2001年 4月 の投稿一覧

高校野球の指導報告|ニュースレターNO.21

今回は、3月に私が直接指導に伺った長野県の丸子実業高校野球部の竹内先生からいただいたリポートを紹介したいと思います。指導者の方にとって同じ状況が想像できる方も多いことと思います。

竹内先生には、私の指導のまとめをしていただき、貴重な時間をいただきましたが、まとめることによって指導のポイントを認識することができると思いますし、今後出てくる問題を解決する糸口になると思います。

魚住先生の本校野球部に対する冬季練習中の指導と、3月に行っていただいた4日間の直接指導についてまとめてみました。

 

1、冬季練習

今年の冬は雪が多かったため、グランドは使えず、室内での練習やトレーニングがほとんどでした。内容は、アップのトレーニング、ウェイトトレーニング、ティーやマシンでのバッティング練習、投手の投球練習というものでした。

その中で、アップトレーニング(敏捷性、瞬発力、バランス、スピードなどを鍛える)は前からご指導いただいていたものを室内でしっかりと取り組んできました。室内練習場(直線で約20m)は狭いために走る距離は短いですが、常に自分に挑戦するような気持ちで行うようにしました。

そのため、継続的にこれに取り組んだ者はかなり体の力がついてきました。2月に会員のやまびこの森スケートセンターのトレーニングコーチである繁田先生が魚住廣信先生の紹介で来られて、そのトレーニングを見ていただいたことがありますが、「野球選手にしてはばねがありますね」とおほめの言葉をいただきました。

また、3月に魚住先生に直接見ていただいたときも、「確実に力がついてきていますね」という言葉をいただきました。実際に3月20日の練習試合では、投手のスピード、制球力が上がり、バッティングではホームランが4本飛び出すなど、その成果が試合のプレーの中に確実にあらわれてきました。

ただし、この成果は、ただトレーニングだけのものではなく、もうひとつ大きな理由があります。それは、冬の間に魚住先生に2回にわたってビデオでの技術指導をしていただいたことによるものです。

これは、こちらで選手の動き(投手のスロー、打者のティー、マシンバッティングでのスイング)をビデオに撮り、それを送らせていただいて正しい体の動き、自然な体の使い方のポイントを電話やメールでご指導いただき、それを選手に伝えるというかたちで行ってきました。

まず、投手については、「軸足でしっかりプレートを押す」、「フォロースルーでしっかり腕を巻き込むこと」。打撃については、「左腰(右打者)を投手の方に向かって移動する」、「軸足をしっかり使って骨盤を水平に移動する」、「ミートポイントを前にする.」という内容のものでした。

これを選手に言葉や文章で伝え、さらに先生に送っていただいたイメージ写真を配布して徹底してきました。

このような形での先生のご指導で、短期間のうちに選手の動きが変わってきました。投手は、ただ上体で力んでいた投げ方とは変わり、バランスがよくなり、スピード、制球力がアップしました。また、打撃でも腕の力に頼ったスイングで窮屈な感じのものが、上体の力が抜けて楽に振れて、飛距離も伸びるようになりました。

この指導を通して、冬の間に培った力が確実に的確に野球の一つ一つの技術の中に結びついてきたことを強く感じました。

 

2、3月の直接指導

魚住先生には3月18日~21日の間、3泊4日にわたり本校野球部のグランドにおいでいただき、直接選手への指導をしていただきました。

  • アップトレーニングの修正すべき点、
  • キャッチボール
  • 投手の投球について
  • 野手の捕球、送球の動き
  • バッティング
  • 走塁での走り方と塁の回り方

という内容でした。このときご指導いただいた中で感じたことをまとめて見たいと思います。

(1)キャッチボール

投げ方のぎこちない選手をつかまえて、からだの使い方を指導していただきました。一人は投げるときに体をひねらないで腰を沈ませてしまっているというものでした。またもう一人は、腕を振るときに体と頭を左方向に逃がしてしまっているので下半身の力が正しく伝わらないというものでした。

二人とも直していただいた後は、スムーズな動きに変わり、楽にいいボールが投げられるようになりました。

毎日その選手のキャッチボールを見ていて直さなければいけないと思っていても、何をどのように指導すればよいのか判断できずにいましたが、一瞬にしてそのポイントを見抜き、的確に指導していただく姿を見て、改めて先生の体の動きを見る目の確かさと鋭さに驚きました。

(2)投手の投球フォーム

冬の間、ビデオで指導していただいた点を再確認していただきました。その中で、軸足でプレートを押して左腰で打者の方に向かうというポイントがありましたが、それをしっかりとイメージするために、移動するときにお尻の重みを感じるようにという指導がありました。

実際に先生が投手の前に立ち、お尻を押さえてその重みを感じさせるという指導をしていただきました。やはりその後のボールは前に増して勢いが出てきました。

ある投手は、どうしてもねらったところより右方向(右投手)へいってしまうという欠点がありました。その投手には、先生は脚を上げた後のテークバックから投げに入るまでの動きが急がしすぎるということを指摘し、投げ急がず、ゆったりと移動するということと、フォロースルーでの腕の巻き込みを意識させました。

