2011年 12月 の投稿一覧

廃用症候群|ニュースレターNO.278

パーソナルトレーナーへのクライアントの依頼の目的は、減量と体力つくり、からだの痛み・不快の解消が主なものだと思います。そしてクライアントの多くの方が年配者だと思います。特に、年配者の体の痛みや不快の問題は、長年のからだの使い方の悪さからくるバランスの崩れが主な原因のように考えられます。

そのような場合、直接的に鍛えると言う前に、からだのバランスを取り戻すために身体調整が必要になります。からだ自然体に戻った後、いつまでも元気に行動できるからだつくりといったことが目的になるのではないでしょうか。いつまでも若々しくいたいというのは、誰しもの願いではないでしょうか。

今回紹介するのは、鄭雄一著:「老いない体」のつくり方(ワック文庫2010)です。加齢に伴う問題として考えておかなければならない「廃用症候群」について分かりやすく解説されています。年配者のトレーニングの目的がこの廃用症候群対策にあると言えると思います。パーソナルトレーナーの方たちには、ぜひ原著を読まれることをお勧めします。

『高齢化に伴って増加する病気の中でも、われわれが日々運動したり、食事をしたりすることに欠かせない「運動器」と呼ばれる骨や軟骨などの病気は、爆発的に増えています。高齢化に伴う骨の病気で最も有名なのは骨粗鬆症です。現在、日本において、骨粗鬆症に罹っている方の数は、人口のなんと10%近く、1000万人を下らないと推定されています。「国民病」と言っていい数値であると思います。

骨粗鬆症は、難しい漢字を書きますが、要するに「骨がすかすかになった状態」という意味です。正確には、骨の量と質が低下して骨が脆くなり、そのために骨折の危険が高まった状態のことを指します。例えば、骨の量が二分の一になると、骨の力学的強度は四分の一になります。

われわれの骨の量は、20~40歳くらいに最大となり、その後、加齢とともに緩やかに低下していきます。さらに、女性では、これも老化の一種である閉経(月経が止まること)の後に、女性ホルモンであるエストロゲンの低下に伴って骨の量が急激に減少します。骨の量の低下がある一線を越えると、骨が非常に脆くなり、ちょっと転んだりしただけで骨折してしまうようになります。

骨折するくらいどうってことないのでは、と若い方は思うでしょう。事故や激しい運動などで、骨折を一度は経験された方も多いと思います。著者も、中学生のときに運動会で「俵取り」という、読んで字のごとく百キロを超える砂の入った俵を奪い合うかなり野蛮な競技をしているときに、十何人かの同級生の下敷きになって、左足の腓骨を骨折しました。

その激烈な痛みはともかくとして、若いときであれば、骨折を整復(折れてずれたか骨の位置を元に戻すこと)して、ギブスをはめて、松葉杖をついて1ヶ月もすれば、仮骨という軟骨と骨とでできる組織ができて折れた部分をつないでくれるため、ギプスをとって徐々に体重を掛けて歩けるようになります。ところが、高齢者の骨折は、このように簡単にはいかないのです。

まず、年を取ると、若いときのように骨折はすぐには治りません。老化に伴って、体の治癒する力が落ちているからです。そのために、仮骨の出来が悪くなり、折れた部分がなかなかくっつかず、体重をある程度掛けて歩けるようになるまでに、長い時間がかかるようになります。

少々時間が長くかかっても、結果的に治るのであれば大した問題ではないのでは、と思われるかもしれません。しかし残念ながら、これは時間の長短だけの問題ではありません。骨折が治癒するのに要する時間が長くなり、その結果としてベッドに寝ていて動かない時間が増えると、動かないこと自体によって、身体や精神に対するさまざまな悪い影響が引き起こされるのです。

長期間の安静で心身の活動性が低下することにより引き起こされる病的な状態のことを、専門の言葉で「廃用症候群」と言います。
「廃用」とは要するに「使わなくなる」ということです。たとえば、体を動かす筋肉に関しては、骨折によって長い間ベッドに寝かされて運動をしないと、健康な人であっても、1週間の安静で10%以上筋力が落ちると言われています。

