大学の研究室で『ヨガ入門-精神が肉体を自由にできる』(光文社 カッパ・ブックス初版1962年 改題再販1975年)と言う本を見つけました。大学を出てから買った覚えのある本です。久しぶりにのぞいてみると、やはり面白い本でした。これはまた何かの役に立つなと思っていたのですが、今回紹介しようと思いました。
著者は、沖正弘という方で、大阪外国語大学アラビア語科を卒業し、昭和14年参謀本部調査員としてインドに駐在していたときに、ヨガと出会ったそうです。その後、インドのボンベイ近郊のノナワラにある世界最大のヨガ研究所でヨガを体験され、インド国内のヨガの達人たちを見て回られたようです。上記の本は、その体験談が中心のものです。
したがって、インドのヨガの本質を感じ取ることができると思いますし、日常にも、治療にもいろいろと役立つ情報になるのではないかと思います。実際にやってみると面白い結果が見られると思いますので、ぜひ何か1つでもトライしてみてください。
意識呼吸法
「ししのポーズの呼吸法」のように文字どおり意識的に行なう呼吸法である。手をひざに置き指をできるだけ広げる。口を大きくあけ、舌をあごにくっつけるような気持でありったけ突き出しながら、息を吸い、また吐き出すのだ。そのとき目玉がはじき出るほど目をひらき、全身をありったけの力で緊張させる。2~3分続けたら休む。これを5~6回繰り返す。
リズム呼吸法
動作のリズムにあわせて呼吸する方法。その初歩的練習法は、脈にあわせて行なう「リズム呼吸法」である。これは、吸う、止める、吐くの割合を1:4:2の割合とし、これを自分の脈拍に合わせて行なう。
完全呼吸法
姿勢はまっすぐ立つか、または正座で、まず横隔膜を下げぎみにして下腹に息を吸い込む。このとき腹が前に出る。つぎに胸を突き出すような気持でちょっと肋骨を開いて肺の中ほどに息を吸い込み、さらに肺の上部を突き出して吸う。そして肩を上げて鎖骨部に息を吸い込む。
こうすると下腹が少し引っ込むから肺の最上部にまで吸った息がゆき渡る。以上のような順序をふんで息を完全に吸い込む。そして吸った息を少しだけもらし、4~6秒間息をとめておく。この時、舌を上顎につけて意識を一点に集中させている。
息を吐き出す時は、腹部を少しずつ引っ込ませながら足と腹筋に力を入れて、ゆっくりと力強く吐き出す。息を八分ほど吐き出したら、足と腹の力をゆるめて、背を静かに伸ばしていく。数呼吸ののち、また息を吸いはじめる。
断食のしかた
- だんだんに、小食にして行く。1日三食を二食にし、さらに一食にして、体に急激な変化を与えるのでなく、だんだんに慣らしてゆく。
- 食事はおもに中和力、排泄力を高める食物、つまり、植物性の食物だけを食べる。
- 心を落ちつかせる練習、瞑想行法あるいは深呼吸を行なう。
断食の効果は、落ちつき度に正比例する。山で遭難して、やむなく絶食したような場合・短時日で死んでしまうのは、不安や恐怖、焦りで脳波が乱れるからである。断食のみならず、いかなることでも、いやいやながら行なう時には、すべて害を生ずる。
本格的な断食を行なうには、もっといろいろな手続きを踏む必要がある。
断食の効用
- 食べ過ぎの害からの解放。栄養失調は、食物不足よりも、栄養吸収力の減退によるものであり、食べ過ぎによる内臓の疲労が災いしている。
- 毒物、老廃物の害からまぬがれる。過食、偏食によって中和力と排泄力が低下し、いらないものや悪いものを体内に残すことがある。
a) 余分な脂肪やコレステロール。これらが悪性皮膚病、糖尿病、血圧異常、炎症性疾患、化膿性疾患の原因となる。
b) 生理的老廃物の残留、宿便。皮膚と神経は同一系のものだから、断食すれば肌が美しくなり、神経の働きも高まる。
c) 病性汚物の残留。病的体質、慢性病の原因である。
d) 薬物の残留。薬の副作用病、薬毒による神経やホルモンの失調病、外科手術による後遺症など。 - 白血球や赤血球が増加して体の抵抗力が強くなる。したがってカリエス、蓄膿症、水虫、化膿病などは、断食で直る。
- 内臓の働きと弛緩力を促進する副交感神経の働きが高まり、心臓と緊張力を促進する交感神経とのバランスが正常になる。すなわち、自律神経のバランスがとれて、緊張に起因するノイローゼなどが直るのである。
