2010年 10月 の投稿一覧

レジスタンストレーニング|ニュースレターNO.250

今回は、17日東京で、25日H.S.S.R.ラボで行われた「レジスタンストレーニング」の勉強会に参加されたパーソナルトレーナーの方からの感想を紹介したいと思います。ルをいただきましたので、紹介したいと思います。パーソナルトレーナーの方々にとって「レジスタンストレーニング」について考えるヒントが得られると思います。

 

本橋 正光(トータルフィットネス代表)

『「レジスタンストレーニングの考え方と実践方法」はまさに魚住先生のお考えになることと日々実践されていることをご指導いただき、また内容も旬なものであった。他人の指導を客観的な立場で見ると「基本はシンプル」「相手が具体的にイメージできる言葉ややり方を話す」という言葉が身にしみる。

このことは、軽く分かったつもりでいることが多いと思うが、指導者として最も大切なことであると考え、日常の指導でいかに上手く伝えていないか、たくさん思い当たるところがある。どれだけ分かりやすく説明しても「相手が理解(動作を)できない」もどかしさを感じることがあるが、これを相手のせいにしてしまうとそこで進歩が停滞してしまう。

その時に自分の力不足を謙虚に認識し、どのようにすれば相手に伝わるか、試行錯誤を繰り返し挑戦しなくてはならないことを今回深く腹に落とした。結局、どんなに深厚な知識や技術を持っていても相手が分からなければ意味がない。知識も素人、身体感覚も鈍い人に分からせる指導をしていくことが、「できる指導者」の必須条件のひとつになると確信した。

しばらくは指導において念頭に置き、癖づけるようにしていきたい。 冒頭の数十分だけで考え方の大前提をご指導いただいたと思う。 その他の気づきである。 ・相手を受動的にさせないこと トレーニングは、「教育」、「教える」という意味でただやらせる形になってはいけない。何故そうなったのか?どうすれば改善するのか?を相手に話さなければならない。

トレーニングで何をやったか分からないと、トレーニング効果を得られない。それはクライアントとの信頼関係を高めるために欠かせない要素である。 ・どんなことをするか?が大切 どんな刺激を与え、どんな反応が得られるかを考え、結果を確認することが必要。道具は刺激に対しての小道具にしかならない。

道具がメインではなく、目的に対しての手段で道具を使うことである。小さい刺激は小さい反応であり、大きい刺激は大きい反応である。 ・目的は最終的なもの 一般的に目的は簡単に短時間で達成できるものではない。簡単に達成できるものは小さな目標にすぎない。

そのできそうな小さな目標を段階的にクリアしていきながら目的を達成するのが、目的・目標の設定と達成方法の考え方である。目的を最初に持ってくると、目標の量が多くなり、やる方は難しくなり危険でさえある。 ・体の感覚を高めるための方法 体のセンターの意識付けを鼻で行うこと。

鏡を使い目視で確認することや瞬間的に呼吸することで意識付けをする。五感を利用することで動作や感覚を高める方法がある。動かない関節をずっと見ることにより、動き出すようになることは面白い反応である。それらの反応は万人共通ではなく、人により違うので多くの方法を知っていることが大切である。

・人の自然体立位での足幅は狭い 今まで骨盤の外側と足の外側が同じ幅になるよう立つよう指導してきたが、今回の足幅はそれよりも狭く、解剖では確かにかなり狭いのが基準である。自分で試してみると安定性は高く、頭を動かしても重心の修正がしやすいと思った。

足と重心の距離が近いので安定性が高いのは当然である。また、男性の排泄時の足幅をいろいろと試しているが、解剖学的位置に置いたものが一番しやすいようであることは、力が出ることを示唆している。 重力に対して体を動かすこと自体がレジスタンストレーニングである考えは定着しつつあり、一般の人がきちんと自然体で立ち、立ちしゃがみが出来、ADLに問題がないようにトレーニングすることが大局的な目的となる。

そうすると本当に必要なトレーニングというものが見えて来て、数あるトレーニングからその人に合ったトレーニングを選択するのではなく、トレーニングする人が本当に必要なトレーニングを選択・発案して指導していくやり方をする指導法がよいと思った。考え方の順序が大切である。順序が違うと無駄なことをしてしまい時間やエネルギーがもったいない。

