
スポーツの現場に出ると緊急を要する場面に出くわすことがあります。
目の前で捻挫をしたり、ボールが口に直撃し前歯6本が根元からとれてしまったり、そういう現場を目にすることはありました。こういった場面では、いかに冷静でいれるかということが重要になります。
今日は、捻挫をした選手にクライオセラピーという療法を活用し、足首の腫れを改善し、復帰までにしたことをまとめていきたいと思います。捻挫=休むではなく、病院で診断後、すぐに立たせ歩かせることで1週間程度で競技復帰できるレベルまで回復することもあります。
Contents
クライオセラピーとは?
まず今日お伝えするクライオセラピーとはどのようなテクニックなのでしょうか。僕自身も復習の意味を込めてまとめていきたいと思います。
■クライオセラピー【cryo-therapy】とは?
クライオセラピーとは、クライオ【cryo】=寒冷、セラピー【therapy】=療法、寒冷療法という意味があります。
クライオセラピー=寒冷療法というのは、どのような場合に活用することができるのでしょうか。
今回僕自身が活用した場面というのは、選手が捻挫をして足首が腫れ、その浮腫の改善のために活用していきました。
人間は恒常性維持機能というものを備えています。例えて言うなら、さいころ型の粘土があり、その粘土を殴ったとします。一時的には凹みますが、時間が経つにつれて元の形に戻ろうとする性質のことをいいます。
その機能のひとつに体温調整機能がありますが、人間は外気温が低いと一緒に体温が下がらないように熱を発生させ体温を維持します。逆に夏のような暑い環境では汗を出し、熱を体内から出す工夫をします。
こういった機能を活用し、足首の腫れた部分をアイスパックや氷水などで冷やし、冷やすことで結果的に冷やした部分に血液が集まり、循環を良くすることができ、浮腫(腫れ)の改善になるというテクニックになります。
血液が集まるということは、そこに栄養素も含まれているので、組織の修復も早くなります。
クライオセラピーができる、できないの判断について
今回は捻挫をした際にクライオセラピーを活用しましたが、捻挫の場合でもクライオセラピーができる、できないの判断については、靭帯の損傷レベルが判断材料になります。
捻挫には、軽度・中度・重度と3つのレベル分けがされており、それぞれのレベルによって対応が変わってきます。
- レベル1(軽度)・・・靭帯が伸びてしまったが損傷がない状態
- レベル2(中度)・・・一部の靭帯が損傷してる状態
- レベル3(重度)・・・靭帯が完全に切れてしまった状態
このように損傷の程度によってレベルが分けられています。今回の行ったクライオセラピーは、このレベル1に値する、靭帯が伸びただけで損傷が見られないような場合にのみ活用することができます。
そのため、クライオセラピーを行う際は必ず医師の診断が必要であり、その診断後に行うことになります。
- レベル1・・・クライオセラピーはできる
- レベル2・3・・・クライオセラピーはできない
このような線引きを理解しておく必要があります。
捻挫をした選手の状態について
先日捻挫をした選手も靭帯が伸びてしまっただけで、損傷はないということでクライオセラピーを行っていきました。
ラクロスの練習中、ディフェンスを行っていた際に捻挫をしてしまいましたが、足首はもちろん腫れ、足の指先から脛まで腫れあがり、パンパンの状態になっていました。
このときは、少し動かしても痛く体重をかけることも当然痛いため、そのまま病院へ直行しました。診断の結果は捻挫でしたが靭帯は部分的にも切れていないという診断で、医師からは冷やしてくださいと言われて診断は終了したそうです。
病院からはシップを貰い、松葉づえを1本出されそのまま家に帰ってきました。
実際に指導をした流れについて
捻挫をしてから4日目に初めて選手の状態を確認することができましたが、この4日間は特に何もせず安静にしていたそうですが、足の腫れは4日前とはあまり変わっておらず、痛みの程度も変わっていませんでした。
このような捻挫をした場合、浮腫を取り除かなければいけません。
15分間のアイシング→感覚を麻痺
一番はじめにしたことは、足首を氷水に突っ込みアイシングをしていきました。
アイシングというのは、感覚がなくなるまでか凍傷になってしまう可能性もあるので20分程度で感覚がなくならなければ一度冷やすのを終えます。
選手の場合、15分程度で感覚がなくなったので、アイシングをストップし、そこからクライオキネティックスやクライオストレッチに移っていきました。
クライオキネティクスというのは、冷やした後に関節運動を行うことであり、選手の場合はまず僕がさまざまな関節運動を行い、足関節を動かし、関節を動かすことで筋肉のポンプ作用を活用することができ、溜まっているものが流れていきます。
またアイシングをして感覚を麻痺させているので、痛みを感じることもありません。
痛みのない中で足関節のストレッチング
クライオキネティックスと並行してクライオストレッチも行っていきましたが、クライオストレッチは冷やした状態でストレッチを行っていく方法です。
捻挫をしてギブスで固定してしまったり、動かさない状態が続いてしまうと柔軟性が低下してしまうため、痛みの感じない範囲でストレッチングを行い、柔軟性の向上をはかっていきます。
このとき行ったのが、足首の背屈、底屈、など足首周りのストレッチングを行っていきました。
違和感が出たのでアイシング
上記のようにクライオキネティックスやクライオストレッチなどを行っていると、違和感が出てきます。このような感覚が出ればすぐにエクササイズなどを中止し、再度アイシングを行っていきます。
始めに15~20分間程度アイシングをしていますので、続いてアイシングを行う場合は5分程度で感覚がなくなるので、感覚がなくなれば冷やすのをやめ、再度エクササイズに移っていきました。
立たせる、その場で左右への体重移動、その場足踏み
