2011年 8月 の投稿一覧

やせやすい体をつくる|ニュースレターNO.270

「やせたいが・・・」こんな話は本当によく聞くものです。特に、ジムに通われる女性にとって挨拶用語のような気もしないではありません。また、その要請を受け、希望通りスリムなシェイプアップした体作りを提供することもパーソナルトレーナーの主要な指導であると言えるでしょう。

しかし、なかなかうまく行くものではありません。特に、世間で言われる「何々をしたら・・・やせた」と言うようなものにはまるとなおさら上手く行かないでしょう。まず、基礎的知識に基づいてトレーニングすることです。そこに疑問符のつくトレーニングが多すぎるように思います。

そんなパーソナルトレーナーのために参考になる本がありました。石井直方著:「無理やせ」より、やせやすい体を作る!(マガジンハウス2011)です。ポイントになると思われるところをピックアップさせていただきました。詳細については、ぜひ著書をお読みください。

『筋力トレーニングは、エネルギー代謝でいうと、無酸素的な運動です。つまり、運動中に脂肪が減らないというのが欠点ということで、ダイエットとは無関係のように考えられていました。でも、実際はそうではありません。筋力トレーニングの後に、消費エネルギーが増えるということが、わかってきました。運動後に酸素がたくさん使われるようになる。酸素が体に取り込まれることは、エネルギーを消費することに対応します。

筋力トレーニングで運動するときのエネルギーは決して多くないのですが、これを行った後には酸素が過剰に消費されることで、72時間ぐらいは、脂肪がじわじわと燃えてくれます。その量は微々たるものです。何もしないでいるのと比べて、たかだか10~20%増しぐらいでしょう。ただ、筋力トレーニングは30分ぐらいの短時間でできるわけです。

そして、その後、じわじわと脂肪が燃える。それを1日当たりとして合算すると、2~3㎞走るのと同じぐらいの消費量になるのです。
筋力トレーニングを行い、その後、尐なく見積もっても1日で100キロ力ロリーぐらい普段より多く消費できる。これが筋力トレーニングの特徴。

さらに筋肉が大きくなると1日のエネルギー消費量も増します。筋肉が1㎏増えると1日のエネルギー消費量は平均50キロカロリーほど上がる。これらが、筋力トレーニングがダイエットにも効果的な理由です。』

『実は私たちの研究の分野で、「筋肉に変化が起った」ことを実証するためには最低でも10週間かけないと、信用されません。たとえば、8週間で論文を出すと、「こんな短い期間でこんな変化が起こるの?」と疑問を持たれます。

計測をして、確かに増えたと言えるのに3ヵ月。見た目にもしっかりとした効果を上げたいのなら、まずは3ヵ月ぐらい続ける必要があります。最近、研究の測定の精度などが上がってきて、細かいことを調べられるようになりました。そこでわかったことは、筋力トレーニングをすると、わりと早い段階で筋肉は尐しずつですが、ちゃんと太くなるんです。

零コンマ何%ずつという、薄紙を貼るような変化なのですが、筋力トレーニングによって、確かに筋肉は日々太くなります。ただ、他人が見て「体型が変わったな」と、感じるようになるのにはどうしても3ヵ月はかかります。その代わり、この期間にしっかりとトレーニングをすれば、筋肉の量は10%というレベルで増やすことができるのです。

ただひとつ言っておくと、女性が筋力トレーニングを3ヵ月行ったからといって、筋骨隆々になることはほとんどありません。それよりも、よりシャープな体つきになりますから、健康的に見られるようになるでしょう。しかも、筋肉が増えれば、エネルギー消費量が増えるので、太りにくい体になれるのです。』

『筋肉はトレーニングによって使われると、それよりも強い筋肉に作り変えられます。これを筋の『超回復』と呼びます。それは、次のような生理的適応によって起こると考えられています。

まず、トレーニングによって大きな負荷がかかります。もし、次の機会にもこれと同じ負荷がかかると、また同じ負担を筋肉が負うことになります。だから、その負担を尐しでも尐なくするようにと、筋肉が大きくなるのです。

