2004年 8月 の投稿一覧

アテネオリンピック観戦記|ニュースレターNO.101

アテネオリンピックも終板を迎えました。24日までに、予想外の出来というか、東京オリンピックで獲得した最高の金メダル16個に迫る15個を獲得しました。メダル総数もロサンゼルスオリンピックに並んで、32個獲得し、いずれも史上最高のメダル獲得数になりそうです。

東京オリンピックの金メダルは、主に柔道、レスリング、体操で獲得したものですが、今回のアテネでは、柔道と水泳が複数個獲得しました。

ここまでの日本選手の活躍は本当にすばらしいものがあります。男子体操は、28年ぶりに団体優勝しました。6人のメンバーがそれぞれ最高のパフォーマンスを発揮し、完全な勝利であったように思います。

団体戦での演技は、正に完璧で、見ているものを感動させるものでした。それほど美しい演技であったということです。数年前までに見られたアクロバット的な演技がなくなり、体操本来の動きの美しさを追求するようになった体操の判定基準の変更も大きかったと思います。彼らの能力の高さと潜在能力がどこまであるのか、計り知れない思いがしました。

個人総合や種目別では、残念ながら完璧な演技はできず、金メダルは取れなかったのですが、それにも優る団体の演技と金メダルの価値のほうが大きかったと思います。これからの体操界が楽しみです。

団体というかチームゲームでは、男子サッカーは予選で敗退しました。度重なるミスが致命症になりましたが、まだまだ世界のトップレベルと比べると個人のスキルの差が大きいことがわかりました。ワールドカップをめざすチームもオリンピック代表チームも共通して見られる事があります。

それは、ディフェンスの動きです。いつも半身に構えて防御姿勢をとっていることから、簡単に背後に回られて、回転して相手を後ろから追いかけているケースが多々見られます。このように感じているのは私だけでしょうか。

どうもディフェンスのときの構え方が気になります。両代表とも同じパターンで相手に振り切られるので、共通した指導がなされているのかもしれません。

また、もっと足の速い選手を育てる必要があります。いや、もっと速く走れるのかもしれません。残念な結果でしたが、点数はそれなりに取れたので、後は個人のスキルをもっと高めることと、すべてにおいてスピードを身に付けることが仮題かもしれません。

女子のソフトボールは、優勝を目指していたようですが、決勝進出ならずでした。ソフトボールを見ていて思ったことは、日本の選手のバッティングは、通常の野球と同じスイングの仕方をしているのですが、外国の選手のバッティングは、腕でバットコントロールをしているように感じます。

そのほうが早いタイミングで速いボールに対応できるからかもしれません。ボールが速いので、いわゆるミートだけすればボールは飛んでいきます。基本的に得点が入らないゲームなので、いかにミートできるかというバッティングスタイルを考える必要があるかもしれません。

女子ホッケーもがんばりました。初勝利を挙げ、順位決定戦まで進出し、最終的に7・8位決定戦を戦うことになりました。実際にはもう少し勝てたのではないかと思います。それは後半選手が走れなくなってきていたからです。ここに、指導者の考え方の違いがありました。

この時期のゲームでは当然体力を消耗します。ほとんどの外国チームは、選手を自由に交代させ、常に選手が動ける状態を作っていましたが、日本の選手はほとんどが最初から最後まで出ずっぱりでした。情報によれば、日本選手はしっかり走り込んできたから、選手の交替の必要はないということのようです。

まったくナンセンスです。いまだにこのような考え方をしているとは恥ずべきことだと思います。ゲームを見ていても選手の動きが鈍くなっていることがわかります。相手は、常に元気ですから、最後はついていけなくなり、集中力も続かず、パスカットされつづけるといった状態になっていました。選手の起用法を考えていれば、もっと違った結果が得られたのではないかと思っています。

メダル獲得に沸いた柔道は、男女ともに大活躍でした。初戦で野村選手と谷選手がそれこそ簡単に金メダルを獲得したものですから、次に出てくる選手にもなぜか勝つのが当たり前のように見えてしまいました。メダル獲得選手に共通していたことは、すべて攻めつづけたことではないかと思います。

存念ながら、井上選手は切り返されてしまった感がありますが、すべて上手くいくことがないのが、オリンピックです。女子レスリングで活躍した女子選手も、攻めつづけた選手が勝利を収めています。

言うのは簡単ですが、それを待たれることを考えると攻めきれないもので、このあたりの大胆さ、勇気があるかどうかも勝利の分かれ目であったかもしれません。柔道もレスリングも女子選手の強さが際立っています。これからどのような変化が見られるのか、興味があります。

