2003年 3月 の投稿一覧

札幌での練習会|ニュースレターNO.067

前回に話したように、UHPCのメンバーの指導に札幌に出かけました。これまで井内選手が定期的な指導をしていることもあり、いっしょに練習に参加したい・させたいという選手や指導者が多数おられました。

しかし、まだトラックか使えず、室内の直線60m4コースほどしか使えないので、15名程度に絞って、午前と午後の2回ずつ指導することにしました。

参加した選手は中学生、高校生、大学生、社会人まで、レベルも中学チャンピオンから普通の選手までさまざまでした。中学と高校の選手には、必ず指導者もいっしょに見てもらう約束で練習への参加を認めました。

練習会では、UHPCの選手を見るというより、どうしても他の選手たちを見てあげることになってしまいました。その点は心残りですが、全員陸上競技を楽しいと感じてくれたようで、練習会の後、個々に目的を持って練習に励んでいるようです。

場所もないので、走ることとハードルに限って指導しました。基本というか、どうすれば速く走れるのかということから始まりました。そのポイントは、自分で速く走ろうとするのではなく、自然に、からだが進むことをまず実感・体感することです。

進むというより進んでいくためには、何をどうすればよいのかということを知ることです。それを基本にして、まず頭の位置を考えさせました。これまで重心のコントロールということで、おヘソあたりに重心ポイントを意識させて、それを前方に運ぶという感覚で教えていましたが、もっと簡単な重心のコントロール方法がありました。それが頭の位置です。

頭は非常に重いものです。これまでの考え方でいくと、「重心の上に頭がある」ということでしたが、それを「頭の重心の移動にからだがついてくる」という考え方をするわけです。

この方が、おヘソあたりの重心をコントロールするよりも簡単に重心を前に運ぶことができます。頭が前に行けば、足を出さないと倒れてしまいます。そのために条件反射として頭が前に行けば何も考えずとも脚は前に出て行きます。

さらに腕を前方にやや放り出す感覚で振れば、さらに前方に進むようになります。走るのではなく、走ってしまうのです。

後は、足のつき方です。ほとんどの選手は、足をフラットにつけません。つま先が外に向いたり、内に向いたり、つま先からついたりしています。そうすると、足の裏全体でしっかり体重を支える局面がなくなります。またそのような状況で、地面を押しても大きな力は生まれません。

フラットな状態でつくことによって、最も大きな力を引き出すことができるのです。これは簡単に修正できます、修正できればすぐに大きな力として跳ね返ってきます。そうすると、ランニングリズムが生まれます。それまでばたばた走っていた選手たちの足音もすっかりリズミカルなものに生まれ変わります。

足音を聞けば、どのような状態で着地しているかわかります。ただ、間違ってはならないことは、速く走っている時には、フラットに着くタイミングはほとんどありません。自然にフラットな着地ができていれば、速く走るときにも脚の力を最大に引き出すことができるのです。

O脚にもならないし、X脚にもならない、ストレートな脚へと変身します。簡単に言えば、X脚やO脚で走っていると、脚の外側や内側の一部の筋肉しか使っていないことになるのです。ストレートな脚の使い方ができれば、脚の内と外、そして中央というように全部の筋肉を集中して使えるようになります。

文章的な説明ではなかなか理解できないと思いますが、実際に選手の走りを見ていると目の前で変わる、すなわち進みだすことがわかります。

また走っている本人も、なぜか前に進んでいく感じになるのです。このような走りをすると、無駄なエネルギーを使う事が無くなるので、走っていても疲れないし、息も弾みません。不思議なようですが、「水が流れ落ちるように」、また「大きなボールが坂道を転がるように」進むのです。

現状の体力に応じた走りができるようになります。すなわち、さらによく進む人との差は、筋力や体力面にあるのです。

このようなスムーズな走りは、誰しもできるのです。先天的なものの差が出るだけで、誰しも気持ちよく「流れるように」「転がるように」走れるのです。今回の練習会では、こんな体験をしてもらいました。

