2008年 3月 の投稿一覧

振動について|ニュースレターNO.188

マトヴェーエフ氏の著書「ロシアの体育・スポーツトレーニングの理論と方法論」要約書店にも並ぶようになりましたが、事前にご希望いただいた方にはすでにお手元に届いたようで、喜びの返事をいただいております。反響がよろしく、多くの会員の方から購入希望をいただきました。

本物の指導者・コーチを目指すものにとって必須のバイブルであることは、読んでいただいたら分かります。根本的な考え方と方法論の考え方が書いてあることから、読みながらいろんなトレーニング方法が浮かんできます。

まさに、指導者にとっては「なるほど」の連続で、心はうきうきというところでしょうか。会員の方の割引8掛け(税別)は、期間は限定されていませんので読んでみたいと思ったときに、御連絡ください。出版社に直接頼まれても割引になりませんので、ご承知ください。

また、22日と23日は、札幌で19回目のUHPCのクリニックを開催し、楽しく練習ができ、みんな見て分かるほどのレベルアップをしてくれました。しかし、残念なことに中学生が一人ハードルで転倒し、腕を骨折してしまいました。軽症で早く復帰してくれることを祈りたいと思います。指導者として何かの配慮が足りなかったのではと反省しております。次回からはその点も気に留めて適切な指導ができるように努力したいと思います。

さて、今回のニュースレターは、確か一昨年の暮れのニュースレターで書いたと思いたことに関することです。それは自分の思いをストレートに書き出した「思うがままに綴る」というノートのことです。スタートは2006年11月9日になっており、現在も続いております。その時々に思いついたことを忘れないためのメモ書きでもあります。

高校のとき、私はある先生から人間は振動を足元から受けると、頭の働きがよくなると聞いたことをいまだに覚えています。確かに、電車に乗っていて、立っていると、よくいろんなこと、アイデアが思い浮かんできます。最初に出した著書「スポーツ選手のためのウォームアップ・プログラム」は、ほとんど電車の中で書いたものです。

こうして、現在も思い浮かんだことを綴っているのですが、それも全て学校への行き来の電車の中だけにとどめています。座っているとき、立っているとき関係なく、思い浮かぶがままに書いています。今、何かを書こうということではなく、頭の中で何かが浮かんだとき、ふと思ったとき、その言葉をそのまま書いているに過ぎません。

ノートに書き出した文字は、他の人には読めないようです。私には、ハッキリすらすらと文章を読み上げることができるのですが。

実に楽しい時間です。思い浮かんだときは、頭の中で文章が出てくるのが先か、それともペン先が先かというぐらい、ほぼ同時に、文章を書いているのと同じタイミングで文章が続いていくことがあります。しかし、そのような状況は1年のうちに何回か限られた期間に起こるようです。

従って、それまでに書き出したことと重複した内容も多くなります。まさに、何かを書こうと目的を定めず、どれだけ自分の頭の中にいろんな思いがあるのか、それを抽出して残そうとしているだけです。もちろん、間違った考え方や思いもたくさんあります。しかし、そんな思いに悩む必要もありません。

一つのテーマに対して、いま自分はどう考えているのだろうかというところを出したいのです。読んでいる人には、十分理解できるのかどうか分かりません。当然です。人に読んでもらうために書いているのではありません。また、納得させるために書いているのでもありません。

その時々に思い浮かんだこと、考え方、思いを綴っただけです。学生には、常に「いま私はこんなことをしている。自分の頭の中を素直に文章にして出してみることが大切だ。また、講習会や授業を受けて自分が感じ取ったこと、思ったこと、習得できたことを、一つの話し的に書き出すと、後で振りかえると、自分の捉え方、考え方がどうだったかよくわかる。」といっております。

私の学校のような専門学校(平成スポーツトレーナー専門学校)では、こんなことが非常に大事なのです。机の前に立って話をする、コンディショニングルームで実技をする、何れも学生に教えているわけですが、問題は学生が何を学び取ったか確認することにあります。

