは変形性膝関節症だけに限らず、さまざまな痛みにも共通していることです。
気分が落ち込んでいるときほど痛みが出やすく、痛みを感じやすくなります。
おばあちゃんの改善した理由は学生に不満をぶつけたおかげだったという話があります。
これは身体に対して何かをしたからということだけではなく、文句を言うことで脳が感じていたストレスがなくなり、それによって脳が感じてした痛みがなくなったということではないでしょうか。
痛いと思いこんでいる、という一辺倒な言い方ではなく痛みの強弱は少なからず脳の影響を受けます。そのため今感じている痛みを改善するときに必要なことは、クライアントさん自身も痛みに対して前向きに改善しようという姿勢で取り組む必要があります。
『治してくれ!』という横柄な態度ではうまく治らない。ここで理解していただきたいことは、痛みは脳も関係しているということです。痛みを抱える方の頭の中にあるデータを書き換える必要があります。
まとめ
いかがでしょうか。今回ここでお伝えしたことがすべてだとは思いませんが、この実際の例でお伝えしたクライアントさんはセッションを受けられてもうすぐ4年になろうとしています。
歩きすぎたりすると痛みを感じるときはありますが、歩き方や階段の上り下りについては問題なくできるようになり、以前よりもストレスのない楽な生活がおくれています。
10の痛みがいきなり1や0になることは難しいと思いますし、僕のようなトレーナーの立場であれば治療家ではありませんので、そのようなことは目指していません。大切だと感じるとは、日々小さな改善を繰り返すことです。
10が9に、9が8に、8が7に・・・というように少しずつの積み重ねで改善を行い、日常生活の中で行う動作をいかに楽にできるか、それが重要になります。トレーナーとクライアントで痛みが改善できるように協力して同じ方向へ歩もうとする姿勢が何よりも重要になります。
今日の内容が少しでも参考になればうれしく思います。
では最後に今日のまとめを行っていきたいと思います。
- 変形性股関節症は、一次性と二次性があり、二次性の方が多い
- 改善するためには、ただマシンで鍛えても期待した効果は得られない
- 全身の歪みを改善し、股関節周辺の筋肉も緩める
- 噛み合わせが良くなると、それを固めるように股関節周囲を鍛える
- 鍛え方は、日常動作で行う椅子からの立ち、座りや階段の上り下りを活用する
- 痛みは脳が感じており、身体だけではなく脳のストレスも取り除く必要がある
- 痛みはいきなり10→0を目指すのではなく、1ずつぐらいのペースで改善し、焦らない
このような内容でお送りしていきました。今日の内容が少しでも参考になればうれしく思います。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。