選手はもとより、指導者の方々も目の前で変身していく選手を見て満足されていたようです。

気持ちよく、スムーズに走れるようになると、ハードルもすぐにうまくなります。私は、ハードルはランニングリズムでクリアーしていくものと考えていますので、ハードリングというものは、形ではなくランニング動作の一部であると教えています。

ハードルを越えようとして、ある形を作るように教えると、ほとんどは窮屈でむつかしい動きになってしまいます。それではうまくハードルをクリアーすることはできません。うまくクリアーするということは、無理がなく、スムーズな動作が必要なのです。それをランニングリズムの中で教えます。

どんどんスムーズにハードルをクリアーする選手を見ていた中学生が感想に書いていますが、「動きが止まらずに走りつづけている」と表現しています。まさにそのとおりでした。楽に、スムーズに行うことでハードルに対する恐怖感もなくなってしまうのです。

自分のからだに無理をしないということです。一人一人体格や動きが異なるので、同じ動きを押し付けることはできません。一人一人違ったポイントをアドバイスする必要があります。

そんな中で私も感動したのですが、女子の高校生で100mHをしている選手がいました。ベストタイムは20秒をやっと切れる選手です。とてもハードル間を3歩でいくことは出來ませんし、夢のような話です。

初日に見たときは、一人目立った存在でしたが、時間の経過と共に目立たなくなりました。2日目には、走りもよくなり、よく進むようになり、最初で最後でしたがハードルの指導もすることにしたのですが、5歩ではうまく行くのですが、3歩になると当然のようにいけなくなります。

しかし、よく見ていると、ハードリングもよいし、ハードル間の走りもよくなっているので、後は一台目のスピードがたりないだけと判断しました。

室内なので当然1台目までの距離が5mほど短くなっていたから尚更スピードはつきません。そこで、それまでに練習していた出だしの加速をそのままのイメージでやってごらんとアドバイスしたところ、いけそうになってきました。

途中、「ああ・・いけた」と思ったら勇気がなかったのか2台目を跳びませんでした。私が思わず「ああ」と声を出したら、なんと周りから同時に「ああ・・おしい」という声があがったのです。選手も指導者も全員彼女のことを見てくれていたのです。それで次は必ず跳べると思いました。

勇気をもっていきなさいというアドバイスだけです。そして、次のトライアルでは見事に2台目を成功し、大歓声が上がりました。その感動は涙となって現れました。次のトライでは3台目までいけたのです。

一人の選手の成功は、みんなの成功であり、素晴らしい練習会でした。このような感動があるから教えることは楽しいです。何よりも選手が楽しそうに次々と考えてトライしていく姿を見ていると、それだけでうれしいものです。

選手たちは自信を持ってもっと高いレベルにチャレンジしようとしてくれるようになりました。自分の潜在能力を出し切れることはないのです。今の結果は今の努力の結果でしかありません。無駄な努力の結果であれば、もっと効率のよい、効果的な努力をしていけば夢は無限に広がるはずです。

ほかにも素晴らしい選手がたくさんいました。今年の中学や高校の選手権で頂上に立てる人もいます。しかし、願わくばその先に世界を目指しつづけられるように育ってほしいものです。そして、将来環境が許せばUHPCに入ってもらいたいと思っています。

身体能力|ニュースレターNO.091

バレーボールの専門雑誌である「Coaching & Playing Volleyball」29号に「日本人の身体能力は外国人に劣っている?」という記事がありました。著者は、イタリアセリエAでアシスタントコーチをしている日本の方です。内容については、これまで私が語ってきたことと同じなのですが、具体的な話が書かれていますので、非常に参考になります。ポイントのところをピックアップして整理してみました。

『過去、現在同じチームに所属してきた選手の中で、フランス代表のグランボルカ、キューバ代表のカルドーナ、マルシャル、クロアチア代表のオメルチェン、ブルガリア系イタリア人のシメオノフらのジャンプやパワーをみてしまうと、我々日本人には及びもしない域にあると感じます。

また、世界的には全くの無名ですが、チェコの元チームメイトには、2m10cmのセッター、20歳で2m8cm、110kgなんていう選手もいました。このような選手たちと同じように日本人がジャンプし、強いサーブ、スパイクを打っことは、これは楽観主義者の私でも諦めざるを得ません。