そうすると自然にボールがアウトコース低めに集まるようになり、ボールも速くなったように思いました。

(3)野手の捕球と送球の動き

シートノックでの先生の指導は、「もっとゆっくり動いて楽に投げなさい」というものでした。それまでは気合を入れて一生懸命やろうとしてあせり、動きのリズムを悪くしている。また、ボールを速く、強く投げようとして力み、スローイングのタイミングが悪くなっているとのことでした。

その後、小グループでゆるいゴロで基本的なノックを行い、捕球のリズムとスムーズな送球のタイミングの指導をしていただきました。特に、投げるときはベースに投げるのではなく、相手の胸・肩の高さに投げることを意識するように言われました。

このような意識で行った最終日のシートノックでは、見ていても選手が楽に動いているのがわかり、三日前とは見違えるように捕球→送球が安定してきました。

捕手のスローの練習は、いつも目いっぱい力をいれて速い低いボールをイメージした練習でしたが、逆にゆるいやまなりのボールでセカンドベースへ丁度届くような送球を行い、そのときの力を入れるタイミングを覚えておくというものでした。

それから捕手のボールは今まで力んでショートバウンドが多かったものが、楽にスムーズに伸びのあるボールが各塁へ投げられるようになりました。

また、内外野手の捕ってから送球に移るときのステップワークについて、投げる直前の軸足のステップは大きくしっかりとステップする必要があると指導されました。それまで内野も外野もそのステップが小さく、きちんと踏めていなかったために、力がうまく伝わらず、思うような送球ができていませんでした。

この指導により、大きなステップ、あるいは内野手がフロントステップを意識するようになってからは、やはり送球が楽にできるようになりました。あらためてステップワークの大切さを認識させられました。

(4)バッティング

バッティングについては、冬の間ビデオを見て指導していただいた点の再確認がありました。軸足で押す、骨盤を水平に移動させ、左腰で投手の方向に向かう、ポイントを前にするというものでしたが、それ以外は各個人にあった指導のポイントをそれぞれバッティング練習の中で指導していただきました。

全体的にはテークバックの時にグリップをキャッチャー側へ移動する。テークバックの時にヘッドが背中の方へ入ってしまう者がいるので、頭の上に持ってくるようにする。

バットのヘッドが下がって出てくる者がいるので、構えた位置から直線で出るようにする。というものが多かったように思います。この指導の結果、今までうまくバットコントロールができなかったり、詰まることが多かった打者がスムーズにバットが出るようになり、ミートポイントも良くなったように思いました。

(5)走塁

走塁については、走り方と塁ベースの効率の良い回り方について教えていただきました。まず走り方については、できるだけストライドを広く、塁間の中では歩数が尐ないほうが速いという指導をいただきました。

盗塁では、左右の脚を平行に送り出す。最初の6歩を一歩ずつストライドを伸ばすことを意識して、後は力を抜いてリラックスして走る。構えた位置から速く出るには、顎を引いて頭を走る方向に速くもっていくというポイントをあげられました。

また、塁ベースの回り方については、今までベースの前後で大きくふくらんでいたものを、できるだけふくらまずに真っ直ぐベースに入っていく。そのためには、ベースの手前で力を抜いてリラックスして走ることが必要だと教わりました。

この走塁の指導をしていただいてから、選手の走りはこちらから見ていてもすごく楽になったように見えました。また、何よりも驚いたのは、スタートして加速してから力を抜いてもその後のスピードは落ちないんだと言われたときでした。

リラックスした走りができればスピードは力を抜いても維持できるということでした。今まで野球を自分でもやり、指導もしてきましたが、走るときにはとにかく力を抜かずに一生懸命全力でというのが鉄則でした。

しかし、先生のこの指導で、選手の走りが楽にスムーズになり、しかもスピードにつながっている実際の様子を見て、あらためて先生の指導のすばらしさに感動しました。

以上の指導のアドバイスを再確認しながら、今後の指導に役立てたいと思います。

高校野球部監督

教えるものと教えられるもの|ニュースレターNO.20

腓骨筋

今年、初めて大学の野球チームのアドバイスをすることになりました。2月からスタートし、2ヶ月が過ぎました。ホームページの出会いからアドバイスがスタートしたわけですが、ここにきて大きな問題が発覚しました。それは、私が作成したトレーニングができていないということです。

学生たちは3月に入って合宿があり、その後オープン戦が続いたので、やれなかったということが理由だそうです。4月に入ればもう春のリーグ戦が始まります(もう始まっています)。私は、合宿には同行せず、3月の終わりも中国に出かけていたので、リーグ戦の開幕を前にした4月1日に練習を見に行きました。

監督は、OBの方であり、仕事もあることから祝日や休日に練習を見に行かれます。大学の運動部では良くあることですが、それだけ学生の自主性が求められるわけです。

そのために日ごろの練習が見られないことから、選手達のトレーニング状況などをノートに記録させて、毎週確認するようにアドバイスしておりましたが、そのノートを見せてもらうと、3月はほとんどというか、後半はまったくトレーニングをしていないことがわかりました。

