投げ方

胸を張ってボールを投げようとすると肘が下がってしまう理由

よく野球の指導者が選手に向かって言う言葉があります。

「胸を張ってボールを投げろ!」

このアドバイスを受けた選手は、肘の位置が下がり、肘を痛めてしまう可能性があります。

投げ方を見ると、どこかぎこちなくスムーズが感じられない投げ方をしていると思います。

これは身体の構造を知ればわかることですが、野球経験者は当たり前のように言ってしまいそうなアドバイスだと思います。

今日は、胸を張ってボールを投げようとすると肘が下がってしまう理由をお伝えしていきたいと思います。

 

胸を張って投げるフォーム

胸を張って投げろとアドバイスされた選手は、このように胸を張って投げようとすると思います。

【画像:胸を張るフォーム】

ここから実際に投球しようとすると、このような動作になると思います。

【画像:投球動作】

本来は、肩の高さぐらいまで腕はスッと上がり、体重移動をした後、骨盤、体幹、肩、腕、手、最後にボールという順に動きが伝わります。

【画像:一連の動き】

この一連の動きがスムーズだとそれだけスピードも生まれますが、どこかに緊張があるとそこで減速されてしまい、スピードが出ません。

胸を張って投げようとする選手は、肘が下がってしまい、投球時はボールを押し出すような投げ方になってしまいます。

【画像:押し出すような投げ方】

 

胸を張ってしまうと腕は上がらない

このブログでも何度も肩の構造については触れていますが、今回も肩と腕の関係についてお伝えしていきたいと思います。

人間の肩は前方30度に位置しており、上から見るとこのようになっています。

肩の位置

自然に腕を上げようと思うと、本来は身体の前側で腕を上げていくことになります。

【画像:身体の前で腕を上げる】

ただ、胸を張った状態で腕を上げようと思うと肩を引くような状態になっていますので、身体の後ろ側に腕が来てしまいます。

【画像:身体の後ろに腕がくる】

このような状態になってしまうと、肩関節では腕と肩がうまく噛みあわず引っかかってしまいます。

肘は下がってしまい、それ以上上げることができなくなります。

実際に、胸を張った状態で身体よりも背中側で腕を上げていってみてください。そうすると、腕がある位置にくるとひっかかってしまい、それ以上あげられなくなります。【画像:後方から腕を上げる】

これは関節の構造上、腕が上がらない位置関係であり、スムーズにあげようと思うと、胸を張ったり肩甲骨を寄せたりしないことです。

ここまでお伝えしてきたように、トレーナーだけではなく選手を含めて、このような関節の構造や動きを知っておくことも大切だと思います。

 

投球動作をスムーズに行う方法

選手をより良くしてあげたいという想いからアドバイスをし、それが不適切な場合もどかしい気持ちになってしまいます。

よくあるのが、お子さんを自ら指導される親御さんだからこそおきがちなのが、アドバイスの量が多すぎるということです。

アドバイスの量が多すぎると頭で整理できず、いろんなことを考えてしまい、良い結果に結ぶつかないということもあります。

選手やお子さんに対して想いがあるからこそなりがちなのですが、ここは冷静に見極めていただきたいところでもあります。

さて、投手を見ていると腕の動きがどこかぎこちないという選手もいると思いますが、そんなぎこちない動きをスムーズに動かすためにはどうすればいいのでしょうか?

それは腕回しを行った流れで投球することです。

腕回しから投球へ

先ほど肩の構造についてお伝えしましたが、肩が緊張せずスムーズに腕を回すためには身体の前で腕を回す必要があります。

肩から腕がぶらんとぶら下がっているようなイメージで、リラックスして腕を回していきます。

リラックスしていると腕の位置は自然と決まってきますので、ただ気持ちよく感じるところで回していきます。

【画像:腕回し前、横】

これができると、腕が肩ぐらいの高さまで上がってきたときに投球動作に入り、頭の後ろに手を落とし、そこから一本背負いをするようなイメージでフォロースルーまでいきます。

【画像:腕回し→投球動作】

このときどこかに意識を向けるのではなく、ただ気持ちよくリラックスして動作を行います。するとどこにもひっかかりを感じずに投球動作を行うことができると思います。

このような動作を繰り返してから実際にボールを投げてみると、気持ちよく投げられるようになると思います。

そして、胸を張って投げるようなことが必要ないということも理解していただけると思います。

 

なぜ目指す投球フォームにならないのか?

これまで全国大会に出場した中学生の野球選手や、これから大学でプロを目指すような選手、社会人でプロを目指すような選手の指導を行ってきました。

その中でさまざまな課題があり、その都度一緒にその課題改善に取り組んできました。

身体がうまく動かせない、投げられない、スイングできないなどありましたが、やはり根本は身体の構造を理解することが何よりも大切だということを実感しています。

ここでは、みなさんが抱えている悩みが少しでも改善できればと思い、現場でどのようなことを見ているのかをまとめています。

ひとつでも参考になればうれしく思います。

足元の問題について

投げ方をシンプルに考えると、立つ・前に・投げるという3つの局面で分けることができます。

その立つという局面では、どのように立てばいいのか、うまく立てないときに投球にどのような影響が出るのかなどを詳しくお伝えしています。

ピッチング・バッティングは足元の環境を整えれば良くなる

脚を上げる理由

投手が脚を高く上げるようなフォームを見たことがありますが、これはただやっているのではなく大きなエネルギーが生まれ、球速に影響を与えます。

脚を上げるのか、上げないのかは個性ですが、どのようなメリットがあるのかをまとめています。

投手が理解しておきたい脚を上げる理由と身体を捻る理由

前でボールを離そうとすると肘を痛める

不適切なアドバイスとしてボールを前で離せという言葉がありますが、このような動作をしてしまうと肘を伸ばし切ってしまい、それを何度も繰り返してしまうと肘や肩を痛めてしまう可能性があります。

なぜ肘や肩が痛むのか、その原因を改善についてお伝えしています。

前でボールを離そうとすると肘を痛める理由

キャッチャーのスローイングについて

キャッチャーのスローイングについてですが、右投げの場合、ボールを捕ってから右脚を踏み出せと教わった記憶がありますが、このようなステップはスムーズに身体が動きません。

ステップの踏み方を変えたり、捕ってから速く送球するためにどのようなことを考える必要があるのかなど、詳しくまとめています。

前でボールを離そうとすると肘を痛める理由

それぞれの記事が細かいフェーズに分かれているため、読みやすいかなと思いますが、まず大事なことは今の投球の課題は何かを明確にすることです。

なんとなくこのような情報を見るとやってみたくなると思います。それも大事なことですが、まずは現状をしっかりと把握することで改善の糸口を見つけることができると思います。

この中のどれかひとつでもお役に立てると嬉しく思います。

 

まとめ

今回は、胸を張って投げると肘が下がってしまう理由というテーマでお伝えしていきましたが、いかがでしたでしょうか。

アドバイスとして結構言われている言葉だと思います。

僕は高校までしか野球をしませんでしたし、僕よりもうまい人はたくさんいました。だからこそそういうレベルの高い野球をされてきた方からの言葉は本当に選手にとっては大切なものだと思います。

その逆も言え、影響力があるからこそ身体の構造から見た動きと離れたアドバイスをしてしまうと、できないことをできるように指示しているのと同じになってしまいます。

選手も指導者も、どちらもしっくりこない時間が続いてしまうと思います。

そんなときに上記でお伝えしたような、身体のことを踏まえてアドバイスを送ると今以上に選手が野球を楽しめるようになるのではないかなと思います。

最後に今日のまとめをしていきたいと思います。

  • 胸を張ってしまうと肘は上がらない
  • 肩は前方30度の位置にある
  • 斜め前の方向から腕を上げるとスムーズに上がる
  • 腕回しを行い、投球に入るとスムーズに腕が動く

このような内容でお送りしていきました。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

キャッチャーのスローイング|ステップや腕の振りについて考える

先週、社会人野球選手にキャッチャーのスローイングについて指導する機会がありました。肩は強く、投手をすれば140kmは出るぐらいの選手ですが、もう少しスローイングについて質を上げたいということで指導をしてきました。

肩が強いがためにステップの使い方が不自然だったり、腕だけで投げるようなフォームになっており、そのあたりを修正すると非常に球筋も良く楽にセカンドまで投げられる感覚が出てきたそうです。

今日はキャッチャーのスローイングについてお伝えしていきたいと思います。

 

キャッチャーのスローイングについて

選手とのやりとりの中で、最近の課題を明確にしていきました。

  • 上体が前に突っ込んでしまう
  • ステップがスローイングと合わない
  • 腕がスムーズに動いていない感覚がある

これが主な課題であり、動作を見ているとその課題としてあげている動きはよくわかりました。

投手の場合、スローイングは立つ・前に・投げるという3つの動作で考えることで整理しやすくなりますが、キャッチャーのスローイングは捕る・持ち替え・投げるという3つの動作をイメージして行っていきました。

捕る動作

ただボールをキャッチするというイメージだけではなく、ボールをキャッチするときにどのように身体を使えば次のスローイングへスムーズに移行できるか、また勢いをつけられるかなどを確認しつつ行っていきました。

一般的なステップの仕方とすれば、右投げの場合、捕球した後右脚を左脚の前を通し、大きく前にステップするという指導を受けることが多いと思います。

捕球体勢によってもそれは異なると思いますが、僕自身は捕球後は右脚を大きく前に踏み出しなさいと習ったことを覚えています。

構え

ステップ

これをキャッチャーが言葉通りに行うことは非常に動きづらく、次の動作が遅くなってしまいます。

盗塁を阻止するためには、コンマ何秒の世界になりますので、いかにロスを減らすか、そういうことを考えることも必要です。そう考えると、このような動作はあまり速く動けません。

次の動作に移行しやすく、勢いをつけるためには捕球すると同時に軽く上げていた左足を着地し、前にステップを踏むことでスムーズに動くことができます。

足

捕球

ステップ

選手の場合、この左足の使い方は以前も指導をしていますが、タイミングがずれており、左足の着地が速く、前に突っ込んだような状態でスローイングに移っていたため上体も前に突っ込んでしまっていました。