男女ともに大活躍した水泳陣も素晴らしかったと思います。平泳ぎの北島選手は、重圧にも負けず100mで勝ち、200mは余裕の勝利でした。新聞でも話題になりましたが、私もレースを見ていて途中、気になりました。それは、飛び込んだ後ではなく、50mをターンした後、一回ドルフィンキックをしてからワンキックをしたからです。

それを見て、ターンのときはよかったのかな、と思っていました。ビデオを取っていたので確認しましたが、やはりターンの後、1回ドルフィンキックをしていました。それからは、平泳ぎのレースでターンをした後注意してみていると、何人かドルフィンになっている選手がいましたが、それほど明確なキックではありませんでした。

北島選手もおそらく自然に出たのだと思いますが、ドルフィンキックがあったことは事実だと思います。それ以後の彼のレースでは全く見られませんでした。

それから予想外というか番狂わせで金メダルを獲得したのが、女子800m自由型の柴田選手でした。今季世界ランキング1位の山田選手は、またまたオリンピックの本番で不調に陥り、残念なが予選落ちしてしまいましたが、山田選手に全く歯が立たなかった柴田選手が優勝してしまいました。

当然ですが、自己ベストを大幅に上回りました。本番で自己記録を大きく更新して優勝したバルセロナオリンピック女子200m平泳ぎの岩崎選手を思い出しました。本番で立場が逆転した柴田選手と山田選手の今後が気になります。特に、シドニーについで同じ結果に終わってしまった山田選手が心配です。何とか、できなかったものか、残念でなりません。

感想がたくさんありすぎて、何について書こうか迷いますが、すべて書くことができないので、最後に注目していた陸上の末続選手の感想を書いておきたいと思います。残念ながら、2次予選10秒19で5位でした。レース後の彼の感想のとおり、現状の力だと思います。

世間が過度に騒ぎすぎたように思います。朝原選手も2次予選で敗退しましたが、彼の感想にもあったように、100mのレベルを甘く見ていたようです。

それは昨年の世界選手権を基準にしていたからです。昨年の世界選手権は、100mも200mもトップランナーがすべてそろっていたわけではなかったのです。それで、10秒1台か10秒2位で準決勝にいけると考えていたようなところがあります。オリンピックの舞台には、どこから誰が出てくるかわからない、4年に一度の祭典なのです。限りなく予想がむつかしい大会であるといえます。

しかし、二人とも現状の力は発揮できたと思います。

末続選手のレースは、これまで練習してきたスタートが上手くいかなかったようで、いつもの飛び出しができず、それで上手く加速してトップスピードに乗れなかったように思います。スタートのところを横から撮った映像がありました。それを見てよく解りました。何故勢いよく飛び出せなかったのか。それは、お尻を高くして構えますが、その後からだが前に倒れずに、身体が上方に移動していました。

そのために、映像ではスタートした瞬間、手が離れた瞬間、一度腰が引けたように見えました。これは明らかに腰を支点として状態が前方上方に伸び上がろうとしていた証拠であると思います。これでは前方へのスピード・勢いにつながりません。

スタートでは、キックをしないで前方につんのめるように、「オットットットッ・・」と走り出すことをめざしていたようですが、結果的にこのようになってしまったことから、スタートの飛び出しで加速しきれなかったのだと思います。

理想通りのスタートが切れていれば、2・3番にはなっていた思われますが、スタートがまだ完成していなかったのでしょう。走りそのものは悪くなかったので、スタートの勢い不足だけ悔やまれます。

以上、いくつかの競技をピックアップして感想を書きましたが、毎日オリンピックが見れて楽しい反面、トップアスリートを育て、オリンピックの大舞台で最高のパフォーマンスを発揮させる難しさを感じるばかりです。どれほどの準備をしなければいけないのか、改めてピリオダイゼーションの大切さがわかりました。

今後、平成スポーツトレーナー専門学校でも陸上競技選手を育成していくことになっていますので、何年かかるかわかりませんが、将来私の学校からオリンピック選手が出ることを夢見て、これからの指導に携わっていきたいと思います。

それから、前回のニュースレターで私のところで一緒にやりませんかとお知らせしたところ、多数お問い合わせいただきました。ありがとうございます。学校のリニューアルもほぼ完了しておりますので、9月以降ぜひ学校にお越しください。お待ちしております。

アテネオリンピック開幕間近|ニュースレターNO.100

とにかく暑い大阪です。35度以上の日が何日続いているでしょうか。昨年のこの時期は北海道でUHPCのクリニックをしておりましたが、今年は開催できず大阪で暑さと戦うことになりました。

そうこうしているうちにアテネオリンピックの開幕が目の前に迫りました。日本選手の活躍も気になりますが、世界のトップアスリートの素晴らしいパフォーマンスが見られることにワクワクした感もあります。

