2010年 11月 の投稿一覧

枕革命|ニュースレターNO.252

テレビでよく取り上げられるのが、腰痛、肩こり、肥満です。先日のテレビでは、女性が一番悩んでいるのが、「肩こり」ということでした。頭の位置がずれることで、頸椎の弯曲が偏位するようです。いろんな対策があるようです。熟睡ではない人に、肩こり、首こりが多いはずです。

私も熟睡できるように、からだが沈み込むマットを購入してみましたが、熟睡にはいきつきませんでした。短時間リラックスするのには最適なのですが、我々のからだは睡眠中に寝返りを打つことで正常な状態に戻していると言われますから、沈み込むマットはむしろマイナスだったのですね。

それで熟睡できる枕ということで、最近よくテレビに出てこられる医師がおられます。枕外来を開設され、適切な枕を作成してくれるということで、1年待ちになっていると言います。そこでその方の本を購入し、枕について勉強し、自分に合った枕を作成したところ、不快な寝返りを打つこともなく熟睡できるようになりました。

その本は、山田朱織著:枕革命 一晩で体が変わる(講談社+α新書2008)です。睡眠や首こり・肩こりに悩んでいる方は一度ご覧いただいたら参考になると思います。

今回は、参考になるところを一部抜粋して紹介したいと思います。

『本来、横たわるのは、脊椎動物にとって唯一、脊椎に負担のかからない姿勢です。脊椎動物のなかでも、2本足で立ち上がって活動する人間の場合、重い頭部を支えるため、ただでさえ首の骨(頸椎)や背骨、腰の骨(腰椎)に大きな負荷がかかっています。とくに頸椎には常時6~8キロもの頭の重みがかかり、それを支えているのが抗重力筋という筋肉です。

大きな負担から骨や筋肉を解放してやるには、静かに横たわってゆっくり休息するほかありません。さらに、休息中も大きな寝返りと小さな寝返りを存分に打って、血液やリンパ液、関節液などの体液をまんべんなく循環させることで、ようやく疲労は回復。心身ともにすっきりとリセットされた状態になるのです。

ところが、ベッドのスプリングが軟らかすぎたり、逆にフローリングの床に薄い敷布団だけで硬すぎたりすると、せっかく横になっても背骨や腰椎を解放してやることができません。むしろ、さらなる圧力がかかってしまいます。枕の高さが合わなければ、頸椎が無理な角度で折れ曲がり、その影響が背骨や腰椎、腕の神経にまで広がっていきます。

じつは、背骨全体の傾きは、ほんのわずかな首の角度で影響を受けます。つまりこれは枕の高さで決定するわけです。私たちの睡眠に影響を与える物理的な条件はたくさんありますが、なかでも枕は、もっとも単純で、直接的で、影響力の大きい要素なのです。』

『「私はどんな場所でも、どんな格好でも、眠たければすぐに眠れる」

ときどき、こんな自慢をする方にお会いします。しかし、そういう人でも、ソファでえびのように丸まって寝入ってしまった翌朝、身体のあちこちがこわばって痛かったり、だるかったという経験はあるはずです。あるいは、旅行先のホテルで、洋画に出てくるような2段式の羽毛枕に頭を沈めて眠ったところ、寝苦しくて困ったとか、朝になったら腕がしびれていたなどという経験はありませんか。

寝姿勢の悪さは、熟睡をさまたげるだけでなく、身体の痛みやしびれといった症状を引き起こすのです。そして、寝姿勢を決定する大きな要素が、布団やベッドなどの敷物と枕。とくに上半身、つまり頭、首、肩、上背部、腕、手に与える影響が大きいのが枕です。なぜなら枕は、一見、頭を置くだけの道具に見えますが、じつは睡眠中の首の角度を決定する大切なもの。首の位置や角度によって背骨全体のポジションが決まり、寝返りの打ちやすさまで左右されるのです。

このあたりで、頸椎や脊椎の構造についてちょっと勉強しておきましょう。少し専門的でむずかしいかもしれませんが、骨の仕組みがよくわかると、正しい寝姿勢や枕の重要性が理解できるはずです。

首の骨、つまり頸椎は7つの小さな骨から成り立ち、7つの骨の中を脊髄神経という重要な神経の束が走っています。そして、この脊髄神経から1本ずつ枝分かれした計8本の細い頸神経が、頭や首回り、肩甲骨の周囲、腕や指先まで、左右に分かれて支配しています。つまり、左右別々に運動、感覚、痛みなどを司っているのです。