速筋の量が黒人よりも白人、そして白人よりも我々黄色人種が尐ないことも事実です。したがって日本人は外国人に比べて遺伝子的に劣っているのは間違いないのでしょう。

イタリアでプレーしているVリーグ経験者は日本に関してネガティブな話の1つとして、ほぼ全員が「ストレングストレーニングの質と量の低さ」を口にします。ある選手は日本のチームのメニューでは足りないからと、イタリアのフィジカル・トレーナーにメニューを送ってもらっていました。

また、クネオのフィジカルコーチは、「日本に行った選手はけがをして帰ってくる」と言っています。残念ながら、「ストレングストレ一ニング」においては、イタリアとは大きな差があるようです。しかし、何も変わっていることはしていません。

筋力強化のトレーニンクと筋コントロール(コーディネーション)のトレーニングをセットで行い、そしてけが・故障予防トレーニングを取り入れています。

セリエAのピアッチェツァは下半身の筋力強化のメインのトレーニングとして、片脚スクワットを行っています。方法としては、ランジの状況で後ろの脚をベンチに置き、より前脚に負荷がかかるようにして、マルチパワーという両脇に補助バーがあるスクワットマシンを利用しています。

片脚で行う理由は、

①両脚で行うとかなり重いものをこなすことになり、腰・背中の負担が大きくなる。

②左右のバランスをなくす為。

③両脚で行うと重りが足りなくなる。

これを週1~2回、4回x4セットを行います。ちなみに以下が各選手の重さです。

ガルディーニ(202cm、C) 第1期80kg/第2期100㎏
エルナンデス(200cm、O)第1期100kg/第2期120㎏
マルシャル(196cm、O/S)第1期120kg/第2期140kg
ズラタノフ(202cm、S) 第1期110kg/第2期l30kg

第1時期はシーズン明けの2003年8月上旬~10月中旬まで。第2時期はそれ以降。

クリーン、スナッチ、メディシンボール投げを筋コントロール(スピード・コーディネーション系)のトレーニングとして行います。試合期はメディシンボール投げとスナッチがメインとなっています。スナッチは各選手、40kg~60kgで行っています。もしくは、体育館のスタンドを利用した両脚でのジャンプを行っています。

これらのトレーニングを行うことで、片脚スクワットで鍛えた筋肉をバレーボール競技特性にあったスピードのある筋肉にします。

そして、最後にプリベンション(障害予防)のトレーニングとして、片脚フルスクワット、最大筋力の50%ほどの負荷をかけ、マシンを使ったレッグ・エクステンション、プレス、そマシンやフリーウエイトでは鍛えることのできない足首の周辺の小さい筋肉を刺激するバランスボード上での
片脚スクワット等を行います。また、これは練習前のウォーミングアップ時に行うこともあります。

午前中に上のように強度の強いトレーニングを行った際は、オーバートレーニング防止、そして膝軟骨のすり減り防止策として、午後はノージャンプにしてレシーブ中心の練習を行い、ジャンプの回数をコントロールしています。

トレーニングの方法・メニューは日本とそう大きくは変わることはありません。「意識の高さ」とは、選手が「真剣に取り組むか」という意味ではなく、指導者のトレーニングに対する認識・優先順位の高さです。監習は1週間の練習メニューを組む際、一番初めに考えることは、「どこでトレーニングを入れるか」ということです。

ベルギーで開催された3日間のトーナメントに参加したとき、べルギーに到着した日に2試合対戦し、夕方に試合が組まれていた2日目、3日目の午前中はホテルのトレーニングルームにて、プリベンショントレーニングに当てています。

バレーボールで酷使される肩・膝等関節の補強トレーニングが中心です。肩はダンベル・プレスやゴムチューブを使ったインナーマッスル系、膝・足首は先ほど述べた種目を行います。イタりアの選手は、試合前日や当日にトレーニングを行うことを当然のように受け止めています。

そして、3日目にトーナメントの優勝を決めた翌日、イタリアヘの移動日でした。朝8時にアントワープのホテルを出発し、午後3時にミラノのマルペンサ空港に到着、そしてその1時間後には、ピアッチェンツァの体育館に戻りトレーニングを行いました。そこで行われたのは、しっかりと負荷をかけた筋力アップを目的としたものです。