捕球体勢については、自分が次に移行しやすいところで捕球すればいいと思いますので、ここについては捕球しやすいところを選手自身に探してもらいました。

持ち替えについて

持ち替えについては、捕球後左足の着地と同時に前にステップを踏み、その流れでグラブを耳元に素早く移行させながら右手に持ち替えます。

耳元に持ってくれば、その後はスローイングに移行するだけの状態になります。

構え

スローイング

フォロースルー

これは後で練習時に行っておきたいポイントなどをお伝えしていきたいと思います。

投げる動作について

ピッチャーの場合、腕の振りは大きく、自然に動かすとこのような動きとなります。

スローイング

イメージとしてはこのような動きとなりますが、キャッチャーの場合腕の振りがここまで大きくなってしまうと時間がかかってしまうため、ランナーを刺せる確率も低くなってしまいます。

そのためこの腕の振りを小さくする必要があります。このようなイメージです。

投げ方

耳元から腕で目の前の投手を切り落とすようなイメージで小さくスイングしていきます。そうすると素早く2塁へ送球でき、前方へは下半身で勢いがつけれていますので、送球も勢いが出てくるはずです。

指導した選手の場合、前に突っ込んでしまい、うまく体重移動ができていないことで下半身で勢いがつくれず、球がいく感覚がなかったそうです。

その原因は腕の振りではないかと考えて、腕の動きを調整してしまっていたそうで、それが緊張となりスムーズな動作の妨げとなってしまっていました。

スムーズに腕が動くようにサポートし、シャドーを行っていき、スムーズさが出てきたところで実際にボールを投げていくと引っ掛かりもなく気持ちよく投げられたそうです。

キャッチャーのスローイングについてはこのような手順で指導し、動き自体を変えていきました。

捕球からスローイングまでの流れ

ここまでは途切れ途切れのイメージで、少しわかりづらかったかもしれませんので、イメージをしやすいように一連の動きをお伝えしていきたいと思います。

流れ

このような流れでキャッチャーはスローイングまで行っていくといいのではないでしょうか。

 

キャッチャーに伝えたい練習方法について

これまでキャッチャー数名とセッションを行ったり、指導を継続してきましたが、その中でそれぞれの課題があり、その課題に対して動きや練習を取り入れたいことなどを伝えてきました。

今回のテーマはスローイングですので、実際に選手にアドバイスしたことをご紹介したいと思います。

ステップの練習

これは先ほどお伝えした捕球と同時に左足でステップを踏み、前方へ勢いをつけるということですが、いきなり試合でできませんので、日頃の練習の中に取り入れていきました。

一人で練習する際も壁当てをするように、跳ね返ってきたボールを捕球すると同時にステップを踏み、そのタイミングと足の使い方について練習していきます。

先ほどの流れをいきなりすべてしてしまわずに、まずは1つ1つの部分に分けて最後に合わせて全体の動きとして行っていきます。

踏み出し

持ち替えの練習

これも先ほどの流れのひとつになりますが、捕球した後スッとグラブと右手(右投げの場合)を耳元に持ってきて、いつでも投げられる体勢を作ります。

グラブから右手に持ち替える素早さを練習で身につけるために、なんとなくやるのではなく、1回ずつ素早く動く必要があります。

捕球

持ち替えからのスローイング

2塁でランナーを刺すためには、ピッチャーとの兼ね合いもありますが、キャッチャーはいかに素早く2塁へ送球できるかが重要です。

そのときにボールの握りは縫い目にかけられることもあれば、かけられないこともありますし、うまく握れないこともあると思います。そんな中でも2塁へ送球しなければいけません。

どのような握り方でも2塁へ送球できるように、練習時からさまざまな握りで2塁へ送球する経験をしておくことが重要です。

握り 

握り

握り

このような経験をしておくことで咄嗟にそのプレーが試合で出るときに対応できる可能性が高くなりますが、いつも縫い目にかけて2塁送球をしておくといざというときにボールがすっぽ抜けたり、対応しきれません。

さまざまな捕球体勢からのスローイング

ボールの握り方と同じですが、ピッチャーの投球がすべて身体の中心部に来ることはなく、内外へそれますが、コースに関係なく2塁へ送球しなければいけません。

さまざまなコースを想定して、崩された状態から投げることも練習の中で取り入れることも重要です。

捕球

送球

捕球

ステップ

 

まとめ

今回選手に指導したことは、上記のようなことで送球も非常に良くなりました。ステップや腕の振りの確認もでき、本人も気持ちよく送球できるようになったと安心していました。

上記のことがすべてではありませんが、少年野球をしていたときに教わった常識的なことは、本来は動きづらかったりすることもあります。

そのひとつが逆シングルでの捕球です。できるだけ正面に入って捕るように教わってきましたが、1塁への送球を考えると逆シングルの方が動きやすいため、逆シングルで捕球する方がスムーズです。

そういったこともあり、選手自身がどのように身体を使えば動きやすいのかを感じてもらうことも大切なことです。

今回はキャッチャーに限ってお伝えしていきましたが、少しでも選手の参考になればうれしく思います。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

野球選手が知っておきたいリリースポイントを確認する方法

「リリースポイントが手前にあるからもっと前でボールを離せ」そんなアドバイスを受け、実際に前でボールを離そうと投球していると、いつの間にか肩が痛くなった。

そんなことを経験をしたことがある選手もいるかもしれません。野球選手全体に共通することですが、身体の構造から考えるとリリースポイントはどこになるのでしょうか?

バレーボールのブロックの位置だとよく表現されますが、具体的には腕を地面に対して垂直に挙げ、そこから外側に45度、前方に45度の位置がリリースポイントになると言われます。

今日は野球選手全体に共通するリリースポイントと、動作の組み立てについてお伝えしていきたいと思います。

 

理想のリリースポイントはどこ?

オーバースロー、サイドスロー、アンダースロー。それぞれ腕の角度が異なると思っている方も多いと思いますが、これらはすべて体幹と腕の角度の関係は同じです。

何が違うのかというと、体幹の傾ける角度が異なります。どういうことかというと、こちらをご覧ください。

オーバースロー  サイドスロー  アンダースロー

このように体幹部と腕の角度は同じで、体幹部の傾きが異なるとそれぞれの投げ方に変わるということです。基本はすべて同じということになります。

ですので、ここからお伝えするリリースポイントもそれぞれ見え方は異なりますが、基本は同じということです。

では、どのようなリリースポイントが理想なのでしょうか?それは、外転45度、前方45度の位置で、いわゆる0ポジションと言われるポイントになります。

0ポジション

0ポジション

この位置は、肩周辺の筋肉が最も多く動員され、効率よくボールに力を伝えることができるポイントであり、且つけがをしにくいポイントとも言えます。

このリリースポイントで投球をすることができているでしょうか。

 

自分のリリースポイントやフォーム知る方法

自分のフォームやリリースポイントはどうなっているのか?それを知るためにはスローモーションで投球動作を行ってみることです。

スローモーションで動くと動作を理解いる場合、腕の動きや身体全体はスムーズに動くことができますが、動きの理解ができていなかったり、身体の構造上不自然な動作をしている場合、どこかで引っかかったり、見た目として不自然さが出ます。

速い動作はごまかしがききますが、スローモーションで動くことはごまかしがききません。本当の理解をしているのかを見極める上でスローモーションで動くことでわかります。

また自分のリリースポイントを知るためには、鏡を見ない状態でここだと思うリリースポイントで止まってください。そこが投球時のリリースされるおおよその位置になります。

リリースポイント

自分で思うこの位置を覚えておいてください。もし近くに誰かがいればその手の位置に相手の手を沿え、お互いが拮抗し合うように投げる側は相手の手を押してみてください。

もし一人の場合、この位置で壁か何かを押してみてください。

このとき身体のどこに力が入るでしょうか?その力の入った位置が日頃投球時にストレスを最も受けている箇所になります。

リリースポイント

身体のどこに一番力が入るでしょうか。本来はリリースされる瞬間は一番大きな力が出る体幹に力が入りますが、肩や腕の一番力が入る場合、その箇所へのストレスが大きくなっている可能性があります。

また身体の使い方も腕で投げているような動作になっているため、ケガのリスクも高くなってしまいます。

もし腕などに力が入っている場合、壁を押して体幹に一番力が入る位置を探します。そこが最もボールに力を伝えられる位置となるため、この位置をリリースポイントとして理解しておきます。

 

リリースポイントを知れたからと言ってすぐには変わらない

ただここでおさえておきたいのは、リリースポイントを知ることはできましたが、実際に投球するときはそこでボールを切るだとか、押すなどの意識を持ってしまうと肘が伸びきったり、肩が引っ張られ痛める原因になってしまいます。

あくまでも実際の投球中は、壁押しで理解したリリースポイントでボールを離す“イメージ”で投球をすると気持ちよく投げられるようになります。

もっと考えないといけないことは、そもそもリリースポイントは身体を自然に使えていると0ポジションにきますが、0ポジションからずれてしまっている選手は、何か原因があるはずです。それが理解の差なのか、リリースを迎える手前の動きで問題があるのか。

それを明確にしておかないと、ただリリースポイントを知っただけで実際の動作は変わらないということになってしまいます。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。投球時のリリースポイントを確認するためには、まず自分がどこでボールをリリースしているのかを試し、その位置で壁などを押し、どこに力が入るのかを確認します。

このとき、体幹部に力が入るのであれば問題なく、腕や肩にかかってくる場合、それらにストレスのかかる投げ方をしているということであり、それを繰り返すとケガのリスクも高まってしまいます。

そうならないためにも、現状をよく知るために今日ご紹介した方法を試していただければと思います。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

ピッチングフォームを考える|リラックスすればスムーズな動作ができる

筋肉を緩める方法はストレッチ意外にもたくさんある【6種類ご紹介】

ピッチングフォームを指導するとき、野球経験のある方はわかるかもしれませんが、自分が経験してきたこと、やってきたことを伝えがちになります。

そして、そのアドバイスは熱が帯びれば帯びるほど数が多くなり、その熱とは裏腹にピッチャーは迷い、動作がぎこちなくなり、結果的にアドバイスが原因でベストパフォーマンスから遠ざかることがあります。

素晴らしい指導者がいる中で、どうしても自分の考えを選手に押し付けてしまいマイナスになってしまうことがあるのも事実です。

指導者との巡り合わせは運命かもしれませんが、野球人生をその運命だけに委ねるのは少し危険な気もします。だとすれば、自分で身体の使い方を知り、自分の考えを整理する必要があります。

今日の内容がピッチングフォームに悩む投手の参考になればうれしく思います。現場での行ったセッションのことを振り返りながら、ピッチングフォームについて考えていきたいと思います。

 

ピッチングフォームのベースをどのように考えるのか?