それからトレーニングではその目的によるが、柔らかくしなやなか筋肉や体を作ることが大多数の人に当てはまり、そのような筋肉や体を作るトレーニング指導を再検討していくべきであり、今までのトレーニング=きついもの、辛いものという既成概念を変革していくことが必要であると考える。このような考え方は、今までのフィットネスの常識から脱却しないと構築できないものである。』

岡田 康志(パーソナルトレーナー) 『テーマの「レジスタンストレーニング」は、トレーナーやジムで指導する人の基本となるものです。しかし、これもわかっているつもりでやってしまっている事が多いので、改めてその考え方、実践方法について学ばせて頂きました。 まずは、参加者の質問・疑問についてクリアにしていくところからスタートしたのですが、さっそくわかっているつもりでやってしまっているということに改めて気付かされました。

トレーナーやトレーニング指導をする人はエクササイズを用いる時に、ほとんどが本で読んだり、他のメディアで見たものをクライアントに提供してしまいがちです。 そうすると、クライアントに対して思ったように効果を出せない場合にすぐに「どうやったら上手くいくのか?」という方法を知りたくなります。

しかし、トレーニングを指導する時に「5W1H(誰が、何のために、いつ、どこで、何を、どのようにする)」をきちんと押さえていれば、どんなやり方、考え方をすればよいのかはわかってくるのです。それを押さえずに、方法ばかりを相手に押し付けてしまうから上手くいかないのです。「誰にどんな目的で」が1番重要なのです。

その他にも我々が誤解してしまっている様々なことについて先生からご指導いただきました。今まで当たり前のように思っていたことのほとんどが勘違いであるということに改めて気づかされると共に、やはりきちんと本質を学ぶということが大切であると感じました。 それから、一般の方にはどんな身体が必要なのかを考えていきました。

やはり「自然体で立つ」ということが大切です。人間には骨があり、それに身(筋肉)が付いているのです。骨で立つことができれば、筋肉には適度な緊張と緩みがあります。 地球に住んでいる我々地球人には、立った時かならず「1G」という重力がかかっています。

きちんと骨で立てていれば、1Gがかかっていてもストレスは頭から足の垂直方向にかかるので、どこかに緊張や痛みを起こすことなく立ち続けることができます。しかしその垂直ラインが崩れて立ってしまうと、腰などにストレスがかかり緊張して固くなったり、痛みが起こります。

ですから、一般の方が健康に毎日を過ごすために必要な身体とは、「1Gに余裕を持って立て、1Gに対して余裕を持って動ける身体」ということになります。きちんと立てていれば、立っているだけで姿勢を維持するために腹背筋は使われているので、それだけで筋持久力のトレーニングをしていることになるのです。

そうすればわざわざ何十回も上体起こしの腹筋エクササイズをやらなくていいのです。 後半はBig3(デッドリフト、スクワット、ベンチプレス)やクリーンの実践方法を、重いものを楽に持ち上げるために必要な『重力、反射、慣性』の使い方を踏まえて教わりました。

Big3はいつものトレーニングでもやっていたのですが、毎回トレーニング後はしんどかったので、しんどくなるようにやってしまっているのだろうとは思っていたのですが、どのように修正したら良いのか具体的な方法がわかりませんでした。しかし、「重力、反射、慣性」の使い方を教わると、必要なところに力を入れて、後は楽にしても負荷を持ち上げることができるのです。

本当に「こんなもんでいいのか?」と思うくらい楽なのです。 後は今日の感覚を忘れないように日々実践あるのみですね。そしてそれをお客様にしっかりと伝えていかなくてはいけません。

変形性股関節症や膝関節症の方に立ち方、しゃがみ方、歩き方を良くするためにスクワットを行う時のヒントもいただきましたので、さっそく今日からお客様の指導で実践していこうと思います。』

ふくらはぎマッサージ|ニュースレターNO.226

2回にわたって紹介したDVDですが、好評を頂き嬉しい限りです。特に、私の講義や講座のDVDを希望された方が多く、私の考え方が皆さんの参考になれば嬉しく思っています。また、これまで紹介した以外にも、講座やテクニック、指導のDVDをいま整理しているところです。まとまりましたら、またご紹介したいと思います。