関節に関しては、安静により、関節がだんだんと硬くなっていき、3週間ほどで曲がりにくくなります(これを拘縮といいます)。

先ほど述べましたように、私は中学生の時に腓骨を骨折して、1ヶ月ほどギプスをつけました。この際に、足首の関節を一緒に固定しました。強制的に、関節を安静にする状態を作り出したわけです。

1ヶ月後にギプスをとると、筋肉はやせ細り、関節は石のように硬くなって、全く動かなくなっていました。このように萎縮した筋肉を元に戻し、拘縮した関節を、再び自由に動くようにするまでには、若かった当時でさえ、数ヵ月もかかりました。

安静により、骨を壊す役割を担う「破骨細胞」の活動性が亢進し、骨は吸収されて速やかに減っていきます。一番極端な例では、無重力状態で過ごす宇宙飛行士の骨が速やかに減っていくことが、これまでの研究から知られています。

安静により、心臓や肺の機能も落ちます。健康な人であっても、3週間ほどの安静で肺活量が10%以上落ちてしまいます。消化管の消化吸収機能も落ち、食欲が低下し、便秘しやすくなります。また、神経系においては、運動による刺激が減ることで、平衡感覚が低下するだけでなく、精神活動が低下して頭の働きが鈍り、いわゆる認知症のような状態が促進されます。

このように、骨折が原因で運動しないことが、さまざまな身体的、精神的悪影響を引き起こします。たとえ健康な人であっても、安静により上記のようなさまざまな機能が落ちるのですが、もともと老化によって基礎的能力が低下していて、機能的な余裕の少ない高齢者においては、安静による悪影響である廃用症候群が、より顕著に出やすくなっています。

その悪影響は高齢者のさらなる活動の低下をもたらし、それがさらに廃用症候群を悪化させるということで、元に戻ることのできない負のスパイラル(悪循環)が形成され、そのまま寝たきりになってしまうことが多いのです。

日本における高齢者の寝たきりの原因の約10%が、骨粗鬆症に起因する骨折がきっかけであると推測されています。寝たきりは、QOLにとって最悪の状態であると言えます。さらに恐ろしいことに、寝たきりになると5年以内に多くの方がそのまま肺炎などで亡くなります。特に80歳を超える高齢者では、なんと1年以内という短い期間に、多くの方が亡くなってしまいます。

以上の話からわかります通り、高齢者における寝たきりは、単なる状態ではなく、命を奪うまでに進行する力を持っています。したがって、命に関わる病気と同等と捉えることが妥当だと思います。そのような重大な病気として注意し、積極的に対処することが重要ではないかと思います。』

膝の痛みとその原因|ニュースレターNO.277

膝の痛みにもさまざまなものがあります。いつまでたっても痛みが消えず、機能している人も多いはずです。特に、変形膝関節症で悩んでいる方もパーソナルトレーナーの世話になられている方も多いようですが、なかなかその痛みからの開放というところまではいかないようです。

膝の痛みについては、その原因究明から始まりますが、膝に痛みを覚えたらどう対応して行けばよいのか、そんなことも心得ておく必要があります。

膝の悩みについて分かりやすく解説された本がありました。宗田大著:ひざ・股関節の痛みをとる安心読本(主婦と生活社2008)です。非常に分かりやすい本ですので、ぜひ原著をお読みください。今回は、膝の痛みに関するところをピックアップして紹介したいと思います。

『膝の痛みは1期、2期、3期、4期という4つの時期に分類することができます。ただし、これは1期から2期とか、2期から3期というように段階を経て、進行するという意味ではありません。4つの時期は、関節軟骨の状態によって分類されたものです。

1期:関節軟骨はすり減っておらず、厚みが正常な状態です。この時期に膝が痛い場合は、主に膝の使いすぎが原因です。関節周囲の腱や筋の痛みで、スポーツによる障害など、若い人にも見られます。

2期:膝の痛みがピークに達します。急性期の炎症によるもので、関節軟骨の表面がすり減り、それが刺激となって痛みが起こる状態です。関節軟骨がすり減ると、その破片の刺激によって炎症が起こり、膝が腫れたり、熱を持ちます。水がたまるのも、この急性期の炎症によるものです。

3期:急性期の炎症が治まったあとに起こる、慢性的な炎症による痛みです。急性期の炎症後、関節包が硬く変化して膝の柔軟性が損なわれた状態で、膝の曲げ伸ばしの動作がしにくくなります。痛みを避けてかばった結果、膝周囲の筋肉や腱が固くこわばって、膝の動きが悪くなったものです。

