2001年 5月 の投稿一覧

メンタルトレーニングの考え方|ニュースレターNO.023

5月の連休に長野県の丸子に行った帰り、松本駅の書店で「聴覚刺激で頭の回転が驚くほど速くなる」という書籍を見つけました。ざっと見たところ、CDを聞くことで脳を刺激するということです。

興味本位に買って読んでみました。結論としては、指導者向けのメンタルトレーニングの1つのように感じましたが、非常に面白いものでした。これまでメンタルの本については、アスリートのためにということで2冊ほど真剣に読みましたが、これらの3冊には共通したところを感じましたし、それぞれ役立つものであったように思います。

メンタルトレーニングの行き着く先は、いかに脳を刺激するかということになるように思います。

聴覚の刺激と視覚の刺激によって、脳細胞を活性化させるということです。以前に紹介しました『夢の実現に向けて』というのは、自分自身でプラス思考に徹する、思い込むことによって、脳にプラスの情報だけインプットするというものでした。また後一冊は、「残像カード」なるものを見続けることで、脳の中にその残像を残す。

それによって集中力が高まるというものでした。そして今度の聴覚刺激では、ハイスピードのテープを聞くことで脳神経のネットワークを築くというもので、正に思考回路を広げるということにつながるもののように思います。

これらの方法は、指導者にとっては、多方面からのアプローチを可能にし、アスリート自身にとっては理解力と集中力を高めるために役立つでしょう。どれか単独というより、それぞれの環境によって使い分けできるものと思います。

3冊の本を読んでみて、そこから共通のものを見つけ出せればさらに応用範囲が広がるものと思われます。以下に、3冊の概要をまとめてみましたので、興味のある方は是非呼んでみてください。そして感想をお聞かせ願えればと思います。

 

1.No.1理論(西田文郎、現代書林1997)

『才能も努力もツキも、脳にインプットされた記憶データが人間の優秀さを決定します。脳のでき・不出来ではなく、そこにインプットされたデータが人間の優秀さを決定するのです。160億個と言われる大脳の細胞の数も、人によって差があるわけではなく、一生に使う脳細胞は全体の5~10%で、残りは未使用のままです。

問題は脳の中身で、今までの人生でその人の脳に蓄えられた記憶データによって重大な差が出てくるのです。人の脳は、感情、イメージ、思考の3つがプラスになれば、必ず成功できる仕組みになっています。感情、イメージ、思考の全てをプラスにすることで誰でも優秀な人間になれます。

失敗の記憶は、成功よりも鮮明に脳にインプットされているのです。「楽しい」「やれる」「できる」というプラス思考の積み重ねによって、最高のパフォーマンスを発揮することができるようになります。』

 

2.思いのままに脳を動かす「残像」力(高岸 弘、講談社1997)

『ある特殊にデザインされた図柄を十数秒ほど静視した後、目を閉じると、図柄を注視しているときは勿論、開眼状態で活動しているのでβ波支配(普段の活動状態)ですが、閉眼してもそのまましばらくは「α波減弱」と呼ばれる状態、つまりβ波状態が続くということが解りました。

これは残像が見えているときです。残像が消えると完全なα波支配(リラックス状態)になり、再び残像が浮かぶと、またβ波が現われることが解りました。脳波には、その人の実力が最大限に発揮できる状態というものがあります。

そこで目的にあわせて、どの脳波状態のときが自分にとって最も良い状態なのかを把握しておき、その脳波が現われたときに、例えば「あっ」という声を出します。

このようなトレーニングを何度も続けていると、反対に「あっ」という声を出せば、自然に最も良い状態の脳波が現われるようになります。この方法は「バイオ・フィードバック」と呼ばれます。

人間は何かを表現する過程で、6つの段階を経験します。それぞれの段階において、「注意力」「観察力」「認識力」「把握力」「記憶力」「創造力」という力が不可欠です。これらを十分に発揮させるためには、「集中力」というエネルギーが必要になります。

脳は2つ以上のことを並列に処理することはできません。残像が見えているときは、それのみに集中していることの証です。余計な事を考えていると、残像は消えてしまいます。また、残像が長く残るということは、それだけ集中力が持続しているということです。』

 

3.聴覚刺激で頭の回転が驚くほど速くなる(田中孝顕、きこ書房2000)

『大脳生理学では、大脳にある「ウェルニッケ中枢」を含む言語処理領域を刺激すると、実際に「頭の回転が速くなる」ことがわかっています。「ウェルニッケ中枢」は、聞いたり読んだりしたものを『追唱』し、ブローカ中枢へと送る大脳の一部分です。