さて、今回はふくらはぎのマッサージについて紹介したいと思います。何気なくふくらはぎのマッサージはやられているのですが、ふくらはぎのマッサージの重要性について書かれた本を見つけました。石川洋一著:万病に効くふくらはぎマッサージ(マキノ出版2009)です。読んでいくと、なるほどと思うことが多いのですが、皆さんはどのように考えられるでしょうか。

この本を読んでからふくらはぎの筋を温めて冷やさないようにしてレッグウォーマーをしています。そうすると、ふくらはぎが疲れているとか、硬く重く感じることも尐なくなりました。これからの季節、気温も下がってきますので、試すにはちょうど良いタイミングかもしれません。寝るときにも、レッグウォーマーは履いたままにしています。今後も様子を見ていきたいと思います。

それでは、上記の著書の中からポイントとなるところを抜粋して紹介したいと思います。

『人間を含めたすべての生物は、体の中の細胞に酸素や栄養を取り込み、二酸化炭素や老廃物を外部に排出していかなければ、生命を維持することができません。単細胞生物なら外界から直接、必要なものと不必要なものの交換ができますが、人間のような複雑な体の構造をもった多細胞生物の場合には、その交換は、ほとんど血液循環によって行われることになります。

血液は全身に網の目のように張りめぐらされた血管内を循環し、細胞に酸素と栄養素を供給する一方で、二酸化炭素と老廃物を回収していきます。その循環経路は、体循環(大循環)と肺循環(小循環)の二つのルートに大別され、このうち体循環が、一般にいう血液の流れ、すなわち心臓から送り出された血液が体を一周し、心臓へと戻ってくるルートになります。

血管には動脈、毛細血管、静脈があります。新鮮な酸素と栄養素をたっぷりと含んだ血液は、心臓のポンプ作用によって動脈へと押し出され、そこから毛細血管に回って、細胞に必要な酸素と栄養素を供給していきます。その一方で細胞から二酸化炭素と老廃物を回収し、古くなった血液は静脈を通って心臓に戻っていくしくみになっています。

肺循環は、心臓と肺とを結ぶルートで、心臓に戻った静脈血に酸素を供給し、新鮮な動脈血にリフレッシュさせる役割をしています。』

『「血液循環は心臓のポンプ作用によって行われる」と、一般的にはいわれています。しかん確かに、心臓は自身が収縮と弛緩をくり返すことで、血液を体のすみずみにまで押し出すポンプの役割を果たしています。その際にかかる圧力が、血圧になります。

しかし、心臓から押し出された血液は、全身をめぐって、再び心臓へと戻っていかなければなりません。ここで大事なことは、心臓には血液を動脈内に勢いよく押し出す働きはするけれども、全身に送り出した後の血液を吸い上げる力までは持っていないということです。

では、心臓から押し出された血液は、いったいどのようなしくみで心臓へと戻っていくのでしょうか。実はこの点に、ふくらはぎを第2の心臓とする秘密も隠されているのです。

心臓から出た血液は、心臓ポンプの力と、しなやかな弾力を持って補助ポンプのような働きをする大動脈の厚い血管壁に助けられ、勢いよく体のすみずみにまで送られていきます。そして毛細血管を介して酸素と二酸化炭素、栄養素と老廃物の交換をした後、静脈へと流されます。つまり、この静脈内の血液は、どのようにして心臓まで戻っていくかが問題になってくるわけです。

そもそも静脈の血管壁は、心臓から送り出された血液をスムーズに心臓に戻せるよう、きわめて薄く、伸びやすく作られています。さらに、そのところどころには弁が設けられ、血管の収縮・弛緩に応じて開閉しながら、血液量を調節し、逆流を防ぐ作りになっています。

ただし、それだけでは動脈のように勢いよく血液を流すことはできません。静脈は筋肉の中を走っています。静脈血が心臓に向かって流れることができるのは、その周囲の筋肉が収縮と弛緩をくり返すことで静脈に圧力をかけ、ポンプの役割を果たしてしぼくれているからなのです。静脈を搾りながら血液を押し進めていくその筋肉の働きは、まるで乳搾りのようであることから、ミルキングアクションとも呼ばれています。

その際、体の上部のほうに回った血液は、重力の助けによって、比較的楽に心臓までたどり着くことができますが、心臓の下部、すなわち足のほうに下りていった血液は、重力に逆らって上り、心臓にたどり着かなければなりません。それには、ふくらはぎの筋肉がしっかりと収縮して、力強くポンプの役割を果たしていくことが、最も重要なポイントになってくるのです。』