枕が高すぎたり、低すぎたり、軟らかすぎたりすると、首が不自然な角度で傾くので、これらの頸神経は根元で圧迫されて障害を受けます。また、直接、圧迫することはなくても、不自然な寝姿勢のせいで首の後ろの筋肉が緊張すれば、神経に栄養を運ぶ血管が締めつけられて血液循環が悪くなり、やはり神経は痛みます。

もう少し詳しく、上から順番に頸神経の場所と障害を見ていきましょう。

第1頸椎と第2頸椎の間から頭のほうへ伸びている第2頸神経後枝が「大後頭神経」。この神経が締めつけられたり、傷んだりすると、頭痛や後頭部痛の原因となります。また、大後頭神経は髪の生え際あたりで三叉神経にリンクしているので、三叉神経痛として目の奥の痛みや、目頭がきりきりするといった症状が出ることがあります。

第2頸神経前枝、および第2頸椎と第3頸椎の間から出ている第3頸神経前枝は「小後頭神経」です。この神経は、耳の後ろから顎の関節、首の付け根あたりに分布します。寝ている間に耳がちぎれそうなほど痛くなったり、朝起きたら耳がしびれている、顎のあたりに違和感があると訴える患者さんがいますが、そういうケースでは、まずこの神経の異常が考えられます。

第3頸神経と第4頸神経は、喉や首回り、そして前胸部を支配しています。寝姿勢が悪いためにこれらの神経が傷つくと、喉が締めつけられるように感じたり、胸に圧迫感を覚えたりします。』

『下部に入り、第4頸椎と第5頸椎の間から出ている第5頸神経は、ちょうど肩の後面から腕に向かって伸びています。夜中に肩の痛みを感じて何度も目が覚めるとき、ちょっと年輩の方だと「いよいよ40肩だろうか」とか「50肩なんだからしかたない」などと考えがちですが、じつは合わない枕で寝ているために首が傾きすぎて、第5頸神経を圧迫していることも考えられます。

次の第6頸神経は、肘の周囲に伸びています。したがって、起きたときに肘が痛いとか、肘の曲げ伸ばしがうまくいかないという方の場合は、この神経が傷んでいることを疑ってみる必要があります。

そして、いちばん下部にある第7頸神経と第8頸神経は、指先にまで到達しています。とくに第8頸神経は、肘の内部にある細い骨の隙間を縫うようにして小指の先にまで伸びているため、圧迫を受けやすい構造にあります。朝起きるたびに小指がしびれているとか、なんとなく手がはれぼったい、手に力が入らないなどという場合にも、首の神経を圧迫していることが原因かもしれないのです。

もちろん、あらゆる症状がすべて枕のせいだとは言えません。ほかの病気による症状であることも十分考えなければなりません。また、頸椎に年齢変形や外傷の後遺症があるような場合には、枕や寝姿勢に関係なく同様の症状が出ることがあります。

しかし、合わない枕で寝続ければ、いずれは誰にでも何らかのつらい症状が出てくる可能性はあるのです。なぜなら、合わない枕で眠るのは、首の骨にとって拷問も同じだからです。誰だって、ひどい拷問を受けたり、残虐な暴力行為にさらされれば、無意識のうちに防御姿勢をとるものでしょう。枕の拷問を受けたときも同じです。

合わない枕を当てて眠った夜、私たちの身体はどんなふうに対応していると思いますか?無意識のうちにも自らの手を動かして、頭の下の枕をずらしたり、はね飛ばしたりします。身体全体が枕から逃れよう、逃れようと動き回ることもあります。枕の代わりに自分の腕や肩を不自然な形に曲げて頭を預けることもあります。いずれにしても、朝起きてみると、頭の下に枕はありません。

はたから見れば、「なんて寝相の悪い人」などということになってしまうかもしれませんが、じつはそれもこれも、拷問から逃れるための適切な行動なのです。だって、考えてもみてください。無理な姿勢で首の骨を圧迫したまま6時間も8時間も眠り続けるとしたら、どうなってしまうのか。ちょっと考えただけでも恐ろしい話です。寝違えを起こす人も、ひどい頭痛に悩む人も、腕のしびれや肩こりに苦しむ人も、はるかに増えるに違いありません。

合わない凹凸枕の上で首がぐらぐら拷問を受けるよりは、枕を使わず平らな敷物の上で眠るほうがまだましです。少なくとも、首が安定して寝返りが打てます。』

脱・筋力主義|ニュースレターNO.251

面白いタイトルの本を見つけました。市野聖治他:脱・筋力主義 スポーツ上達のコツ(スキージャーナル2009)です。「重力」と「リラックス」と言うのは、私の指導の基本になっているキーワードですので、楽しみに読みました。