- 生理の中心である間脳に休息を与えて、感情や欲望の異常な興奮から解放され、自己のコントロール、自然治癒能力が高まる。
- 潜在能力を開発できる。人間には、テレパシー、念力などすぐれた力が潜在しているが、日常生活の中では発見しにくく、断食とか瞑想法によってはじめてわかるものである。
部分的な疲労を回復する方法
- 目の疲れ
a) 目玉を上に向けて、1分間ぐらい無心に上方をながめる。つぎは目を閉じて、瞼の上をしばらく静かに押さえる。そのあとで、目を閉じたまま顎を引いて、手を後ろにして、胸を張って深呼吸を5回くり返す。
b) 目玉を上下、左右、斜め、と規則的に10回ずつ動かす。近くを見たり、遠くを見ることをくり返す。目の疲れをのぞくだけでなく、近視や老眼になるのを防ぐ効果がある。 - 頭の疲れ
a) 5分間、「逆立ち」をする。
b) アキレス腱を縁側のふちなどで、かかとに力を入れて伸ばす。8回くり返す。
c) あお向けに寝て、肘で体をささえる。そして息を吐きながら胸を突き上げて、頭をぐっと反らせる。かかとにもぐっと力を入れて伸ばす。2回行なう。
d) 手、肩、首を回してやわらげる。10回ずつ行なう。 - 首や手の疲れ
a) 首を前後左右さまざまな角度に、息を吐きながら曲げる。口を大きくあけて、肩の上でぐるぐると回す。それぞれ10回ずつ行なう。
b) 手を伸ばして、内側と外側に強くねじる。これを手の上げる高さを変えて、5回ずつくり返す。 - 筋肉の疲れ
a) 筋肉を伸ばす体操をする。
b) 息を吐きながら、急に力を入れて、筋肉をしめる。そして、瞬間的にぱっと力を抜きながら、息を吸い込む運動を2、3回くり返す。 - 関節の疲れ。ねじる動作と伸ばす動作をする。
a) 首、手首、足首の関節は、前後左右によく回して、常にやわらげておく。
b) 坐った姿勢で、手を床について、前の方にできるだけ体を伸ばし、胸を床におしつけるようにする。この背骨を伸ばす動作を3回くり返す。
c) 体をぐっとねじる体操をする。背骨の曲がりが直る。2、3回くり返す。 - なんとなく体の重たい感じをとる方法。この感じをとるには、発汗をうながし、体をねじったり伸ばしたりすれば直る。
a) 蒸し風呂に入る。
b) あお向けに寝て、両足を上げ、両足先は頭の上を越して、床につける。その姿勢から、さらに尻を上げ下げして、背中の筋肉や、背骨を伸ばす体操をとる。2回行なう。
c) 「ねじるポーズ」をする。2回行なう。 - 足のだるい感じをとるには、
a) 原因が塩分、水分、ビタミン類の不足だから、これを補う。
b) 足だけの温冷交互浴をして、そのあとでよくマッサージして筋肉をやわらげる。
c) ビール瓶を横にして、その上にのって、土ふまずを刺激する。5分間ぐらい行なう。
d) アキレス腱をぐっと伸ばす。 - 手のだるさを直す方法。目、耳、口、および頭に故障のあることを意味するから、これらを直すことを心がける。
a)「逆立ち」が有効である。5分間行なう。
c) 首や手首をよく回す体操をする。10回ずつ行なう。
d) 腕立て伏せをする。5回ぐらいから始める。 - 仕事をはじめると、すぐ疲れてしまう時、首がねじれているのだから、これをとるために首の運動をする。5分間行なう。
- 肩や首のだるい時、骨盤がゆるみ便秘しているから、次の方法を行なう。
a) 手を頭の後ろに組んで、あお向けに寝る。息を吐きながら、足首を内側にねじる体操をくり返す。3回行なう。
b) あお向けに寝て、足を開き、膝を立てて、腰を上げて体を反らせながら、膝を合わせる体操をする。3回行なう。
c) うつ伏せして、上半身はそのままにし、息を吐きながら思いきり足を上げて、なるべく長時間がまんする。膝を曲げないようにして2回行なう。 - 肩が凝る時、両ひじを後ろに強く上げて、上げきったところで、急にぶらんと垂らすように、力を抜く。これを10回くり返す。
断食も数日間やってみることも効果的ですし、最後の疲労回復方法はトライしてみる価値があると思います。上記のいずれの方法も、インドのヨガ研究所で言われているものです。この本に書かれてあることは、著者が行っているものではなく、教わってきたものです。この本が見つかれば、ぜひ読んでみてください。