今後の試合予定を逆算した上で、選手の批判(勿論、さすがにこの日は誰もやりたがりません)も承知の上で監督のペラスコは、帰国当日にトレーニングに時間を割いています。翌日は休養日でした。

ブラジルの男子ナショナルチームについても同様のことを聞きました。昨年のワールドリーグ予選ラウンド対イタリア戦がフィレンツェで行われ、ブラジルからミラノ経由でフィレンツェに入るのに、ミラノのトランジットで5時間の待ち時間があったとき、その待ち時間を利用してミラノ市内のトレーニングジムで汗を流したということです。

また、昨年11月日本で行われたワールドカッブ開幕前の11月8日にもミラノで対イタリア代表との親善試合がありました。翌9日午後3時の成田行きの便でミラノを発った際も、午前中にトレーニングを行ってから空港に向かったということです。

全日本男子は、昨年のワールドリーグでギリシャ、フランス、チェコに遠征したとき、移動日には何もできず、飛行機の移動で長い間椅子に座って体が固くなっているので、盟日も調整目的のトレーニングだけだったと聞いています。

イタリアだけでなくセルビア、フランス、ブラジル、キューバ、そしてチェコでも本格的に筋力トレーニングを始めるのは17~18歳からのようです。その準備段階として14~15歳くらいから、神経系のトレーニングと並行して腹筋・背筋等の自重を使った簡単なトレーニング、重りなし、または軽い負荷のフリーウエイトでトレーニングを頭と身体で学ばせています。

きちんとしたフォームを学んでおくことで、本格的なトレーニングを開始したときにはすぐに正しいフォームでトレーニングができるようになっています。キューバではこの準備期のトレーニングを週4回もやっているそうです。

昨年のワールドカップのベストスパイカー、ガビオ・ジオバーニ選手(ブラジル代表)は「我々ブラジル人は、身長・パワーで欧米人に劣っているので、彼ら以上に身体を鍛えなければならない」と語っていました。

イタミリア人、ブラジル人選手は、「身体能力でキューバ・ロシアに勝てないなら、彼ら以上に鍛えよう」と考え、キューバ人選手は「技術で劣っている我々は、神様から授かった高い身体能力を更に鍛えなければならない」と強い意志でトレーニングに取り組んでいます。

イタリアバレーボール界で働いていて感じることは、今でも特定の技術では日本のバレーボールも尊敬されているということです。「もし、日本人がもっとフィジカルを鍛えれば…」という言葉を何度も耳にします。

彼らはそうなった日本のバレーボールを恐れています。逆に「何故、しないのか」と不思議がっています。もちろん、全くやっていないわけではないと思いますが、こちらの人間には、日本のバレーボール選手はトレーニングをしないと考えられています。

日本人と彼らとの差は、本来持っている遺伝子、身体能力だけの問題ではなく、また、トレーニングの種類の違いでもありません。ただ単にトレーニングの仕事量、そしてトレーニングに対する意識の差なのではないでしょうか。

私は世昇のトップ選手たちが天性のバネだけで、あのような素晴らしいジャンプをし、スパイクを打っているのではないことを確信しています。確かに体力で真っ向から勝負を挑んでは勝てないでしょう。

そこで体力の差を技術や戦術で補って戦うということになるのでしょうが、身体能力が大人と子供ほどに離れてしまっていては、その差は埋めようがなくなってしまいます。「トレーニング(身体を正しく鍛えること)」が、日本バレーボール再建の一つの鍵になるのではないでしょうか。』

オリンピック、世界選手権が終わる度に言われることなのですが、また私も言っていることですが基礎体力の不足、レベルの低さに最大の問題があることにどうして気が付かないのでしょうか。

知らぬ振りをしているとしか考えられません。科学的トレーニングが実践されているなら何が科学的なのか知りたいものです。このように回外の現状を如実に紹介されることは我々にとっても説得力を与える材料になると思います。

後は、外国選手の二番千住にならぬよう、目的に応じた創意工夫されたトレーニングを考えていく必要があると思います。筋トレとパワートレー、コーディネーションなど、バレーボールに必要な要素は数多いと思います。それらの要素を見つけ出し、どうすればパフォーマンスを高められるか考えることは非常に楽しいことだと思います。

環境に応じた独創的なトレーニングが出てくることを期待したいものです。また、オリンピック最終予選が残っています。選手の動きをじっくり見たいものです。ただ、中継があるのでしょうか心配です?