私にとって特別なことは書かれていないのですが、これまでのトレーニングの本とは違うポイントで書かれているので、アスリートのトレーニングを指導されている方にとっては参考になる考え方がたくさん出てくると思います。

走ったり跳んだりすることにおいて、尐し違った見方をすることができると思います。著書に書かれている内容を、また著者たちが何を訴えているのか、それを理解できればトレーニングにおいてレパートリーを広げることにもなると思います。アスリートの指導に関係されている方には、ぜひ一度読んでいただきたいものだと思います。

今回は、ほんの一部をピックアップして紹介したいと思います。

『スプリント種目の筋力トレーニングにおいて、そのおもな目的は、股関節伸展筋群の筋出力の向上です。スプリンターやその指導者が、股関節伸展筋群を鍛える理由は前述したとおりですが、これにはいくつかの疑問点があります。

一点目は、そのトレーニング方法です。ハムストリングのトレーニング方法としてスクワットが挙げられますが、股関節と膝関節にまたがるハムストリングは、股関節と膝関節が同時に屈曲(または同時に伸展)する運動においては長さが変化しません。これは、ふたつの関節にまたがる二関節筋という筋の特徴です。長さが変化しないということは、積極的に関節角度変位に関与していないことが考えられます。

このことから、スクワットのように股関節と膝関節が同時に屈曲(伸展)する運動は、ハムストリングのトレーニングとしては、不向きであると考えられます。

また、ハムストリングの積極的な長さ変化を期待したトレーニングとして、レッグカールが挙げられます。しかし、レッグカールは膝関節の屈曲運動です。膝関節を曲げてハムストリングをトレーニングしておきながら、実際のスプリントでは股関節伸展筋群としての作用を期待するのは矛盾しています。

さらに、レッグカールは、錘(負荷)に力を作用させて、その錘(負荷)自体が移動し、身体は移動しません。このような運動のことをトレーニング理論では、オープン・キネティック・チェーン運動と呼びます。一方で、疾走運動は、地面(地球)に力を加えても地面(地球)が移動するわけはなく、身体が移動します。

このような運動のことをクローズド・キネティック・チェーン運動と呼びます。両者は、名前を変えて明確に区別され、また両者の違いは、必要とされる筋出力の違いと、抗重力筋を動員しているかどうかで解釈されます。したがって、疾走という運動の特異性を考慮したトレーニングを行なうのであれば、クローズド・キネティック・チェーン運動によるトレーニング種目を採用することが、その特異性に合致しています。

2点目は、10メートル/秒を超えるような速度で疾走しているとき、股関節伸展筋群は、能動的な力の発揮が可能か?という問題です。トップスプリンターともなると、最大疾走速度は10メートル/秒を超え、脚全体のスウィング速度は600度/秒を超えます。

物理的に、力の獲得と速度の獲得は両立しません。したがって、大きな力の発揮が必要とされる運動においては速度の発揮を犠牲にし、大きな速度の発揮が必要とされる運動においては、力の発揮を犠牲にする必要があります。このような力と速度の関係を「力-速度関係」と言います。

つまり、力-速度関係を考慮すると、10メートル/秒を超える疾走速度や、600度/秒を超える脚全体のスウィング速度が必要とされる場合に、筋が能動的な力発揮をすることは不可能ではないかと考えられるのです。

三点目は、単関節筋と二関節筋との機能解剖学的な特性の差についてです。ハムストリングとは、大腿二頭筋長頭、半腱様筋および半膜様筋の総称です。そして、これらの筋は、股関節と膝関節とにまたがる二関節筋です。二関節筋は、大殿筋のように単一の関節にのみまたがる単関節筋とは、その特性が異なります。

その特性の違いとは、単関節が運動に必要な力や速度のジェネレーターとしての役割を果たしているのに対して、二関節筋は関連する関節間のエネルギーの受け渡しを担っていることです。前出のように、スクワット運動のような運動においてハムストリングの長さが変化しないのは、関連する関節間のエネルギーを受け渡すためなのです。

このことから、ハムストリングの筋力を向上するうえで考慮すべき点は多く、ウエイトトレーニングによってハムストリングを鍛えるには、それなりの工夫が必要なことがわかります。また、疾走における股関節伸展筋群の役割についても、再考する必要があります。さらに、単関節筋である大殿筋は、接地中に能動的な力を発揮している可能性がありますが、二関節筋であるハムストリングは、能動的な力を発揮していない可能性すら考えられます。』

『地球上に生きるすべての生物は、大きな力を発揮するために、意識的か無意識的かに関わらず、反動動作を用いています。反動動作とは一旦、意図する方向とは逆の方向に動いた後、意図する方向に動くことです。したがって、立った状態から跳ぶという動作では、意図する方向が下方向であり、反動動作は上方向となります。つまり、沈み込みという反動動作によって高く跳ぼうとするのです。