よくトレーニングの現場でいわれていることがあります。トレーニングによって筋肉に細かいキズがつき、それを修復することで筋肉が大きくなる。確かに、壊れて、そして修復するというのはすごくわかりやすいですよね。トレーニングを始めた最初の頃は、本当に微細なキズがつきます。それを調べるには、筋肉の中のクレアチンキナーゼという酵素が血中に洩れ出ているか否かで判断するのが普通です。

専門的にいうと筋肉がダメージを受けやすいエキセントリック.トレーニングを行うと、最初のうちはクレアチンキナーゼが血中に出るのですが、何回かトレーニングをすると出なくなる。つまり、筋はずっと壊れているわけではないんです。だから筋力トレーニングは筋力にダメージを与えるものと一方的に考えてしまうのは間違いで、もっと筋肉にやさしい方法もあるといえます。』

『前の項で説明しましたが、筋肉は超回復によって大きくなります。では、どれぐらいの時間をかけて成長するのでしょうか。筋肉はある程度の時間をかけて大きくなり、そして、その時間を過ぎると、今度は逆に分解されて元に戻っていくんです。だから、しっかりと大きくなって、分解される前のタイミングで次のトレーニングを行うのが一番効率がいいわけです。

しかし、このタイミングをたとえばタンパク質の合成(筋肉はタンパク質によってできています)などでは、なかなか調べ上げることができないのです。そこで、実際に何日に1回というふうに、トレーニング頻度を変えてみて、筋肉の増加量の変化を観察したという研究があります。

すると、48~72時間、中2~3日を空けてトレーニングをするのがよさそう、ということがわかったのです。そこで、ここで紹介するトレーニングは週3回行うということにします。これだと、空ける時間は最大の72時間までにはならないのですが、ひとつ大きなメリットがあります。

トレーニングが週1回になると、現状の筋肉を維持することしかできません。だから、3ヵ月間は最低でも週2回は行いたい。ですが、時間がなくてどうしてもできないこともあります。そのときのために週3回にして、1回は休んでいいという余裕を作っておく。そして3ヵ月たったら週1回に減らせば、その筋肉を維持していくことができることになります。』

『最近わかってきた面白いことがあります。それは、筋肉には記憶力があるということです。たとえば、せっかく3ヵ月トレーニングを続けたのに、なんらかの理由で止めざるをえなかったというので、3ヵ月休んでしまうと、筋肉は小さくなって、トレーニング前とほとんど同じ状態に戻ってしまいます。

そうなったときに、再びゼロから3ヵ月やらないといけないのかというと、実はそうでもなさそうです。1ヵ月ぐらいでスッと元に戻ったりします。この現象はマッスルメモリーと呼ばれていて、筋肉がトレーニングの刺激を覚えているのです。だからサボって落ちても、トレーニングを再開すればすぐ元に戻ってくれるんですね。

なぜ、こんなことが起きるのか。動物実験から、トレーニングを行って筋肉が大きくなるときに、細胞核が増えることが示されました。細胞核というのは、筋肉の材料であるタンパク質を合成する指令塔ですから、それが増えれば筋肉は太くなるキャパシティーを獲得したことになります。

そして、トレーニングを止めてしまうと筋細胞は細くなるのですが、細胞核はしばらく増えたままの状態に保たれます。だから、再びトレーニングを開始したときには、短い期間でそれらの筋細胞が大きくなるのです。細胞核を増やすという作業を省けるわけですね。そういう理由で、3ヵ月間をしっかりトレーニングすれば、基本的に休むことを恐れる必要はないんです。』

骨・軟骨を強くする|ニュースレターNO.269

Sportsmedicine 2011. No.127で「骨・軟骨を強くする-発生、進化、代謝、再生などに関する正しい知識」という特集記事がありました。骨・軟骨について正しく理解できるとともに、トレーニング指導に役立つ情報が得られるものでした。

