2002年 3月 の投稿一覧

学生トレーナーの集い|ニュースレターNO.043

3月7日と8日に、大阪体育大学で「第6回学生トレーナーの集い」が開催されました。自分の母校でもあり、17~18年前に学生のトレーナー活動を立ち上げたこともあり、特別講演の形で「わが国におけるアスレティックトレーナーの歴史」について話しをしました。

トレーナーの集いには、全国から230名あまりの学生トレーナーが集まり、2日間にわたって講演を聴いたり、グループディスカッションとそのまとめの発表、そしてポスター発表などが熱心に行われました。その集いの中で「トレーナー活動」についていろいろ思うことがありましたので、今回はそのあたりのことについて書きたいと思います。

まず学生たちが「トレーナー」という職種に強い憧れを持っていることは十分すぎるほど感じ取れたわけですが、同時に非常に危険な状況でもあると思いました。それは、トレーナーと言うものを本質的なところで理解できていないからです。

学生たちの話を聞いていますと、まるで専門家になっているように思って、「選手を強くしたい」、「私が怪我を治してあげるんだ」、また「私がチームを強くした」、というような思いを強く持っているように感じられました。このことは非常に危険です。

特にほとんどの大学が学生トレーナーたちの自主運営・活動であり、自分たちの判断で行動することがほとんどのようです。基本的に学生トレーナーは単なる学生に過ぎすぎず、勉強している立場であるという認識が薄いように思いました。

そして、トレーナーそのものの職業が選手の裏方さんであること、目立つ立場にないことも理解できていないように思われました。トレーナーが選手を育てるのではなく、選手を育てるのはコーチ・指導者であり、それを裏からサポートする役割がトレーナーなのです。トレーナーとトレーニングコーチが一緒になってしまっているように感じました。

学生トレーナーまた医療資格をもたないものは、医療行為、治療行為は当然できません、許されることではありません。私は大学に指導者がいなければ個人的にドクターとのつながりを持ちなさいとアドバイスしました。

これは難しいと思われがちですが、スポーツドクターがどこにおられるか、雑誌を見ればすぐにわかります。ですから選手に問題があれば、また何か問題を疑えばそのドクターのところに連れて行けばよいし、いつも同じドクターを尋ねればそこでいろんな話が聞けますし、そこから学べることも多いはずです。

そうすれば必然的にそのドクターとの関係が生まれるはずです。

トレーナー活動をするには、ドクターの存在は不可欠です。ドクターのアドバイスをもらっても、医療資格のないトレーナーにはリハビリテーションなどの指導をすることができません。そうすると何もできなくなりますから、リハビリテーションということに関しては、トレーニングを指導するということで置き換えることができるはずです。

ROMの制限、筋力の低下に関しては、柔軟性の改善や筋力強化ということになるはずですし、ほとんどすべて置き換えることができるはずです。

私も含め、医療資格のないものは行動に十分注意する必要があります。学生の間、また無資格であれば、トレーニングと言うものをしっかり勉強して、実践力を身につけることです。リハビリテーションエクササイズはトレーニングに置き換わるのです。非常に低いレベルから非常に高いレベルまで、指導できる能力を身につけることです。

トレーナーの基本は、怪我をしたとき、また何らかの異常が起こったときにいかに適切な処置をするか、そして適切な処置を施して直ぐに専門家のもとに連れて行くということにあるはずです。

そこには、外傷・障害に対する最初の診断ということがあるわけですが、当然診断行為はできませんので、どんな問題が考えられるか疑いを持って適切な処置をすることになります。その疑いが持てるだけの外傷・障害に関する知識は必要です。

そのために、特に必要になるのが人命に関わる緊急処置としてCPRや救急法です。CPRや救急法は、資格制度がありますので、学生トレーナーや無資格のトレーナーで活動している人は必ずその資格を保持されるべきでしょう。

現場でトレーナーとして活動する上で、なくてはならない資格といえるものです。それはトレーナーは常に最悪の状況を考えて行動・対処できなければいけないからです。

このことは、トレーナー活動をする上で最初に取り組むべき問題であると思います。もし無資格で、単にトレーナーと名乗っているだけで活動しているのであれば、実際に緊急の場面に遭遇したときには何も手を出すことができませんし、もし最悪の事態が起これば・・・・。それは想像できるはずです。