反動を用いるのは、人間だけではなく、地球の重力に抗して生きる生物すべてに当てはまります。跳ぶという動作を物理的に考えると、まず立位の状態から一旦、重心を下げて運動エネルギーを獲得し、このエネルギーを筋や腱に蓄え、それを筋や腱が再利用することによって、重力に抗する大きな力やスピードを発揮することが可能となります。つまり、身体重心を下げなければ、そもそも「跳ぶ」ための原動力となるエネルギーが得られないのです。

このように考えると、重力によって身体が地球の中心に引きつけられるエネルギー(速度)を、「跳ぶ」という運動の源にしていることがわかります。したがって、跳ぶことは「地球に跳ばせてもらっている」と考えることができます。そして、地球の重力をうまく利用し、地球に跳ばせてもらうことが反動を使うということになるのです。

次に、反動動作を筋や腱の働きからみてみましょう。たとえば、垂直跳について考えてみます。前述のとおり、反動とは身体重心の沈み込みであり、身体重心の沈み込みとは足関節、膝関節、股関節の屈曲です。足関節が屈曲した場合には、足関節の伸展作用を持っている腓腹筋が引き伸ばされます。

同様に、膝関節が屈曲した場合には膝関節の伸展作用を持っている外側広筋が、股関節が屈曲した場合には股関節の伸展作用を持っている大殿筋が引き伸ばされます。大きな力を発揮するためには、また乗直跳でより高く跳ぶためには、このように反動動作によって筋を一旦、引き伸ばすことが重要です。

筋というのは一旦、引き伸ばされた後に力を発揮したほうが大きな力を発揮することができます。これは、バネやゴムに大きな力を発揮させようとする際に、一旦、大きく引き伸ばすことと同じです。このように、高く跳ぶコツは、まず反動動作を用いることによって、筋を一旦、引き伸ばすことです。ただし、何でもいいからとにかく引き伸ばせばいいというものでもありません。』

『筋がバネと異なる点として、引き伸ばしてから即座に跳ね返さないと、その張力が失われてしまう点を挙げました。さらにもうひとつ、筋がバネと異なる点があります。

それは、引き伸ばすスピードと跳ね返る力との関係です。バネは、ゆっくり引き伸ばしても一気に引き伸ばしても、跳ね返ってくる力は同じです。しかし、筋の場合はゆっくり引き伸ばすよりも、一気に引き伸ばしたほうが大きな力を発揮することができます。それでは、跳ぶという運動において筋を一気に引き伸ばすためには、どうすればよいのでしょうか? それには、抜重という現象を起こすことがコツとなります。

抜重とは、体重が地球によって支えられていない状態を意味します。より具体的な表現を使うと、「宙に浮いている」状態です。抜重の状態をつくり出すためには、2通りの方法が考えられます。それは、「自由落下すること」と「ジャンプすること」です。スキーの指導書において用いられる抜重は、ジャンプすることによって得られる抜重です。跳ぶコツにおいて用いられる抜重は、自由落下することによって得られる抜重です。

跳ぶコツとしての抜重、つまり自由落下は、「地球の力によって落ちる」ものです。したがって、立位の状態から抜重を生み出すためには、脚という支えを外して、身体重心を一気に自由落下させなければなりません。そして、落下によって得たエネルギーで筋を一気に引き伸ばし、その反動で跳ぶことが高く跳ぶコツなのです。』

『立位の状態から身体重心の抜重を起こすためには、一気に下肢三関節(足、膝および股関節)を屈曲させることが必要です。これは、バレーボールでスパイクを打つときに必要とされるような助走付き両足ジャンプでも同じです。

しかし、この助走付き両足ジャンプでは、踏み切りの両足が接地したときには、すでに下肢三関節が屈曲していなければなりません。なぜなら、スパイクを打つ際に必要とされるジャンプでは、助走で得た水平方向の速度(運動エネルギー)を利用する必要があるからです。もし、このとき助走から直立状態を経てジャンプをすると、助走で得た水平方向の速度を一旦、消失させてからジャンプすることになります。これでは、何のために助走をしてきたのかわかりません。

助走で得た水平方向の速度を効果的に利用するためには、水平方向の速度を保持したまま身体重心を下げなければなりません。これは、両足で踏み切る一歩前の歩幅を尐し大きめにすることで可能になります。

踏み切りの一歩前の歩幅を大きくすることで、身体重心を下げることができるようになります。そして、これにより助走で得た水平方向の速度を最小限のブレーキで利用することもできるのです。』