まず考えていきたいことは、ピッチングフォームのベースをどのように考えるかということです。

どういうことかと言うと、筋力を高めるとピッチングが良くなるのか、柔軟性を高めることでハイパフォーマンスを発揮できるのか、何をどうすれば自分の最大の力を発揮することができるのかということです。

僕自身、投げるということに限らず、バットを振る、走るなどの動作に共通すると考えているのが、リラックスをしてスムーズな動作を行うことがベースになると考えています。

リラックスをすることで、関節に対して過度なストレスもかかりませんし、アームスイング、バットスイングなどのスピードが向上し、それがパフォーマンスにつながると考えています。

リラックスしてスムーズな動作ができると、その感覚は気持ちいい、または快の感覚を得ることができ、その快の感覚を感じながらプレーをすると結果も良く、結果が良いから楽しい。だから練習を率先してするようになり、さらにうまくなる。

そんな好循環になると思いますし、それを作るのもトレーナーとしての役目でもあり、目指すところでもあります。

指導するときの軸になる考えは、リラックスしてスムーズな動作を行うということです。これを目指すことでさまざまな課題がクリアになっていくはずです。

 

アドバイスの量を考える

指導をしているとひしひしと感じられますが、トレーナーの技量以上に選手は良くならないということであり、選手の現状は僕自身の現状でもあると思っています。

うまくなってほしいと思うが故に陥りがちなのが、アドバイス量が多くなってしまうことです。

先ほど、ピッチングフォームのベースはリラックスをすることだとお伝えしましたが、リラックスをするためには部分に意識を向けすぎないことが必要です。

  • 腕を上げるときは●●して・・・
  • 手首は●●して・・・
  • 胸を張って肘を●●して・・・

というように1度にいろんなことを意識してしまうと、緊張が生まれ、動きが硬くなってしまいます。

選手はできるだけシンプルに考えプレーすることが重要だと考えていますし、指導時にはできるだけワンポイントで動作を変えられるように意識をしています。

人間は1度に1つのことしか意識できませんので、それをいくつものアドバイス通りに身体を動かそうとすると、そこには緊張しか生まれず、結果も見えています。

リラックスをするためには、身体の使い方も重要ですが、指導する側のアドバイスの量や質も非常に重要になります。

 

スムーズな動作をするために身体の使い方を知る

ここからは実際にピッチャーに指導したことを例に投げ方について見ていきたいと思います。

あくまでも個人の身体の使い方がベースにあり、そこでみられた課題に対して指導をしていますので、万人に共通するものではありませんが、アドバイスの内容が少しでも参考になればと思います。

腕の使い方について

まず投球時に腕の使い方で気になったことは以下のことです。

  • 肘の位置が低い
  • 腕を上げるとき、リリース前後などで動きが硬くなる
  • フォロースルーの際に、腕が身体に巻き付かない

このような点が気になり、選手に確認をしてどのように投げているのか、本人の感覚や日頃受けているアドバイスなどを聞いていくと、原因が見えてきました。

  • 肘を引いて、胸を張れと言われている
  • ボールを前で離せ、肘から出せと言われている

このようなアドバイスを受けているそうで、上記の課題はこのアドバイスが原因で起こっているものです。フォロースルーのとき腕が身体に巻き付かないのも、ボールを前で離そうとすることが原因です。

ボールを前で離そうという意識を持っていると、腕は前に伸ばされるような形となるため、身体に巻き付きません。そうなれば肩の後方を痛める原因ともなってしまいます。

なぜこのアドバイスが問題なのかを詳しくお伝えしていきたいと思います。

肩の構造から見る腕の上げ方

投球時、肘が上がらず肘の位置が低い選手の場合、「肘を上げろ!」というアドバイスを送っても肘は上がりません。

どうすれば肘の位置が高く上がるのか、そこを具体的に指示する必要があります。

まずこの2つの腕の使い方について見ていただきたいと思いますが、どちらの方が自然な使い方に見えるでしょうか?

腕の上げ方

腕の上げ方

意見が分かれるところではあると思いますが、おそらく前者の方が多いのかなと思います。

これが問題です。肩の構造上、身体の後ろ側に腕が来てしまうと、関節面で骨がぶつかり合い、腕は地面と平行の位置よりも高く上がりません。そのため、肘は下がってしまいます。

肘の位置が下がる

肘が下がってしまう原因のひとつにこの腕の使い方にあります。

身体の前側で腕を動かす、ラジオ体操の腕回しのようなイメージで腕を上げるとスッと腕は上がってくると思います。

体操

腕が上がる

このような身体の構造上の問題があるため、胸を張ったり、肘を引いてしまうとどうしても肘は下がってしまいます。選手はアドバイス通りに身体を使うことができていますが、そもそもこのアドバイスに問題があります。

リリース前後の動きについて

リリース前後で動きが止まるような動きがみられていましたが、本人に感覚を確認していくと、

  • 肘を前に出すように意識している
  • できるだけボールを前で離そうとしている

という意識で投げているそうです。

それぞれの意識でボールを投げようと思うとこのような動作になってしまいます。

肘を出す

前で離す

このような動作はスムーズな動作の妨げとなってしまい、このような意識を持つことで動きが硬くなり、肘が伸びきってしまったり、肩の後方が引っ張られるということが続くため、肩肘を痛める可能性もあります。

 肩を痛める

腕はリラックスすればスムーズな動きになるため、このような余分な意識は不要です。

先ほどの腕の使い方からの流れで、腕を身体の巻き付けるようなイメージで動作を行えば問題は改善されるはずです。

身体の構造上、このようにしか動かないという動きが決まっているため、それを理解することでよりスムーズな動作を行うことができます。

この腕の使い方については、指導時にはリラックスさせ、軽く腕をサポートしながら回し、そこから腕を身体に巻き付けるように伝えるだけでスムーズな動作ができるようになり、選手の感覚も良くなっていきました。

体重移動について

選手のひとつの特徴でもありますが、軸足に体重を乗せるときに沈み込み、キャッチャー方向に体重移動するときに身体が浮きあがり、アップダウンしながら投球する癖がついていました。

軸足に体重を乗せる

上体が起き上がる

下半身で60%のエネルギーが生まれますが、体重移動の際に浮き上がって抜けてしまうため手投げ状態になってしまっていました。

その他にヒップファーストを指示されており、それ自体はいいのですが、練習時にマウンドの上に立った状態で、軸足に体重を乗せると同時に軸足側に沈み込むような動きをし、そのときに右肩を下げる癖がついていました。

そのためやり投げ選手のように、斜め上方に向かって投げるかのような状態となり、そこから前方に移動し、そのときに身体は浮き上がる。

このような身体の使い方をすると、高めにボールが浮いてしまいますし、無理に手元でコントロールをしようとしてしまうと、低めにいっても力のないボールになってしまったり、沈んでしまいます。

ここについては、マウンドの上で行っている練習に問題がありました。

立ち方について

整理をしやすいように選手には、立つ、前に、投げるという3つの動作で分けて理解していただきました。

その中のひとつの立つというところですが、セッションを開始したばかりですので、こちらがセッション中に言う「踵」という意味を理解していただくために、足首にテーピングを巻き踵の位置について共通認識を持てるようにしていきました。

このテーピングを巻いただけでも立ちやすくなり、バランスが良くなりましたが、三点支持ができるようにこのポイントで立てるようにしていきました。

体重支持ポイント

先ほど、軸足に体重を乗せるときに右肩が下がるとお伝えしましたが、脚を見ていると膝が伸びきったような状態で、軸足に体重がかかると小趾側に体重がかかっていました。

踵で立てるようになれば、次に行ったのは足首と膝を軽く抜き、自分が一番立ちやすいところを探って、軸足に体重を乗せていきました。

軸足で立つ

足首と膝を抜いたことでさらに立ちやすくなり、安定してきました。指導した選手はまだ中学生ですが、理解力があり伝えたことは理解し、自分の意見も投げてくれるので、お互いが理解し合った状態でセッションを進めることができました。

前方移動について

バランスよく立てるようになったので、次は前方への体重移動を指導していきました。

この部分での課題は、体重移動して前足が着地したと同時に骨盤と上体が開いてしまうことです。

自然であればセットポジションから前に体重移動すれば足の向きはキャッチャー方向ではなく、3塁側に向いているはずです。

踏み出し

身体が開く

それが着地と同時に開くということは、何かそういう練習をしていないかと尋ねると、やはり日頃の練習では着地と同時につま先を開くような練習をしているそうで、それが癖づいてしまっていました。

またこの身体の開きを修正するために指導を受けていたそうですが、その方法がサイドスローに変更するというもので、サイドスローにしてみたけども身体の開きは変わらなかったそうです。

これは結果が正しく、投げ方を変えても身体の開きは改善されません。踵でプレートを押すと、前足のつま先は、軸足の踵の延長線上に来ることを伝え、軸足の踵で地面を押すようなシンプルな動作を繰り返し行っていきました。

インコース

そこから実際に投げてもらいましたが、徐々に身体の開きが改善され、まだ課題はありますが、初めと比べると開きも出なくなっていきました。

全体の動きについて

ここまでの流れを実際に指導し、動きを変えていきましたが、最後はボールを投げながら微調整をしていきました。

指導前の状態では、スムーズさが見られなかったりしていましたが、指導後はリラックスすることもできるようになり、スムーズな動作ができるようになっていました。

まだ少し力を入れようとしてしまうところがありますが、それは今後の課題でもあります。

ただ全体を通してみていると、非常にいい方向に改善できましたし、選手自身も気持ちよく投げることができるようになり、ピッチングフォームの改善を感じていただくことができました。

 

必ずしもピッチングフォームの改善に時間がかかるのではない

今回の選手への指導でもそうですし、野球選手に限らず、一般の方の姿勢や動作については、1度お伝えすると改善されますし、必ずしも動作の改善に時間がかかるというものではありません。

指導したことが相手に伝わり、理解していただくことで動作などは変わるため時間が尺度ではなく、理解度の問題です。

これは伝える側の責任というか技量が大きく関係し、シンプルで相手がわかりやすい表現を使うことで動作はすぐに変わります。

言い方を変えれば、時間をかけても選手自身の中で何のためにやっているのか、どのように変えればいいのかが理解できていないとただ時間を浪費してしまうことになり、時間の無駄遣いになりかねません。

確かにピッチングフォームの改善をするためには時間がかかることはあります。改善したい動作を繰り返し繰り返し行う必要がありますので、時間がかかることもありますが、何よりも改善する動作を理解することが重要です。

 

スムーズな動作ができない原因を見極めること

選手からの質問で、「スムーズな動作をするためにどのような柔軟をすればいいのか?」ということを聞かれましたが、そもそもなぜスムーズな動作ができないのでしょうか?