私が作成したトレーニングがやられなかったことは過去に例がなかったので、かなりショックを受けました。なぜ私はここにいるのか、何のために時間を裂いて練習を見にきたり、アドバイスをしたり、彼らの試合日程やオフの日程を聞いて、トレーニングが継続できるように毎日のトレーニングスケジュールを作り上げたのか、わけがわからない状況に陥ってしまいました。

特に学生の場合は、まだ十分大人になっていないところが見られるために、信用という面で当てにならないというか不安を持っておりましたが、心配していたことが起こってしまいました。

アドバイスする側とそれを受け入れる側の信頼関係というか、それを信じてやり遂げようとする互いの信頼関係が足りなかったのでしょう。これは、そのチームや個人を指導・アドバイスする前に、一定期間の付き合いをして、互いの理解をしていなかったからだと思われます。

ウォームアップを見ていても、私が最初に指導した2ヶ月前から進歩はしておらず、ほとんどの選手がそれなりにやっているという状況でした。それでも選手たちによると自分達は変わってきていると感じているようです。

ここで何が問題かというと、「自分たちはやっているんだ」という錯覚・誤解です。これは指導者にも言えることですが、選手たちはやっているのに成果や結果がもう1つでないと考えたりするのです。このような状況では、先の試合の結果は明白です。

もし、結果がよければ、それは偶然でしかありえないし、半年後、1年後にはもっと結果は明白になるでしょう。合宿からオープン戦と試合が続くと、意識はそちらに向いてしまいます。

すると、基礎的な体力・コンディショニングよりも技術や勝敗にこだわってしまうのです。基礎体力・コンディショニングレベルの高い選手たちであれば当然問題はありません。高いレベルの基礎体力・コンディショニングの上に、技術が生かされるということが理解されていないのです。

仮にこれまでの1ヶ月や2ヶ月間、十分トレーニングできたとしても、それはトレーニングのスタートでしかありません。短期間にやりすぎるのではなく、常に、定期的に、サイクル的にトレーニングを続ける・継続することが必要なのです。

半年、1年間続ければ、その過程の中で技術的にも大きな変化が見られるようになります。言うなれば、試合の結果を犠牲にしてでも体力・コンディショニングづくりを優先しなければいけない時期があるということです。

このことは、3月に丸子実業高校の野球部の指導に行ってよくわかりました。体力・コンディショニングレベルが上がることによって、見違えるように技術的にも成長しているのです。これは、指導者のたゆまぬ目配りと選手達の努力の賜物です。彼らの成長には、私も敬意を表するしかありませんでしたし、ありがとうという気持ちで一杯でした。

大学のリーグ戦が4月の頭から始まるなら、せめて半年前から準備を始めるべきでしょう。トレーニングというものは、やり方によってプラスの効果もあれば、逆にマイナスの効果も生まれるわけです。すぐに結果を求めすぎることは、結果としてマイナス効果しか生まれません。

ここで指導者に求められることは、チームや選手個人の把握です。

体力レベル、意識レベルの分析から、現状としてその選手、チームに何が足りないのかを分析する必要があります。そこで個人やチームの弱点がわかり、それを解決するためのトレーニングをプランニングするわけです。その後は、トレーニングを実践し、何が変わり、何が変わらないのか、経過を追いながらの分析と、プログラムの修正が入ってきます。

変わらないことがあれば、なぜ変わらないのか分析する必要があります。またなぜこのような結果になったのかということも分析する能力が必要です。そこで役立つものは、それまでの経過を見ることができる様々な記録やデータなのです。

例えば、トレーニングの量が少なかったのか、強度が低かったのか、トレーニング頻度が少なかったのか、やりすぎたのか、今回のようにやっていなかったのか、いろんな問題が明確に見えてきます。そのようなものがなければ、訳もわからずただ残念がったり、最悪は「あれだけやったのに」といった誤解をしてしまうことです。今回の件は、そのような状況が生まれるところでした。

指導者は、いつも冷静に分析していかなければいけません。仮に選手が一生懸命トレーニングをしてきたのに、確かに定期的にきちっとトレーニングしていることがわかっても、トレーニングの強度と量が適当でなかったり、同じ強度と同じ量でしかやっていなかったということも良くあることです。「結果は正しい」のです。

「こんなはずでは・・・」ということは考えられないし、それを考えることは言い訳でしかないのです。

各種競技によって、どのような記録をとればよいのか、それを考えることが指導者の役目であったり、コンディショニングコーチの役目であったりするのです。

そのためには、各競技に必要なコンディショニングの構成要素を理解し、その構成要素を評価できる具体的なエクササイズなどを作り上げていく必要があります。そのためには、1つの競技だけにこだわらず、あらゆる競技に目を通すことです。広い視野と柔軟な思考を持って取り組まなければより効果的なものは生まれないでしょう。