2001年も、早や10日を過ぎました。今年の1年も、瞬く間に過ぎ去るような予感がします。学生時代の1年は、とても長く感じたものですが、年を重ねるとともに時間の経過が早く感じられるのは、私だけでしょうか。それだけ1日が大切であるし、1ヶ月、1年はさらに大切に思います。このように考えると、人生もまた「ピリオダイゼーション理論」の実践なのでしょうか。

私は今年で生まれて半世紀を迎えます。人生の後半から終板にさしかかろうとしている頃であると、自覚しています。大学の方は、今年の4月から第2学部の健康科学部健康システム学科が開設されます。この学部の開設のために、大学に呼ばれたわけですが、現実には私の思うような学部にはならず、この8年間、何をしてきたのか、自問自答しているところです。

自分の夢を追いかけ、その実現に努力は惜しまないのですが、夢のない職場になってしまいそうです。大学運営そのものに疑問をもつ、今日この頃です。

大学を目指すのではなく、その大学に私がいるから、その教員を求めて学生が集まるようになってきている現状があるのですが、来た学生に夢を与えられるような受け皿ができていないので、私自身が声を上げて『私のところに来なさい』とはいえないのです。そのことが問題です。

 

夢について

上辺だけでなく、真のプロフェッサーを育てたいのです。それが実現できる現場・環境がかなかな見つかりません。正にリクルートしている状況です。悲しいことです。しかし、自分の夢は捨てきれるものではなく、いつまでも夢の実現を目指して努力を続けていきます。きっと、夢がかなうと信じています。そして、夢がかなえられる現場にきっと出会えると信じています。

ということで、私の夢は、トレーニング、トレーナーといった職域で一般の人からプロのスポーツ選手まで、どのレベル、どの対象者に対しても、パフォーマンスの向上から健康増進、リハビリテーションにいたるまでこなせるプロフェッショナルな人材を育てたいと言うことです。

私自身は、大学時代に陸上競技の指導からスタートし、就職してからはリハビリテーションを専門にやるようになり、大学に入ってからはアスリートを育てるようになりました。

 

選手の育成について

選手の育成において、技術指導のあり方、コンディショニングを向上させるトレーニングの指導、怪我をした時のリハビリテーションが重要であることは承知のことですが、国内においてはこの3つの要素が上手く構成されていないことが世界で活躍できる選手が育たない原因になっていると思います。

中学、高校、大学で優秀な選手が20代後半まで順調に成長し、世界のトップで長く活躍できると言うような現状がほとんど見られません。

その最大の原因は、長期的な育成プランがないことであり、怪我をした時に元通り回復しきれないからです。いろんな知識や情報は溢れるほどあるのですが、どれもそれを生かしきれていません。実験や研究で得られた成果が、現場の指導にフィードバックできていないのです。

研究と現場のつながりがほとんどないのが現状です。いくら素晴らしい研究をしても、結局は研究だけで終わってしまうと言うことです。研究のための研究が余りにも多すぎるような気がします。そこに現場の経験がどうもマッチしないようです。

現場の指導者は、もっと研究の成果を冷静に判断し、それを応用するアイデアがなければ、研究成果は生かされません。マトヴェーエフ氏も言うように、スポーツの実際の現場は、研究室の実験と全く違う状況であるのです。したがって実験室で得られたデータをそのまま現場に100%生かすことは考えられないわけで、そこに応用が必要なのです。

また実験で得られたデータを現場で生かす際に、どれだけそれを長く続けられるかということも問題です。日本人は即席の、即効性のあるものをいつも期待する傾向があるように思います。だから、私もよく質問されることですが、『何をすれば強くなれますか』と言われるように、すぐに結果を求めるます。

成長期には、それこそ何をしてもレベルアップするでしょう。やればやるほどレベルアップもすごいと言うことです。それが今の中学や高校生の指導の現状であると思われます。結果的に、それが競技生活のピークを早く終わらせてしまったり、バーンアウトさせたりしているのです。

選手を育てるための要素はたくさんあり、どれか1つだけ優れていても世界のトップには立てません。時間をかけて、年数をかけて1つずつ積み重ねていくことが必要なのです。

1つのピラミッドを建てることと同じで、基礎がしっかりしていないと、後になって傾いたり倒れたりしてしまいます。このように考えれば理解できるのですが、実際には目の前の結果だけにしか気が回らなくなっています。

選手が育っていく中で、必ずどこかで怪我や障害の問題が起こります。その時に、しっかりしたリハビリテーションがなされれば良いのですが、それが十分でないために、競技人生を怪我と戦ってしまうと言うことになったりします。これが我が国のスポーツ界の現状なのです。

 

リハビリテーションについて

リハビリテーションにしても、患部を治す、元通りにする事にしか目が行かなくなると、回復に数ヶ月かかれば、患部が治っても身体はレベルダウンした状態になってしまっています。傷ついたのは、患部であり、一部分であり、身体のほとんどの部分は正常なのです。

むしろ、数ヶ月のリハビリテーションの間に、コンディショニングは怪我をする前よりレベルアップして現場に復帰できるはずなのです。ここには、やはり創造力や応用力が必要になってくるのです。何よりも重要なことは、トレーニング理論なのですが、そのトレーニング理論を追及する分野が我が国にはありません。

学会の中にも、トレーニング理論を研究する分野がないのです。不思議なことです。これでは、研究成果を現場に活用できないはずです。きちっとしたトレーニング理論が確立されていないことが問題なのです。それが確立されておれば、現場での指導も誤ることはないのですが、どうもその分野に関心がないのか、十分理解されていないようです。

選手を育てるにしても、リハビリテーションを指導するにしても、基礎知識や新しい情報を応用できる柔軟な思考力を持てる人材を育成する必要があるのです。そのような人は、アスリートに関わらず一般の子どもから老人まで、また障害者からプロのアスリートにいたるまで、その目的に則した適切な指導ができるはずです。

そのために、私を理解してくれる若くて意欲のある、そして柔軟な頭を持つスタッフを集め、一緒にそんな人材の育成と、世界のトップで活躍できる選手を育成することが私の夢です。そんな基地を創りたい。そのことを再確認して、2001年のスタートを切りたいと思います。