また、解説している東京大学大学院工学系研究科教授(医学系研究科兼担)東京大学医学部附属病院の鄭雄一氏の著書:『骨博士が教える「老いない体」のつくり方』(ワック株式会社2010)もたいへん興味深い内容のものです。パーソナルトレーナーにとってトレーニング指導する上で必須の知識が書かれているので、著書と共に目を通していただきたいと思います。今回は上記の特集記事から抜粋して紹介したいと思います。

『鄭:まず、現代において、何を気をつけなければいけないかということですが、情報が多すぎることです。情報が多いというのは、一見いいことのような気もします。しかし、よく考えると、それがすべて正しい情報であればいいのですが、誤った情報も入っていて、そのなかから正しい情報をみつけなければいけないのです。

情報の選択がきちんとできないと情報はたくさんあるのですが、結局なんの役にも立たない誤った情報「ガセの情報」ばかりをつかむということになります。

ガセの情報をつかむとそちらに時間もお金もとられてしまって、果ては、間違った健康法を行うと健康までとられてしまって、人生が台無しになってしまいます。これが、私が一番今の世の中で危惧しているところです。このような情報の洪水のなかできちんと健康や老化に関する正しい情報を選択できることが大事だと思っています。そのためには対象に対して基礎的な知識があるということと、論理的に考えられるということ、この2つがないとダメかなと思います。

-それは、情報全般に言えることですね。

鄭:そうです。これはすべての事柄についてそうだと思っています。次に統計の話になりますが、日本は高齢化先進国で長寿国(2006年の統計で女性1位、男性2位)で、100歳以上の人については最近問題もありましたが、2007年の統計では32,000人くらいで、この10年で4倍になっています。

しかも65歳以上が人口の22%というすごい数になっています。65歳で“高齢”というのももはや当てはまらないと思います。そして高齢化とともに病気も増加してしまい80歳で平均8つもつと言われています。65歳すぎから健康で何も病気がない人というのは急激に減り、80代後半になると半数以上が要介護・要医療になります。

ですから、単に年齢の数字を増やしてもダメで、活動的な健康寿命を延ばさないといけない。そのときに、骨・軟骨は健康寿命にとってとても大事なものです。これが骨・軟骨の位置づけです。

ガンや脳卒中、心疾患などについては、「死ぬ」ということがクローズアップされて、注目されているのですが、実は骨・軟骨の疾患はクオリティ・オブ・ライフ(QOL)を下げるという意味では非常にインパクトの強い病気です。老化に伴う有名な病気としては、骨粗鬆症、歯周病、変形性関節症があります。

とくに若い人には、骨がちょっと減ったくらいどうということはないんじゃないか、骨折しても治るからいいじゃないかと言う人がいるのですが、高齢者に関しては、それはとんでもない間違いなのです。それは廃用症候群が起きてしまうからなのです。廃用症候群というのは長期間安静にしていると、すべての臓器で機能が落ちてしまうのです。筋肉、関節、骨、心・肺、消化管、神経など、だいたい1ヵ月くらい安静にしているとすべての機能が低下してしまいます。

-筋肉は早い。

鄭:筋肉は非常に早いです。骨も早い。代謝が早い臓器ほど安静による機能低下は早いようです。逆に関節は遅いです。もともと軟骨は代謝が遅いですから。若い人であれば機能のリザーブがあるので、機能が落ちてもだましだまし生活をしながら、もとに戻せるのですが、高齢者はリザーブが少ないので、廃用症候群になってしまうと、そこから歩けなくなってしまいます。

歩けなくなるとさらに心身機能が低下してさらに動けなくなってしまって、悪循環から抜け出せなくなり、そのまま寝たきりになってしまうのです。これは非常におそろしい状態です。アメリカの統計ですが、寝たきり老人の多くは5年以内に亡くなってしまうというデータがあります。

さらに80歳以上に関しては1年以内に亡くなってしまうという統計が出ていて、寝たきりはガンに匹敵するような病気だと思います。だから、これを防ぐのが、健康や運動の意味ではないかと思います。

