
今日は体調が良かった、逆に悪かった。そんなことを意味するように使われているのが“コンディショニング”という言葉です。コンディショニングという言葉は、その日の【体調】を指し示す言葉としてよく使われていますが、実際には体調という意味も含まれます。
しかしコンディショニングという言葉が本来指している意味は、一般的に使われている体調という意味だけではなく、その他にも多くの意味が含まれています。
- 身体的
- 防衛的
- 精神的
- 栄養
- 休養
本来のコンディショニングが指す意味の中にこれらの要素すべてが含まれており、これら1つでも足りていない状態であったり、不足している状態であれば、コンディショニング不足ということになります。
これらはそれぞれがバランスよく向上している状態になることでコンディショニングのいい状態ということが言えます。
今日はこのコンディショニングという言葉の意味や、その内容について書いていきたいと思います。
Contents
コンディショニングという意味
コンディショニングという言葉はどのような意味があるかは先ほどもお伝えしましたが、もう少し深く掘り下げていきたいと思います。
1、調整。調節。体調や環境などをととのえること。
しかしこれだけではなく、トレーナーとして活動する上で理解しておかなければいけないのは、コンディショニングという意味はこの図のようなことが含まれるということです。

トレーナーという立場であれば、この中の【身体的】という要素を主に専門とし、身体的コンディショニングの向上ができるように指導していくことがメインの仕事となります。
身体的コンディショニングとは?
身体的コンディショニングとは、下記の図のようなことを指し、バイオモーターアビリティのことを指します。
この図の体力要素をバイオモーターアビリティといい、これらは1つだけ優れていても問題があり、すべてがバランスよく向上することが重要となります。
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バイオモーターアビリティについて
バイオモーターアビリティとは、上記の図のことであり、これらすべてを向上させることがトレーナーの仕事になります。
ここからはひとつひとつの体力要素を見ていきたいと思います。
筋力について
筋力とは、『筋肉が収縮したときに発揮される力』という意味と理解していますが、筋肉というのは成人になると男女の間で大きさが異なってきます。
男性らしいという印象を与えるには、大きく肥大した筋肉を持つことでそのような印象を与えることができます。また女性らしさというのは、しなやかな筋肉をつけることで女性らしさというイメージになります。
成人になるとなぜここまで身体つきが変わるのでしょうか?
筋肉は1㎠あたり約4~6kgの力を発揮できるとされており、これは男女とも同じです。そのため、男女での筋力差は性別ではなく、筋肉量の違いによって生まれ、もし男女の筋肉量が同じであれば筋力も同じということになります。
この筋肉量の差を生むのは、同じトレーニングをしたときに男女間では男性ホルモンの分泌量に違いが生まれ、男性は女性の2倍ほどの男性ホルモンが分泌され、このホルモン量がトレーニング効果の違いを生み出しています。
いわゆる男性は女性よりも筋肉がつきやすいと言われるのは、このためです。
生理的限界と心理的限界
日頃限界と思う力を出していたとしても、実はそれは限界ではありません。人間が持つ限界の力を発揮したとき死に至るといわれています。それを自然に防いでいますが、日頃感じる限界というのは何が決めているのでしょうか?
それは心理面での限界であり、生理的にはまだ余力を残している状態です。人間は生理的限界の約70%程度で生きていると言われており、そのあたりで心理的限界を迎えるわけです。
よく聞く火事場の馬鹿力とは、この心理的限界を突破した瞬間であり、オリンピックなどで自己新記録を出す選手も極限状態の中で、心理的限界を突破し、普段は発揮されないような力が発揮され、好成績を収めることができます。
逆に心理的に弱い選手は、自己記録に遠く及ばなかったりし、筋力というのはこの生理的限界と心理的限界の2つの存在が大きく関与しています。
筋肉の収縮タイプ
筋肉というのは基本的には収縮することが主になりますが、その収縮の仕方にもさまざまな形態があり、収縮のタイプによって名前が異なっています。
- 等尺性筋活動・・・アイソメトリック
- 等張性筋活動・・・アイソトニック(エキセントリック・コンセントリック)
- 等速性筋活動・・・アイソキネティック
1、については、胸の前でいただきますをするように両手を合わせて互いに押し合うような筋活動のことで、筋肉が長さを変えずに力が発揮されている状態です。空気椅子のような状態も同じです。
2、については、一般的なものであり、例えば、ダンベルを手に持って肘を曲げます。このとき上腕二頭筋と言われる力こぶは筋肉が収縮しながら力を発揮しますが、このような曲げながら力を発揮する筋活動をコンセントリック(短縮性筋活動)といいます。
また、先ほどと同じようなトレーニングで、10kgのダンベルを1回しか持ち上げることができず、11kgのダンベルを持つとします。すると片手では持ち上げられません。両手で持ち上げ、補助している手を離すと、曲げようとしていますがそれに耐えきれず筋肉が伸ばされながら肘は伸ばされます。
このとき筋肉は結果的伸ばされながら力を発揮しており、このような筋活動をエキセントリック(伸張性筋活動)といいます。
3、については専用の機材が必要となりますが、文字通り同じ速度で動き続ける筋活動のことをいいます。これは速度がマシンなどによって制御され、曲げるときも伸ばす時も同じ速度で一定化されるような筋活動をいいます。
筋力を理解する上では非常に重要なことです。
持久力について
持久力とは、さまざま要素がありますが、一般的に持久力といえばスタミナとイメージし、有酸素性持久力のことを指すと思います。
ただ、有酸素性持久力だけではなく、無酸素性持久力、筋持久力、スピード持久力などさまざまな体力要素があります。
有酸素性持久力とは?