柔軟性が低ければスムーズな動作ができない要因になる可能性がありますが、実際に指導時にはスムーズに動くことはできていました。

それを考えると、この選手については柔軟性の問題で動きが硬いということではなくなります。ではなぜスムーズな動きができないのか?

それは、スムーズな動きができないように動いていたからです。だとすれば、スムーズな動作をするためには、身体の使い方を理解することが必要であり、柔軟性とは別問題になります。

このような話の流れから、体幹トレーニングの意味や必要性、投げるスタミナと走るスタミナは別物だと言う話などにもなり、目的と方法を一致させることが重要であり、なぜうまくいかないのかという原因をみつけることが先だということを伝えました。

考え方についても少し整理できたようで、当たり前に言われていることも少し見方を変える必要があることに気がついたようでした。

 

最も大事なことは感性を育てること

今回の指導で最も大事にしたことは選手本人の感性を育てることです。

プロ選手とアマチュア選手の大きな違いは、この感性であり、修正能力に長けているのがプロ野球選手です。

指導した選手の場合、指導者からいろんなアドバイスを受けるあまり、言われたとおりに身体を動かしていたため、自分の身体をどのように使えばいいのか、そういう感性の部分が育っていないように感じられました。

トレーナーとしてアドバイスを送っていても、最初に確認することは自分の中で不快感があったり、合わないと感じたことはしなくてもいいということを伝えています。

リラックスした動作ができるように誘導できれば、そういった感覚はあまり出ませんが、こちらが言ったことがすべてではなく、選手が一番です。

選手自身が違和感のないように投球できることが重要だと考えていますし、それが個性でもあると思います。その個性は残しつつ、スムーズな動作を行えることが理想です。

感性を育てることは、アドバイスをしすぎないこと、また動きや感触などを感じようとすることで育っていきます。何気なくやってしまうと感性は育ちませんし、小さな身体のズレを修正することもできません。

こういった動きだけではない部分も投手にとっては非常に重要な要素になるのではないでしょうか。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。ピッチングフォームについて、実際の現場で行った指導や考えをまとめていきましたが、少しでも参考になる部分があればうれしく思います。

いろんな選手を話をしていると思うのが、選手自身が理解できていない中で「●●をしなさい」と言われていることが多く、言われたまましているというケースが非常に多い。

なぜこれをするのか、なぜこのように身体を動かすのか、理解した状態で練習するのと、なんとなくしてしまうのでは、効果も結果も大きく変わってきます。

好きで始めた野球だと思いますので、野球をやっている時間が嫌々ではなく、本当に楽しい、充実した時間になるように、指導する側も選手に配慮し続けていきたいなと思います。

では最後に今日のまとめをお伝えしていきたいと思います。

  • ピッチングフォームの基本はリラックスしスムーズな動作を行うこと
  • アドバイスの量が多すぎると緊張し、動きが硬くなる
  • 投げ方については3つ(立つ、前に、投げる)で考えるを整理しやすい
  • 投手は身体のことも重要だが、感性を育てることも重要である

このような内容でお送りしていきました。

今日の内容が少しでも参考になればうれしく思います。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

野球選手の投げ方|Izuru Styleが指導時にみている15のポイント

アセチノ

先日名古屋から社会人野球選手が来ていましたが、その選手への指導の中で感じたのはいかにシンプルに伝えることができるかということです。

シンプルに、一言ぐらい伝えて動作を変えていく。そして、結果も伴うということが重要でアドバイスの量は少ない方が相手は理解しやすく、伝わります。

野球選手の投げ方でも指導時はシンプルですが、考えることはさまざまで今日は実際に現場で指導しているときに送っているアドバイスのポイントをまとめてご紹介したいと思います。

 

野球の投げ方の基本について

野球選手に発生する障害で多いのは肩肘の問題ですが、これは投げ方や動作が原因になるものが多くあります。ケガをしないために、またベストパフォーマンスを発揮するためにも投げ方を理解しておくことは重要になります。

まずは投げ方の基本についてお伝えしていきたいと思います。投げ方については、6つのフェーズに分けて考えることができます。

  • ワインドアップ
  • 初期コッキング期
  • 後期コッキング期
  • アクセレレーション
  • リリース
  • フォロースルー

この6つに分けられますが、これらはどういう動作、動きになるのか詳しく見ていきたいと思います。

ワインドアップ

ワインドアップとは、どういう意味なのでしょうか?

■ワインドアップとは?

野球で、投手が投球モーションを起こすとき、腕を後ろに引き、次に頭上に振りかぶる一連の動作。

goo辞書より引用:ワインドアップ

投手が振りかぶる動作のことを指していますが、このワインドアップでは振りかぶり軸足に体重を乗せて、前方への加速をつけるコッキング期の前段階になります。

言い方を変えると、振りかぶって軸足に体重を乗せてバランスをとる局面だということになります。

投げ方

投げ方

初期コッキング期

初期コッキング期は、軸足と逆側の足が地面から離れている期間のことを指します。

加速力をつけるために軸足でプレートを押し、踏み込み足が地面につくまでのことを指しています。

投げ方

後期コッキング期

後期コッキング期は、踏み込み足が地面についてから投げにいく動作の中で胸や肩が前方への移動を終了する地面までのことを指しています。

投げにいくときは、キャッチャーに対して投手の身体の側面が正面に向く状態であり、軸足が着地をして身体が正面を向く局面までのことになります。

投げ方

アクセレレーション

アクセレレーションは、身体が正面を向いた状態から肩が内転・内旋しボールが手から離れるまでの期間になります。

投げ方

リリース

ボールが指から離れる局面になります。

投げ方

フォロースルー

リリース後、腕が身体に巻き付くように投球動作が終わりを迎えるまでの期間になります。

投げ方

 このように投球動作は6つの局面に分けられており、実際に動作を指導するときもこのようなフェーズに分けて指導されることがあると思います。

ただ・・・。

僕自身、これを見ていると非常にわかりづらいというのが正直なところで、いつも考え方としては立つ、前に(体重移動)、投げる、と考える方がわかりやすいと思っています。

魚住先生にご教授頂いたときも、このように理解すると非常に整理がしやすく、今でも現場で活用しています。上記の6つのことと同じですが、考え方としてはシンプルにする方がわかりやすいように思います。

続いて、この3つの立つ、前に(体重移動)、投げるという動作の中でどのようなところを見ているのか、またそれを指導時にどのように役立てるのか、そういったことをまとめていきたいと思います。

 

“立つ” 局面で見ていること

ワインドアップから軸足に体重を乗せてバランスをとる。そして、次の “前に(体重移動)” につなげるために以下のようなところを見たり、考えたりしています。

バランスよく立てているか?

まずはバランスの問題がありますが、軸足に体重を乗せたときコントロールの悪い選手は、バランスよく立つことができていません。また足の小指側に体重がかかってしまっていることがよくあります。

足元の環境によってその後のコントロールに大きく影響を与えます。

小指側に体重がかかってしまうと、エネルギーを十分蓄えることができなかったり、キャッチャー方向ではなく上方に抜けるような投球になります。十分エネルギーを蓄え、プレートを押し加速するためにもまずはバランスよく立つことが求められます。

投げ方

小指側に体重がかかっていないかチェックしてみると意外とそういう使い方をしている選手は多いと思います。

投げ方

地面はフラットになっているか?

続いては、足元の環境についてですが、バランスよく立つことが重要な理由は前のところで理解していただけたと思いますが、身体の使い方が問題ではなく足元の環境が問題になることもあります。

高校球児でよくみられるのが、足元の土に穴を掘って、そこにつま先を入れてしまうことです。このような環境にした場合、つま先立ちになって軸足に体重をかけるので、不安定です。

足元はフラットにする方がプレートを蹴りやすいですし、前方への加速もつけやすくなります。もちろんバランス良く立つことができますので、エネルギーも蓄えやすいのでボールに加える加速力も大きくなります。

地面がフラットになっているか?

投げ方

それとも穴を掘ってしまって不安定になっているか?

投げ方

これを変えるだけでもコントロールが良くなる可能性もあります。

つま先が開きすぎていないか?

つま先の向きによってプレートの押しやすさ、力の入り方が異なり、つま先が開きすぎると力が入りづらく、プレートと平行、もしくは若干外を向くぐらいだとプレートを押しやすくなり、力もいれやすくなります。

投げ方

投げ方

これは必ずプレートに対して平行にする必要があるということではなく、投手に大切にしていただきたいのはフィーリングです。

違和感のない程度にプレートと足を平行にするか、もしくは若干外に向けるか、実際にプレートを押して確認して力の入れやすい位置、つま先の向きを設定していきます。ここではフィーリングを大切にしてください。

膝が伸びきっていないか?

プロ野球選手でも最近では膝を深々曲げるのではなく、軽く膝を曲げる程度の構えをしている選手が多くいます。

投げ方

このようなフォームを見てマネするのはいいことだと思いますが、勘違いをしてしまい膝が伸びきってしまう選手がいます。膝が伸びきってしまうとプレートを押しづらくなりますし、軸足に体重を乗せたときにうまく立てません。

足首、膝、股関節がそれぞれ適度にゆとりがあるような状態で軽く曲がってリラックスしていると立ちやすくなりますし、プレートも押しやすくなり加速もつけやすくなります。

膝を曲げすぎていないか?