ですから、現在トレーナーを目指しているのであれば、CPRや救急法の資格をとられることをお勧めします。そこには、緊急処置、応急処置、スプリントの当て方や固定法、包帯法、テーピング、選手の輸送などが含まれますので、それが適切にできるだけでトレーナーの80%以上の仕事はできていることになるのです。

後の重要な仕事として、リハビリテーションプログラムの作成と指導がありますが、これに関しては日本では、理学療法士などの資格が必要です。当然医療行為にあたりますので、無資格者はそれが許されません。

そこで先にも書きましたが、トレーニングの知識と実践力が必要になるのです。リハビリテーションは入院中は当然病院でやるわけですが、そうでない場合には、ドクターや理学療法士などの指示のもとにそれをどこかで実施することになるはずです。

それをサポートすることで学ぶことができますし、逆にこのようなプログラムをこのような計画でするのはどうでしょうか、とドクターや理学療法士に問い掛けることもできるはずです。問題は責任の所在を明確にしておくことです。

トレーニングと言うものは非常に領域の広いものなので、その中に含まれている身体機能の要素をいかに改善するかと言うことについて、理論面と実践面の勉強が大変重要ですし、それらのことすべてがアスリートのリハビリテーションに関わることなのです。

身体的、精神的問題も含め、栄養の問題も出てきます。また、休息の問題も当然出てきます。特に、わが国においては医療資格制度がありますので、このことに対する対応をきちっとしておく必要があります。

特に学生の段階では、自分たちは素人であるという認識と、ほとんど何もできない状況であり、専門家の手伝いをしながら、教員などの指導者からの指導を受けながら学ぶ立場にあるということを認識してほしいと思います。

中高年の爆発的トレーニング|ニュースレターNO.042

NSCAジャパンジャーナルの2001年12月号に、『中高年のための爆発的トレーニング』と言う記事が載っていました。その記事を読まれた会員の方から掲示板で質問がありました。それは、中高年者にも転倒防止の意味からも爆発的トレーニングが必要に思うが、どのような方法がよいかと言うものでした。

この質問から、一つの情報を見たとき、いろんな解釈ができるものであり、解釈を間違えてしまうと間違った判断をしてしまう危険性を感じました。

それで今回のニュースレターでは、その記事を紹介し、皆さんはどのように解釈されるか、私の解釈と比較していろいろと検討していただければと思います。当然いろんな捉え方が出てくるように思いますが、よく考えてみると本筋は一つしかありません。

『・・冒頭略・・・・筋パワーは、神経伝達スピードの低下、高い力発揮を行う速筋線維の選択的な萎縮によって筋力低下が起こるために、加齢に伴い顕著に低下する。

このような筋パワーの低下は、多くの場合、中高年の転倒の大きな原因となっている。しかし残念なことに、動作の素早い実施を伴う筋パワーの神経的な側面に焦点を当てた爆発的トレーニングなしに、顕著なパワーの改善は起こらない。

また、通常のレジスタンストレーニングは筋パワーのストレングス要素を扱うため、両方のトレーニング法はともにプログラムに用いられるほうがよいだろう。

爆発的トレーニングはまた、骨に直接的にかかる負荷への応答のみでなく、どれだけ素早く骨に負荷がかかるかによっても骨密度の改善を助け、加齢に伴い広範囲にわたって衰える他の身体的要素の改善をも助ける。骨粗鬆症が世界中の何百万人もの人々に影響を及ぼすいま、この問題はより全般的なヘルスケアにも関連する。

最後に、爆発的トレーニングに対する最も誤った仮説は、傷害率が高いとされていることである。しかし、傷害の原因は速く挙上したり重いものを挙上するためではなく、不完全なテクニックで行うことによると考えられる。

それゆえ、適切なテクニックを強調し、綿密にそのことを確認させて、中高年は爆発的トレーニングを安全に、成功裏に実施できるのである。』

上記の文献を読んで、『加齢とともに速筋線維が萎縮し、同時に神経伝達スピードが遅くなる。そのことが中高年の転倒の原因と考えられる。

そのために、速筋線維を強化するパワー系のトレーニングをする必要がある。爆発的トレーニングは骨密度の改善にもよい効果を与えるので、適切なテクニックを指導すれば、非常に効果が得られる。』と言うように理解されることになると思います。