有酸素性持久力とは、全身持久力や心肺持久力ともいわれ、いわゆるスタミナという言葉で表現されています。
文字通り、心臓と肺の持久力になりますが、酸素を取り入れながらある一定のスピードをどれだけ持続できるのか、という能力になります。これらの能力は最大酸素摂取量というものがひとつの指標となり、この最大酸素摂取量というのは、体重に比例すると言われています。
どれだけ体内に酸素を取り込むことができるか、という能力ですが、体重に比例するとなると関取が一番最大酸素摂取量が高いということになり、一番スタミナが優れいてるということになりますが、実際そうではありません。
いかに体重が少なく、そして体重1kgあたりどれだけ多くの酸素量を取り込むことができるのか、ということが重要であり、マラソン選手などは大会が近付くと減量をし、体重を減らす選手もいます。
取り込める酸素の量が同じでも、より軽い方がその物体を遠くへ運ぶには効率がいいことになります。そのために減量をし大会に臨んだりします。
この指標というのは専門の機材を要するため、あまり一般的ではありません。有酸素性持久力を向上させるために、普段活用されるのは、心拍数であり、これを活用して持久力の向上を図ることが多いと思います。
有酸素性持久力を向上するには心拍数を指標にする
有酸素性持久力を向上させようと思うと、どうすればいいのでしょうか?
有酸素性持久力を向上させようと思うと、推定年齢最大心拍数の約60%以上で活動を行うと向上すると言われています。また最大酸素摂取量を指標にしても、約60%以上の強度を目安にトレーニングを行うと有酸素性持久力は向上すると言われています。
例えば・・・
20歳の選手の場合 220-20(年齢)=200 という式が成り立ち、推定年齢最大心拍数は200拍/分となります。 ※220に年齢を引いた数値が推定年齢最大心拍数となります。 |
20歳の選手の場合、200拍/分となりましたが、この60%以上でトレーニングをすることで有酸素性持久力が向上すると言われています。ですので、指標となる心拍数は120拍/分 以上ということになります。
120拍/分以上で5分間走などの持久力トレーニングをすることで向上することになります。
筋持久力の向上について
筋持久力というのは、筋肉がある一定の力を発揮し続ける能力のことです。
筋持久力を向上させようと思うと一般的には以下のように言われています。
筋持久力の向上 最大筋力1/3 × 20~30回 という式が一般的です。 |
ですが、本来は下記の通りする必要があると言われています。
最大筋力1/3 × ∞ というのが筋持久力の向上には必要だと言われています。 |
基本的には限界まですると言われており、そこまで行うことで筋持久力は向上します。
スピードについて
スピードについて触れるには、スピードについて理解する必要があります。まずスピードには2つの要素があると考えることができます。
- スピード
- 速さ
それぞれはどのような意味を持つのでしょうか?
スピードとは?
スピードという言葉を調べるとこのような意味があります。
1 速さ。速度。速力。「―オーバー」2 速度が速いこと。「―ライト」
どういうことかというと、スピードは変えられるものであり、動きや動作の効率性を高め、リラックスしたスムーズな動きをすることでスピードを高めることができます。
動きが硬い選手が走り方を改善し、スムーズな動きができるようになるとタイムが向上したり、力んでバットを振っていた選手がリラックスしてバットを振れるようになると、スイングスピードが向上します。
このようにスピードというのは動きや動作に関連するものであり、変えられるものと理解することができます。
速さとは?
では速さとスピードの違いはどのようなところにあるのでしょうか?
