2008年 6月 の投稿一覧

スロー&クイックトレーニング|ニュースレターNO.194

明日からいよいよ陸上競技のオリンピック選考会を兼ねた日本選手権が行われます。天気予報は雨模様ですが、コンディションのいい状態でベストを尽くしてほしいと思います。注目される選手たちが期待通りのレースやパフォーマンスを発揮するか、また新たなヒーローが誕生するのか楽しみです。

4年に一度のタイミングで、ピタリと選考会に合わせてこられるだけのピリオダイゼーションを実践できた選手が何人いるのかも楽しみです。日本の選考会は、記録・標準記録を突破して勝たなければならない難しさはありますが、選考会で記録を出して、さらに8月の本番でその記録を上回るパフォーマンスを発揮してほしいものです。

これまでは、日本選手権でそれなりの結果を出しながら、1~2ヵ月後にまったく平凡なパフォーマンスで終わる選手が多すぎました。ピークを持っていくところが違ったのでしょうか。そのためには、3~4年にわたるピリオダイゼーションをしっかり計画しなければならないのですが、そういう選手は果たしているのでしょうか。

ハンマー投げの室伏選手ぐらいかもしれませんね。

本当のピリオダイゼーションを理解して、オリンピックを目指したオリンピックサイクルで望まない限り、世界の舞台で最高のパフォーマンスを発揮することは難しいでしょう。そのために生まれたのがマトヴェーエフ氏が提唱されたピリオダイゼーション理論でした。

さて、今回は、筋トレの話です。石井直方氏の共著で「体脂肪を減らす筋肉をつける スロー&クイックトレーニング(MCプレス2008)」が出版されました。メタボ対策的な内容になっていますが、筋トレの基礎理論を簡潔に書かれています。簡単明瞭に「筋トレはどのように考え、どのように実施したらよいか」ということが書かれています。

細かなことは書かれていないのですが、以下の情報だけで、どれほどの目的に対して、どれほどの筋トレのプログラムが作成できるでしょうか。筋トレを難しく考えていなかったでしょうか。指導者にとって、的確な情報だと思える方がどれほどおられるでしょうか。自分の頭の中を整理するためにも、読んでみてください。また、いろんなアイデアが浮かんでくるはずです。

『私たちのカラダをデザインしているのは「骨の長さ」「筋肉の大きさ」「脂肪の大きさ」の3つの要素です。骨はもう伸びませんから、カラダを新たにデザインするには、筋肉と脂肪の大きさを変える(筋肉をつけて脂肪を減らす)ことが重要になります。上半身であれば、肩や胸、背中の筋肉を鍛え、同時にお腹まわりの脂肪を落とせば、美しい逆三角形の上半身をデザインできます。』

『私たちの筋肉は25歳あたりをピークに、年齢とともに徐々に減尐していきます。よって、加齢にともない基礎代謝(体温維持や全身への血液供給など、生きる上で行なわれるエネルギー活動のこと)が減り、太りやすいカラダになってしまいます。それを防ぐためには、筋肉を鍛えるトレーニングで筋量を維持・増進することがポイントとなります。

筋肉には大きく分けて瞬発力に優れた“速筋”と持久力に優れた“遅筋”の2種類があります。主にジョギングなどの有酸素運動で活躍する遅筋は、鍛えてもあまり大きくはできません。それに対し速筋は、筋トレのような無酸素運動で効率よく鍛えて大きくすることができます。そこで速筋を短時間で簡単に大きくすることを目指したのが、「スロー&クイック」という方法なのです。』

『マラソンをすれば持久力が上がり、薄着で過ごしていれば寒さに強くなります。これは私たちのカラダには、与えられた刺激(ストレス)に適応する能力があるからです。筋肉を大きくするトレーニングにも、この適応力を用いる必要があります。鍛えたい部位の筋肉に、筋肥大の必要を感じるようなストレスをかけることで、効率よく筋肉を鍛えることができるのです。

この時、筋肉に与えるべきストレスは大きく分けて2つあります。1つは筋肉の中の代謝的環境・化学的環境を苛酷にする「化学的ストレス」、もう一つが筋肉に強い力を与える「物理的ストレス」です。「スロー&クイック」のトレーニングメソッドは、同時にこの2つのストレスを筋肉へ与え、しかも自宅でも簡単に行なえるよう考えてつくられたトレーニングなのです。』