先ほどとは逆で、膝を軽く曲げることは必要だと思いますが、深く曲げすぎるのも考えものです。というのは、膝を深く曲げるということは、重心位置が下がりすぎてしまうため投球後、腕が身体の巻き込みづらくなり前方に放り出されるような形でフォローするーを迎えてしまいます。

このような動作は肩の後方の腱板を過度に引っ張り、これが続いてしまうと炎症が起き肩を痛めてしまう可能性があります。

膝を曲げすぎていないかも考えることが重要です。

投げ方

身体の捻りや大きな動きはできれば避けたい

元メジャーリーガーの野茂投手のように身体を大きく捻って投げようとしても、セットポジションから脚をあげてシンプルに投球するような投げ方。

投げ方

投げ方

これらは球速に変わりはありません。身体を大きく捻るからと言って特に大きなエネルギーが生まれるわけでもありません。

違いといえば、軸足に体重を乗せて一度静止し、そこから踏み込んで同じ位置に着地をする確率が異なります。

当然シンプルなフォーム程同じ位置に着地できる確率は高くなります。ただこれも投手のフィーリングが重要であり、何より打者のタイミングがとりづらくなるというメリットはあります。

投げ方で言えばプレスになることはあまりありませんが、ピッチングとして考えると武器になりますので、この辺りを考えてフォームづくりをしていただければと思います。

膝を高く上げることで大きなエネルギーを獲得できる

軸足に体重を乗せたときに逆の膝を高く上げることで、大きな位置エネルギーが生まれ投球すると球速が少し上がります。

投げ方

そのためこのような膝の使い方を変えることでプラスになることもありますが、このデメリットはバランスがとりづらくなりコントロールを乱す可能性があるということです。

これも先ほどと同じで選手のフィーリングに任せてあげればいいと思います。

 

“前に(体重移動)” の局面で見ていること

2つ目の局面で見ていることをまとめていきたいと思います。

踵でプレートを押せているか?

プレートを押して加速するためには、つま先で押すよりも踵で押す方が加速します。

つま先でプレートを押すことで、ふくらはぎの筋肉が主に使われますが、踵でプレートを押すと臀部の筋肉や内転筋を使います。この方が大きな筋肉を使うことができますので、それだけ加速します。

また後述しますが、つま先でプレートを押すとつま先方向に力が働きインステップになります。そうするとインコースにボールが行ってしまうようになります。

実際につま先と踵でプレートを押した時に力の走りやすさを比べてみるとよくわかると思います。

投げ方

投げ方

投げ方

投げ方

 

踏み込み位置が理解できているか?

軸足と踏み込んだ脚が1本のライン上に並んでしまうと非常に不安定になり、投球時にバランスを崩しやすくなります。

踏み込んだ脚は、軸足の踵の延長線上に踏み込み足のつま先が来るように踏み込みます。

そうすると2本のライン上にステップすることになり、投球時もバランスがとりやすく安定します。このような位置関係です。

インコース

インステップすることで相手打者に恐怖感を与えることはできますが、身体を捻るような形で投球するためそれだけ腰部にストレスをかけますので、痛みが発生するリスクもあります。

投手はこの辺りを整理しておくと自分に合ったステップを見つけることができると思います。

肩や身体の開きが早くないか?

肩や身体の開きが早くなってしまうとボールがすっぽ抜けてしまったり、手で操作しようとして力のないボールを投げてしまったりしてしまいます。

身体の開きを抑えるためには、肩・グローブ・骨盤など自分が目安にしやすい箇所をキャッチャーに向かって真っすぐに移動させるようなイメージを持つと開きを抑えることができます。

投げ方

逆に、開きが早い投手の場合これらのポイントがキャッチャー方向にまっすぐではなく少し開くように斜めに移動している可能性があります。

まっすぐ体重移動するためにはこの3つをキャッチャー方向にまっすぐ出していくような意識を持ち、繰り返すことで身体などの開きを抑えることができます。

体重移動の局面ではあれこれ考えすぎず、リラックスしてキャッチャー方向に体重していくことが重要で、いろいろと考えすぎてしまうと緊張になってしまうので、シンプルに考える方がスムーズな動作になります。

体重移動するときに腕の動きもありますが、これはすべて投げる局面にすべてまとめていきたいと思います。

 

” 投げる” 局面で見ていること

3つ目の投げる局面で見ていることをまとめていきたいと思います。

スムーズに腕が上がっているか?

投球時に肘の位置が低い選手は、腕の上げ方に問題があることがあります。

腕の上げ方については、人間の肩は前方30度の位置にあり身体の少し前側に位置しています

よく、胸を張って投げろだとか、肘を引けと言われていますが、これらのアドバイスを鵜のみにしてしまうと肘は上がらず、このアドバイスが原因で肘の位置が下がってしまいます。

ちょうど、ラジオ体操の腕回しをするような感覚でリラックスして身体の前で腕を回してやってみるとスムーズに上がってきます。問題は腕の上げ方です。この辺りは引っかかるような動作をしている選手も多いので、投手に限らず野手も良く見るようにしています。

余計な意識を持っていないか?

先ほどと共通することですが、投球前に2塁にボールを見せるようにするとか、腕を内側に絞りながらあげてくるとか、そういう余計な意識を持つことでそこには緊張が生まれます。

緊張が生まれると動作に引っ掛かりが生まれ硬くなります。そういう意識がスムーズな動作をできなくしてしまう原因になりますが、身体の前で腕を回してリラックスしていれば自然と腕は上がってきます。

余計は意識を持っていないか、この辺りは選手の話を聞くようにして選手の感覚を理解したうえで指導を行うようにしています。

前でボールを離そうと意識していないか?

ボールを前で離そうという意識があると肩や肘を痛める可能性がありますので、そういう意識を持たないようにした方がスムーズな動作ができます。

前で離す

フォロースルーでは腕を身体に巻き付けられているか?

リリースを迎えた後は、腕は減速されていきますが、腕が身体に巻き付いていないと減速されず、引き伸ばされるようなな刺激を受けてしまい、肩肘を痛めてしまう可能性があります。

きちんと腕は巻き込めているかをみています。

投げ方

キャッチャー方向を見続けていないか?

人間の身体にはさまざまな反応があり、そのひとつに頚反射という反応があります。これは、視線を送っている方向に腕が伸ばしやすくなるという反応ですが、キャッチャー方向を見たまま投げるとその方向に腕が伸ばされてしまいます。

そのため、投球時は軽く顎を引くようにして上目づかいをするようなイメージで投げます。

そうすると腕はその方向に動いてきますので、軽く顎を引いていると腕は身体に巻き付けやすくなります。この辺りも注意して見ています。

ざっと挙げればこれら3つの局面ではこれらのようなことを見ており、選手によって1人1人動きが異なりますので、見ているところやアドバイスの送り方も個人によっては異なります。

ただ、大まかに挙げるとこのようなところを見て指導をしています。投げ方のポイントとして整理するのに役立てていただければと思います。

 

実際の投球動作はシンプルに、リラックスして気持ちよく投げる

これまで多くのポイントをお伝えしてきましたが、実際にこれらのことを意識すると動きは硬くなります。

選手の方が実践するときは、もっとシンプルに考えて行っていただきたいと思います。その手順が以下になります。

立つ、前に、投げる。バランスよく立って、リラックスして前に移動し、一本背負いするように投げる。これだけです。イメージはこちら。

投げ方 投げ方 投げ方 投げ方

この3つのポイントぐらいで十分です。気持ちよく感じるように力を入れたりせず、リラックスして投げていただければと思います。

 

スムーズな動作ができない方へ

スムーズな動作がうまくできないという方はこちらの動画を以前作成していますので、こちらを参考にしていただければと思います。

 

まとめ

野球選手の投げ方をひとつひとつまとめていくとこれらのようなポイントになりますが、多くの情報があったとしても実践するときはシンプルに。それが一番大事なことです。

頭でっかちになってもいけませんし、フィーリングとして合わないことはしない方がいいとも思います。

どれかひとつでも参考になればうれしく思いますし、振り返りのために活用していただけると嬉しく思います。

今日の内容が少しでも参考になればうれしく思います。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

投手がインコースばかりボールを投げてしまう原因について

コントロールの良い投手と、悪い投手。その違いはどこにあるのでしょうか。

そのひとつは足元にあり、軸足に体重を乗せたときに小指側に体重が乗ってしまうとボールは高めに浮きやすく、無理にコントロールすれば勢いのないボールや沈むようなボールがいってしまいます。

今日はインコースばかりにボールがいってしまい、うまくボールをコントロールできない投手に向けて書いていきたいと思います。

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なぜインコースばかりにボールがいってしまうのか?

投手の基本はアウトローにボールを投げることといわれる通り、自然な身体の使い方ができればアウトローにボールはいきます。

ですが、インコースにばかりボールがいってしまったり、インハイにボールが抜けたりし、監督・コーチに「もっとアウトローに投げろ」「低めに投げろ」と指示を受け、わかってはいるもののどうしてもコントロールが定まらない。

このようなことで悩んでいる投手もいるのではないでしょうか。

なぜインコースにばかりボールがいってしまうのでしょうか。それは、インコースに投げるような投げ方をしているためです。理由はシンプルです。どのような投げ方をしているのかを知れば、それを改善すればアウトローにボールを投げることができます。

インコースにばかりボールがいってしまう投手は、インステップをしています。インステップをすると、その延長線上に投げることになりますので、その先がバッターのインコースになります。

インステップをしてしまうのは、つま先に体重がかかっていたり、プレートをつま先で押すような意識を持っていると踏み出した足はインステップになります。

インステップ

インステップが癖になっている投手は、踵でプレートを押し、足をどこに踏み出せばいいのか、それを理解し、まっすぐ踏み出すことを繰り返せばアウトコースにボールがいくようになります。

 

足をどこに踏みだせばいいのか?