ここでは筋線維のことをお話しますが、まずこちらで筋線維のタイプに参考にしてください。
速さというのは変えられないものであり、筋線維のことを指しています。例えば、100mで世界新記録を持つウサイン・ボルト選手は、筋線維のタイプは9:1ほどの割合で速筋線維が多いと言われています。
速筋線維が多いほど筋肉の収縮速度も速くなりますの。遅筋線維が多いと筋肉の収縮速度は遅いものの持久性に優れています。
この筋線維のタイプはほとんど変わらないといわれていますが、この筋線維のタイプは大方遺伝で決まるようです。
ここからも理解できるように速さというのは変えられないものであると理解することができます。
これらからスピードという要素は、リラックスしてスムーズに身体を使うこと、動作を行うことがベースになり、そのためには効率的に身体を動かせるように指導が必要となります。
調整力について
調整力とは、コーディネーションとコオーディネーションという2つに分けることができます。
調整力とは、身のこなしや身体を自由自在に動かせる能力のことを指しています。
コーディネーションとは?
コーディネーションとは、ある動きを習得する際、段階を踏んでレベルアップするようにその動作を習得させます。
こういった動きの習得には脳が関与していると考えることができ、どのように動かすのか、習得したい動作をゆっくりした速度から速くしたり、簡単な動きから複雑な動きへと移行したりすることで、その習得したい動きを段階的に脳にインプットしていきます。
このように脳に段階的に動作をインプットし、動きづくりを行うことをコーディネーションとらえています。
コオーディネーションとは?
一方、コオーディネーションとは脳が関与しないという考え方です。
どういうことかというと、例えば、野球のプレー中イレギュラーバウンドした打球を捕るとき、どのように身体をうごかそうかとを意識するよりも先に身体が動きます。こういった咄嗟のときに身体が反応できるようにするためにコオーディネーショントレーニングが行われたりします。
コオーディネーショントレーニングでは、できることを目的とせずあえてできない、難しいことを経験させ、予想がつかないことが起こる試合中に咄嗟に動けるようにするためにトレーニングを行います。
スキルの向上というのは、このコーディネーションとコオーディネーションの組み合わせで向上していきます。
柔軟性について
柔軟性については、静的柔軟性と動的柔軟性があります。それぞれどのようなことを意味しているのでしょうか?
静的柔軟性とは?
静的柔軟性とは、文字通り静的に行う柔軟性のことですが、例えば長座の状態で前屈しどれだけ身体が柔らかいのか、動きの伴わない中でどれだけの柔軟性があるのかということです。
スポーツ選手で動きが柔らかいと言われる場合、この静的柔軟性が高いわけではありません。一般的に言われる身体が柔らかい選手は動きも柔らかいのかといえば、イコールではありません。
スポーツ選手については、この静的柔軟性は競技にもよりますが、ある程度の柔らかさがあればいいとされ、体操選手のような柔軟さがスポーツ選手全員に必要なわけではありません。
動的柔軟性とは?
動的柔軟性とは、動きの柔らかさであり、スポーツ選手に重要なのはこの動的柔軟静です。
体操のようなことを緊張のない動き、リラックスした動きを繰り返すことで筋や関節などに刺激が加わり、動的柔軟性が高まっていきます。
体操などを行うときもただ身体を動かすのではなく、常にリラックスした状態で動かすことが重要です。
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コンディショニングが重要な理由
上記の内容でコンディショニングの重要性を理解していただけたと思いますが、どれかひとつの要素でも不足してしまうと、ベストコンディショニングではなくなります。
精神的な部分で言えば、練習ではプレーもさえ、高い成績を残せているのに、試合になると緊張しうまく動けないとなればベストパフォーマンスは発揮できません。
また防衛面を見れば、遠征先でお腹を下して調子が悪いとなればプレーにも影響が出ます。
いつも練習をものすごくするけど、栄養が足りておらず、細い身体で疲労がたまっているようなことでは、試合で高いパフォーマンスを発揮することはできません。
このように身体的、防衛的、精神的、栄養、休養、どれひとつかけてはいけない理由が容易に想像できると思います。
身体的コンディショニングが重要な理由
身体的コンディショニングも同じで、筋力、持久力、スピード、調整力、柔軟性、この5つの柱がどれかひとつでも不足するとコンディショニング不足となります。
筋力が弱すぎてバットが振れないとプレーどころでありませんし、持久力は高いが柔軟性が低いとなるとけがをしやすくなります。
5つの柱どれひとつ欠けることなく、バランスよく向上させることが重要になります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。一般的に言われているコンディショニングという言葉は体調を指したり、その日の調子を指したりしますが、本来はこのような意味があり、その理解には長い年月が必要となります。
トレーナーとして活動する上ではこの理解が必須であり、これを理解できないとメニューを作成することができません。
そのためトレーナーにとってはまずこのコンディショニングという言葉を理解し、そして体力要素をひとつひとつ理解していくことは非常に重要なことです。
今日の内容が少しでも参考になればうれしく思います。
長い文章になりましたが、今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。