『スロートレーニングは、比較的軽めの負荷を用いて、ゆっくりと動作し、筋肉にジワジワと持続的な力を与えるトレーニング方法です。動きを速くすると、どうしても勢いがついてしまい、筋肉への負荷が抜ける瞬間ができてしまいます。ジワジワと筋肉に力がかかり続けるように、常にゆっくりと動くことを意識しましょう。

中腰の状態をキープする「空気椅子」というトレーニングを思い出して下さい。「空気椅子」が辛いのは力を入れ続けているからです。例えばスローで行なうスクワットは、この力を入れ続ける「空気椅子」の状態を維持しながら上下動するような感じになります。』

『筋肉はグッと力を込めると硬くなり、その部位の血流が制限されます。これを持続的に行なうと、酸素供給が間に合わなくなり、その部位には無酸素性の代謝物である乳酸がたくさん蓄積されます。(この時の乳酸の蓄積は運動中の一時的なもの。慢性的に乳酸が蓄積した肩コリなどのように、コリが生じるものではない)

私たちは実験を繰り返す中で、スロートレーニングで蓄積される乳酸の量は高強度の筋トレをした時と同程度であることを知りました。そこで、ゆっくりと持続的に動くことで、乳酸がたくさん蓄積する化学的環境を生み出せば、筋肉に激しい運動をしたと勘違いさせることができると気付きました。それが、スロートレーニングなのです。スロートレーニングなら重たいダンベルを上げ下げするような激しい運動を行なわなくても、それと同じような効果を得ることができるのです。』

『スロートレーニングで筋肉に乳酸がたくさん蓄積されると、それを薄めるために水分が集まり一時的に筋肉が膨張します。この筋肉がパンパンに張った状態をパンプアップといいます。この乳酸がたまって筋肉がパンプアップするような筋肉内の環境の変化が、筋肉を肥大させる有効な刺激の一つである「化学的ストレス」として筋肉に作用します。比較的軽めの運動で筋肉を効率よくパンプアップできるのが、スロートレーニングの最大のメリットなのです。』

『スロートレーニングの項でも述べたように、筋肉にストレスを与えると、それに適応しようとして筋肥大が起こります。スロートレーニングでは筋肉をパンプアップさせることで、筋肉に「化学的ストレス」を与えましたが、クイックトレーニングでは、より強い力によって、もう一つのストレスである「物理的ストレス」を与えます。

クイックトレーニングは動作を切り返す瞬間に素早く、強く動作することが大切。なぜならば、筋肉にかかる力は、ダンベルや自分の体重に、それらを動かした時の加速度をかけ算した数値で決まるからです。よって扱う負荷の重量が小さくても、加速を速くすれば、それだけ筋肉に強い力をかけることができるのです。クイックトレーニングなら、自分の体重や小さなダンベルだけでも、筋肉に十分な「物理的ストレス」を与えることができます。』

『クイックトレーニングは筋肉が微細な損傷を起こす筋損傷を、効果的に引き起こすことができます。筋損傷は筋肉が伸びながら力を発揮する時(これを「エキセントリック収縮」と呼ぶ)に強く起こるもので、たとえばバーベルを下ろす動作や階段を降りる動作がこれに当たります。クイックでは動作を切り返す瞬間に強い「エキセントリック収縮」をするので、微細な筋損傷を起こすことができます。

損傷した筋肉は筋肉痛を引き起こすのが特徴。山登りをした翌日、よく筋肉痛になりますが、それは山を登っている時よりも、下っている時に筋損傷が起きたからなのです。そして、この筋肉痛からの回復が筋肉をその前より大きく成長させているのです。』

『ダイナミックな動きでは、私たちは切り返しの反動を使うことで大きな力を得ています。たとえばジャンプをする時、しゃがんだ姿勢からではなく、勢いよくしゃがみ込んでから動作を切り返して跳び上がると、より高く跳べます。これはしゃがみ込む力を筋肉の両端にある腱のバネを使って、跳び上がる力に利用しているからです。

