2001年 6月 の投稿一覧

魚住先生との出会い|ニュースレターNO.025

日夜、高校球児のケアをさせていただいております。日々思うことは、肩、肘などの慢性的な痛みと回復しても繰り返す痛みにどう対処すべきか、ボールを投げられないでいる彼等の不満気な表情と気乗りしない動作を見ると、投球中止を告げるしかできない無力さを痛感し、反省の繰り返しでした。

こういった障害の多くは、単なるオーバーユースだけでなく不適切なフォームによりおこるものではないかと以前から考えていました。

しかし、フォームのどこが障害に繋がっているのか的確に判断できないこと。また、どうすればフォームを修正できるのか自信を持って選手に伝えることができませんでした。書籍、ビデオなどに頼ってはみるものの解決せず悩みは尽きませんでした。

魚住先生の詳しい活動を知ったのは、HSSRプログラムスのホームページの内容と丸子実業高校の竹内監督のレポートでした。当時、二人の投手の肩、肘の繰り返す痛み(1人は、不自然なフォームで投球後に肩の痛みを訴え、もう一人は140キロ以上の速球を投げますが、やはり投球後に肘の内側痛を訴えていました)を解決できずにいました。

悩んだ末、魚住先生に無理を承知で投球フォームのビデオを見てご指導いただけないかと相談いたしました。先生は、ご多忙にもかかわらずお願いを受け入れてくださり解りやすく修正すべきポイントを教えてくださいました。

それから2週間後、私の状況を察しされてのことだと思います。東京の勉強会を終え、長野の丸子実業高校へ移動されるご多忙中、時間を割いて直接指導してくださるとのありがたい連絡をいただきました。

当日は、ピッチャーを中心にアドバイスをいただきました。

先生は、選手にどういうイメージで投げているのか、また、投球の感覚を問われ、それから上肢をリラックスしてスウィングさせること、上肢の軌道修正、スムーズな体重移動の方法、リード足の位置、体幹の捻り、フォロースルーでの巻き込みなど。各個人に合わせた「自然な動き」を高校生に理解しやすい言葉とタイミングでアドバイスされていました。

よく聞く「肘を挙げろ」ではなく「リラックスすれば肘は自然に挙がる」と選手の動きを無理に否定せず腕をとって心に響くアドバイスでした。
アドバイス直後にはスピード、コントロール共にはっきりとした変化が見えました。

ビデオで相談させていただいた二人の投手について、前者は、サイドまたはクウォーターで投げているつもりのように見えましたが、本人はオーバースローだと言います。肘が極端に低くいわゆる押し投げでフォロースルーもあまりなく、スピード、コントロールとも思いどうりにはいかず、四球を連続することもあり、全身の疲労感と肩関節前面、肩甲間部の痛みを訴えていました。

アドバイスのあと自分の欠点と どうすれば肘が挙がるのか理解できたようでした。感想を聞くと、教えてもらったという実感があり、投球に関しては「投げても疲れなくなった」、「肩の痛みがなく野球が楽しくなった」と最高の一言を聞けました。

後者の投手も肘が低く、リリースポイントが早いこと、フォロースルーの巻き込みが無かったようです。コントロールするためにスピードをおさえて投げていましたが、アドバイスの後は、肘の痛みがなくなったことと速いボールでアウトローに投げられるようになりました。

ご指導を通じ感じたことは、指導を受ける側の気持ち、感覚を理解し、大切にして成功へ導くこと。指導する側の感覚を押し付け強要するものではない。叱咤されたり叱言に聞こえる言葉を受けた後のプレーは叱られない為の防衛反応でしかなく、パフォーマンス向上に活かされない場合が多いと思います。

指導者も障害のケアをする私達も自然な動きの理解と発想の転換ができる能力が必要だと思いました。直接指導と先生の経験豊富なお話を聞き、私の日常の業務においても大変重要な部分に気づかせていただけたことと、悩みを解消させていただけたことに感謝申し上げます。

魚住先生との出会い|ニュースレターNO.024

日常の診療を通して感じることはスポーツ選手のケガの治療をしていても、いざスポーツの現場に復帰すれば、また障害を作って帰って来る不安と、障害自体をスポーツ活動を続けながら治療していくことの困難さです。

病院にいればケガの治療法を教えてくれる先輩はいますし、整形外科の学会に行けば知識は増えていきます。

しかし、体の使い方を教えてくれる場はほとんどありません。むしろ選手や指導者、トレーナーから教えられることが多いのが現状です。それで私も積極的にスポーツの本を買い求めたり、運動学に詳しい先生にお話しを聞く機会を多く持つようにしています。

