よく野球の指導者が選手に向かって言う言葉があります。
「胸を張ってボールを投げろ!」
このアドバイスを受けた選手は、肘の位置が下がり、肘を痛めてしまう可能性があります。
投げ方を見ると、どこかぎこちなくスムーズが感じられない投げ方をしていると思います。
これは身体の構造を知ればわかることですが、野球経験者は当たり前のように言ってしまいそうなアドバイスだと思います。
今日は、胸を張ってボールを投げようとすると肘が下がってしまう理由をお伝えしていきたいと思います。
胸を張って投げるフォーム
胸を張って投げろとアドバイスされた選手は、このように胸を張って投げようとすると思います。
【画像:胸を張るフォーム】
ここから実際に投球しようとすると、このような動作になると思います。
【画像:投球動作】
本来は、肩の高さぐらいまで腕はスッと上がり、体重移動をした後、骨盤、体幹、肩、腕、手、最後にボールという順に動きが伝わります。
【画像:一連の動き】
この一連の動きがスムーズだとそれだけスピードも生まれますが、どこかに緊張があるとそこで減速されてしまい、スピードが出ません。
胸を張って投げようとする選手は、肘が下がってしまい、投球時はボールを押し出すような投げ方になってしまいます。
【画像:押し出すような投げ方】
胸を張ってしまうと腕は上がらない
このブログでも何度も肩の構造については触れていますが、今回も肩と腕の関係についてお伝えしていきたいと思います。
人間の肩は前方30度に位置しており、上から見るとこのようになっています。
自然に腕を上げようと思うと、本来は身体の前側で腕を上げていくことになります。
【画像:身体の前で腕を上げる】
ただ、胸を張った状態で腕を上げようと思うと肩を引くような状態になっていますので、身体の後ろ側に腕が来てしまいます。
【画像:身体の後ろに腕がくる】
このような状態になってしまうと、肩関節では腕と肩がうまく噛みあわず引っかかってしまいます。
肘は下がってしまい、それ以上上げることができなくなります。
実際に、胸を張った状態で身体よりも背中側で腕を上げていってみてください。そうすると、腕がある位置にくるとひっかかってしまい、それ以上あげられなくなります。【画像:後方から腕を上げる】
これは関節の構造上、腕が上がらない位置関係であり、スムーズにあげようと思うと、胸を張ったり肩甲骨を寄せたりしないことです。
ここまでお伝えしてきたように、トレーナーだけではなく選手を含めて、このような関節の構造や動きを知っておくことも大切だと思います。
投球動作をスムーズに行う方法
選手をより良くしてあげたいという想いからアドバイスをし、それが不適切な場合もどかしい気持ちになってしまいます。
よくあるのが、お子さんを自ら指導される親御さんだからこそおきがちなのが、アドバイスの量が多すぎるということです。
アドバイスの量が多すぎると頭で整理できず、いろんなことを考えてしまい、良い結果に結ぶつかないということもあります。
選手やお子さんに対して想いがあるからこそなりがちなのですが、ここは冷静に見極めていただきたいところでもあります。
さて、投手を見ていると腕の動きがどこかぎこちないという選手もいると思いますが、そんなぎこちない動きをスムーズに動かすためにはどうすればいいのでしょうか?
それは腕回しを行った流れで投球することです。
腕回しから投球へ
先ほど肩の構造についてお伝えしましたが、肩が緊張せずスムーズに腕を回すためには身体の前で腕を回す必要があります。
肩から腕がぶらんとぶら下がっているようなイメージで、リラックスして腕を回していきます。
リラックスしていると腕の位置は自然と決まってきますので、ただ気持ちよく感じるところで回していきます。
【画像:腕回し前、横】
これができると、腕が肩ぐらいの高さまで上がってきたときに投球動作に入り、頭の後ろに手を落とし、そこから一本背負いをするようなイメージでフォロースルーまでいきます。
【画像:腕回し→投球動作】
このときどこかに意識を向けるのではなく、ただ気持ちよくリラックスして動作を行います。するとどこにもひっかかりを感じずに投球動作を行うことができると思います。
このような動作を繰り返してから実際にボールを投げてみると、気持ちよく投げられるようになると思います。
そして、胸を張って投げるようなことが必要ないということも理解していただけると思います。
なぜ目指す投球フォームにならないのか?
これまで全国大会に出場した中学生の野球選手や、これから大学でプロを目指すような選手、社会人でプロを目指すような選手の指導を行ってきました。
その中でさまざまな課題があり、その都度一緒にその課題改善に取り組んできました。
身体がうまく動かせない、投げられない、スイングできないなどありましたが、やはり根本は身体の構造を理解することが何よりも大切だということを実感しています。
ここでは、みなさんが抱えている悩みが少しでも改善できればと思い、現場でどのようなことを見ているのかをまとめています。
ひとつでも参考になればうれしく思います。
足元の問題について
投げ方をシンプルに考えると、立つ・前に・投げるという3つの局面で分けることができます。
その立つという局面では、どのように立てばいいのか、うまく立てないときに投球にどのような影響が出るのかなどを詳しくお伝えしています。
脚を上げる理由
投手が脚を高く上げるようなフォームを見たことがありますが、これはただやっているのではなく大きなエネルギーが生まれ、球速に影響を与えます。
脚を上げるのか、上げないのかは個性ですが、どのようなメリットがあるのかをまとめています。
前でボールを離そうとすると肘を痛める
不適切なアドバイスとしてボールを前で離せという言葉がありますが、このような動作をしてしまうと肘を伸ばし切ってしまい、それを何度も繰り返してしまうと肘や肩を痛めてしまう可能性があります。
なぜ肘や肩が痛むのか、その原因を改善についてお伝えしています。
キャッチャーのスローイングについて
キャッチャーのスローイングについてですが、右投げの場合、ボールを捕ってから右脚を踏み出せと教わった記憶がありますが、このようなステップはスムーズに身体が動きません。
ステップの踏み方を変えたり、捕ってから速く送球するためにどのようなことを考える必要があるのかなど、詳しくまとめています。
それぞれの記事が細かいフェーズに分かれているため、読みやすいかなと思いますが、まず大事なことは今の投球の課題は何かを明確にすることです。
なんとなくこのような情報を見るとやってみたくなると思います。それも大事なことですが、まずは現状をしっかりと把握することで改善の糸口を見つけることができると思います。
この中のどれかひとつでもお役に立てると嬉しく思います。
まとめ
今回は、胸を張って投げると肘が下がってしまう理由というテーマでお伝えしていきましたが、いかがでしたでしょうか。
アドバイスとして結構言われている言葉だと思います。
僕は高校までしか野球をしませんでしたし、僕よりもうまい人はたくさんいました。だからこそそういうレベルの高い野球をされてきた方からの言葉は本当に選手にとっては大切なものだと思います。
その逆も言え、影響力があるからこそ身体の構造から見た動きと離れたアドバイスをしてしまうと、できないことをできるように指示しているのと同じになってしまいます。
選手も指導者も、どちらもしっくりこない時間が続いてしまうと思います。
そんなときに上記でお伝えしたような、身体のことを踏まえてアドバイスを送ると今以上に選手が野球を楽しめるようになるのではないかなと思います。
最後に今日のまとめをしていきたいと思います。
- 胸を張ってしまうと肘は上がらない
- 肩は前方30度の位置にある
- 斜め前の方向から腕を上げるとスムーズに上がる
- 腕回しを行い、投球に入るとスムーズに腕が動く
このような内容でお送りしていきました。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。