よく「バネのある動き」という言い方をしますが、それはまさに腱というバネを使った動きなのです。クイックトレーニングは切り返しの動作で、この腱の「バネ作用」を最大限に利用します。そのため「バネのある動き」も巧みになり、野球やゴルフといった一般的なスポーツのパフォーマンスにも向上が見込めます。』

男子バレーボールが16年ぶりにオリンピック出場|ニュースレターNO.193

2008年、6月7日、男子バレーボールチームが16年ぶりにオリンピック出場を決めました。1992年のバルセロナオリンピックで6位に入賞して以来です。このときのオリンピックの出場には、私も関係していました。

当時、エースアタッカーであった中垣内選手が、4月の終わりの全日本の合宿で、膝蓋靱帯を損傷し、8月のオリンピックの出場が絶望視されたのですが、そのとき、私は彼の所属するチームのアドバイザーをしていたことから、私が彼のリハビリテーションをやることになりました。

寝返りもできない状態でしたが、何とか7月のヨーロッパ遠征に間に合わせることができました。当時のリハビリテーションというよりも、新しい発想で取り組んだリ-コンディショニングを今でも思い出します。

そんな懐かしい思い出もありましたが、今回の予選会は、ほとんど相手のミスによる得点で勝利を得たという、正に運があったから勝利できたのだと思います。事実、初戦のイタリアも最初からイタリアのミスばかりで、ラリーも続かず、最後にイタリアが何とか追いついて勝っただけです。

次のアジアのチーム、韓国、オーストラリアもサーブミス多く自滅的なところが目立ちましたし、オリンピック出場をかけたアルゼンチンも、サーブミスの連続で、これも相手チームが勝手に転んでくれたようなものでした。

しかし、勝負とはこんなものなのでしょう。バレーボールはというよりもほとんどのボールゲームがそうかもしれませんが、今回の予選会では、どちらのミスが多かったか、ということで勝ち負けが決まったように思います。したがって、素晴らしいプレーの応酬での接戦ではなく、相手チームの自滅の試合が続いたように見えました。

すでにオリンピックの出場を決めているアメリカ、ロシア、キューバ、ブラジル、ブルガリアなどのチームの存在を思い浮かべると、どうしても2部リーグのゲームのような感じがしたのは、私だけだったでしょうか。

翌日の新聞に書かれていましたが、1972年のミュンヘンオリンピックで金メダルを取った監督で、前バレーボール協会会長の前田氏は、「まだメダルを取れるスパイクではない。レシーブやつなぎも下手。だが伸びしろはいっぱいある」というコメントをしておられました。見ている人は見ているということで、「この予選会は世界のトップレベルの試合ではない」ということを忘れてはいけません。

いずれにせよ、地元開催で、運を引き込んで見事16年ぶりにオリンピック出場を勝ち取ったのですから、今後の精進を期待したいものです。上田監督の性格もよく知っているので、おそらく彼の情熱が、運を引き込んだのでしょう。8月までに、もう1レベル、できれば1.5レベル、パフォーマンスを引き上げるように期待したいと思います。

さて、今回のニュースレターは、スポーツトレーナーにとって非常に役立つテクニックを紹介したいと思います。もうすでにご存知の方も多いと思いますが、それは操体法です。気持ちよい動きをして、からだのバランスを整えるというのが、操体法の基本コンセプトですが、それをわかりやすく解説し、さらに短時間でからだの調整ができるSPATといわれるテクニックについても紹介された本が出ました。

私の知人である矢野史也氏が出版された「ゆがみを正せば痛みは消えるゆるみ筋&こわばり筋のコンディショニング(道和書院2008)」です。

矢野さんは、フィットネス関係の経営者でもあり、スポーツの指導者でもあり、トレーナーでもあります。とても誠実な方で、豊富な知識と実践を積み重ねられており、私も尊敬している方です。実業家でありながら、実践者であるという本物のプロといえる方です。

今回の本は、これまで実践されてきたことのほんの一部だけまとめられたと思いますが、素晴らしい本です。突然、献本いただいたのですが、すぐに読んでしまいました。そして、自分なりにまとめて、教員たちにも、もう一度操体法について頭の中を整理しなおすように指示しました。

特徴は、短時間にからだの調整ができるテクニックであるということです。操体法をやったことがある方なら、すぐにできるはずですし、初めて知る方にもそんなに時間はかからないテクニックです。