この様な理解はいかにも正当なように思われますが、一つずつは正しいといえますが、それらを組み合わせていくと納得できない解釈になってしまいます。

速筋線維が萎縮しているから爆発的トレーニングを行うと言うことはどうでしょうか。スピードを意識した動作では、速筋線維が動員されることは理解できますので、萎縮した速筋線維を刺激することはできると考えられます。

次に、筋パワーの低下が転倒の原因であるということはどうでしょうか。ここでの考え方は、筋パワーと神経伝達速度の関係を言っていますが、神経伝達速度の低下が筋パワーの低下と関係があることは理解できますが、問題は、そのことと転倒の関係です。

パワーが弱い人は転倒するという考え方になってしまいますがどうでしょうか。

次に、骨にかかるストレスについて、そのストレスのかかり方、すなわちスピードを持ったストレスが骨密度の向上に効果があるという理解になりますが、私自身勉強不足で、ストレスのかかり方にスピードがどのような影響を及ぼすのか、そういった資料を見たことがないので何ともいえません。

ただ感覚では、『急激なストレス』と言う意味では、非常に大きなストレスが局所的に加えられるイメージがありますが。 最後に、中高年の人にも、テクニックを教えれば爆発的なエクササイズも問題はないと言うことになっています。

ここで言う爆発的エクササイズとしては、ジャンプスクワット、レッグプレス投げ、ベンチプレス投げと言うようなエクササイズを紹介しています。

以上の考え方から、中高年者に転倒防止のために爆発的トレーニングを勧めるべきだと言う解釈ができるでしょうか。

私は、転倒防止のために、何故爆発的トレーニングをする必要があるのか疑問です。どの程度かわかりませんが、速筋線維が萎縮することが転倒の原因と言う固定概念になってしまっているように思います。

転倒と言うことを考えてみると、バランスを崩して危ないと思ったときに、足が一歩出るかどうか、また手を出すことができるかどうかというようなことではないでしょうか。

と言うことは、反応が鈍くなっていると言うことがいえますし、足や手を出しても支えるだけの力がなかったということもいえます。また、その前に簡単にバランスを崩すと言うこともいえます。この3つのことが転倒の大きな原因ではないでしょうか。

それでは、この原因に対する対策として、爆発的トレーニングが必要でしょうか。加齢によって低下した反応の鈍さを改善するために、本当に爆発的トレーニングが必要でしょうか。テクニック的にも難しいし、その習得に時間がかかるでしょうね。

スポーツの向上のためなどの目的として爆発的トレーニングをするのなら理解もできるのですが、一般のからだが硬くなった中高年者にそんなに難しいエクササイズを指導する必要があるでしょうか。

私なら、ゆっくりした動作で、姿勢を正したスクワットをさせるだけになると思います。後は、歩いたりジョギングしたり、何か動的なスポーツを楽しまれれば良いと思います。

人間にとって大事なことは、重力を受けることですし、それに重みが加われば骨にも良い意味のストレスが加わり、骨密度に対しても良い影響が期待できるはずです。わざわざスピードを加えて骨にストレスを加える必要はないと思います。骨密度に問題があるのなら、そのようなストレスの与え方は、余計に骨の傷害の危険性が高いように思えます。

反応が少々遅くても、下半身がしっかりしてバランスが取れていれば転倒はしないはずです。爆発的トレーニングでクィックリフトを活用し、クリーンやスナッチまですることになると、更に問題は多くなると思います。それは、中高年になるとからだも硬いし、肩の動きも硬くなって、とてもスナッチどころではないですし、クリーンで肩の上にバーをのせることも難しいはずです。

一つの考え方が出てきたときに、いろんな方向から検討してみる必要があります。そしてあらゆる角度から検討したときに、なるほど納得できると言うことになれば、ひとつの理論や方法として理にかなったものと考えることができるのではないでしょうか。以上は、私の考え方、捉え方でしたが、皆さんはどのように捉えられたでしょうか。