-とくに運動ですね。

鄭:運動はすごく大事だと思います。』

『鄭:次に生理的老化と病的老化から考えてみると、最初に述べたとおり、生理的な老化は避けられません。それがどういうふうに起こるかを示したのが、図13です。骨量の変化をグラフで示したものですが、点線が女性で、太い線が男性です。女性のほうが早く第二次性徴期に入るので、そのときのホルモンによって骨量がぐんと増えて、だいたい20~40代でプラトーになります。そして閉経になるとガクッと落ちて、そのあと緩やかに落ちます。

男性の場合は、第二次性徴がやや遅くなりますが、男性ホルモンがありますので、女性より大きく骨量が増え、最大骨量も男性のほうが多くなります。しかし、やはり同じ年代のころからだんだん落ちていきます。男性では急激に落ちるフェーズはありません。

グラフ内の横の線は骨折閾値で、これ以上骨が減ると力学的強度が下がって、骨折しやすくなるという限界値です。男性は高齢になっても普通はそこまで骨量が低下しませんが、女性は80歳を超えたくらいになると、骨折閾値にかかってきます。

ですから、たとえば若いときに過激なダイエットをしたりして、きちんとご飯を食べなかったりすると、グラフの線が全体的に下がってしまい、60代くらいで、もう骨折しやすくなってしまう。男性も同じです。男性もきちんと栄養を摂れなかったり、ホルモンの異常があったりして、最大骨量が下がってしまうと、緩く落ちてきても、骨折閾値より骨量が低下し、骨折しやすくなってしまいます。

女性の場合は閉経でガクッと落ちてしまうと言いましたが、男性でも女性でもホルモンの異常があったりして、途中で急激に落ちるようなことがあったりすると、生理的な老化の基本的な経過は変えられないので、骨折しやすくなってしまう。最大骨量の低下、あるいは骨量減少の加速などがあると病的な老化になり骨折しやすくなるということを示した図です。』

『鄭:では、軟骨はどうかというと、軟骨もやはり生理的に老化します。だんだん歳をとってくると筋力が低下してきて、そうすると力を逃がす部分がなくなってくるので、直接関節に衝撃がきて、そういったメカニカルストレスが増えます。また、歳をとってくると関節の水分が低下したり有機成分も変化したりしてきます。

これらが複合的に働いて、変性は避けられません。しかし、これは緩やかなものです。病的な老化のリスクファクターがいくつかあります。まず「肥満」。軟骨の場合はとにかく肥満が大敵です。四六時中、膝の関節には過剰なメカニカルストレスがかかるので、変性が促進します。

それから肥満については、脂肪そのものから何か悪玉因子が出るという説があって、まだよくはわかっていないのですが、あり得る話だと思います。とにかく一番問題なのが肥満で、過剰なメカニカルストレスがかかりますので、減量は絶対に必要です。

それから「運動」ですが、筋力が低下するとメカニカルストレスが増大します。ですから筋力を保つための適度な運動はしたほうがいいです。過度に安静にするのはダメです。それから関節のケガは直接関節を損傷したり、靱帯が断裂するとそれで過剰なストレスがかかるようになります。

過激な運動はどうか。基本的には運動そのものによる影響はどうかというのはわかっていないのですが、関節のケガの危険があるので、歳をとってからあまり捻ったり、飛び跳ねたりというのはやめたほうがいいですね。バスケットボール、ラグビーなどは、あまり高齢者には勧められません。逆に過度の運動不足もダメで、宇宙飛行士でわかっているのですが、宇宙に行って重力がかからないと関節は薄くなってしまいます。

-関節が薄くなるというのは軟骨が薄くなる?

鄭:そうです。軟骨の部分が使われなくなるので、軟骨が萎縮してしまうのです。食事でどうにかなるというものはありません。サメの軟骨系の話は、何もエビデンスがない。やはり体重を適度に落として、適度に運動する、この2つがすべてです。

-栄養や食事は?

鄭:それは普通にしていれば大丈夫です。何もしなくていいということではないですが、特別にこれをやると軟骨が増えるということはありません。

-ヒアルロン酸の注射は?

鄭:注射は直接軟骨に到達しているのでそれなりの効果があるようです。しかし、食べるのはまったく意味がないと思います。』