2003年 2月 の投稿一覧

夢への第一歩|ニュースレターNO.065

調理キット

私はこれまでいろんな方面で選手を指導・アドバイスしてきました。インターハイやインカレのチャンピオンから日本選手権のチャンピオン、アジア大会や世界陸上にも選手を送り出しました。

しかし、その選手たちはすべて指導者が一応いたり、故障で走れなくなった選手を再生したり、指導者をサポートするといったものでした。私個人が完全に育てきったといえる選手がいない状況でした。

密に長く指導できたとしても3年間で、それで日本選手権で勝ってアジア大会に出場させることができましたが、その後は続きませんでした。

私の今後の夢は、世界に通用する・活躍できる選手を自分の手で育てることです。それに今後の人生をかけたいと思っていました。いつかそんな日がくればという思いでしたが、ようやくスタートできそうです。

やりたいことは山ほどあるのですが、その中でも選手を育てることが私には一番適しているように思います。しかし、実業団のチームでやるにはいろいろ問題があります。それはひとつの競技しか見れなくなることです。

いろんな競技で世界を目指せるアスリートがたくさんいるはずですが、どこかで挫折してしまっていることは皆さんもおわかりだと思います。綿密な長期計画にのっとって、1つ1つ課題を解決していき、その結果、世界で活躍できるトップアスリートが育つようにサポートできればと思っています。それが長年の夢でした。

それでトップアスリートを育てるクラブを立ち上げることにしました。それは、UHPC(uozumi high performance club)です。このクラブは何年か前から構想を持っていたものです。

昨年新たに何人かの陸上選手と出会いました。その人たちは将来性のある人たちですが、指導者に恵まれず、ただ陸上競技に打ち込んでいるという通常のパターンの選手たちです。

実業団でやっている選手も結局は同じだと思います。ただ陸上の練習をしているだけです。何をどのレベルまで上げれば、どのような結果にたどり着くのかわからずに練習しているだけです。

走り方(フォーム)にしても指導されたことはなく、早く走るための動きそのものができていなかったり、からだの使い方そのものがわからず、ただ走っている・跳んでいるだけの状況が多いように思います。

課題を見つけて、どのように解決するか、それにどれだけの時間が必要であるかといった分析が必要なのですが、ほとんどが技術と称した練習に打ち込んでいることが多いように思います。基礎的なところが軽視されているように思えます。当然、素質があるだけではより高いレベルに到達することはできません。

結局、何年か努力してもその上のレベルに到達することができず、競技から去っていくのです。このような状況はどれほど多く見られることでしょうか。すばらしい能力を持っているにもかかわらず、その能力を完全に開花できずに競技生活を終えている選手がどれほど多いことでしょうか。

私はそのことをずっと残念に思っていました。「1つ1つの積み重ね」、これができれば世界で活躍できる選手が日本にもたくさんいるのです。それを実証したいということも今回のUHPCの立ち上げに大きく影響しています。

UHPCは、まず5名の陸上選手の指導からスタートします。これまで指導を続けてきた選手を含め、社会人3名、大学生1名、新高校生1名からスタートします。

この人たちはすでに定期的に指導したり、通信の状態で指導をしている人たちです。もちろん所属はそれぞれあります。しかし、練習・トレーニングの指導はこのクラブにおいて、また通信の指導において私が行っています。通信で行っている選手は、北海道の選手たちです。

そこでは、これまで指導してきた選手が中心となって定期的に合同で練習をしています。後の人たちは大阪の選手ですので、週に1~2回、私のところで直接指導しています。北海道の選手については、ビデオを送ってもらってチェックしたり、直接北海道に行って指導したり、大阪にきてもらって指導したりしています。

UHPCの最初のメンバーについてはまた正式に紹介させていただきますし、活動状況も随時紹介したいと思います。このクラブの目標は、世界で戦える選手を育てることです。したがって、単なる陸上愛好家のクラブではありません。