『ふくらはぎは、心臓から最も離れたところでミルキングアクションを行っている器官です。しかし、犬や猫などの四つ足動物には、筋肉の盛り上がったふくらはぎはありません。すなわち、ふくらはぎとは、直立歩行をする人間だけに備えられた器官でもあるのです。

ここで人間の進化の過程を振り返ってみましょう。

人間の祖先は、そもそも水中に住んでいた生物です。水中では重力の影響をほとんど受けずに生命を維持していましたが、陸に出てきたことで、水中の六倍もの重力にせきつい耐え、生きていかなければならなくなりました。それでも四つ足で歩き、脊椎(背骨)も水平だった時代には、血液も心臓の働きだけで循環させることができたのです。

ところが、人間は二本足で立ち、歩くことにより、より重力の影響を強く受けることになりました。その結果、心臓の負担が増大されて、血液を円滑に循環させるための“第2の心臓”が必要になり、心臓から最も離れたところに強靱な筋肉を集め、ふくらはぎという器官が作られたのです。

ふくらはぎを構成するおもな筋肉は、ふくらみを形成している腓腹筋と、深部でそれを支えているひらめ筋です。その奥には、さらに足や足指の運動のための細かな筋肉が走っています。これらの筋肉が元気に収縮・弛緩をくり返し、静脈血を押し上げていくことで、はじめて人間の血液循環は成立することになるわけです。』

『足の静脈血は、ふくらはぎの筋肉の力強い働きがなければ、心臓に戻っていくことができません。しかし、筋肉量の多いふくらはぎにとっても、それは非常に重労働であり、ふくらはぎの筋肉は常に疲労をしやすい状況にあるともいえます。そして、その疲労がふくらはぎの働きを弱め、血流不良を引き起こす原因にもなっていくのです。

疲れたときや激しい運動の後には、体の動きが鈍くなったと感じます。それは筋肉を使い続けることで細胞の中に疲労物質の乳酸が蓄積し、筋肉が硬くなって、刺激に反応しにくくなるからです。

また、筋肉を収縮させるためのエネルギーは、おもにアデノシン三燐酸(ATP)の分解・再合成により供給されています。乳酸の濃度が高くなると、そのアデノシン三燐酸の再合成がおさえられるため、筋肉は収縮できなくなって、静脈のポンプ作用も低下していきます。

その結果、起こってくるのが静脈血のうっ滞です。筋肉が収縮できなくなったところで、血液が汚れたドブ川のようによどんでしまい、そこから先に流れにくくなってしまうのです。

人体の血液は、重力の影響により、七〇%が下半身に集まっています。そのため足でうっ滞が起こると、全身を循環する血液の量も尐なくなり、心臓をはじめ、ほかの重要な器官に十分な酸素、栄養が行き渡らなくなってしまいます。それが体調の悪さや病気を引き起こす原因にもなっていくのです。

指などをヒモできつく縛ると、その指の先は赤から紫色に変色し、熱を持ってズキズキします。それでもヒモを解かずにいると、今度は指先が冷たくなって、組織は壊し死していきます。足に血液がうっ滞し続けるということは、これと同様の現象が、体内の組織で起こりえることを意味しています。

ふくらはぎマヅサージは、血流不良の根本的原因として存在するふくらはぎの疲労回復を促し、柔軟で収縮しやすい筋肉を作り上げていく健康法であり、治療法です。その結果、静脈血のうっ滞が改善されれば、その先の血液の通過もよくなるために、全身の血流も円滑に促進されていくわけです。』

『心臓の壁は、心筋という筋肉でできています。この心筋が収縮・拡張することで、心臓はポンプとなって、全身に新鮮な血液を送り出しているわけです。

心筋は一日二四時間、いっときも休むことなく、この収縮・拡張という仕事をくり返しています。そのために安静時でも、ほかの組織よりはるかに多量のエネルギーを必要とします。そして、そのエネルギー源となる脂質やブドウ糖などがエネルギーに変わるためには、十分な酸素が必要になります。