では、インステップになっている投手はどのように改善を行えばいいのでしょうか。

それは軸足の踵の延長線上に、踏み出した足のつま先がくるように踏み出すことです。

軸足の踵でプレートを押すように踏み出すことができれば自然とこの位置にきます。

インコース

インステップになっている投手は、踵でプレート押しこの位置に踏み出せるように繰り返します。

インコース 踏み出し

これだけで今までアウトコースに投げられなかった投手は、投げられるようになる選手もいます。

 

整理しておきたい踵の位置について

最後にこれまで踵でプレートを押すと表現してきましたが、この位置も整理をしておかないとそれぞれの理解になってしまいうまくいかないことがあります。

ここでお伝えする踵というのは、ここではありません。

インコース

これまでもお伝えしてきていますが、踵と表現しているのは内踝の真下に当たるこの位置でプレートを押すようにします。

体重支持ポイント

この位置でプレートを押すと、投球時のエネルギーの約60%が下半身で作られるため、つま先で押すよりも大きくなり、勢いのあるボールを投げられる可能性があります

踵でプレートを押すというのは非常に大切な動作であり、コントロールという点でも、勢いをつけるという点でも大きな役割がありますので、ぜひ実践していただければと思います。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。コントロールの悪い選手は、うまく立つことができておらず、足元が不安定です。

難しいことをするよりも足元のことや、踏み出し方を変えることでコントロールも変わってきます。後はリラックスして動作を行うことで自然とアウトローにボールがいくようになります。

今日の内容が少しでも参考になればうれしく思います。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

前でボールを離そうとすると肘を痛める理由

「相手打者に近いところでボールを離すと打ちにくい。だから前でボールを離せ」そんなアドバイスをすると肘を痛める可能性があります。

前でボールを離そうとすると肘が伸びきってしまい、その繰り返しで肘が炎症を起こしてしまい投げられなくなります。

アドバイスには十分注意がしたいところですが、今日は肘を痛める理由をもっと具体的に見ていきたいと思います。

こちらの記事も参考にしていただければと思います。

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投球時、肘は完全には伸びきらない

投球時、肘は伸びきっているように見えますが、肘は伸びきっていません。

リリースを迎え、ボールが手から離れた後、肘は軽く曲がり回内し、肩は内旋しフォロースルーを迎え、減速します。

そのためスムーズな動作ができていると肘を痛めることはありません。ですが、前でボールを離せというアドバイスを受けると、実際にボールを前でボールを離そうとします。

すると、キャッチャー方向にパンチをするような動きとなり、肩の後方が引っ張られたり、肘が伸びきってしまいます。

投げ方

この動作では上腕骨と前腕の骨とがぶつかり合い、繰り返しぶつかることで炎症が起こり肘を痛めてしまいます。

 

具体的に投球動作を見ていきます

画像を使ってもっと具体的に肘を痛めてしまう原因について見ていきたいと思いますが、ボールを前で離そうとすると、肩の後方も痛める可能性があります。

それと合わせて見ていきたいと思います。

スムーズな動作ができるとこのように肘が伸びきる局面もありませんし、肩の後方が伸ばされる局面もありません。

肘を痛める 肘を痛める 肘を痛める 肘を痛める

ですが、前でボールを離せというアドバイスを受けるとこのような動作になります。

前でボールを離す 前でボールを離す 前でボールを離す 前でボールを離す 前でボールを離す

本来は身体の方へ腕は巻き込まれていきますが、前に引っ張られるように動いていきます。

すると肘は伸びきり、肩の後方は引っ張られてしまいます。

肩の後方は、引っ張られるように刺激を受けるためエキセントリックな刺激を受けます。このような動作は筋肉に対して大きなストレスとなるため、このような動作を繰り返すことで筋肉に炎症が起き、肩の後ろも痛めてしまうということになります。

 

スムーズな動作を獲得するには?

肩肘を痛めないようにするためには、スムーズな動作をすることです。

では、スムーズな動作をするためには、どのように身体を使えばいいのでしょうか?

これについては、動画で説明していますので、こちらを参考になればうれしく思います。

 

まとめ

アドバイスというのは、愛情を持っているからこそ多く伝えてしまったりすることがあります。アドバイスの量が多くなればそれだけ理解することが難しくなり、頭で考えすぎるとそれが原因で動きが硬くなってしまうこともあります。

また、今回のケースでは選手はある意味言われた動作ができていますので、アドバイスをする側の責任です。肘を痛くしてやるとは当然考えていなくても、知らず知らず伝えているアドバイスは結果的に肩肘を痛めてしまう原因になっている可能性もあります。

それだけデリケートなものですし、指導する側は身体のことを理解し、指導することで選手もより良くなっていきます。

指導する側は言葉一つ慎重に選びながらアドバイスを送っていきたいですね。

今日の内容が少しでも参考になればうれしく思います。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

インナーマッスルを強化しただけでは球速が上がらない理由

チェストプレス

140kmを超えるスピードボールを投げるためには、インナーマッスルを強化すること。まだこのようなことを言っている雑誌がありました。

なぜ部分だけを見るのでしょうか。下半身から60%のエネルギーが生まれると言われていますが、肩のインナーマッスルにどれだけエネルギーが生まれ、投球時にどれだけ大きな力を発揮しているでしょうか。

冷静に考えるとおかしな表現で、投球時に最も大きな力を発揮する場所は体幹です。そう考えると体幹を強化すべきではないでしょうか。今日はこのインナーマッスルと球速についてお伝えしていきたいと思います。

こちらの記事も参考にしていただければと思います。

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インナーマッスルの主な働き

インナーマッスルとは、身体の中側にある筋肉で関節が動いているときに関節面を安定させる役割があります。身体の動きを主に作っているのはアウターマッスルと呼ばれる表層筋。

そもそもこの表現も不適切だと思いますが、肩のインナーマッスルである棘下筋と言われる肩甲骨の後ろ(背中側)は身体の表面に出てきています。

関節を安定させる役割があるというのは、例えば関節を動かしている時にもしインナーマッスルがなければ関節は簡単に外れてしまいます。これでは人間にとって不都合。

そのためこのインナーマッスルが働き、関節を支えてくれています。

この役割からも想像できますが、そもそもメインではなくサブ的な役割があるインナーマッスルですが、この小さな筋肉を強化したところで球速にどのように影響するでしょうか。

全く意味がないことはありませんが、本当に微量だと思います。

 

どうすれば球速を上げることができるか?

球速を決めるのは、持って生まれた筋線維と動作です。

持って生まれた筋線維というのは、白筋か遅筋かということで、この白筋線維が肩周りに多いと球速は速くなり、遅筋が多い場合、球速は期待できません。

ある意味球速は生まれ持ったものであり、100mを10秒台で走れるかどうかと同じになります。オリンピック選手になるためには、素質が必要です。

このように考えると、筋線維という視点で見れば変えることができませんので、球速を上げることはできません。

スピードという体力要素について、もう少し具体的にみることでこの球速について理解できると思いますので詳しく見ていきたいと思います。

 

スピードについて

スピード【speed】は、スピードと速さの2つに分けて考えることができます。

  • スピード・・・変えられる(動作・動き)
  • 速さ・・・変えられない(筋線維)

これらはそれぞれ具体的に見るとこのようになります。

スピードについて

スピードというのは、変えられるものと考えることができ、動作や動きのことを指します。

投球動作で最も大切なことは、リラックスすることです。リラックスすることでスムーズな動作ができ、無駄のない動きとなりパフォーマンスを低下させることなく、自分が持っているものを発揮できます。

逆に動作が硬く、スムーズな動作ができない場合、スピードは低下し、投手の場合アームスイングが遅くなり球速は遅くなります。

これらのことから、現状の動きが硬い場合このような動作を変え、スムーズな動きができる場合球速はある程度向上すると考えることができます。

速さについて

速さというのは筋線維のことを指しており、変えることができないという考えになります。

筋線維というのは、先ほどもお伝えしましたが白筋と赤筋に分けることができますが、これらは遺伝的要素で決まると言われているため、生まれ持って決まってしまいます。

肩周りの筋線維に白筋が多い場合、この選手が投手になれば140km以上のボールを投げることを期待できますが、もし赤筋が多い場合難しくなります。

また赤筋が多い方の場合、どのようなトレーニングをしても赤筋が白筋に変わることはないとも言われているため、どうすることもできません。

このようにスピードという体力要素は動作と筋線維で決定されると考えることができるため、球速についてもこのように考えるとインナーマッスルだけで球速がどうこうは考えにくいことになります。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。球速を向上させるためには上記でお伝えしたようなことを考える必要があります。

また、球速はインナーマッスルだけの問題ではなく動作のことや全体のつながりで決定することを理解するとこのような解釈にはならないと思います。

10年以上も前から言われているようなことだと思いますが、いまだにこのような解釈で難しそうなエクササイズが紹介されています。

いつも言うことですが、今やっていることは何のためにやっているのか、それを理解することが重要で、目的と方法を一致させることが重要です。

最後に今日のまとめを書いていきたいと思います。

  • インナーマッスルの役割は動作中に関節を安定させること
  • 球速を決定する要素は、動作と筋線維である
  • スピードは変えることができ、速さは変えることができない
  • 部分を見るのではなく、全体のつながりを見るとインナーマッスル強化=球速upとはならない

このような内容でお送りしました。

今日の内容が少しでも参考になればうれしく思います。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

肩が痛くなる投げ方の原因と具体的な改善例について

野球選手が肩肘の痛みを訴えるケースはよくみられ、プロ野球でも毎年のように離脱してしまう選手も出てきます。手術をして組織自体に問題がなくなっても、まだ尚痛みが継続し、試合に出られずそのまま引退する選手もいます。

手術をすれば良くならないのは手術を担当した医師の技術が低かったからこういうことになるのでしょう。

それは違い、素晴らしい医師が手術をし成功したとしても痛みが再発する原因は、痛みの原因が投げ方にあり動作の問題が痛みの原因となっているからです。いくら組織が良くなったもこの投げ方を変えなければ肩肘の痛みの改善はできません。

今日はそんな肩を痛めてしまう原因と、その改善についてお伝えしていきたいと思います。

こちらも参考にしていただければと思います。

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肩を痛めてしまう原因はさまざまな理由がある

まず、考えていきたいのは、なぜ肩を痛めてしまうのかということです。

肩を痛めてしまう原因はさまざまあり、以下のようなことが考えられます。

  • 筋力が低いため
  • 柔軟性が低下しているため
  • 投げ方などの動作に問題があるため
  • アクシデント
  • 投げすぎのため など

以前、野球選手が肩・肘を痛めない投げ方と痛みの原因についての中で原因をお伝えしていますので、参考にしていただければと思います。

これらの原因が考えられますが、多くの場合投げ方に問題があり、投げ方が原因で肩の痛みを訴えるケースが多いように感じます。では、どのような投げ方をすれば肩を痛めてしまうのでしょうか。

 

