痛みを抱えながらプレーをするスポーツ選手は、どこか動きにぎこちなさや違和感を感じます。脚を痛めてしまった場合、その脚をかばうために引きずるように走っていたり、びっこを引くように走る選手をスポーツ現場ではよくみかけます。
痛いから片脚を引きずるように走っていれば、逆の脚に自然と負担は増え、ストレスに耐えられなくなるとかばっていた方の脚も痛めてしまうということが起こります。
痛みが出なくてもこうような走り方をすれば癖となり、いつか身体を痛めてしまう可能性があります。これは改善する必要がありますが、今日はこのびっこ(跛行)を引くことで起きた臀部の痛みとその改善についてお伝えしていきたいと思います。
こちらの記事も参考にしていただければと思います。
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Contents
跛行、びっこを引くとは?
びっこを引くという言葉は聞き慣れた言葉だと思いますが、跛行(はこう)という言葉も同じ意味を持ちます。
■跛行、びっこを引くとは?
- 片方の足に故障があって、歩くときに釣り合いがとれないこと。
- 対 (つい) であるべきものの数・形・大きさなどがそろわないこと。
goo辞書より引用:びっこ
脚を痛めると体重がかかるだけでも痛みが増し、できるだけ体重がかからないように本能的にしてしまいます。逃避反応ですが、このような動作を続けると脳がその動きをインプットし、痛みがなくなってもそれがあたかも当たり前のように感じ、脚を引きずるように動くようになってしまいます。
この動作を行ってしまうリスクは、逆脚である健足側に過度なストレスがかかるため、これが原因で逆側も痛めてしまう可能性があるということです。
現場でも実際にこのびっこを引く癖がついたことによって殿筋を痛めてしまった選手がいました。
びっこを引く癖がついたことで臀部を痛めた
この選手はなぜ痛みがなかった臀部を痛めることになったのかをお伝えしていきたいと思います。
びっこを引くことになるきっかけ
びっこを引くことになったのは、以前右足首を捻挫した際に病院で診察を受けず、痛みは少しあったものの自分でプレーができると判断し、小さな痛みを抱えながらプレーをしていたためです。
痛みが徐々に増していき、体重をかけることに恐怖心が芽生え、目一杯体重をかけることができなくなり、それが半年以上続いたそうです。
痛みが出ないように足首をかばいながらプレーを続けていましたが、時間が経つごとに次は逆側の左のお尻あたりに張りを感じ始め、痛みが出てきたそうです。
はじめて相談を受けた際に身体を見ていきましたが、身体は全身歪み、お尻周辺や脚全体が過度に緊張していました。実際に走り方を見ていきましたが、本人は重心の偏りを感じていたそうですが、それを左右均等に直すことができず、痛みとともに悩んでいました。
整骨院で筋肉を緩めてもらったり、電気を当ててもらうと一時的にはマシになっても、やはり左右差を感じ時間が経つとやはり臀部の痛みが再発するような状況でした。
臀部の痛みが出る理由
この選手の場合、歩いているときや走っているときのリズムがボンッ!パッ、ボンッ!パッ、ボンッ!パッ、というように左脚に重心が偏り、左脚でリズムをとるような歩き方や走り方をしています。
このような状態で走るということは、片脚でのジャンプスクワットを左脚をメインで行っているような状況であり、当然左側へのストレスが大きくなります。
また体重支持ポイントに問題があり、踵よりも後ろ側にずれており、このような走り方をすることで臀部へのストレスが大きくなり、痛みへと変わっていました。
ジャンプして着地をするというのは、体重の5~6倍の負荷がかかると言われており、それが片脚となると衝撃の大きさは容易に想像できます。
現在は右足首の痛みはないものの臀部の痛みがあり、びっこを引くような動作を行うため、まず身体全体を整えるために身体調整を行い、そしてそこからこのぶっこを引く動作の改善に移っていきました。
びっこを引く動作の改善について
歩くときや走っているときにびっこを引くような動作をしている場合、どのように改善すればいいのでしょうか?