人は誰でも1時間、1日、1週間経てば、忘れていくことのほうが多いと思います。また勘違いしていることも多い。そういったことをなくすことが、習ったことを身に付ける、本当に習得できることになるのではないでしょうか。

では、どうすればより確実に教えられたこと、習ったことが身に付く、役立つのでしょうか。私は、講義の形態を考える必要があると思っています。その日に教えたこと、教えられたこと、習ったことを確実に記録して残していくことです。そのためには、自分の学習ノートをつくることです。

通常なら、今日習ったことの復習を家に帰ってするわけですが、専門学校に通う学生の多くは、いろんな事情でバイトをする必要がある学生が多くいます。従って、家に帰って復習するということは難しい。そうであれば、授業時間内でやれないだろうか。最後の20分でも30分でもよい。

ノートに今日教えられたこと、習ったこと、分かったこと、感じたことなどを口語体でいいから書く。体裁は気にしない。自分で読んでわかるようにし、自分のための「丸秘ノート」にする。そうすれば、毎日習ったことが確実にわかるし、残すことができる。見直せば、自分が勘違いしていたことに気が付いたり、ポイントを間違っていたことに気が付ける。卒業したときに役立つ「丸秘ノート」ができるわけです。

習いっぱなし、教えっぱなしではいけません。また、教える側にとっても、そのノートのまとめ方というか、内容を評価してやればいい。1回のテストの点数で評価するよりいいと思います。そのノートを見れば、教える側も何を教えたのか、何を教えていなかったのか、間違って教えていたことにも気づくことができます。

両者にとって役立つはずです。教える側にとって、自分はこのように説明したと思っていても、間違ってしゃべっていたりする事があります。むしろ、100%正しい、正確に話をしていることはまれかもしれません。気づかないことは多いのです。

記憶ほどあいまいで怪しいものはありません。確かなところも、もちろんありますが、昔の話を友人としていると、同じ場面を思い出していても、かなり互いに記憶の差があります。そのとき、その時代で感じたことが、何十年立った今、そのとき感じたことがそのまま残っていて、写真そのものであると思っていた事があります。

小学生のころ、生徒数は3000人もいた。それで運動場も広かった。そんな思いが今まであったのですが、それが成人してからその学校の横を電車で通り、その運動場が見えました。すると、当時記憶していた広さとは程遠いほど運動場は狭かった。小学校の机や椅子もそうです。

当時は大きかったと思っても、今の体格ではもちろん小さい机や椅子で授業を受けていたのです。あまり自分の記憶に頼ることは怖い気がします。一時のイメージがそのまま残る。時代が変わればそのイメージもそれにつれて変わっていけば問題はないのかもしれませんが、自分では明確・確かだと思っている記憶は、自分自身でも疑いを持って再確認する・確認していくほうがよいでしょう。

今は、映像に残すことができるので、見返すことがいくらでもできます。何事に対しても思い込みを避けるために、確認・再確認の癖をつけたいものです。それとともに、「そうだったかなあ」「えっ!」と思えば確認することです。「思いを綴る」ノートを日々持ち歩いてみてはどうでしょうか。

トレーニング処方|ニュースレターNO.187

マトヴェーエフ氏の著書「ロシア体育・スポーツトレーニングの理論と方法論」がついに完成しました。一般書店には20日以降に出るようです。定価は5000円(税別)になりました。会員の方には8掛けの4000円(税別)で提供できるようです。ご希望の方は御連絡ください。

すでに、購入を希望している方にはもうすぐ届くと思います。完成品を見て、感動しております。マトヴェーエフ氏にも見ていただきたかったのですが、これはかなわぬことになってしまい残念でなりません。できるだけ多くの指導者の方々に読んでいただき、スポーツトレーニングの理論と方法論について基本的な考え方を理解し、指導に大いに役立てていただきたいと思います。

さて、今回は、久しぶりにトレーニングの指導に役立つ資料をご紹介したいと思います。

1月送られてきたランニング学研究Vol.19 No.2(2008)に、第19回ランニング学会の報告として「中長距離種目のパフォーマンス向上にランニング科学を用いる-記録を高めるトレーニング処方」という論文が掲載されていました。報告者は、大阪体育大学の豊岡示朗教授でした。