肩が前方に引っ張られるような投げ方を繰り返すことで肩を痛める

このような言葉を聞いたことがあるでしょうか。

  • コンセントリック・・・短縮性筋活動
  • エキセントリック・・・伸張性筋活動

筋肉が縮まりながら力を発揮するのか、それとも伸ばされながら力を発揮するのかという、筋活動の違いを表しています。

筋肉は伸ばされながら力を発揮する方が筋肉に対しての刺激が強くなります。この筋活動の理解は肩を痛める原因を理解する上でも重要になりますので、理解していただければと思います。

山を登るよりも下る方が筋肉痛になるといわれますが、山登りは感覚的には上る方がしんどそうに感じる方が多いと思いますが、実際身体に対しては下る方が刺激が強いということになります。

では、なぜ肩を痛める原因とこの筋活動が関係があるのでしょうか。

 

投げ方を理解する

投げ方をシンプルに理解すると、立つ、前に、投げるという3つの動作から構成されています。

こちらの記事を参考にしていただければと思います。
投手が知っておきたい3つに分けた投げ方の基本の考え方について

投手が軸足に体重を載せてから、体重移動をし、腕があがり、そして投球し、フォロースルーを迎えるという一連の動作が行われますが、この中に肩が引っ張られる局面はありません。

投げ方 投げ方 投げ方 投げ方 投げ方 投げ方

自然な動作ができれば、肩の後方部分は引っ張られずに投球動作を終えることになりますが、投球動作の認識や動きのイメージを間違えると肩の後方が引っ張られ、投球するたびにエキセントリックな刺激を受け、過度にストレスを受けるため炎症が起こり痛みが発生します。

投げ方

投げ方

このように腕が前に伸ばされるように投げると、腕は身体に巻き付かずロケットパンチのように前に飛んで行くような動作になります。上のシャツについているシワが刺激を受ける方向であり、肩の部分が引き伸ばされていることがわかります。この刺激が問題となります。

 

なぜこのような動作になるのか?

痛む原因が見えてきたところで考えてみたいのが、なぜこのような動作になってしまうのかということです。

その原因のひとつに指導者の言葉がけに問題があります。

  • ボールを前で離せ
  • ボールを長く持て
  • 重心の位置を低くして投げろ
  • キャッチャーを見て投げろ

これらすべてが上記の画像のような動作になってしまう可能性があります。ひとつずつを見ていきたいと思います。

ボールを前で離せ、ボールを長く持て

ボールをリリースした後は腕は巻き込むようにフォロースルーに入ることで腕は減速され、肩肘に負担のかからない投げ方になりますが、ボールを前で離そうと意識したり、ボールを長く持つ意識を持つことで前方に腕が引き伸ばされ、キャッチャー方向にパンチをするような動作になります。

リリースポイントはバレーボールのブロックをするようなイメージで両手を広げた位置、前方、側方それぞれ45度前後の位置が最も力が入る位置になります。

これは肩周辺の筋肉がすべて働く位置となります。この位置をゼロポジションといいますが、ここでリリースをすることで最もボールに力を伝えることができますが、これよりも前ではボールを離そうとすると過度に肩の後方が伸ばされるようになります。

狙いとしてはよりバッターに近い位置でボールを離すことでキャッチャーまでの距離が短くなり、体感速度が速く感じたり、タイミングをとりづらくする狙いがあるかもしれません。

ただ、腕の振りもスムーズではなくなり、力も入りづらくなり結果的にマイナスになってしまいます。

リリースの位置はゼロポジションを理解し、そのポイントでリリースすることが最も効率的と言えます。

重心の位置を低くして投げろ

マウンドに立った投手が、重心を低くして投げることでバッターはボールが見やすくなり打ちやすくなります。当然高低差があるほど角度があるので打ちづらく感じます。それを自らなくすことは疑問に感じます。

また重心を低くすることで、体重移動が地面と平行に近づくためリリース後の腕はうまく身体に巻き込めず、これも前方に腕は引っ張られてしまいます。

重心の位置をある程度高くし、一本背負いをするように身体を縦に折るようなイメージで投球をすると腕は身体に巻き込まれ、きちんと減速され過度に肩の筋肉が伸ばされることもなくなります。

このように重心の位置を低くしすぎることは投球後身体に腕を巻き込むことができず、肩の後方が伸ばされる可能性があります。

キャッチャー方向を見て投げろ

人間の身体の構造上、目をつぶって自然な投球動作ができていればボールはアウトローにいくようになります。

先日DeNAを自由契約になった岡島投手が特徴的な投球動作をしていますが、通常リリース時はキャッチャー方向を見ていますが、岡島投手の場合視線は大きく外れています。

一般的にはキャッチャーを見るように言われますが、ずっとキャッチャー方向を見ていると視線を送っている方向に腕が伸びやすくなるという反射が起こります。これを頚反射と言いますが、リリース直後は軽く顎を引くようにすることでその方向に腕は動き、スムーズにフォロースルーを迎えることができます。

打球処理もありますので、上目遣いでバッターの方を見るようにすることで打球処理もでき、腕も身体に巻き込まれるようになります。このようなアドバイスも肩を痛めてしまう原因になる可能性があります。

アドバイスひとつで動作が変わり、選手はそのアドバイスを忠実に守れているからこそ肩を痛めてしまうこともあるということです。では、肩を痛めないようにするためにはどのような投げ方をすればいいのでしょうか。

それは身体の構造上スムーズな動作になれば肩の後方が伸ばされずに、投球動作を行うことができます。このような動作はリラックスしているため疲れにくく、どこかが過度に張るということもなく、リラックスして投げているため投げるほど肩周辺は緩んできます。

 

スムーズな腕の動きを理解する

まずラジオ体操のときに行うような腕回しを行っていきます。

体操

ここでスムーズに腕回しができるのを感じたら、そこから頭の後ろに手を落とすようなイメージでリラックスをし、そこから一本背負いをするように投球動作に移っていきます。

このときどこかに意識を向けるのではなくリラックスをしていれば腕は自然に動いてくれます。

部分的にどこかに意識を向けるのではなく基本はリラックスしていれば気持ちよく動き、このような動作になってくれます。無理にここをこうしようとあまり考えずに腕回し、頭の後ろで手を落とし、一本背負いというようなシンプルなイメージで行うとスムーズな動作がしやすくなります。

このようなスムーズな動作ができれば肩の後方が伸ばされずにアームスイングが行えるため、肩の痛みを感じなくなります。

ここまでお伝えしてきたように、肩を痛める理由は主に投げ方の問題であり、この投げ方がスムーズになれば肩の痛みも改善されていくと思います。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。肩を痛める理由は、オーバーユース、コンディショニング不足、アクシデントなどの原因もありますが、主に投げ方の問題があり、上記のようなスムーズな動作ができれば肩の痛みは改善されます。

最近もスローカメラで撮影された映像などで投球動作を見ると、リリースポイントが前に感じたり、ボールを前の方で離しているような映像がありますが、これはあくまでもスムーズな動作ができればそうなります。

これを意識的に行おうとすると肩の後方が引っ張られるような動作になってしまうため肩を痛めてしまいます。

連続写真もそうですが、そこから参考になる情報も得らえることもありますが、それをそのまま動作に結ぶつけようとなると、主観と客観は異なりパフォーマンスが低下する恐れがあります。

この主観と客観という問題は指導をする上で非常に重要になりますが、指導する側とプレーする側では感覚が違います。そのあたりを注意して指導する必要があります。

今日は肩を痛めてしまう投げ方とその改善について具体的にお伝えしていきました。

少しでも参考になればうれしく思います。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

野球選手が練習でよりうまくなるためにおさえておきたいポイント

中学、高校と当たり前のように行ってた部活動の練習メニュー。先生が考えてくれ、その練習メニューをこなす日々。

多くの学校では伝統的に行われているウォーミングアップを行ったり、ひとつの儀式のように繰り返されるメニューが存在します。学生の頃はそんなメニューに何の疑問も持たず行っていましたが、今では不思議に思うことも多くあります。

今日は野球選手が練習でよりうまくなるためにおさえておきたいポイントをまとめていきたいと思います。

こちらの記事も参考にしていただければと思います。

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野球部だった高校時代に行った練習メニュー

僕が高校生のときのメニューは日によって変わりましたが、このような流れでした。

  • ランニング5周
  • 静的ストレッチング
  • 体操
  • ペアストレッチング
  • ダッシュ6本
  • 肩周りの体操
  • キャッチボール
  • バッティング&ティーバッティング
  • ケースバッティング
  • ノック
  • 課題練習
  • ウエイトトレーニング
  • ダウン

基本的にはこのような流れがあり、日没の関係などでメニューは変わりましたが高校には野球部専用グランドがあったため、遅くまで練習をすることもありました。

今考えるとそれぞれのメニューの意図を理解していませんでしたし、とりあえずやっておくという感覚でやっていました。僕は高校1年生の冬に腰痛で半年間ぐらい野球ができない時期があり、そこからは自分の身体をケアする意識は強くなり、同級生に比べると身体のことはよく考えていたと思います。

バッティングやノックについてはうまくなるために数をこなすという感じで具体的にこれはこう、ここはこういう意識で、と深く考えずに試行錯誤はしながらも時間が過ぎていました。

今日は、野球に携わる方にお伝えしていきたい内容になります。当たり前のようにやっていたことを少し、考えながら読み進めていただければと思います。

 

一致しない練習メニューと実践

なぜ練習をするのかと言えば、当然うまくなるためであり、試合に勝つためです。

試合に勝つためにはただうまいだけでは勝てない時もありますが、うまくなれば試合に勝てる確率は高くなります。では、どうすればうまくなるのでしょうか。

それはうまくなるための練習をすることです。というのは、目的に合った方法を選択することが重要になります。

ひとつの例としてこちらを考えていきたいと思います。何気なく僕も行っていたのですが、ティーバッティングはネットの端からボールをトスで投げそれを打つという練習です。

これを行っているとき、トスを上げる側のボールはどのようなボールを投げるでしょうか。おそらくほとんどが下から投げ、バッターは下から上がってくるボールを打っていると思います。

考えてみると野球では投手が投げるボールが下からホップするように上がるボールはありません。重力の関係で上から下にいくボールがほとんどであり、それが基本になります。

アンダースローを想定すればそういう下から上にくるボールを打つことも考えられなくはないと思いますが、基本的には上から下にきます。ということは、上から落ちてくるボールを打つ練習をする必要があることになります。

ティーバッティングはトスされたボールが上がってくるときに打つのではなく、上がりきってボールが落ちてきたタイミングで打つことが実践の形と一致することになります。このようにさまざまなメニューをこなす中で実践と練習する内容を一致させることが重要であり、ここでも目的と方法を一致させることが重要になります。

 

特異性を理解することから始まる

目的と方法を一致させると言っても具体的なイメージが湧きづらいと思いますので、もう少し説明をしていきたいと思います。

これを理解するために“特異性”という言葉を理解することが必要になります。特異性とはどのような意味があるのでしょうか。

■特異性とは?