「本当に強くなりたい、世界を目指したい」と強く思う人たちが集まり、直接私の指導を受けたいと願う選手のためのクラブです。ただ、強くなりたいと思うことは誰でも思えるのですが、そこには素質というものが必要になります。それを見切らなければとても世界レベルには到達できません。

クラブの選手たちも将来の到達レベルは高いものです。高い目標レベルが持てなければ努力も無駄になります。素質があって、高い目標が持てれば後は努力だけです。しかし、ここにも大きな問題があります。

それはこのUHPCの特徴というか、指導する私の性格もありますが、1つ1つの努力が積み重ねられない選手は、また積み重ねられなくなった選手は当然そこまでということになります。

多くの素質のある選手がこれまで世界のレベルに到達できなかったことはこの点にあります。1つ1つの積み重ねができなかったり、自分の思う方向に勝手に進んでしまったりと曲がり道の続く道に迷い込んで自分だけで努力していると納得していたのだと思います。

私が目指すクラブは、日本チャンピオンになることではありません。そのレベルでは世界で戦うことはできません。もっと高いレベルに到達することを目指しています。

こんなことを言うと笑われる方も当然多い・またほとんどそう思われるかもしれませんが、これまで素質のある選手を本当に1つ1つ課題をクリアーしながら育てられたことがどれほどあるでしょうか。このクラブは本当にハイパフォーマンスを実現するためのクラブです。選手と指導者の双方の努力が求められます。

むしろ、そのような状況で選手が育てられた事がないといったほうが正しいのではないでしょうか。「1つ1つの課題をクリアーする」、これがどれほど大事なことか、いやすべてこのことしかないはずです。現状でやれることをただ目一杯やらせているのがわが国の指導法ではないでしょうか。

それでどれだけ多くの選手が故障したり、バーンアウトになったり、トレーニングや練習の限界を早く迎えてしまって後半の競技人生をむなしく終えたのか、指導者という名前だけの指導者の大きな責任です。

私にどれだけのことができるかどうかわかりませんが、また現状では何らバックアップもない状況ですから、少なくとも2~3年後を見てください。

その結果を見てもらえば協力・援助・サポートしてもらえるところも出てくると思います。またそうなるように選手ともども努力したいと思います。

実行あるのみです。

選手にも言うことですが、「思うだけでは強くなれない」、本当に1つ1つ努力を積み重ね続けられることが実現できれば、当然結果は望んだものになると言っています。

人間は誰でも楽な方向に走るものです。それが自然だと思います。しかし、自分の夢をかなえたければ、夢がかなえられる努力を積み重ねなければ到底夢をかなえることはできません。本当の努力をやり終えれば、どのような結果であろうと競技人生を満足して終えられるはずです。

その努力には、人間性も重要になります。私は、人間性を大事にしますし、そのことがこのクラブに入って活動できる第1条件にもなります。これまで指導した選手の中で日本のトップアスリートになった選手が多数いますが、その中に人間性に問題があって見捨てた選手も何人かいます。

そこでの問題は、「自分に嘘をつかないこと、他人に嘘をつかないこと」でした。現状で完全な人間性を持つ人はいません。しかし、人間性ができつつある・努力している・進歩している情況が見えなければやはり競技力もそこまでです

立派なアスリート・世界に通用するアスリートになるためには人間性が大事であり、その他にもいろんな課題をクリアーしなければなりません。その点も私の指導のポイントになります。

また生活環境も生活リズムも競技に打ち込むための努力が必要です。現状ではプロとしての生活はほとんど無理なわけですから、まずこの努力が現状の生活の中でできるかどうかも問題になります。

このような努力が続かなくなるときがやってきます。それが早い人もいれば長く続けられる人もいます。続かなくなったときがこのクラブを去るときでもあります。この努力は当然私にも課されることです。選手に負けないように努力します。

アレクサンダー・テクニーク|ニュースレターNO.064

サラダ

昨年の暮、知人との話の中でアレクサンダー・テクニークという言葉が出てきました。初めて聞く言葉で、からだのバランスを調整するテクニックのようです。声がよく出るようになったり、スポーツ選手のパフォーマンスも上がるということでした。