「ジャイアンツ塾」を読んで|ニュースレターNO.063

プリン

以前に話しました「ジャイアンツ塾」について、何人かの方から感想をいただきました。今回はその感想を元に書きたいと思います。

私は最後に「これほどためになる(?)本はありません。次の投手編が楽しみです。」と書いておきました。問題はためになるの後に「?」マークがついたことです。まず3人の方の感想をまとめてみました。

『「ジャイアンツ塾:打撃編」を見ました。感想として真っ先に頭を過ぎったのは「凄い!細かい!」でした。しかし、ふと冷静に考えると、なんと「キッズ」のための「野球 How to 本」ではありませんか。私の考えるキッズの年齢層は「小学生」です。

本当にこの本が小学生を対象として書かれたものであるなら、この内容を全て理解し実行できる小学生を見てみたいものです。

質問の内容は、到底、小学生では考えつかない質問です。また、その答えは、口語調で語りかけるように構成されていますが、非常に微に及び細に渡りで、かなりプロ向きの答えです。

あの内容であればプロ野球選手でさえ「ヘェ~…」と言わせるほどのものであると思います。特に深く印象に残っているのは「頭の周辺に来たボールへの対処は?」というものでした。頭の周辺に来たボールの対処法など教わらなくても自然に避けるのが人間ではないかと思います。

襲いかかる危険に対して身体が自然に反応しない子供であれば野球以外のスポーツへの参加も危険です。このようなことは論理的に説明することでしょうか?

この本は、全く、読み手、言い換えると指導される立場から作成されたものではありません。これは、読売巨人軍のもち得る全てのノウハウを凝縮したマニュアルです。

先日、あるプロ野球選手の指導をする機会がありました。2年目のピッチャーですが、全くコーチングを受けていないらしくピッチングに悩みを持っていました。「ジャイアンツ塾:投手編」というものがあったら推薦しようかと思います。』

『ジャイアンツ野球塾を買ったのですが、なかなか読み進みません。読んでいる途中ですが、読み終わるのがいつになるのか分かりませんので途中までの感想を・・・

先生がいつもおっしゃっているところの「木を見て森を見ず」ではないかと思います。子供向けの本なのでもう尐し基本的なところをと思いますし、何が大切なのか伝わってきません。初動作と動作の結果の終動作の大切さ、一番力を入れるところの記載が無く、動作の途中のところの話が多かった気がします。

あれだけ動作の途中を意識していたら、スムースでスピードのあるスイングが出来ないのではと思います。

最近、思うのですが、先生が言われるように「理論は行き着くところは簡単になる」ということをしみじみ感じるのですが、どうも大人になると「簡単なことには価値が無い」と思う人が多いように感じます。

私が働いているスポーツ倶楽部でも、雑誌に載っているものや、スポーツ選手がやっているエクササイズにとびつく人が多く、簡単で単調なエクササイズは人気がありません。しかし、結果を出しているのは簡単で単調なエクササイズをやってくれている人です。

ですから、私が価値のある指導者になって簡単なことの大切さを指導しなくてはと思う今日この頃です。』

『感想ですが、先日、掛布さんの「打つ 掛布雅之の野球花伝書」を読んだ際に頻繁に出てくる「バットのヘッドを遅らす」という表現がよく分からないままでした。

例えば掛布さんが甲子園の浜風を利用してバッティングを習得したという下りでは、「あの浜風を利用するためにヘッドを遅らせてボールを上げることを覚えたのかもしれないですね。

どちらかというとバッティングというのはバットのヘッドで打つんだというイメージありますけど、甲子園という独特の風のある球場で練習していますと、ヘッドが先行していくと、なかなかライトスタンドに入らない。