上半身のトレーニングをするとその効果は下半身に出ることはなく、トレーニングした箇所、内容、形式などの条件によってその行ったトレーニング内容の効果しか得られないということ。

野球で言うと、バッティング練習をしても投げるということはうまくならないし、いくら走り込んだからといってピッチング内容が変わるのかと言われればそうではないということです。

投げるスタミナをつけるためには投げること。スイングスピードを速くするためにはバットを振ることです。

少し話が変わりますが、よくプロ野球選手が行っている練習がニュースなどで放映されますが、それをそのままするからといってプロレベルになるのかといえばそうではありません。

それぞれがうまくなるためには、今の自分に合ったレベルの練習やトレーニングをする必要があり、それを超えて無理にこなそうとするとケガや障害につながる恐れもあります。

うまくなるためには、今の自分に何が必要なのか、どんな練習をすればうまくなるのか、それを見極めることから始まります。そして今の自分の目の前にある階段をひとつひとつ上がることです。

 

目的が一致しない代表的な練習メニューは素振り

プロ野球選手のインタビューでもたまに聞きますが、なぜプロ入りできたのかという質問に対して・・・

「高校時代に毎日素振りを1000回していたからです。」

と答える選手もいますが、果たして毎日1000回素振りをすることでプロ野球選手になれるのでしょうか。そしてそれが本当に効果的なものかを見ていきたいと思います。

高校生の素振りを見ていると、どこか一生懸命さや硬さを見受けることができます。プロ野球選手は逆にどこか適当さを感じたり、時には全力ではないのではないか?と思わせるような軽く振っているような印象を受けたりします。

スイングで大切なことはいかにスムーズなスイングができるかということで、スムーズにスイングをするためにはリラックスすることが必要になります。そのためには、あまり細かいことをあれやこれやと意識せず楽にスイングすることでスムーズな動きとなります。

プロ野球選手があれだけ軽く振っているのに、ホールランを打てるという印象を受けるのはリラックスしてスムーズなスイングを行っている分、スイングスピードは速く、その分だけボールは飛んで行きます。

一生懸命毎日1000回のスイングをし、それが硬い動きであればそれをインプットし、実践でもこのようなスイングになってしまいます。

この1000回の素振りに何の意味があるのでしょうか。このような素振りでは1000回空振りの練習をしていることになり、このような素振りをしていると本当に空振りをしてしまうようになります。

何をするにしても、そこには目的があり、そして方法があります。なぜそのような練習をするのか、なぜそのトレーニングをするのか、ひとつひとつこの“なぜ”を理解することでその行っていることの効果もより出てくるでしょう。

しっかりと練習の意図を理解すること、指導者であれば選手に理解させることが重要になります。

 

改めて考えたい練習目的とメニューについて

ではここからは具体的にどのような目的を持ち、練習をメニューを行えばいいのかをお伝えしていきたいと思います。

素振り

素振りはどのような目的を持ち行えばいいのでしょうか。素振りの目的は基本的にはスムーズにバットを振れることを身体に教育していきます。

人間の身体がスムーズに動くためには、自然な身体の使い方を理解することが必要です。スムーズな動作は自ら作るというイメージではなく、リラックスしてスイングすると自然とそのような形になるという動作です。

例えば、構えのときに脇を開いていればスイング時には脇は自然と閉じてきます。逆に構えのときに脇を閉じる意識を持ちすぎるとスイング時に脇は開いてしまいます。

このように人間は自然な動きというものがあります。

素振りの目的は、大きく分けて3つあります。バットの重さを変え目的別に見ていきたいと思います。

  • 軽めのバット・・・スイングスピードの向上
  • 通常のバット・・・スムーズな動作、リラックスした動きの獲得
  • 重めのバット・・・スイング動作の確認

それぞれ目的を分けて使っていきます。

軽めのバット

軽めのバットは、通常のバットよりも軽めですのでスイング動作が速くなります。このようにいつもよりも速くオーバースピードを経験することで、その情報をインプットし身体もより速く動くようになり結果的にスイングスピードの向上につながります。

このような目的を持っている場合、ある程度加減した状態でスイングしてしまうと最大スピードを経験することができませんので、MAXでスイングする必要があります。

ただ、ここで言うMAXというのはスイングスピードのことであり、力むこととは違います。力を入れている、速く振ろうとすることは動作を硬くし、結果的にスイングスピードを遅くしてしまいますので、基本的にはリラックスすることが重要になります。

通常のバット

通常のバットでは、リラックスしてスイングすることを行います。そのためにはどうすればリラックスしてスイングすることができるのか、またスムーズな動きができるのかを理解する必要があります。

より楽にスイングするために、構えのトップの位置を少し上げることで重力加速度を活用することができ、そこから低めをスイングするように素振りを行うとよりバットは軽く感じ、リラックスはしているがヘッドが走るような感覚を得ることができます。

スイング動作ではいかに楽に、気持ちよくスイングできるかがテーマとなります。

高校時代なども行っていましたが、9コースを分けてそのコースをイメージしてスイングすることをしていましたが、素振りの中で取り入れてもいいと思いますが、実際にボールを打つと自然にバットは出てきますので、まずはリラックスして気持ちよくスイングできるように重ねていきます。

スイングについてはこちらの記事を参考にしていただければと思います。

効率的に身体を使った野球選手の打ち方について

重めのバット

重めのバットについては、よくマスコットバットが使われますがこのような重さのバットを全力でスイングしようとするとどうしても全体のバランスを崩す可能性があります。

もしバランスを崩した状態でスイングしてしまうと、通常のバットに持ち替えてスイングしてもバラバラになってしまうので、重めのバットでスイングするときは、全力で振らないようにします。

この場合、全体のスイングのバランスをチェックしたり、スイングの確認を行うようにある程度軽く振っていきます。要は、フォームチェックをするようにスイングを行っていきます。

このように、バットを変えることで目的も変わり、実際に素振りの仕方も変わってきます。ただバットを振っているだけだと空振りの練習をしていることになりますが、このような目的を持つことで方法にあった成果を感じることができると思います。

目的をもって素振りを行っていきたいですね。

ティーバッティング

続いてはティーバッティングの目的について触れていきたいと思います。

ティーバッティングについては、芯でとらえる練習であったり、タイミングの練習であったりと言われますが、それらの目的もあると思います。

別の目的としては、自分の打つポイントを知るということがあります。これは、選手とのやりとりの中でも感じていますが、客観的に見ている立場から「このポイントで打て」と指導しても、本人はそれを感覚的に理解する必要があります。

打っている選手は感覚的に打つことになります。それをティーバッティングで、自分がどのポイントで打てば一番ボールに力が伝わるのか、一番力が入るのかを理解させるために行います。

インパクトの時に一番力が入る位置というのは、両肘が完全に伸びきる少し前で、軽く肘が曲がっているぐらいのところが一番力が入ります。ただこれもそれぞれで微妙に違いますので、それをティーバッティングで感覚的に覚え込ませていきます。

ここからもわかるようになんとなく打ってしまうと目的であるこの感覚の部分は感じることができず、ただ打っているということになります。何度もお伝えしていますが、大切なことは目的を理解し、練習に入っていくことです。

ランニングと投げ込み

今でもよく言われることですが、ピッチャーは走り込まないといい投球はできないなどと言われることがあります。

これは本当でしょうか。

ランニングをすればどうようなことがピッチングに活きてくるのでしょうか。走ることでコントロールが良くなるでしょうか。

よく野球選手に質問されることですが、投げるスタミナをつけるためには走ればいいですか?と聞かれますが、投げるスタミナは投げることでしかつきません。走るスタミナは走ることです。

投げるスタミナをつけたいのであれば投げ込むことでつきますし、走ることとは別です。上記でお伝えした特異性を思い出してみてください。特に学生さんはまだまだ走ることが何の目的で行われているのかが理解できていない方も多いですので、ぜひ覚えておいてほしいことです。

練習とトレーニング

では最後に、練習とトレーニングの違いについてお伝えしていきたいと思います。

そもそも練習とトレーニングは何が違うのでしょうか?これは以前コンディショニングのところでも少し触れていますが、技術やスキルを向上させる場合、うまくなるためには練習が必要です。

ただ練習だけをしていればうまくなるのかと言えば、いずれ限界を迎えます。それはうまくなる過程で基礎体力が基盤にあり、この基盤を大きくしていかないと上に積みあがる技術や戦術は大きく広がっていきません。

それを現しているのがこの図です。

ピラミッド

この基礎体力と言われる要素を身体的コンディショニングと言い、バイオモーターアビリティのことを指します。

バイオモーターアビリティ

このバイオモーターアビリティと言われるものが基盤になり、これらの体力要素を向上させることで土台がしっかりとでき、その上で練習を行うことでさらにスキルのレベルアップが見込めます。

練習とトレーニングは平行して行う必要があるのはこのためです。ですが、現在の日本は練習に多くの時間を割きすぎてしまうため、技術もある程度のところで止まってしまいます。

練習とトレーニングの関係を理解し、実践に活かすことは指導者として押さえておきたい知識となります。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。今日は野球選手が練習でよりうまくなるためのポイントをまとめていきました。

今日はそこまで深い内容に入っているわけではありませんが、何気なくやっていることも少し考えるとなぜやっているのかと疑問を持つきっかけになっていただけると嬉しく思います。

その気づきが大切なことであり、何気なくやっていることが後に成果が出てもそれはたまたまでしかなく、練習やトレーニングの意味はやった分だけうまくなる、成果を感じれることでやる気も増していき、それが継続ことでよりうまくなることにつながると思います。

無駄のない野球生活を送るためにも少し立ち止まって練習やトレーニングについて考える時間になればうれしく思います。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。