豊岡先生は、私の大学時代の恩師で、現在もいろいろ教えをいただいている方です。大学時代、先生から教えていただいたいろんなデータをもとに、高校生を指導していた事があり、研究データを現場でどのように活用するか、といったことをやっていました。

今回、この論文を目にして気が付いたことですが、長距離トレーニングにおいてもかなり科学的なデータが変わってきたことに気が付きました。筋力やスピード-筋力のほうに目が行っておりましたが、持久力についてももっと勉強する必要があると反省したしだいです。

この論文を読んで役立つことは、6分間走のテストでその人の体重当たりの最大酸素摂取量が推定でき、それを基準にしてトレーニングの強度が簡単に設定できるようになるということです。ぜひ、最後まで目を通してみてください。きっと、役立つと思います。

『スポーツ科学の発展に伴い長距離、マラソンの記録と種々の生理学的測定値との関連が明らかにされてきた。特に、体重当たり最大酸素摂取量、最大酸素摂取量で走れるスピード(vVo2max)と乳酸閾値(Lactate Threshold)、血中乳酸4ミリモル(Onset of Blood Lactate Accumulation)の記録に対する寄与率が高いことが明らかにされている。

それ故、これらの指標を高めるトレーニングの実践が好記録を生むことにつながる。だが、各因子を調べるには測定機器と技術が必要であり、多人数の選手を見ている現場の指導者や市民ランナーが、各個人のこれらの値を知ることは容易ではない。

しかしながら、研究は進み、生理学的測定をしなくても、長距離走の記録がわかるとOBLAスピードを予測できる方法や、タイムトライヤルの実施でVo2maxやvVo2maxを求めることが可能になっている。

 

1.長距離走タイムと生理学的尺度

70年代は体重当たり最大酸素摂取量、80年代はLT、OBLA、90年代はvVo2maxが長距離走やマラソンの記録と密接に関連する尺度として明らかにされてきた。各尺度と記録の相関係数には幅があるものの、時代の経過に伴って記録に対する各指標の寄与率が向上してきている。

 

2.Vo2maxと任意の%Vo2maxを知る推定法

ランニングを用いてVo2maxを推定するフィールドテストに5分間走や12分間走がある。特に5分間走テストの特徴は、走行距離を5分で除して得たスピードを100%とした平均スピード(%Vo)に対する任意の%Voと%Vo2maxの関係が、概ねY=Xとなる事である。

この結果は、10~20歳代のどのレベルのランナーにとっても同じ様にして、トレーニング強度がスピード(m/分)で求められる。そのためには1回のタイムトライヤルが必要となる。例えば5分間走で1500m走った人の100%スピードは1500m/5分=300m。70%Vo2max強度で持続走を行う場合のスピードは、70%Voと予測され、その速度は300mx0.7=210m/分となる。

1km当たりでは4分45秒のペースになる。Vo2maxの改善には40~100%Vo2max強度が必要と報告されている。この方法は持続走やインターバルトレーニングなどのスピード設定に用いられよう。

 

3.vVo2max(最大酸素摂取量で走れるスピード)の見い出し方

最大酸素摂取量は酸素運搬系と消費系の能力をみたものであり、ランニングエコノミーや血中乳酸の動態を含まないので長距離走記録との相関は、他の尺度より低い。だが、vVo2maxは最大酸素摂取量とランニングエコノミーを含むので記録との相関係数はより高くなる。

それ故、vVo2maxを高めるトレーニングは、800m~マラソンランナーまでの必須トレーニングとなる。このトレーニングにより、vVo2maxスピード、LTスピード、さらにランニングエコノミーの改善が起こる。

vVo2maxを求める方法は、トラックや距離の分かるグランドや公園での6分間走テストである。Billatらの研究によれば、この方法で求めた平均スピードが最大酸素摂取量で走れる速度になるという。