実際にびっこを引くような動作をしている方は試していただくとわかりますが、歩きながら、走りながら改善するのは非常に難しい。脳がインプットしてしまっていますので、どうしても偏りが生まれます。
そもそもその偏りを本人が自覚できているのかということも重要になりますが、これを実感させていきます。
改善のステップとしては、以下のような組み立てを行い改善を図っていきます。
- 体重支持ポイントの確認
- その場でジャンプストップや連続ジャンプを行い、両脚着地を繰り返す
- 続いて、それができたら10cmぐらいの小さな歩幅でジャンプストップを繰り返す
- それができるようになれば20、30cmと距離を伸ばしていく
- 次にホップジャンプを3、4と同じ手順で行う
- これができたら片脚で行い、それができたら交互に行う
- そして歩き方、走り方へと移行していく
このようにいきなり動作に入っていかずに、両脚、片脚、交互という順に歩く走るという動作につなげていきます。
もちろんこのようなエクササイズをしている際に、左右への重心の偏りをなくす目的で行っているため、それが出ないように繰り返す必要があります。
このときにフラット着地をし、臀部に刺激が来るのを理解するとその後の走る動作でも衝撃を臀部で受けることができ、弾むような動作ができるようになります。
では実際にひとつずつの動きを見ていきたいと思います。
体重支持ポイントの確認
これは、あまり知られていない鵞足炎の原因と改善方法とは? やランニングなどで起こる足首周囲の痛みや腫れの原因と現場で感じた改善についての中でも紹介していますが、脛骨の真下、踵に重心を置きます。
ジャンプストップ
体重支持ポイントが理解できればジャンプストップなどでインプットしていきます。
その場でジャンプストップ(両脚)
ジャンプストップ(前方移動)
ジャンプストップ(片脚)
ジャンプストップ(片脚・前方移動)
これが終われば交互に行い、歩く、走るという手順で段階を踏んでいきます。
歩き方について
上記のようなステップを踏んでいき、次に行ったのは歩くことです。
これらのことをした後に歩くと左右差を改善することはできていましたが、まだ左右差が残っていました。この状態で走ってしまうとまた片脚に過度なストレスがかかってしまうため細かく思うような左右差も改善していく必要があります。
ここで行ったことは踝と踝を軽くこするようにくの字に脚を動かしながら歩くことです。このように歩くことで左右差がなく歩くことができます。手順は以下のようになります。
まず1本のライン上に足を肩幅に開き立つ
踝と踝を軽くこするようにくの字に歩く
一直線のラインに対してくの字を描くように脚を動かし、歩いていきます。そうすると左右差がなくなりますので、それを感じながら歩きます。
左右差を感じなくなれば、後は通常と同じように歩きます。
左右差がここでなくなるので、そのまま走りへとつなげるような流れになります。もし左右差がある状態で走ってしまうと、また癖がついてしまうので、歩くまでのところで左右差を感じなくなってから走るようにしてください。
このように、まずきちんと体重支持ポイントを理解させるために段階を踏んでステップアップしていき、びっこを引くような動きから自然な動きへと変えていきます。
いきなり走ってしまい、走りながらびっこを引くような動作の改善は動きが速すぎるためなかなか動きを変えることは難しくなりますが、このように動作が遅い場合自分の身体もコントロールしやすく、また自分の身体をどのように使っているか、動かしているかが理解できます。
このような癖のある動きを改善する場合、本人は動きに違和感を感じていません。自分の中では自然な動きのように感じていますが、それを改善するためには、まず“自覚”させる必要があります。
自覚しないままただ動作を変えてしまうと、違和感としてとらえそれを不自然な動きだと認識してしまう可能性があり、動作が変わりません。まずはどこがどうなっているのか、それを本人に理解させ、そこから上記のようなステップを踏むことが重要になります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回はびっこ(跛行)を引く方の対応について考えをまとめていきましたが、さまざまな指導の際には、いきなり指導をするのではなく、まず相手に現状を伝え理解してもらうことが重要になります。
こういった動きも一緒で、まずはどのように身体を使っているのか、それを理解することから始まります。
投球動作もそうですが、リリースポイントの高さがあと数センチ高ければもっといい投球ができるとしても、その数センチを変えるには投げる際に数センチ高い位置へ、と意識をしても速い動作の中では数センチを変えることも難しくなります。
動作をどのように改善するのか、問題の動作を直接的に変えようとアドバイスをすることも必要ですが、ステップを踏んで動作を変えていくことの方がより理解しやすく目的とする動作に改善しやすくなります。
今日の内容が少しでも参考になればうれしく思います。
では最後に今日のまとめを書いていきたいと思います。
- びっこを引くような走り方を改善する場合、動作の中で変えようとしても難しい
- まず体重支持ポイントを理解させる
- その場でジャンプストップをし、体重支持ポイントをインプットする
- 両脚から始まり、片脚、交互と移行していく
- そこから歩く、走るというステップを踏む
- 動作の中で変えようとすると動きが速いためわかりづらく、理解しにくくなる
このような内容でお送りしていきました。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。