心筋のエネルギー源や酸素は、冠状動脈を介する血流によってのみ供給されており、冠状動脈を流れる血液が滞ると、心筋に血液が回ってこない、つまり血液がない状態(虚血)になります。こうして血液が回ってこないために、心臓そのものの働きに異常をきたしている場合に、虚血性心疾患という診断が下されるわけです。

前出のKさんの話を思い出してください。心筋梗塞から末期の心不全状態にあったKさんの心臓は、たった二回のふくらはぎ治療で、外出ができるまでに機能を回復しました。その理由は、ふくらはぎ刺激によって冠状動脈の虚血状態が改善され、心臓の負担が軽減したからにほかなりません。

ここでもう一度、血液循環のしくみについて、簡単におさらいしておきましょう。血液は心臓から動脈に押し出され、体のすみずみに送られます。そして毛細血管内で酸素と二酸化炭素、栄養素と老廃物の交換をしたあと、静脈に送られ、心臓へと戻っていきます。その際、足先に到達した血液は、ふくらはぎの筋肉が収縮・弛緩をくり返し、静脈を搾り上げる形で心臓に戻されていきます。このように、血液循環は心臓とふくらはぎの密接な連係プレーがあって、成り立っているのです。

次に、心臓の血液がどうして不足してしまうのかを考えてみましょう。

ふくらはぎの筋肉は、心臓から最も遠い足の先端からの血液を、重力に抵抗しながら、搾り上げる仕事をしています。その重労働により、ふくらはぎが疲弊すると、筋肉の収縮力も弱くなり、静脈血が足にうっ滞していきます。その結果、心臓に戻る血液の絶対量が尐なくなり、冠状動脈の血流も減尐するため、心筋は酸素不足、
栄養不足に陥ることになります。その悪循環のくり返しにより、やがて心臓の虚血状態が引き起こされ、健全な働きを維持できなくなっていくわけです。

速読|ニュースレターNO.249

随分と前になりますが、テレビを見ていたらバッティングセンターで150キロのスピードボールを打つ女性がいるとのことでした。実際にその女性が現れて挑戦したのですが、いとも簡単にボールにバットを当てていました。ポイントは何かというと、ボールに集中しないこと、ボールが出てくるところに集中するのではなく、ボーッとみておくことだそうです。

以前紹介した「スポーツ脳トレーニング」の著者も同じようなことを言っておられます。集中しないことの方が反応が速くなるということです。こうなると集中することの意味が変わってきますね。その女性はスポーツの経験はほとんどなく、塾の先生をしているとのことでした。何を教えているかというと、「速読」でした。

速読することで脳が活性し、視野も広がるということです。本を読むにしても、一文字ずつ読んでいくのではなく、カメラのシャッターを押すような感覚で次々とページをめくっていくようなものです。

私は、本を読むことに関してはそこまでできないのですが、アスリートの動きをみたときは、シャッターを押した時のように、ポイントの静止画面が映像として残ります。速読は、スポーツの現場で大いに活用できると思います。

呉真由美著:スポーツ速読 完全マスターBOOK(扶桑社2010)は、その一冊ですが、非常に面白く、興味をひかれることが書かれています。一部を抜粋して紹介しますが、ぜひ原著をお読みになることをお勧めします。また、コーチング・クリニック11月号の特別企画でも「スポーツ速読のススメ!」として取り上げていましたので、そちらもご覧ください。

『速読トレーニングで脳力を活かせるようになれば、自然と“本が速く読めている状態”になります。第2章で何度も繰り返したことですが、まだ納得がいかない方もたくさんいらっしゃるでしょう。

でも、誰が何といおうと私たちの脳はスゴイんです。なぜなら、脳は日常的に高速回転.高速処理を行っていて、私たちが認識している以上の情報を瞬時にキャッチしているからです。

“脳は情報の取捨選択をしている”という話を聞いたことがありませんか? 例えば、レストランや喫茶店で友人とおしゃべりをしたり本を読んだりしているとき、隣のテーブルの会話は耳に入ってきませんよね。それなのに、住んでいる地名や好きなタレントの名前など、自分になじみ深い言葉だけはフッと耳に飛び込んでくる。みなさんも身に覚えがあるのではないでしょうか。

この本を読んでくださっているいまだったら、隣から“速読”という言葉が聞こえた瞬間、耳がダンボになるかもしれませんね。「いまからこの言葉を言いますよ」と予告されたわけでもないのに、不思議なことです。