まだ実際に見ることができないのですが、帰ってから早々にインターネットで調べて、5冊本を買いました。いずれも翻訳物です。

5冊とも同じような内容で、具体的なテクニックというものが出てきません。全体的にはアレクサンダー・テクニークを使うことで体調がよくなるというものでした。

それで自分なりに解釈し、実践してみることにしました。ポイントは頭の位置にあるということです。本には頭は「前方・上に」もっていくとあります。この位置にもっていくことによって、脊柱が伸ばされ、胸郭も拡がることがわかります。

感覚的にもすっきりした気がします。胸郭も拡がるので呼吸も楽になります。このことが声が出やすくなるのだと実感しました。我々の頭の位置は、後屈していたり、逆に前屈しすぎていたりするようです。

頭の位置については、なんとなく前屈もせず後屈もせず中間にといった以外、あまり意識したことはありません。指導の中には顎を引くとか上げるとかということは注意点としてあったと思います。

しかし頭と言うのは非常に重いものであり、そこには重心が存在しているということです。その重心をどのようにコントロールするかによってスポーツパフォーマンスが変わるということも想像がつきました。

これまで重心といえば、おへそ周辺にあるという考え方データわけで、それをコントロールさせていたわけです。つまり下半身始動型というのでしょうか。しかし頭の位置でその重心の位置が変わることはわかっていたはずなのですが、重心=へそ辺りという考え方になっていました。

それですべては頭の重心・頭の位置にあるという考え方の元に自分でもトライしたり、選手にもアドバイスするようにしました。また頭の位置を前方・上へ持っていきますと背すじがきれいに伸ばされます。そして背中の緊張もなくなります。

この位置から頭を前方にもっていくと自然に足が前に出ます。それを続けていきますとどんどん歩くスピードが速くなりますが、呼吸の乱れはあまり生じません。これをジョギングでイメージしてやりますと、何と楽に走れるのです。呼吸も楽になります。

それで思い出した事があります。昨年シカゴマラソンで女子の世界最高記録を出したイギリスのラドクリッフの走りです。彼女のランニングリズムは頭の動きにありました。頭を前方下へ持っていきながら頭の上げ下げを繰り返しているのです。

まさに頭の重心をコントロールした走りといえるのでしょうか。これまでの考え方であれば、頭は動かすなということであったと思いますが、頭が前にいけばおのずと脚は前に出るのです。私も実際に歩く中やジョギング中に実行していますが、自然にスピードが上がります。

頭の位置・頭の重心のコントロールというのは非常に面白いし、何よりも自然な動きがでてきます。頭の位置を間違っていることによって特に背部の緊張が余儀なくされます。たとえば、壁に背中をつけて立つとき、後頭部も壁につける姿勢が正しい直立姿勢のように思うわけですが、これはリラックスした姿勢ではなく、首や背部の筋肉を収縮させた状態に他ならないのです。後頭部が壁につかないことが自然なわけです。

実際、陸上の短距離選手に頭のコントロールについてアドバイスしていますが、非常に動きがスムーズになりました。頭の位置だけ意識すれば脚は自然に出てくるということがわかります。頭から先に出て行っているイメージがそうです。特に中間疾走のときは楽に走れるようです。

まだ長距離選手には指導していませんが、脚が自然に出るようになるとともに呼吸も楽になることから、特に長距離では頭の位置を認識させることが必要のように思います。そう考えるとアフリカの選手のランニングスタイルを思い出せば頭から先行しているようなイメージを受けます。

頭の位置・コントロールについては、いろんな場面で活用ができると思いますが、皆さんもぜひ一度試してみてください。頭を前方・上へ持っていって、そこで目線をいろいろかえながら呼吸を意識してやってみてください。スッと息が吸えるポジションがあります。その目線と頭の位置がポイントです。