「追唱」とは、文章を読んでいるとき、文章を目で追いつつ、さらに頭の中で唱えることです。この『追唱』の上限スピードが「頭の回転の速さ」そのものであり、音声や文章を理解するとき、その理解のスピードは、「ウェルニッケ中枢」の音声処理のスピード、つまり上限追唱速度以上には決してならないので、あなた固有の上限追唱速度があなたの頭の回転速度とイコールになります。

「ウェルニッケ中枢」を刺激するには、ただ高速音声を聴くだけでよいのです。なぜなら、すべての音声や目から入った言葉は、「ウェルニッケ中枢」を通過するからです。もともと開いていて、その穴が直接、脳に通じているところは目と耳なのです。

三倍速弱まで理解できるようになれば、その分、あなたの頭の回転は速くなったことを意味します。つまり、脳神経細胞同士の結びつき(ネットワーク)の密度が高くなり、「追唱」の脳力がその分、速くなったわけです。

しかし、この効果は一時的なもので、それは「ウェルニッケ中枢」が情報の高速流入によって一時的に活性化されたためにすぎません。脳力が恒常的に高まるのは、この「速聴」を繰り返して行い、「ウェルニッケ中枢」の脳神経細胞同士のネットワークが密になったときです。

この速聴の過程で脳幹網様体も刺激され、汎化作用が生じ、全脳が活性化する。また前頭連合野なども活性化します。

こうして速聴で耳から大脳へ入力された高速音声は、すぐに「ウェルニッケ中枢」で高速処理され、大脳の関連各箇所にフルスピードで伝達されます。

「頭がキレる人間」というのは、まさにこのような脳の構造を持った人に対して与えられる言葉なのです。しかし「ウェルニッケ中枢」内のネットワークをより強化すれば、「頭がキレる人間」など、錆びついた包丁にしか見えないでしょう。』

足の痛みの相談|ニュースレターNO.022

先週の4月28日、初めて勉強会を東京で開催し、懇親会を含め、実に7時間以上にわたっていろんな話が飛び交いました。この内容については、また参加者の方々のリポートでご紹介したいと思います。ぜひこのような機会を全国で持ちたいと思います。

さて、今回は先月いただいた手紙を参考に、リハビリテーションの進め方について考えてみたいと思います。送っていただいた手紙の内容は次のようなものでした。

『自分は25歳の会社員です。2年間ボクシングをやっていたのですが、右足の甲の外側の痛みのため、約1年前にやめました。

それから足を治すためにいろいろな本を買って読んだり(その中で魚住教授の「スポーツ外傷・障害とリハビリテーション」という本だけがリハビリから復帰まで詳しく書かれていましたので、手紙を書きました)、筋トレ、ストレッチなど、現在も続けていますが、よくなっていきません。

整形外科では、電気、足底板などをしたり、レントゲン上の異常もないので、もう外科ではどうしようもないと言われ、その先生に鍼を勧められて行きましたが、効果がありませんでした。

先日、別の整形外科では、腓骨筋の捻挫、炎症などのトラブルを放っておいた為、慢性化していると言われました。症例が尐ないので、治るかどうかわからないし、スポーツも、自転車やウエイトトレーニングなどしかやらない方が良いと言われました。

教授なら、自分がまたボクシングができるようになるには、どうしたら良いか知っていると思って手紙を書きました。お忙しいのは承知していますが、できればお返事をもらえたらすごく嬉しいです。よろしくお願い致します。』

医者から特に異常はないとして見離されたケースは多いはずです。誰が悪いのでしょうか? 何がいけないのでしょうか

けっして医者が悪いのではありません。診断上、異常が見つからなければ問題ないとしか言えないはずです。ここでは、次のリハビリの段階が問題になるはずです。そこでどのようなアドバイス・指導を受けるかと言うことにすべてかかっているのではないでしょうか。

そこで私は、次のような手紙を差し上げました。『お手紙拝見いたしました。1年以上も足の痛みで悩んでおられるようで、またボクシングができない悩みは深刻であるように感じます。

しかし、手紙で拝見する限りでは、問題のない痛みであるように思います。確かに痛みはあるのですが、レントゲン上でも、その他の検査でも恐らく問題は出ないと思います。

一番考えられる障害は、スプリング靭帯の捻挫と腓骨筋腱の炎症と考えられます。恐らく、AさんはO脚ではないでしょうか。シューズの外側が極端に磨り減らないでしょうか。

絵で書いておられた「筋の付着部にトラブルがあるのでは」というところは、浮いた状態で靭帯がついています。それが足の外側で着地することによって突然極端に伸ばされたか、繰り返し伸ばされたと考えられます。