例えば、6分で2000mを走ったとすると、その平均スピードは2000m/360秒=5.55m/秒となる。400m当たりのタイムに変換すると、400/5.55=72秒がvVo2maxとなる。このトレーニングの進め方は、走る距離を200mから始めて数回のトレーニングで400mへと延ばし、最終的には4~8週間にわたり、週1回、3分間走(6分間走距離/2として求める)x5(休息は3分ジョッグ)にする事が理想的と考えられている。

vVo2maxはどのレベルのランナーでも同じようにして、6分間走の実施で求められる。しかし、身体的な「きつさ」に加え、心理的にも「つらい」ランニングとなるので中高年者には勧めにくい。

 

4.LT(乳酸閾値)とOBLA(血中乳酸4ミリモル)スピードの推定

LT、OBLAを実測して得るには、他の尺度と同じように装置や測定器具が必要となり、費用と時間も要する。各自の長距離走タイムを基準にして求める事が出来ると、指導者やランナーにとって強度設定が容易になる。

アメリカのランニングコーチで、運動生理学者のジャック・ダニエルは、彼の著書「ランニングの公式」の中で長距離走の記録から簡単にOBLAを知ることのできるVDOT表を作成している。VDOTとはV-dot-O2-maxの略であるが、単なる生理学的なVo2maxではない。

そのVODTは次の3点-①レースタイム(これは、ランナーの心理、乳酸カーブ、Vo2maxを含む)、②スピードとVo2の関係、③%Vo2maxとランニング時間の関係-を加味して作成されたものである。OBLAスピードを知るには、各自の1500m~マラソンまでの記録からVDOTを求め、そのVDOTに対するトレーニング強度の一覧表から得ることが出来る。加えて、他の尺度でこの閾値を表すと86~88%Vo2max、88~92%vVo2maxに近いと述べている

また、松生と豊岡は5000m記録の平均スピードの92~93%速度が、4ミリモルスピードに相当すると報告している。この方法も簡単な計算で閾値スピードが求められる。

LTスピードとは、血中乳酸濃度がそれまでの速度に対する反応と異なり、明らかに増加を始めるポイントを意味する。このスピードは、①酸化代謝による乳酸分解能力、②血液からの乳酸除去能力、③ランニングエコノミー-の情報を含むので競技記録と密接に関連している。アンダーソンによれば、5000mのレース速度はLTスピードより5%速く、10000mのそれはLTスピードより約25%速いと述べている。

この%を基にして、5kmを20分と16分20秒で走るランナーのそれぞれのLTスピードを1000m当たりで算出すると、4分13秒と3分26秒になる。このようにして求めたLTスピードは、前述したダニエルの閾値速度に近似し(1000m当たりで3.6秒速い)、OBLAに匹敵した。それ故、この基準で強度を設定する場合、注意が必要である。

LTスピードを高めるトレーニングは、これまで、中程度強度での持続走(筋細胞の酸化エネルギーシステムを高める)が主流であった。しかしながら、最近の研究は、血液から乳酸を除去する筋肉の能力を高める(MCTIを増加させる)ことも、効果的である事を示している。

このためには筋肉を高い乳酸濃度に曝し、かつ、酸化過程の酵素活性にインパクトを与えることが必要と考えられている。具体的には、2~10㎞までのレーススピードでの走行や85~90%Vo2max強度といった高負荷トレーニングとなる。

さらに、LTスピード改善の方法として、筋力トレーニングやプライオメトリックトレーニング(ランニングエコノミーを高める)、また、スプリントタイプのトレーニング(Vo2maxと筋の酸化能力を高める)も勧められている。

 

5.まとめ

種々の生理学的尺度を用いたトレーニング強度の設定は、競技記録を求め、タイムトライヤルの実施、資料の応用などで求められる。それによるトレーニング処方は、効果が明確にされているのでミスの少ない実践が可能になる。しかしながら、強度は把握できるものの、その強度での反復回数、時間、頻度に関しては、これらの条件の組み合わせが数多く生じるので科学的な知見は少ない。

また、研究結果をそのまま現場のトレーニングに応用しても、うまく行かない事も生じてくる。ランニング科学の情報は増えたが、トレーニング処方に組み込むには試行錯誤を繰り返して調整することが必要となろう。