バットのヘッドが遅れてレフト方向へいくとすごく綺麗な打球が飛ぶ。そうするとどうしたらいいかっていうと、グリップのエンドでボールをつかみにいけばヘッドって遅れるんですよ。

打つのはバットの先なんですけど、先で打ちにいくとボールは上がってくれないってことがわかってくるわけです。ですから、リードする右手で、しっかりとグリップにボールをぶつけていってあげようと。そうすると、自然にヘッドは遅れてくるんですよ。」とありました。

素人目に考えると「ヘッドを遅らせれば、速球に振り遅れたり、スライスのような球しか飛ばないのでは?」という疑問しか浮かびませんでした。今回の本でヘッドに関する部分を読んでいくとおぼろげながらその意味がわかって来たように思います。

具体的には質問のQ「6、31、3246」といった所ですが、グリップのトップの位置からボールに向かってグリップを突き出すように加速する事がスイングの始動からバットの加速の領域での話だと思います。結果としてバットのヘッドが後ろに残り、「ヘッドが遅れる」ということになるのだと思います。つまり、遅れればそれだけバットの加速時間が長く、速度が大きいということになります。

問題はここからで、遅れたヘッドをインパクトの時に手首を返して、インパクト面に持っていく動作です。

ここがあの本を読んでも良くわからないのですが、Q「27、39、45」などにありますが右打者であれば「引き手=左手」の手のひらを地を向くように、「押し手=右手」の手のひらを天を向くようにしたままでスイングして両手ともしっかりとバットを握らず、特に押し手の右手はほとんど握らなくとも良いという具合に書いてありました。

確かにギュッと握るとバットの回転が阻害されそうですが、この時の左と右の上肢はどんなふうな力の入れ方であればいいんでしょうか?他の本では「引き手に力を入れるよりも伸ばすという動作だけで自然とバットは回転してまた手首も遠心力で自然に返る」とありました。

となると「ヘッドを遅らせている」間のバットの加速期に引き手に力を入れて、そのあとは手首に力を入れず、肘を(あまり力入れずに)伸ばすようにして、(魚住先生のご著書にあるように)インパクトの直前は手首に力を入れてボールの衝撃を堪えるという具合なんでしょうか?

これである程度の引き手の説明が付く気もしますが、押し手の方はどの地点で力を入れるのか、はたまた力を入れる必要はずっとないのか…? 疑問が膨らんで来てしまいます。』

3人の方の感想はそれなりに的を得たものと思います。私自身が感じ取ったことは、これは解説であって指導書ではないということです。その場その場の理屈を作り出しているということで、統一性がありません。当然すべてがおかしいということではなく、あまりにもある一瞬の動作を解説したに過ぎないということです。

きちっとした理窟ではないということです。この場面では・・・・・、また違う場面では・・・・・。

私もプロ野球の現場にいたのでよくわかりますが、内容は打撃コーチの指導そのもので、本当の指導ではなく解説です。ほぼこのような考え方になっているといってもよいと思います。けっして理論などではありません。理屈です。

実際には理解できないことが多く、その通りにはできそうもありませんし、そんなにむつかしい考え方をして打席に立っていて打てるのだろうかと思います。140㌔あたりのボールを打つのに、どれだけのことが考えられるのでしょうか。そうなると集中力というのはどこに行ってしまうのでしょうか。

特に打撃については、ボールとバットが当たる瞬間の話が多くでます。その場面はバットが最大スピードで動いているところですから、まず意識することはできません。仮に意識すればスピードが遅くなるはずです。私が本の中でバットがボールを捕らえる瞬間にギュッと両手を握ると書いたのですが、表現としてまずかったようです。

当たる瞬間に力が抜けているとバットが跳ね返されてしまいます。そうならないようにということと、両手、両腕にバランスよく力が入るように、またミートポイントを認識するということから、そのような意識づけをする練習も必要であるということなのですが、やはり文章で書くと細かなところまで説明できません。

バットのヘッドの話が出ましたが、バットを振るためには下の手の小指側から先に出るのがあたりまえで、バットのヘッドから出ることはありえない話です。バットは『引き出してくる』『引きおろす』という表現が一番適当なように思います。