座った状態での関節運動の次は実際に立たせていきます。立ったときも違和感もなく、痛みもありませんでしたので、捻挫していない側の脚に体重を乗せて立たせ、徐々に逆側へと体重を乗せていき、交互に体重をかけ、様子を見ていきました。
ここでも違和感は出ませんでしたので、次はその場で小さく足踏みをしてもらいました。これも違和感はなくできましたので、少しずつ歩いていくことにしました。
このときに選手も言っていましたが、怖さがあったけどこうやって体重をかけても痛くないのは不思議と言っていました。アイシングをして感覚を麻痺させているからという理由もありますが、捻挫をすると痛みを脳がインプットしています。
このインプットした情報があるままだと痛みを感じる可能性があります。立たせて歩いた時は、話をしながら痛みがないことを実感させ、そうすると本人も歩けるという安心が出てきて、体重をしっかりと乗せ、歩いていました。
歩いているときに少し違和感が出始めたので、またアイシングをしていきました。
歩く、蛇行しながら歩く
再度アイシングをして、感覚をなくしてから次は足首にテーピングを巻き、体重支持ポイントを理解させることと足首を固定する目的でヒールロックを行い、その状態で歩きに行きました。
次は直線的な動きだけではなく、少し蛇行するように歩いてみたり、円を書くように回ってみたり、折り返してみたりと直線的な動きから複雑な動きへと移行していきました。
少し違和感が出てきて、痛みも少しだけ残っていましたが、初めに比べれば、まさか歩けるようになるとは思っていなかったらしく、喜んでいました。
最後に足首を確認したところ、足の腫れも足首周辺に出ているぐらいで、軽減も見られ、足首も動かしやすくなりました。
この日は時間的な都合もあり、ここまでで終了し、次の日に続きを行うことにしました。
次の日までに行っておくこと
この日一緒にできたことはここまでですが、この後自宅ですることを伝えておきました。
以前、膝の手術をした選手を見たときに、なかなか浮腫の改善ができずでいましたが、こういった浮腫が出ているときにする必要があることがあります。
それはむくみと同じで、浮腫が出ている患部を圧迫することです。そして、脚を高く上げて過ごすなり、寝るときも脚をあげた状態で寝られるように工夫をする必要があります。
浮腫というのはむくみであり、これはリンパの流れと関係します。そのため脚を下げてしまうと重力の影響で下半身に溜まりやすく、翌日にまた腫れてしまう可能性があります。
圧迫をすることで、そこに老廃物などが溜まってしまわないようにすることができ、アイシングやエクササイズが終わってもこういうことをすることでより改善が早くなります。
今回はこういうことを伝えれていたので、次の日の浮腫も軽減できており、いい状態で2日目をスタートすることができました。
2日目に行ったこと
2日目には、昨日よりもさらに良くなっており、痛みは若干残るものの歩くことも怖さはなくなったそうです。
この日は、ストレッチングや関節運動を行ってから足首にテーピングを再度巻き、ヒールロックをした状態で立つ、足踏み、歩く、などを繰り返していきました。
このときに体重支持ポイントをきちんと理解してもらえるように指導し、歩き方などの動作も指導を行っていきました。
- 立つ
- 足踏み
- 歩く―直線
- 歩く―直線から軽く半円を書くように回り、また直線の動き
- 歩く-一方向への円を書く様に歩く(逆側も)
- 歩く―8の字を書くように歩く
- 走る―直線的な軽いジョグ
- 走る―直線から軽く円を書くように走る
- 走る―スピードを上げてのジョグ
2日目についてはここまでできることができて、最後は痛みも感じずに走ることができていましたし、体重支持ポイントを理解することができると違和感もほとんど感じなくなり、また左右への動きや複雑な動きになったときにうまくフラットな着地ができていませんでしたが、改善が見られ、腫れも引いていきました。
このように2日間選手についてクライオセラピーを行い、実際にジョグを行えるまで回復しました。現在は、チームに交じり復帰しています。
捻挫を予防するために体重支持ポイントを理解させる
ここまでの中でも体重支持ポイントのことを書いていますが、これを理解させることで捻挫を予防することができます。
そのために、ジャンプストップや左右への動きを取り入れて理解させていきます。
その場だけでなく、左右への動きでも同じでフラットに着地をしていきます。
これらを日頃から行い、捻挫の予防をしていきたいと思います。
まとめ
捻挫についての対応については、何度か経験していましたが、2日連続で選手につけたり、クライオセラピーがここまでできることが時間的に難しかったですので、こういった経験はできたことは大きかったと思います。
現場では捻挫がよく起こったり、何度もする選手もいますが、そういった選手が同じように捻挫をしないためにも体重支持ポイントを理解させること、前後左右の動きでもフラットに着地し、踵で体重を支持することで足首を捻るということも防げるようになります。
日頃からヒールロックをしてみたり、体重支持ポイントを理解できるように板にポイントを貼り付けそれを踏んでもらったりし、意識付けを行っていますが、実際のプレーを見ているとまだまだ課題も多くみられます。
今後はそういったところを指導し、捻挫を予防できる環境を作っていきたいと思います。
では最後に今日のまとめをしていきたいと思います。
- クライオセラピーとは、寒冷療法という意味である
- クライオセラピーは軽度の捻挫のみに活用することができる
- 捻挫をしたからといって、絶対に安静にしなければいけないということではない
- 捻挫をした後は、浮腫の軽減を行うために患部を圧迫し、脚を高く上げるなどの工夫をする
- 痛みは脳が覚えているため、患部だけではなく脳の情報を書き換える必要もある
このような内容でお送りしていきました。
今日の内容が少しでも参考になればうれしく思います。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。