もしくは、「新しいバッグが欲しいな」なんて考えながら街を歩いていると、狙っている色やブランドのバッグがやたらと目につくようになる。これもよくあることですよね。同じバッグを持っている人が急に増えるわけがないのに、やはり不思議なことです。

実はこれ、耳や目から入ってきた膨大な情報をすべて脳が瞬時にキャッチし、超高速で処理をして、欲しい情報だけを教えてくれているんですね。しかも、本人としてはほかのことに集中していたり、ポーッとしたりしているにもかかわらず、です。

このように、みなさんが何をしているかなんて関係なく、脳は超高速で膨大な情報を休まずに処理し続けているのです。』

『それでは、これまで何度も出てきた“脳の活性化”について、改めて考えてみましょう。もう言うまでもありませんが、本来の脳力を活かせるようになるためには、脳を活性化させる必要があります。でも、脳が活性化されている状態とは、果たしてどんな状態なのでしょうか?

脳が活性化されると、従来よりも脳の処理能力が上がります。脳はもともと高い情報処理能力を持って

いるので、「脳が活性化されると脳の処理能力を普通に発揮できるようになる」と言ったほうが誤解を生まないかもしれませんね。

パソコンだったら、処理能力以上の情報を入れるとフリーズしてしまうので、買い替えたりカスタマイズしたりしてバージョンアップをしますよね。でも、脳はもともと高い情報処理能力を持っていますから、これまで以上に情報を送るようにするだけで、自ら処理能力をバージョンアップしてくれます。

処理能力がバージョンアップすれば、当然、これまでよりも情報をラクに処理できるようになりますよね。これがまさに、“脳が活性化ざれた状態”です。

ですから、脳に速く大量の情報を送り込む速読トレーニングを重ねれば重ねるほど、脳の活性化が進んでどんどん情報をラクに処理できるようになる。具体的に言えば、思考スピードや判断力が向上するんですね。そのため、メモリを増設したパソコンのように、速く入力された情報だろうが大量に入力された情報だろうが、余裕を持ってサクサクと処理できるようになるんです。

その目に見えるわかりやすい成果が、「本を速く読めるようになる」ことや、「150㎞の速球を打てるようになる」ことです。すごいことに感じられるかもしれませんが、このように脳が活性化して処理能力を発揮できるようになれば、いとも簡単なことなんです。

それどころか、私たちはもともと優れた脳力を持っているのですから、脳が活性化して処理能力を発揮している状態こそが、脳にとっては無理をしていない素の状態といえます。スポーツでも読書でも脳力を存分に活かしたほうが、脳は快適で気持ちのいい状態でいられるんです。

第2章で、みなさんが文章を一文字ずつ読むのは思い込みだとお話ししましたよね。看板に書かれた文字を瞬時に理解できるように、本の中に書かれている文字だって本当は一文字ずつではなくまとめて理解することができるのだと。そのため、一文字ずつ読んでいるとき、脳は「なんで読書のときだけこんなに情報がゆっくり入ってくるんだろう?」と物足りなさを感じています。

これはたとえるなら、大排気量エンジンを搭載した車で、わざわざギアをローに入れて走っているようなもの。これではエンジンが真っ赤に焼け焦げ、おかしくなってしまいます。

同じように、人間の脳も、本来の脳力に見合わない使い方をざれると、調子がおかしくなってしまいます。読書をしていると疲れてしまったり、眠くなったりしてしまう人が多いのは、ずばり脳力に見合わない読み方をしているせいなんです。

要するに、脳が活性化されている状態とは、脳も体もストレスを感じないベストな状態のこと。そして、速読トレーニングを重ねれば、このベストな状態を常に保つことができるようになるのです。』

『いきなりですが、私は速読トレーニングを重ねて速読を習得していますので、常に脳が活性化された状態で生活しています。余談ですが、そんな私が体験したちょっと面白いエピソードをお話しします。

ある日、「本が速く読めて速球も打てる先生だったら、トリックを見破れるかもしれない!」と受講生の方に誘われ、マジックバーに出向きました。マジックを純粋に楽しみたいので、私自身はトリックを見破ろうとは思っていなかったんですけどね。

でも、結論から言うと、しっかりトリックを見破ってしまいました(笑)。

マジシャンはお客さんの一人にトランプの束からカードを一枚引かせ、私たちに「これを覚えておいてください」と見せました。そして、そのカードを再びトランプの束に戻し、テーブルの上にバーッと広げたんです。

そのとき私は、何も考えずにマジシャンの動きをポーッと見ていました。さっき見せられた一枚のカードのことは、何となく意識していただけです。それなのに、広げられていくカードの最後の一枚が見えた瞬間、「あ、さっきのカードがない!」と気づいたんです。

気づくと同時に、視野がパッと広がり、マジシャンの後ろに飾られた絵の裏側に隠されているカードまで目に入りました。どうしてだかわかりますか?