4期:関節軟骨が完全になくなり、関節周囲の骨(大腿骨、脛骨、膝蓋骨)の隙間が極端に狭くなったり、表面が露出したことによる、骨の痛みです。関節軟骨がないため、関節の機能が低下して、踏み出したり、歩くと強い痛みが起こります。治療には、手術が必要なこともあります。』

『すでに述べたように、1~4期までの分類は、順番通りに進むわけではありません。膝の痛みを感じたときには、すでに3期の人もいますし、2期から1期に戻ることもあります。はじめて膝が痛くなってなかなか治らない場合は、かなり多くの人が4期になっている傾向があります。

そこで重要なのが、自分の膝の痛みが、どの状態にあるのかを正確に知ることです。なぜ、痛みを正確に把握する必要があるかというと、どの程度改善できるかのめやすをつけるためです。ストレッチに最も効果があるのは、1期と3期です。

つまり、自分の膝の痛みがどの段階かを正確に知ることで、ストレッチなどが、どの程度効果的か、ストレッチと薬といった保存的な治療でどの程度改善できるかどうかが、わかるというわけです。

この2つの時期の特徴は、痛みの原因が関節内ではなく、膝関節周囲の筋肉や腱が固くなってこわばっていることにある点です。それによって、膝関節がスムーズに動かないために、痛みが起こっているのです。

こうした痛みは、ストレッチによって固くなったところをほぐし、血行を促すことによって柔軟性を回復させることで将来的に改善できます。膝の曲げ伸ばしがスムーズにできるようになると、徐々に痛みもとれてきます。

2期の急性期の痛みや4期の骨の痛みには、薬による治療が有効で、ときに必要です。特に2期は、関節内で炎症が起こって腫れたり、熱をもっているので、鎮痛剤などの薬がよく効きます。膝に水がたまっている場合は、水を抜く治療もします。

こうした治療を行えば、ほとんどは1週間程度で痛みは治まります。急性期を過ぎると、慢性的な炎症が起こってきますが、これはストレッチで改善できます。

4期にまで進行した場合は、薬で痛みを抑える他、手術で治療することも考えられますが、実際に手術を必要とする例は多くはありません。』

『膝の痛みには、その人の脚の形も影響しています。O脚やX脚という言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。膝の痛みには、こうした脚の形が関係しているのです。O脚とX脚のチェック法で、自分の脚の形をチェックしてみてください。

以前に行われた調査では、若い人の脚の形は、男性では圧倒的にO脚が多く、女性では約60%が比較的まっすぐで、残りの半数ずつにO脚とX脚の傾向が見られました。注意が必要なのはO脚です。人は二足歩行をするようになったため、膝の内側に特に体重がかかりやすくなっています。

O脚の人は、そうでない人に比べて、膝の内側にかかる負担が、より大きいのです。そのため、膝の内側に痛みが起こるケースが多く見られます。X脚で膝の内側が痛いときは、膝が引っぱられることによる痛みです。O脚では体重による圧迫が痛みの原因ですが、X脚の場合は、膝の内側の筋肉が体重によって引っぱられて痛くなることが多いのです。』

『膝の痛みに関係するもう1つの要因として、脚の軸方向のねじれがあります。脚のねじれは大腿骨で起こることが多いと考えられ、ねじれが強いほど、歩いたり走ったりするときに各関節が余計にねじれながら屈伸をくり返すことになります。これによって、膝関節に負担がかかり、痛みを起こしやすいと考えられます。

脚のねじれは、女性に強く見られます。ちなみに、大腿骨のねじれを予防するには、子供のころから女性もあぐらをかく練習をするとよいかもしれません。』

『膝の痛みの原因として、決して見過ごせないのが肥満です。中高年になって太ってくると、膝が痛くなる人が多いことでもわかるように、太りすぎは膝にとって大きな負担となります。

歩くとき、膝には体重の2~3倍の負荷がかかるといわれます。階段の上り下りでは、なんと6~7倍もの負荷がかかります。そのため、肥満によって関節軟骨に大きな負荷がかかると、膝の内側の関節軟骨がすり減って、O脚が進みます。すると、ますます膝の内側に負担がかかるため、悪循環に陥ることになるのです。