特に、陸上競技では昨年の世界陸上で200mで銅メダルをとった末続選手に注目が集まっているようです。報道によれば200mではなく、100mで勝負するとのことですが、200mは本当に出場しないのでしょうか。

100mの方が決勝進出に疑問符がつくように思うのですが、どちらにしても楽しみです。日本選手権のサブグランドで彼の走りを十分見させてもらったので、彼の強さと課題もよくわかります。正に上手くいけば・・・・というところではないでしょうか。

ところで、今回のニュースレターが、通算100回目となりました。第1回目が2000年の6月で、以後月2回のペースで、4年が過ぎました。内容を振り返ってみると結構参考になるものが多いので、これまでのものを整理してまとめたいと思っております。整理ができましたら、皆様にもお知らせいたします。

さて、先日TarzanのNo.425が送られてきました。表紙の特集のタイトルを見ると「脳を鍛える」というものでしたが、よく見ると、直前企画「末続慎吾、スプリンターの科学」という記事がありました。コーチの高野進と末続慎吾の取材記事ですが、カラーで6ページに渡って掲載されていました。

内容的には、これまで本や雑誌に書かれたものとほとんど変わりませんが、いくつかポイントになるところが見られますので、その記事から抜粋して紹介したいと思います。

『・・・ 高野は言う。「外国人の骨盤は前傾していて、日本人は後傾している。マック式というのは外国人の骨盤に合ったトレーニングで、日本人向きではない」

前傾した骨盤を持つ外国人は、膝を高く上げるように意識しないと本当に膝が上がらない。意識することで膝がちょうどよく上がり脚が前に出て、その脚に重心を乗せていける。いっぽう後傾した骨盤を持つ日本人は、膝を上げろと言われると、本当に高く上がってしまう。

そのためカラダが反って重心が後方に残る。しかし、前進しなくてはいけないから、脚で地面を引っ掻くように蹴り、それを推進力にしたのである。この引っ掻くように蹴ることで起こる脚の動きがリーチアウトなのだ。

「これでは体力ばかりを使ってしまい、スピードはそれほど上がらない。で、私たちの言葉で言う”乗り込む”ような走りを目指したんです」

乗り込むとは、着地した脚に重心を乗せて進むこと。膝を高く上げると重心が後方に残ってしまうので、膝上げはあまり意識しない。そして着地した脚に即座に重心を乗せる。と、慣性の法則で重心はさらに前に進むから、逆側の脚を前に出して、そこへ重心を乗せていくのだ。

「重心が脚に乗ったときに地面を押す感覚ですね。真下に押すのですが、実際は重心が前へ移動しているから地面に対して斜め後方に押すことになる。それが推進力になるんです。押した脚はすぐに前に出す。決して蹴らない。地面から離れた後はもう用なし。蹴ろうとすると重心が残ってしまう。

ちょっと難しい話ですが、位置エネルギーと運動エネルギーがあるでしょ。位置エネルギーを利用して、宙に浮いたカラダを接地のときに落とし込み、その後地面反力をうまく受け取ることで運動エネルギーを得るのです。重力を利用して走るんです。だから、とても楽に走れる。スッスッと脚を運ぶような走りですね。上半身は上下動が少なく平行移動するような感じになります」

もうひとつ大切なキーワードがある。それがシザース、つまり挟む意識だ。着地して跳ねた瞬間に両脚を挟むように意識すると、後方の脚は素早く前に出る。しかも、骨盤が左右に大きく回転することも防げる。

体力的にも楽になるし、骨盤の位置がぶれないから走りも安定するのだ。「イメージで言えば、忍者が水のヒをサササッと走っている感じ。脚が沈む前に次の脚を前に出せばいいというのと似ている。いつまでも、脚が残っていてはいけないんです」

この走りにとって、最も重要になってくるのが体幹、つまりコア。末績もここを重点的に鍛えているのだ。「骨盤の上に乗っているコアがふにゃふにゃしていては、走りが安定しませんし、脚に重心をしっかり乗せていくこともできない。どこに進むかわからないような走りになってしまうんです。

右に行ったり左に行ったりみたいな。ですから体幹を鍛えて、さらにきちんと意識して走ることが重要になってくるんですよ」

「相撲の稽古のときに鉄砲というのをやりますよね。あれは同じ側の手と脚が出る。相撲というのはすごく重いものを前へ押すわけでしょ。ということは、自分の重心を思い切り前に持っていっているわけです。短距離も同じ。前に自分の重心を運ぶわけで、相撲のぶつかってくるモノをさらに押していく強力なパワーを取り入れられないかと考えたんです。