当然リードは下の手が引き手となってリードしていきます、これだけでは片手打ちになり、バットも強く振ることができないので、上の手も押し手として使う必要があるはずです。『引き』と『押し』の相互関係によって成り立つはずです。これが自然と思われますし、最短時間でバットを振るためにはそうなると思っています。

私は、この本を読んで参考にしてほしいのは、なぜこのような理屈になるのか、それが本当に正しいことなのか、他の場面でも同じではないのかなど、いろんな疑問をもってほしいということです。

おかしくはないかという読みかたをすれば、次々に疑問が浮かんでくるはずです。そこで本来はどうあるべきなのかということを考えることです。そのための教科書としては最高に面白いということであり、ためになる(?)ということなのです。野球の指導に携わる方はぜひそのような思いで読んで下さい。きっと何かが見えてくるはずです。次の投手編が本当に楽しみです。

UHPC|ニュースレターNO.066

前回、UHPC(uozumi high performance club)の立ち上げについて書いたところ、すぐにいろんな方々から応援のメッセージをいただきました。私にとってはこれまでの延長のようなことなのですが、正式に形を作ることで私自身もすっきりした気がします。

UHPCのメンバーは、高校生、大学生、社会人とそれぞれ立場が異なりますが、目指すところはひとつです。自分の能力の限界を自分で決めてしまうのではなく、自分の持っている潜在能力をどれだけ出し切れているか、また開発し尽くしているかということが大切なことだと思います。

おそらく、日本のほとんどの選手が自分の潜在能力を出し尽くしていなかったり、開発し尽くしていないと思います。ただ練習をしているだけ、ただ走っているだけ、ただ筋力トレーニングをしているだけのことのように思います。

今回のUHPCの立ち上げのメンバーについてもそうです。これまで自分にとって、自分の目標を達成するために、何をすればよいのか、それが基本的にわかっていなかったように思います。

わかっていないというよりもそれを指導してくれる人がいなかったといえると思います。ほとんどの指導者は、技術的な指導に走りがちですし、事実陸上選手であれば、走るプログラムや跳んだり投げたりするプログラムが中心になっているはずです。

このような状況は、中学や高校生の指導でも見られます。したがって能力があれば、何をしても、どんな走り方であってもどんな投げ方、跳び方であってもかなりの記録を出すことが出來ます。ただし、これは中学や高校生の段階でしかありません。そのことは、現状が物語っています。

無茶なやりすぎで強くなることは間違いありません。そんな選手が大学生や社会人になったとき、どこに・何に伸ばす要素を求めればよいのでしょうか。確かに技術は必要です。

しかしそれを生かす基礎体力が不足していればいくら技術練習をしたところで、記録は向上するどころか毎年じわじわと記録は低下するはずです。これは多くの現状を見れば明確ですし、正当な結果なのです。

私は、今回のUHPCのメンバーである井内選手については、数年間にわたり間接的に通信的な指導をしてきましたが、彼だけがこれまで十分ではありませんが指導を続けているといえる状況でした。

彼は、中学の教員であり、これまで1年を通して安定して練習することができず、結果も荒波のような状況が続いてきました。したし、昨年北海道で指導したとき、ここから本当に集中してトレーニングができればオリンピックも夢ではないと感じることができました。そのこともUHPCの立ち上げに作用したことは間違いないと思います。

これまで何度か北海道に行って思ったことですが、本当に素質を持った選手が多いと思います。しかし、冬が長く走れないという勝手な思い込みで陸上競技に集中できないところもあるようですが、けっしてそんなことはありません。

むしろ実業団で練習の環境を整えられた選手もほとんど伸びていないことからわかるように、練習の目的と方法がわかっていないように思います。

「走れなければ速く走れない」という考え方は取り払うことです。トレーニング理論、方法論がわかっていれば何のために何をどのような方法でやればよいのかわかるはずです。

まったく走れないというなら別ですが、井内選手の場合は、中学の廊下や体育館は30mもない環境でしたが、そこで400mHのための走力も高めることができたのです。トレーニング理論をベースにした応用がどれだけできるか、工夫しかありません。