これは、O脚でランニングすると足の外側で着地を繰り返すことになるからです。足首で言えば、慢性捻挫の痛みと言うように考えればよいと思います。したがって、その部分の腫れが消えないということは、炎症が慢性化していると考えられます。

対策は、足の外側で体重を受けないように歩くこと、母趾球を常に意識すること、立っていても、歩くときも、常に母趾球を意識することです。

後、やるべきことは、まず下腿部(すね)の外側の筋肉が張っているはずです。これは、絵に書かれている腓骨筋です。この筋肉の腱が慢性的に炎症を起こしているために、そのふくらみである筋肉が硬くなっているはずです。

この逆のことも言えます。すなわち、腓骨筋が硬くなったままなので、腱の炎症も消えないということです。対策は、すねの筋肉をマッサージ、鍼などでほぐすことと、患部を冷やすことです。氷で直接患部をマッサージしてください。氷でこすりつけます。

10~15分間やってください。その後、両足を肩幅に開いて立ち、軽く膝を曲げてスクワットを繰り返してください。しゃがんだときに、恐らく体重が足の外側にかかりますので、やや母趾球の方にかかるように(正常では母趾球と小趾球、かかとの3点で体重を受けます)意識します。

状態が悪いようであれば、1日2回、普通は1日1回でOKです。

それから、まず新しいシューズを買って履いてください。足型がついたシューズは使わないほうがよいでしょう。後は、本にも書いてあると思いますが、ジャンプ・ストップをやってみてください。

その場で母趾球を意識してジャンプして、着地するときに、小指側にかからないで、足の裏がフラットな状態(母趾球と小趾球、かかとの3点支持で体重を受ける)で着地をします。

これを繰り返します。正しくできれば痛みはでないはずです。これが痛みなくできるようになれば、ランニングに入ってください。足の裏をフラットについて着地することと、母趾球で突き放す意識でランニングします。基本は、小指側・外側に体重をかけないと言うことだけです。

全く、問題はないと思います。上記のことをきちっとやれば、日ごとよくなっていくはずです。痛みや不快を感じるときは、正しい足のつき方をしていないと言う合図ですから、そのときに正しいつき方を意識すれば問題はありません。

ボクシングの再開も直ぐと言うより、意識ポイントを間違わなければ問題ないはずです。1週間もすれば、解るはずです。自信を持ってやってください。』

それから数日後、次のようなメールが入りました。

『こんばんは 手紙を出させていただいたAです。お忙しいので返事はこないものと思っていましたので、とても嬉しかったです。

早速今日から教わったことを始めます。すごく自分の気持ちが楽になりました。本当にありがとうございました。あと質問なのですが、冷やす、そして運動、そしてまた冷やすのですよね? 教わったこと守ってやってみます。』

そして1週間後、次のようなメールが届きました。

『魚住教授、自分がメールする前にメールがあったのでびっくりしました。ありがとうございます。常に母趾球を意識するようになって、痛みが軽減しましたよ。

10が7くらいにはなりました。仕事中も尐し楽になりました。それと、今1日おきに おそわったリハビリをしています。

内容は、まず冷やしてから教わったやり方で、スクワット、ジャンプ・ストップ、あとヒール・トゥー・ウォーク、カーフ・レイズ、ストレッチです。もう

少し様子を見て、軽く走ってみるつもりです。来週から毎日リハビリはやるつもりです。このままよくなってくれればいいなって思います。

あと魚住教授から手紙の返事がくる前に、予約を入れていた都内のスポーツ整形外科にいってきました。CT検査、レントゲン、足の形などを診てもらいました。検査の結果は5月下旬に聞いてきます。

とりあえず言われたことは、足首がかたいのとハイアーチだということです。魚住教授におそわっていることと、足首のストレッチ、股関節の強化もした方がいいかもとのことです。やり方は結果を聞きにきたときに教えるとのことです。魚住教授ならこういう足の時どう指導されますか?少し知りたいです。

自分の足については、魚住教授におそわってから本当に尐し調子がいいです。自分の目標はボクシングができる足にすることです。まだ時間かかるかもしれませんが、治したいです。お忙しいのは承知しておりますが、今後ともご指導ください。すごく頼りになり嬉しいです。』

以上のように、リハビリテーションの考え方はいろいろありますが、目的は、正常な状態に戻すことにあると思います。

わずか数回リハビリをしただけで、1年以上苦しんでいたことが楽になったのです。それは正常な動きを試みたに過ぎません。異常な状態があるから問題があるわけで、正常な状態で異常があるとは考えられないはずです。

したがって、異常な構造・動きを修正することがリハビリテーションの最大のポイントになるように思います。また、パフォーマンスの向上にも当然繋がるものではないでしょうか。