さらに良くないことに、膝が痛くなると運動量が減るため、ますます太ってしまうことが多く、これがまた膝関節に負担を強いるという悪循環も呼び込んでしまいます。』

『長年にわたって負担がかかり続けると、しだいに関節軟骨や半月板などの軟骨の弾力性が損なわれ、変形してすり減っていきます。軟骨には、膝にかかる衝撃を吸収するクッションの役目があるため、それが働かなくなると、立ち上がったり、階段の上り下りなどで膝に負荷がかかるときに痛みが起こるようになります。これが「変形性膝関節症」で、日本人の膝痛の原因としては最も多いものです。

変形性膝関節症は、下表のような要因がある人がなりやすいことがわかっています。膝に痛みがあり、これらの要因に当てはまる人は、変形性膝関節症が疑われます。』

『変形性膝関節症では徐々に軟骨がすり減って、変形していくのが一般的です。正確な進行度については、エックス線検査を行って関節軟骨の状態を調べます。これによって、健康な状態、軽度、中等度、重度の4段階に分類されます。また、自覚症状でも進行度がほぼわかります。

軟骨関節の表面がまだ滑らかで、健康な状態では、痛みなどの自覚症状はほとんどありません。軽度になり、関節軟骨のすり減りがエックス線検査でも確認できる状態になると、炎症が起こり、徐々に痛みが出ることもあります。

たとえば、立ち上がったり、歩きはじめに痛くなったり、膝がこわばる感じがします。痛みは膝の前や内側に出ることが多いのですが、歩き始めると痛みは軽くなってきます。中等度になると、関節軟骨のすり減りがひどくなって、骨の表面の一部がむき出しになります。すると、骨に直接負担がかかるため骨の変形が進み関節のすきまは狭くなり、とげのような形の骨もできて(骨棘)、エックス線でも確認できるようになります。

この段階になると、膝の痛みが強くなって階段の上り下りがつらくなります。また、膝関節の可動域も狭くなり、正座をしたり、しゃがむのがむずかしくなってきます。さらに、炎症によって膝に水がたまりやすくなります。

この水の正体は関節液です。関節は関節包という袋に入っており、その関節包の内側には滑膜という内張があります。関節液は、この滑膜から分泌され、余分なものは滑膜が吸収しています。

関節軟骨がすり減って、その破片によって滑膜が刺激されて炎症が起こると、滑膜から大量の関節液が分泌されるようになります。その結果、膝に水がたまってしまうのです。水がたまったときは抜く治療をしますが、炎症が治まらないかぎりは、再び水がたまってしまいます。』

『さらに進行して重度になると、関節軟骨はすり減ってほとんどなくなります。大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)がぶつかるようになって、その影響で半月板も薄くなっていきます。半月板も膝のクッションの役目があるので、薄くなったり、なくなるとますます衝撃に弱くなり、強い痛みが出やすくなります。

この段階になると、じっとして安静にしているときでも膝がひどく痛むこともあります。痛みで夜も眠れなかったり、目が覚めることもあるほどです。また、歩くたびに強い痛みが起こるだけでなく、関節を固定する靭帯がゆるんで、膝が横揺れしてうまく歩けなくなる例もあります。

さらに、可動域が狭くなって、膝を曲げ伸ばしすることがむずかしくなります。正座はもちろんのこと、膝をしっかり伸ばすことが苦痛になります。』

『変形性膝関節症による膝の痛みの原因は、関節軟骨がすり減ってしまうことがそもそもの原因です。

私たちの体は年とともに老化していきますが、関節軟骨や半月板にも当然、老化が訪れます。加齢に伴って弾力性が失われ、徐々に強度も損なわれてしまうのです。そこにさまざまな要因が加わると、軟骨のすり減りが加速されてしまいます。たとえば、肥満や過度のスポーツなどによって、関節軟骨や半月板が加速度的にすり減って摩耗してしまうのです。

軟骨がすり減ると、骨の表面がむき出しになります。関節軟骨は内側か外側のどちらかに偏ってすり減る特徴があり、そのため関節が変形して、O脚(またはX脚)がひどくなります。脚の形の変形が進むとますます膝に負担がかかり、痛みが出たり、日常の動作が困難になります。』