それは十分可能なことです。そんな常識を破るためにも、UHPCには、北海道の選手に入ってもらっています。

また、朝比奈選手は、役所に勤めているので、当然練習時間はありません。土日の出勤も多いようです。たいていの選手はこのような状況で練習できないから・・・ということになります。

これもそうではなく、練習時間を見つけるということです。朝の30分、昼の10分、夜の1時間ぐらい、また自宅に戻ってからの時間を合わせれば、90分ぐらいの時間は簡単にできるはずです。

そこで何をするかということになるのです。グランドに、トレーニング場に行けなくても、自宅で、またマンションの階段で、職場の階段で目的に合わせたトレーニングができます。それが細く長く続けられるかということです。

朝比奈選手には、そうした環境を打破して高いレベルに到達できることを証明してほしいと思います。

後一人、今年高校生になる宮田さんは、これから先5年、10年を見据えて指導していきます。今の素質をどれだけ伸ばせるか、またどれほどの能力を秘めているのか、現状ではわかりません。

彼女には、長期的な指導の必要性と、将来立派なアスリートになることは当然ですが、立派な指導者にもなってほしいと期待しています。

後、大阪の二人の女子選手、加藤選手と和田選手は、和田選手のお母さんが私の中学の同窓生であるという関係から知り合い、何度か話し合いを持ち、練習を見てUHPCのメンバーに決定しました。

彼女たちは高校では一流のレベルにおりましたが、大学に入ってからはいまだ高校のレベルに追いつかない状況でした。素質があるにもかかわらず、何を課題として、何を目的にトレーニングや練習をすればよいかわからない状況でした。

指導してこれまで3ヶ月ほど経過しましたが、本人たちが自覚できるほど変化が見られます。毎回何を教えるかというと、楽に走ること、きちっと体重を片脚で受けること、楽に自然に進むことを体得すること、これだけです。

無駄な動きを省いてどうすれば勝手に進むのかということを感じ取る練習をしています。頭の位置、肩の位置、腕をどのように振れば自然なのか、姿勢は、背筋はどのような状態にすれば楽に走れるのか、練習はそれを見つけて体得するための繰り返しです。

特に、基礎体力が低いので、これからその課題を1つ1つ解決していく必要があり、やらなければならないことが山ほどあります。ここにトレーニングの目的が出てくるのです。

楽に自然にスピードが上がる動きを身に付けなくては、技術どころではありません。彼女たちも自分の課題が山ほどあることにはじめて気が付いたのですから、先の自分に大いなる希望が持てるわけです。彼女たちは、私に「まだ基礎レベルまで言っていない」といわれていますし、それを自覚して先を見すめて努力しています。

こんなメンバーですので、選手個々にたくさんの課題を持ちながら自分のために、自分の夢を実現するために努力していってくれると思います。その努力が尽きたときは、それ以上無理をする必要もありません。

自分に対して嘘をつかないこと、やれなかった・やっていないことを隠さず、できていないと自覚していけば結果に後悔もないはずです。そして、トップアスリートになるんだという自覚と、態度についてもうるさく言います。日頃の言動に注意して自分自身で意識しなさいといっています。

練習やトレーニングの場だけ、優秀ではいけません。本当にトップアスリートとしての人格が備わらないと、夢もそこまでだと思っています。

私は選手たちの夢の実現をサポートするだけであり、引っ張っていくことはありません。すべては選手本人の責任であるということです。誰しも強くなりたい、勝ちたいと思うものですし、思うことは誰でもできるのです。素質があり、夢があり、それを強く実現したいと望む、思いつづける強い精神力・意思力があるかないかだけです。

長く思いつづけることはむつかしいことですが、それは選手の活動を皆様に報告しながらそのモチベーションが保てるようにしたいと思いますし、また選手に対してご支援いただければこれほどうれしいことはありません。

この金曜日から、札幌に行きます。3名の選手の秋からの練習の成果を見ることとポイントを指導するためですが、同時に練習に参加したいという選手や指導者の要望が多数きているようです。それで特別に、UHPC以外の選手を指導する時間を設けました。8月には北海道でクリニックをする予定ですが、今回はそんな予行にもなりそうです。