ある日、滅多に行かない町の滅多に行かない本屋さんに行き(この辺が運命でしょうか?)、スポーツ関連の本のコーナーで魚住先生の「読んでわかる見てわかる ベースボールトレーニング」を手に取りました。

もともとバレーボールの障害に興味があり、肩の障害と関連する投球術関連の本を読むようにしていますが何の気なしにひらいたページはきれいなイラストとともに整然とした文章が並んでいました。私は常々、スポーツ関連の本は写真やイラストを充実しなければならないと思っています。

選手や指導者は本文もさることながら、その絵や写真を食い入るように見るはずですから。素晴らしい本と思い、その場で購入しました。

魚住先生の文章は一口でいうと「簡潔、明瞭」です。しかし、これは非常に大事なことで書く人間にとっては最も難しいことです。私も時にケガについての文章を書く時がありますが、いつの間にやら専門用語が並んだり、回りくどい文章となっていてお叱りを受けることも多くあります。

先生は難しい言葉や「新造語」を振り回すことなく、誰でもわかる表現で書いています。

今思うと大変失礼なんですが、この時に「この人はただ者じゃない」と思いました。 しかし、既刊の技術書と食い違うような表現があり、是非これは先生に直接、聞いてみようとHSSRのホームページを捜し当て、先生宛にメールを書きました。(半分、ファンレターでしたが)

そして、驚いたことに先生は間髪を入れずにお返事のメールを下さいました。これは非常に感激したとともに是非お会いして色々と直に教えていただきたいという思いが募りました。

そんな私の気持ちを汲んでくださり、東京に来た折りにミニ勉強会に誘っていただきました。実際にお会いした魚住先生はご著書と同様に分かりやすいお話しをされる方でした。

野球やバレーボールなどの様様なスポーツの話となりましたが、かつてのプロ野球を代表するエースが実力を発揮出来ず二軍で調整している話をすると「今の肘の使い方ではだめだ。こうすればすぐよくなる」とご自分で手本を示しながら話して下さいました。

先生のお話しは選手の欠点を見つけて「あれはだめだ」という否定的なお話しをするのではなく必ず「こうすればよい」と肯定的なお話しをします。

スポーツの指導者や我々医者は選手(患者)の悪い点を上げて、叱ったり、批評する場合が多いですが、これは簡単なことですが、技術を身につけようとする選手には何のメリットもありません。

魚住先生は物事をポジティブにとらえて、「こうすればよくなる」という話し方をされる方でした。先生を慕って多くの選手や指導者が教えを請うために集まって来るのもこの先生の教授法にあるのだなと思いました。

これは先生のご経験と知識の裏付けからくることだと思いますし、私ももっと勉強しなければならないと思いました。

先生はメールでも実際お会いした時にも「自然な動き」ということを強調されます。最初はよくわからなかったのですがお話しを進めている内に少しずつわかってきました。結局、今までのスポーツの教授法や理論が経験(少数の誰かの)に基づく物ばかりでヒトの自然な動きに反したことも多いのです。それを無批判に繰り返して、前轍を踏んでいるばかりのような気がします。

バレーボールに関してもおかしな動きの部分をいくつも指摘され、「ナルホドな~」と新たに思い知らされました。先生が提案されていた「スポーツ体力測定(コントロールテスト)は競技の特殊性に準じて、自ら工夫して作り、実施すべきだ」ということも非常に納得させられました。

現在どの競技団体も‘科学的な’体力測定を行い、研究者がデータを取ったり、他の国や他のチーム(時には他の競技と!)と比較していますが、選手のためになるのは競技に則した体力のデータであり、その時々の自分と比較して競技力向上に結びつけなければ意味がありません。

バレーボールで50メートル走がどんなに速くてもレシーブが上手い根拠にはならないのですから。とにかく選手のための体力チェックを「手作り」で行うことは指導者がなにを狙って指導しているかの試金石にもなりますし、現場で本当に役立つ調査になると思います。

これはまた競技団体の方とお話しをする機会に伝えようと思っています。この点も先生が常に「前向き」に指導やトレーニングに取り組んでいることをあらわしていて、「後ろ向き」に調査をすることに対しての痛烈な批判だと受け取りました。「後ろ向きに生きても何も生まれない」といことが先生に実際にお会いして最も学ばせていただいたところです。

今後も楽しくもっともっとスポーツ科学を教えていただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。意味のないだらだらとした文章となってしまいました。今後は魚住先生のような「簡潔、明瞭」な文章を目指します。