操体法の基本がわかっておられれば、簡単で便利なテクニックですし、わずか数分で身体調整できるようになります。スポーツトレーナーにとっても、必須テクニックといえるでしょう。

今回は、矢野さんの冒頭の言葉を紹介させていただきます。ぜひ一読ください。

『私は、これまで長い間、トレーニングの原則に基づき、漸進的に負荷をかけて鍛えていくという方法を中心に身体づくりに向き合ってきました。しかし、筋バランスを整えることで身体パフォーマンスが向上することに気づいてからは、身体の前面と背面、右半身と左半身の筋の強さや柔軟性のバランスを整えるというアプローチを積極的に行うようになりました。

筋バランスが修正されることで、筋力や動作が改善されたり、腰や膝の痛みが軽減することも少なくないからです。このような現場における経験を経て、現在は「鍛える前に筋バランスを整える」、あるいは「筋バランスを整えながら鍛える」という発想で身体づくりに取り組むようになりました。

ところで、筋の状態を表す言葉として「短縮、緊張、拘縮、硬化、萎縮、硬直、収縮、伸長、弛緩、弱化、柔軟」など、多くの用語が使われています。

これは、微妙な表現が必要とされていることの裏返しともいえるのでしょうが、一方では、現場における「わかりづらさ」の一因になっているようにも思えます。

そこで、私は、思い切って身体にとって不都合な筋の状態を「ゆるみ筋」と「こわばり筋」という二つの言葉を手がかりに表現してみることにしました。あえて難解な言葉の使用を避け、平易な言葉でシンプルに説明することで、わかりやすさへの道が拓けてくるのではないかと考えたからです。

わかりやすいキーワードであるために、「こわばり」はほぐし、「ゆるみ」は締めなおす(強化する)という対応法へのイメージ化へ、スムーズにつながるのではないかと、言葉の持つメッセージカに期待しています。

本書はヘルスフィットネス指導者を主な読者対象として書きました。メタボリックシンドロームの改善、高齢者の健康づくりの必要性が声高に叫ばれるなか、運動種目、強度、時間、頻度といった運動処方の条件をベースにして運動プログラムや身体活動についての指導が行われていると思いますが、さらに、筋骨格系の身体バランスのアドバイスを加えることができればフィットネス指導の幅も大きく広がるものと確信します。

また、本書は、身体感覚をベースにして自分自身で身体のバランスを整える操体法やストレッチング、道具を使用しない簡単なトレーニングの方法などに触れていることから、腰痛や膝痛、肩凝りなどで悩んでいる人、さらには、高齢者の運動指導に携わっている人にも興味深く読んでいただけるはずです。

スポーツやフィットネスによる運動効果を高めるためにも、優先されるべきは、身体のバランスを整えることではないかという考え方が本書のテーマになっています。

第1部では、身体動作の要である腰部(骨盤)にフォーカスし、姿勢や動作を手がかりにアンバランス状態を探り、回復に向けたアプローチを多数の写真や図を用いて示しています。第2部では動作性の向上につなげる身体操作、第3部では、私が高齢者指導で多用している操体法を中心とした集団指導プログラム、第4部ではパーソナルコンディショニングで活用している短時間骨格矯正法SPATの技術解説について触れました。

本書では、メッセージの一方通行を回避したいという思いもあり、読者には最初に写真を見て考えていただくという形式を多くのページで試みています。

ストレッチング、筋力エクササイズ、操体法、SPATなど本書で紹介する身体技法は、いずれも身体感覚を大切にすることに重点を置いています。身体操作時に身体が発する声に耳を傾けることで、快感、不快感、違和感などの微妙な状態を感覚でとらえることができます。その感覚をベースにして、力の入れ具合や動作をコントロールすることで、本書で示した方法がより効果的なものとなるはずです。

しかし、感覚を文字で説明することには限界があります。感覚を無視して動作だけを真似してもよい結果を得ることはできないということも事実であり、日頃から身体感覚に意識を向け、経験を重ねていただくことが大切なことではないかと思います。本書をとおして、身体動作や身体バランスに興味や関心をお持ちいただき、日頃の実践へのヒントにつながるとすれば、これ以上の喜びはありません。』