そこで昔からナンバという走りがあったなと思い出して。ナンバと完全に同じではないんですけども、タイミングの取り方は似せることはできると思ったんです。そこから、足が接地してから重心を前に運んでいくという腕振りを試して、”末績やってみる?”と言ったら、”やってみますか”みたいな。

そしたら、けっこうl00mとか200mの後半がいいんですよ。昨日の練習でも末績も”だんだんナンバが効いてきましたよ”なんて言って。この言葉が出ると彼は調子がいいんですよね」

ナンバにすることで、コアはさらにしっかりしてくる。昔の陸上の走りは背中に1本の柱があるような意識で走っていた。その柱を軸に骨盤を左右に回転させて進むようなイメージだ。だがナンバをすることで柱が2本になる。それが背骨の両サイドにある2本の背筋だ。

「1本の柱を使って押すのと、2本の柱で押すのとどちらが強いか。大きい力を出さなくてはならない相撲では、左と右、2つの柱で押していくんですね。

右、そして左と。それと同じでナンバ的な腕振りを使用し始めると柱が2本になってくるんです。そうすると、真ん中に1本の柱を意識していたときとは違い、腰や上体のオーバーローリングがなくなる。だから上体も安定して重心の移動がしやすくなるんです。

さらに柱を鍛える意味もある。たとえばボールに空気が入っていないと弾みませんよね。走りも同じでふにゃふにゃの筋肉は弾まない。体幹を鍛えることで走っているときにちゃんと跳ね返るようなカラダになるんです」

こうした理論によって末績慎吾の走りは生まれた。』

いろいろ疑問に思うところもありますが、以上のような観点から末続選手の指導が行われているということです。「なんば」や「二軸理論」などいろんな考え方があり、そのような考え方は否定するものではありませんが、肝心なところを見失わないようにする必要があります。

それは、走り方とともに、いやそれ以上に大切なことが基礎体力のレベルアップにあるということです。古武術についてもそうですが、一流になるためにはどれほどの年月と訓練が必要であるのか、それを忘れで技術だけ追いかけても臨む結果は得られません。

末続選手の場合、高校1年の体育の授業で裸足で幅跳びをして7m20跳んだという跳躍力があったこと、これまでの走りはキック方向がクロスされていたが、踵の引きつけが直線的に改善されてきたことがポイントになるのではないでしょうか。100mで10秒を切るには、LJも軽く8mを超えれるはずです。

それほどの跳躍力が基本的に必要になるということです。基本、基礎は何かということです。

「木を見て森を見ず」 ややそんな傾向がトレーニングの世界に見られるような気がします。世の中に「これは絶対である」というようなものは存在しないということです。特に指導者は、柔軟な思考をもってトレーニングや練習に取り組んでもらいたいと思います。

それから、平成スポーツトレーナー専門学校は、現在トレーニングルームとトレーナーズルームをリフォーム中です。月末までには完成の予定です。また、私は、現在暑さと戦いながら来年からのテキスト作りに追われています。

メディカルトレーナーコース、コンディショニングトレーナーコース、アスリートコースのためのテキストです。これまで私が集めた資料や著作などを編集しています。

テキストは、『コンディショニングノート(仮題)』『リコンディショニングノート(仮題)』という理論編と、『テクニックマニュアル』という実技編の3部作になります。いずれも250~300頁にわたるもので、私のところの学生のためだけのものです。来年の3月完成を予定しております。

また、来年17年度から大幅にカリキュラムを変更する予定で、内容も実践的な授業を重視し、そこに必要な知識を理論として付け加えていく形式にする予定です。本来専門学校は実業教育ですが、知識教育の座学が中心に行われていました。

作成中のカリキュラムを見ているだけでも楽しみです。そして後1年かけて、カリキュラムも整理し、18年度からは本当の意味で私の学校がスタートします。メディカルトレーナーとコンディショニングトレーナーの本当のプロを育てるためには、もっといろんな方々の協力が必要と考えておりますし、その体制も整える必要があります。

それで、もし私と一緒に仕事ができたらとお考えの方がおられましたら、どうぞ名乗り出てください。「何々がしたい」、「こういうことなら私はできる、やりたい」とお思いの方は、ぜひ御連絡ください(E-mail:uozumi@heisei-iryo.ac.jp)。

また、学校のホームページにある私の『夢を語る』を読んでいただき、いっしょに私の夢の実現に協力したいという方がおられましたら、どうぞお越しください。

いろいろご相談させていただきます。夢の実現は1人でできるものではありません。同じ志を持ったものが集まって初めて可能性が生まれるのです。そんな基地を私は平成スポーツトレーナー専門学校につくりたいのです。