わかりやすく説明しますと、マジシャンとカードだけを見ていたときは、あまり脳が活性化せず視野も狭くなっていたので、マジシャンがカードを後ろに隠したことには気づかなかった。でも、普段からある程度は脳が活性化していて視野も広いので、「あるはずのカードがない」ということには瞬時に気がついたんですね。

そして、そう気づいたことでざらに脳が活性化して視野が広がり、あるはずなのにないカードのある場所にも敏感に気づいた……と、こういうわけなんです。

私が「あるはずのカードがない」と瞬時に気づいたのは、猛スピードで一枚一枚の数字や絵柄を確認したからではありませんよ。カードが消えているとは思ってもいませんから、わざわざそんなことはしません。ただ、さっきのカードを覚えている脳が、なくなっているという違和感を認識してくれたんです。

当然ながら、「あるはずのカードがない」という情報は、そこにいた全員に平等に送られています。そして、ほかの人の脳もちゃんと気づいているはずなんです。でも、活性化していない脳は気づいた情報をきちんと受け取らずにスルーしてしまうため、ほかの人は認識することができなかったんですね。

つまり、活性化された脳は、活性化される前とは“受け取り力”が違うという表現もできるのです。

例えば、「季節の移り変わりに敏感になった」「星がよく見えるようになった」などと言う受講生の方が多くいらっしゃいます。こんな話をすると、「やっぱり速読って摩詞不思議」と思われてしまうかもしれませんが、何も不思議なことではありません。速読トレーニングで脳が活性化したことによって、脳がキャッチしている膨大な情報を、より多くきちんと受け取って認識できるようになっただけなのです。

言ってみれば速読も、“受け取り力”そのものです。入ってくるたくさんの文字情報を脳が受け取っているのが“速く読めている状態”で、入ってきているはずのたくさんの文字情報を脳が受け取れずにいるのが“速く読めない状態”ということなのですから。

こう聞くと、「速読って本当に脳の使い方次第なんだなあ……」と思いませんか?』

『筋肉は鍛えると目に見えて変化していきますが、脳は鍛えても目に見える変化は起こりません(筋肉のように大きく成長されても困りますが……)。ですから、「速読トレーニングをすると脳が活性化する」と言われても、いまひとつ信憑性がないでしょう。

そこで、速読が脳にもたらす具体的な変化について、科学的な視点からも説明しておきたいと思います。

「脳は右脳と左脳に分かれている」ということはご存じですか? 左半身を司る右脳は別名“芸術脳”と呼ばれ、音楽や映像、絵画などと触れ合うときの、芸術的感受性や創造性を担うとされています。一方、右半身を司る左脳は別名“言語脳”と呼ばれ、言葉や文章を使ってコミュニケーションを取る、論理的思考が必要なときに働くとざれています。

そのため、世間一般では理屈っぽい人は左脳派、芸術家肌の人は右脳派といわれており、「右脳を鍛えるといい」と、テレビなどで耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか。

同じく、世間一般では「読書では左脳を使う」といわれています。言語を理解するための言語野が左脳にあるので、これは当然かもしれませんね。

でも、これらはすべて俗説にすぎません。右脳と左脳はお互いに連携して働いているので、どちらか一方だけを使うことはできないからです。読書のときに左脳を多く使うか右脳を多く使うかは、人それぞれ。右脳を鍛えれば芸術的な脳力が向上するかというと、そこにも科学的な根拠はないのです。

ただ、ここにひとつ興味深い実験データがあります。私は以前、甲南女子大学の辻下守弘先生に、速読しているときの脳の活動部位を光トポグラフィーで測定してもらったことがあるのですが、左脳をメインに右脳の広い範囲も同時に使っていることがわかったのです。